那智・再び山中に篭って数日が経った
生き残ったわしらに襲いかかったんはアメ公じゃのうて飢えとマラリアじゃった
日本兵「あぁ…あぁ……あぁ」
日本兵「水ぅ…」
軍医少尉「…水だ飲めるか?」
日本兵「ありがとうございます…」
那智「……今日も……暑いのぅ…」
Vooo……
古鷹「…?……隠れろ!」
藤原「敵機来襲!」
…
Vooo!!
日本兵達「…!!」
古鷹「…なんじゃ 観測機じゃ」
古鷹達の上空を米軍のグラスホッパー観測機が通過して行った
大宮「最近、多いのぅ…」
雨野「…ワ…ワシらをを探してるんじゃ………」
那智「…グラマンよりマシじゃ」
古鷹「ほいじゃが大丈夫かのぅ……あのカトンボが来よったら 砲撃が来るけぇ…」
藤原「古鷹軍曹 直ぐに移動できるように」
古鷹「…はっ!曹長殿」
数分後 遠くの方で砲撃音が聞こえた
BOON…BOON…
藤原「俺たちじゃ無いか……ん?」
日本兵「曹長殿!」
藤原「…食糧は?」
日本兵「……申し訳ございません!」
藤原「…わかった…」
大宮「……カタツムリて食えるかのぅ」
伊勢「さぁ……」
大宮「……ありこは?」
伊勢「…大宮…手ぬぐいしゃぶっとれ」
大宮「…もう、手ぬぐいは嫌じゃ……」
伊勢「……大宮?…おい」
大宮は自分の人差し指を見つめてた
すると突然、人差し指に噛み付いた
伊勢「おい! 大宮!」
大宮「肉じゃ!肉じゃ!」
伊勢「やめろ!大宮!大宮落ち着け!!」
古鷹「どうしたんじゃ?!」
伊勢「大宮が自分の指を…! 」
古鷹「大宮! おい!やめろ!」
大宮「離せぇ!離せぇ!食わせろ!」
那智「大宮!大宮落ち着け!!」
大宮「あぁ!食わせろ!食わせろ!!あぁ!!」
軍医少尉「おい! 軍曹!そっち持て!」
大宮「ああああぁ…!!」
大宮は自分の人差し指を食いちぎった
那智「…あぁ!」
大宮「…肉じゃ……肉じゃ…あぁ…」
大宮は自分の人差し指を食べた
バキッ ゴキッ……ゴリ…
軍曹少尉「鎮痛剤を打とう…」
三島「大宮伍長殿が……狂ってしもうた…」
古鷹「止血……止血せんと
大宮 血を止めよう……な?」
藤原「……」
日本兵「曹長殿 どちらに?」
藤原「…食糧を探してくる」
兵長「あの伍長殿」
那智「ん?」
兵長「この辺に居た兵士 知りませんか?」
那智「いや」
兵長「そうですか…平田の奴……まだ川に居るのか 見に行くか」
那智「…わしも行く」
古鷹「おっ 那智 アメ公が居るかもしれん銃持っていけ」
川に来ると平田一等兵が水面に顔を沈め倒れてた
兵長「平田ぁ!平田!」
那智「しっかりせんか!」
平田一等兵は既に息はなかった
兵長「……平田…」
那智「撃たれた跡が無いから……気を失って死んだんじゃな…兵長 運んで墓作ってやろう」
BAN !
突然 背後から銃声が聞こえた
那智「?!……えっ」
兵長「アメ公!」
兵長は三八式歩兵銃を構えた
那智「…待てぇ!」
撃って来たのは毛むくじゃらの日本兵だった
兵長「えっ?!」
那智「おい!味方だ! 日本人だ!撃つな!」
BAN! BAN!
