先日同様、映画の人物紹介のインタビューの為にボクは駆り出されていた
これでも結構忙しい身の上なんだけど、拒否するとボクにとって不利益でしか無い事が起こってしまうからね。従った方がまだマシだと判断しているのだよ
そして、今日はご主人様の妻。時空管理局執務官のキャロ・ル・ルシエ君へインタビューをする事になっている。同じ管理局勤めでいまは比較的時間があいているらしいから調整が簡単だったのが唯一の救いとでも想っておこう
◇◇◇◇◇◇
「そう言う訳で、各方面。主に雨水家の皆々を回っているのだよ」
「へぇ、ウルも大変だねぇ」
執務官室に通されたボクは事前にした説明を改めて行う。キャロ君はご主人様と違って普通にこう言う場が仕事で多いので、随分と慣れている印象を受けるね
「そう思ってくれるのならキミの娘をもう少し大人しくさせてくれないかな?」
「あー、あの二人は基本秋春の言う事しか聞かないから」
「そうなのかい?」
ボクの見た感じではキャロ君の言葉も割と素直に聞いていると思うのだけど・・・
「お手伝いとかお買い物とか。そう言う子供っぽい事なら聞いてくれるんだけど、その路線から外れると途端にね。それに、あの二人の隠し事を暴くのは大変なんだよ。ポンポンみつけてる秋春が変」
「なるほど、確かにヴィヴィオ君が本気で隠し事をしたら並じゃあ見つからないだろう」
諦めるしかないね。ご主人様に直接言うのもありだけど、チクッたのがボクだとヴィヴィオ君にバレると後が怖いからね
「では、インタビューに戻ろう」
「そうだね。ルネ、飲み物おねがい」
「はい」
「キャロ・ル・ルシエ。結婚後は雨水キャロで登録してるらしいけど、いまはどっちで名乗ってるんだい?」
「仕事ではルシエだね。プライベートとか、海鳴では主に雨水姓だよ」」
「じゃあここではルシエにしようか」
キャロ・ル・ルシエ
新暦六十五年、第六管理世界アルザス地方の少数民族ル・ルシエに生まれる。いま現在エースとして輝く竜使役の才能は生まれながらで、土地を守護する竜が誕生を祝福したと記録されている
しかし、強い力は災いを呼ぶ。少数民族であるルシエは内部崩壊を恐れて新暦七十一年にキャロ君を村から追放したらしい
なんと面白い偶然なのは、そこでご主人様と出合った事だろう
「ふむふむ、ボクとしてはキミほどの才能を手放すなんて、それこそ災いの種だと思うけどね。キミが村を恨んで復讐に戻ったらどうするつもりだったんだろうね」
「どうだろうね? 確かに才能はあったけど、秋春に出会わなかったら、才能があっただけの子供だから・・・どうだろうね、森で死んでた可能性もあったのかな?」
「・・・この話は止めよう」
「そうだね」
主にキャロ君の副官が怖い顔でボクを睨んでるからね
あれ? そう言えば彼女は可愛い子が好きな人間では無かったのだろうか。ボクはこれでも見た目は良い方なんだけどな
「テスタロッサ提督に出合ったのも、その頃だったのかい?」
「秋春と逢って一年は無かったね」
「で、彼女の養子になったと」
「そうそう、訓練施設で話しかけられてね。秋春ったらフェイトさんの事を最初はテロ集団か何かだと思ったんだよ?」
「ハハッ、それは不思議な回答だね」
「でしょ?」
ま、キャロ君の能力が向いているかと問われれば向いている気もするけど・・・使役している竜を総動員した広域殲滅作戦は非常に見ごたえがあるからね
「ふむ、せっかくだから副官の紹介もしておこうか」
「ルネ? ルネぇー貴方にも質問だって」
「はい。私に答えられる範囲であれば」
「では、簡単なところから」
「ルネッサ・マグナスです。キャロ・ル・ルシエ執務官の補佐官として数年前より働かせていただいています」
