ザンクトヒルデの陰謀説
雨水先生とキャロさんの結婚発表からすぐに流れ出した噂で、その噂のせいでザンクトヒルデ魔法学院は大きく揺れており先生達は毎日対応に追われているらしい
そして一部では生徒がクーデターを起こそうとしているなんて話もあるくらい
「それで? どうしてキミ達はボクのところに来ているんだい?」
「ウルが犯人なんでしょ!」
「白状しないとその辺の機材壊すよ!」
「・・・流石ヴィヴィオ君の友人だね」
そう言う訳で学院を混乱に陥れた噂は人為的なのかも。なんて思ったわたしとリオは管理局の開発部門までやって来ていました
わたし達としては助かったけど、ヴィヴィオの友達で忘れ物を届けに来たって言ったら普通に通してもらえるって管理局として大丈夫なのかな?
「理由は分かったけど、なんでボクが容疑者なんだい? ボクは学院の生徒でも無ければ、ご主人様の信仰者でも無いよ」
「え、でも、このタイミングで学院に何か起こったらウルのせいだってヴィヴィオが言ってたよ?」
「何を根拠に」
やれやれと首を振ったウルは椅子に座りなおして腕を組んだ
「キミ達は、根拠も無くこんな事をしているのかい? ボクが通報すれば直ちにキミ達が先程挨拶をした警備の者がやってきて拘束してくれる訳だけど・・・良いのかい? キミ達は優等生だろう?」
「ぐぬぬ」
「ねぇねぇウル」
「ん? どうぞ、リオ君」
リオはイクス先輩は浮かべるような不機嫌そうな表情で直ぐ傍の機械に向かって拳を振り下ろした
あ、ウルの表情が引きつったものに
「まどろっこしいのキライだからさぁ・・・知ってること、ぜんぶ話してよ」
あぁリオがまたイクス先輩っぽく
ヴィヴィオからイクス先輩に、リオはもうちょっと考えて動くことも大事だよって言ってもらわないといけない
「あ、あはは、ハハ、穏やかじゃないなぁ。うん、そうだね。そうだよ! ボクが犯人さ! よく分かったね! 流石はヴィヴィオ君が友達に選んだ事はある!」
「え? 犯人でいいの?」
「驚くことかい? さぁ問題でってリオ君?! それは駄目だよ! いいかい、拳をおろして、ゆっくりとだよ・・・えぇとね。ボク的にはご主人様には何処かしらに所属してもらわないと困る事情があるんだよ。都合が良いのはザンクトヒルデだね。あそこは素質に溢れてるから」
「う~ん、でも噂を広めるって部外者のウルにできたの?」
「そう思うのなら、ここまで来ないで欲しいものだね。でも、意外と簡単だよ? 認識阻害系の魔法を使いながら、友達の輪ってヤツの中で語るのさ」
なんだか胡散臭い悪役のように笑うウルは時折リオを注視しながら解説をしてくれる
微妙に説明が丁寧で分かりやすいからびっくり
「つまり、ウルは雨水先生が指導した古代ベルカ使いの魔法を観測してたってこと? それで、雨水先生が学院からいなくなったら研究対象が減るから困ると」
「概ねそんなところだね」
「うわー」
「ほんとうわーだよね」
「クククッそれにしても予想を超えて広まってしまった時は驚いたよ。やはり、噂を受け入れた人は何でも良いから反対する理由が欲しかったんだろうね。流石に結婚反対は言いにくいだろうし」
確かにそれは分かるかも
わたしも結婚だったらちょっとは嫌だけど仕方ないって思える。でも、そう言う、陰謀みたいな悪い事で雨水先生がいなくなってしまうって知ったらクーデターに参加していたと言えると思う
「あーその場しのぎになるだろうけど、今回は式までしのげれば良いのだし。とっても良い案があるよ」
「ほんと!」
「もちろん、ボクは嘘なんてつかないよ」
・・・。
「失礼だね、キミ達」
「日頃の行いだよね」
「うん、あとそう言う思わせぶりなところのせいだよね」
「ま、いいさ。そうだね、もう一つ噂を流すと良い。あくまで学院を去るのは一時的であり、休養の後に復職するらしい。とね」
「ん~でも、信じてくれるかな?」
「ご主人様が入院していたのは周知のはずなのだろう? だったら、その療養と新婚旅行を兼ねて長い休暇に入るだけと言えばいい」
そっか
あとは先生達に少しだけ協力してもらえば完璧だね
「ありがと! ウル、やってみるよ」
「いやいや、もとはボクのせいだからね。これくらいは当然だよ・・・あ、ついでと言ってはなんだけどキミ達のデータを軽く取らせてもらってもいいかい? 特にリオ君は古武術の使い手なんだろう? ああ、別に変な検査じゃないから安心してくれて良いよ」
「どうする、リオ?」
「んーあたしはやっても良いと思う」
「うん、じゃあ良いよ」
「ありがとう! さっそく部屋を移動しようか。なに、寝てるだけで済むから楽なはずだよ」
検査後にいちおうリオが壊した機材の事を聞いたんだけど、検査を受けてくれたのでウルとしては得になったと嬉しそうに笑っていた