毛むくじゃらの日本兵は更に撃ってきた
那智「…っ!…逃げるぞ!」
兵長「なんで味方が撃ってくるだ?!」
那智「知るかぁ……!…」
那智が振り向くと 毛むくじゃらの日本兵は平田一等兵の遺体を担いで草むらに隠れた
兵長「平田!……何をするんだアイツ」
那智達は木陰に隠れしばらく見てみると
毛むくじゃらの日本兵は平田一等兵を裸にし食いつき食べ始めた
那智「…?!」
兵長「…平田…あぁ…」
那智「食っとる…」
その日本兵の姿は人間では無く獣そのものだった
とても人間だったとは信じられなかった
微かに「美味い……美味い…美味い…美味い猿だ…」と聞こえた
那智「…へ……へ…兵長…行こう」
兵長「は…はい」
野営地に戻ると入り口に裸の日本兵が立ってた
那智「……?」
裸の日本兵は那智達に敬礼した
那智達は思わず返礼をする
兵長「…?」
裸の日本兵「私は山原大佐である!」
那智「……大佐…?」
軍医少尉「山原!」
裸の日本兵「なんだ 少尉」
軍医少尉「寝てなきゃダメだろ! ほら、服着ろ!」
裸の日本兵「私は陸軍大佐だぞ!」
軍医少尉「お前は上等兵だろ!ほら、来い」
裸の日本兵「…はい」
軍医少尉「……山原はマラリアで気がおかしくなってしまったんだ」
那智「……みんな狂っとる……狂っとる」
古鷹「 伊勢 大宮を頼む わし小便行ってくる」
伊勢「はい」
火宮「あっ自分も行きます」
古鷹「ふぅ…のぅ、火宮水ばっかり飲んどるから小便がようけ出るのぅw」
火宮「ほうですねw」
古鷹「はぁ…スッキリしたのぅ……あっ!」
古鷹は足を滑らせ 坂下へ転がり落ちた
火宮「古鷹軍曹殿!」
古鷹「…痛…痛た…」
火宮「大丈夫でありますか?!」
古鷹「…あぁ 大丈夫じゃ……ん?…軍隊手帳じゃ…汚れて誰のかわからんのぅ」
火宮「古鷹軍曹殿…洞窟です」
古鷹「…味方が居るんか?……火宮木の棒探せ」
火宮「…え?……はい」
古鷹は木の棒にマッチで火を付け 洞窟の中に入った
火宮「あっ軍曹殿!」
しばらく進むと異様な臭いが漂ってきた
古鷹「……うっ…… ……!!」
火宮「…軍曹殿?」
古鷹「……」
地面にはミイラ化した何体の日本兵らしき人が転がっており 腕 足 尻が食われた跡があった
火宮「……これは」
古鷹「……共喰いしたんじゃな…」
火宮「…共喰い……うっ…!
……オエッ…オェェェ………はぁ…あぁ!」
古鷹「火宮?」
火宮「あぁ……!」
火宮の目の前に 虫に食われミイラになりかけの日本兵の遺体があった
古鷹「……」
奥には白骨化した日本兵の遺体が何体かあった
火宮「あぁ……あぁ…あぁ!」
古鷹「…ん?…あっ……」
奥の方にボロボロの軍旗の前に白骨化した将校が居た
古鷹「……中尉殿か……ん?」
将校の手の傍には着物の女性と写る生前の将校の姿があった
裏を見ると「とよこ あいたい」 と書かれてた
古鷹「……火宮…行こう……南無…」
火宮「はぁ…はぃ…」
古鷹「……はぁ……」
火宮「軍曹殿…じ…自分達もいつかああなってしまうんでしょうか……?」
古鷹「……わからん」
火宮「…」
古鷹「……あん時……死ねばえかったかのぅ……伊藤達と一緒に……」
火宮「…軍曹殿」
古鷹「わしらは……いつまで人で居られるかのぅ……」
火宮「自分は!……ああなりたくなりません…」
古鷹「……ほうじゃな」
米兵「敵襲!」
BARRRRRRRRR!!
米兵「…伏せろ!」
Zip! Zip!
藤原「…っ!」
BAN!……BAN!
藤原「福井!アメ公の使え!」
日本兵「…はい!」
福井は米軍のブローニングM1918A2自動小銃を手に取り腰だめで乱射した
BABABABA!!