それと可愛いモノ好き。あと真面目に解説するならば、戦闘局員に珍しい質量兵器を使用している事だろう。何でも、ご主人様ほど使えない訳では無いけど、一般的と比べると魔法適正が低いらしい。
変な拘りを持たずに兵器にあっさり頼るところは好感が持てるのだけどね
キャロ君の執務官補になる前の経歴は少々灰色のようだけど、ボクなんて黒いくらいだからね。それはこの際とりあげる必要は無いさ
「キミから見た上司を聞かせてもらいたいね」
「執務官は可愛い方です」
「ルネッ?!」
「出会った頃からそうですが、一人の女性と言えるようになった今でも、その可愛さは依然として失う事なく保っていられる稀有な方ですね」
「ボクとしてはキミの趣向を聞いた覚えは無かったのだけど・・・ま、これも個性か」
面倒だからキャロ君がルネッサ君を採用した際に管理局に提出された資料をそのまま載せておこう
「あまり戦闘能力の高くないキミがバリバリの前線執務官について行くのは大変ではないのかい?」
「私の仕事は執務官が全力を出せるように取り計らうのが主ですから。非才ではありますが、重宝して頂いていると言う自信はあるつもりです」
「なるほど、確かに彼女の力は制限解除が面倒だからね」
能力的に市街地での戦闘なんて簡単には許可が降りなくて大変だろうね。そう言う意味では、事務能力があれば彼女の補佐官としては十分に使える人材なのだろう
「では、そうだね。彼女の娘達とは仲の良い関係を築けているかい? 正式に契りを結んだ事で交友も深まっていることだろう?」
「そうですね。確かに以前より話す機会は増えました」
「うんうん、仲が良いのは良い事だね。ボクは、まぁ、あまりよくないので仲良くなる秘訣を聞きたいくらいだよ」
「性格とか悪いですし、私のアドバイスで改善はできませんよ」
「ん? おや? やっぱりボクの印象が悪いようだ」
とっても不思議だよ
「ウル。もしかして、この前の事件を完全に無かった事にしてない?」
「事件?」
「たぶんJS事件後の中では最大の事件だったよ? 動員された魔導師の数やランクは最大だったからね。聖王モードのヴィヴィオやなのはさんとフェイトさんのコンビが子供扱いされてたし」
「あ、あー、彼女の事ね。いや、でもあれはボクは被害者だと思うよ。折角完成が見えた移植ベルカの子だったのに、キミ達は総動員で封印して没収だからね。おかげでご主人様のロストロギアが無駄になったよ」
ご主人様のロストロギアを埋め込み、そして暗殺された異端児として記述に残っていた子の記憶を使った。素体もコツコツと調整を重ねて馴染みやすい思考や肉体に変えたおかげで十分な手応えを得る事が出来た
そして出来た最高傑作は戦乱ベルカにおいて、危険視される程の才能に、ご主人様の指導力をそのまま自分に向けれる力。ちょっと性格に難があったけど強者の性格が破綻しているのは世の中の常だからね
「あのねー」
「お優しい管理局が、まさか封印処理するとは思ってなかったけど。まぁ誤算はそこだね。反省反省、ハッハッハッ!」
今日はボクへの詰問ではなく、彼女達へのインタビューだったはずなのだがね
「話を戻そう」
「・・・今度、別に時間をもらうからね」
「いずれね」
「ウル博士。申しわけありませんが、時間ですのでここまでです」
ん、意外と早いね。まだまだ聞きたい事もあったのだけど、時間がきたのなら仕方ないね
「次は誰のところ?」
「シロ君とアギト君だよ。あ、そうだ。元六課の隊長達と連絡が取りたいんだけど、キミの言う事件の後から避けられていてね。代わりに話を通してもらえないかい?」
「はぁ、ルネお願いできる?」
「フェイト提督のお時間は頂けると思いますが、高町教導官や八神司令は少しかかると思われます」
「だって」
「それでいいよ。急ぎではあるけど、焦るような程でもないからね」
頑張ってと励ましてくれるキャロ君にお礼を言って執務官室を後にした