米兵「…サノバビッチ!!」
米兵「機関銃を奪いやがった!」
藤原「喰らえぇ! 」
Pin ガッツ!
米兵「グレネード!!」
米兵「…on sit!!」
BOGAN!!
米兵「ギャッ!」
米兵「……退却!退却しろ!」
BOGAN!!
米兵「…ディック!……クソ!覚えてろよ…!!」
米兵達は退却した
日本兵「…はぁ……はぁ…曹長殿無事ですか?」
藤原「…あぁ…」
米兵「……っ…」
米兵「……あぁ…」
PAN!PAN!
日本兵「…?!」
藤原「…息がある者は始末しろ 生かしても苦しめるだけだ」
日本兵「はい……」
藤原「…それより食いモンを探せ!」
日本兵「はっ!」
藤原達は米兵の物色を始める
藤原「缶詰かなんか……」
日本兵「食いもん食いもん…水筒……っはぁ……」
ゴクゴク……
藤原「…クソ! なんもない…おい!アメ公 食い物は?!」
米兵「……ママ…」
藤原「…っ!……んっ」
藤原は手榴弾で吹き飛ばされ焼き爛れた1人の米兵に注目した
彼からは焦げた肉の匂いがした
藤原は目の色を変え駆け寄った
藤原「………」
日本兵「曹長殿…?」
藤原「……コイツにしよう」
日本兵「……え?」
野営地
大宮「……ん……あっ」
雨野「あっ大宮伍長殿!」
伊勢「気づいたか!大宮」
大宮「………わしはなにを……えっ?
なんでわしの中指が無いんじゃ?!」
雨野 伊勢「……」
伊勢「……覚えとらんのか」
大宮「え?え?」
伊勢「…自分で……食ったんじゃよ」
大宮「……へ?…食った……自分で………わしが?!………うっ!……オェェェェェ…」
伊勢は大宮の背中をさすった
大宮「……はぁ…はぁ……あっ……ホンマに…指が…」
伊勢「…言わんでいい 雨野 水じゃ」
雨野「はい……大宮伍長殿」
大宮「…はぁ……ありがとう
戻れんのか わしの中指が」
伊勢「……そがいに…バラバラなら無理じゃろうな」
大宮「……はぁ……伊勢は何をしとるんじゃ」
伊勢「鳥の写生じゃ…」
大宮「あぁ……ん?……鳥かこれ?
」
伊勢「…やかましい…絵は苦手なんじゃ/////」
大宮「…わしに貸してみぃ」
伊勢「描けるのか?」
大宮「ふふっ まぁな……人差し指食わんでえかったわ…うーんと…」
伊勢「……おっ…上手いな」
大宮「…まぁな」
古鷹「おっ絵か?」
大宮「……あっ軍曹殿!」
古鷹「そのままでええ……上手いのぅ」
大宮「ありがとうございます」
火宮「上手い……」
古鷹「ほうじゃ わし描いてくれんか?
終わったらでええ」
大宮「はい!」
古鷹「おっありがとう…わしは寝る
終わったら教えてくれ …腹が減ってる時は何もせんのが1番じゃ アメ公も来んしな…っと」
古鷹は防暑衣の胸ポケットから軍隊手帳を取り出し間に挟んであった写真を眺めた
火宮「……」
古鷹「……ん?気になるか?」
火宮「あっ…はい…」
古鷹「家族写真じゃ 」
火宮「…ありがとうございます……奥さんお綺麗ですね お子さん達も愛らしいですね」
古鷹「じゃろ 自慢の嫁と子供達じゃ
嫁は須磨子 子供は一成と紗子じゃ
双子じゃぞ~」
火宮「双子ですか 珍しいですね!」
古鷹「ほうじゃ……また、アイツらに会いたいのぅ……須磨子…一成…紗子…」
1944年(昭和19年) 4月 廣島
須磨子「一成 準備出来た?」
一成「母ちゃん わしの学帽どこじゃ?」
須磨子「えっ どこに置いたんよ」
紗子「うちは準備できたよ」
須磨子「紗子 それ、スカート逆よ 」
紗子「えっ?!」
古鷹「賑やかじゃのぅ 何をしとるんじゃ?」
一成「学帽あったぁ!」
紗子「お母ちゃん 直したよ」
須磨子「ほいじゃ2人とも お父ちゃんに見せてきんさい」
古鷹「……ん?」
一成と妙子は古鷹の元にやって来た
紗子「えへへ〜見て〜!新(さら)のセーラー服!」
古鷹「……おぉ、紗子よう似合っとるぞ」
一成「ワシもワシも!新品の制服じゃ!」
古鷹「カッコエエの〜ほうか2人共もう、女學生と中學生か…」
須磨子「ほうよ お父ちゃん」
須磨子「このご時世、新(さら)の制服は滅多に手に入らんけえねえ…二人とも、お父ちゃんに感謝しんさい」
紗子「お父ちゃんありがとう!」
一成「ありがとう!」
古鷹「ええんじゃ!2人ともよう似合っとるぞ……出来れば父ちゃん式に出たいんじゃがのう…」
一成「分かっとるよ 父ちゃん軍人さんじゃけぇ」
紗子「ほうよ ほいじゃけぇ大丈夫よ」
古鷹「すまんのぅ……須磨子、わしの代わりにしっかり見て来てくれ
まぁ、わしも休めるか聞いてみるわ」
須磨子「任せて お父ちゃん……休めるとええね」
古鷹「ほうじゃ!皆で写真撮ろう!
ほうじゃのぅ……玄関でどうじゃ」
須磨子「ええね !あっほいじゃったら玄関じゃなくて小野さんの所で写真撮った方がええんじゃない?」
古鷹「ええ たまにはわしのライカで撮りたいんじゃ」
須磨子「ほうね…あっ写真機(カメラ)どこじゃったかね」
古鷹「わしの部屋の机の中じゃったはずじゃが……
お前ら先行っとれ
わしも軍衣に着替えるか」
一成・紗子「はーい」
玄関前
古鷹「ほいじゃあ撮るぞ、目、瞑ったらいけんぞ!」
紗子「分かっとるよ〜」
古鷹「撮るぞ……」
カシャ
古鷹「もう1枚目」
カシャ
須磨子「大丈夫?」
古鷹「……あぁ」
一成「次は父ちゃんと撮りたい!」
紗子「お父ちゃん!」
古鷹「ええぞ!」
須磨子「はい、撮るよ」
カシャ
須磨子「うまく撮れたかね?」
古鷹「ありがとう 須磨子」
須磨子「上手う撮れとらんかっらごめんね
」
古鷹「のう…須磨子
わしはあと、どのくらい2人と一緒に居られるかのぅ……」
須磨子「……」
古鷹「また、こうやって須磨子や紗子や一成と写真が撮られるといいのぅ…
須磨子…もし、わしが帰って来れんかったら……そん時は2人を頼む…」
須磨子「お父ちゃん…」
古鷹「わしの分まで2人を頼むな……」
須磨子「馬鹿!お父ちゃんなら死んでも2人の元に帰って来んさい!!」
古鷹「す…須磨子…」
須磨子「帰って来んかったら どこじゃって2人を連れて探しに行くけえね!」
古鷹「エラい嫁さんを貰うてしもうたのぅw……須磨子…分かった…意地でも帰って来るけえ」
須磨子「絶対よ!……3人だけにせんよね…」
古鷹「……須磨子」
古鷹「それがそん時の写真じゃ」
火宮「ええ 嫁さんですね……」
古鷹「のう、火宮には嫁さんは居るんか?」
火宮「いえ、居りません」
古鷹「ほうか…帰還できたら、ええ嫁さんを見つけるんじゃぞ」
火宮「…………はい…」
火宮「…あ、妹なら居るんですよ!」
古鷹「ほう、妹か」
火宮「勝美いうて、東京の國民學校で教師をしとるんです。今は廣島に帰省しとるはずです。勝美は…ワシの誇りなんです…」
古鷹「ほうか…家族を大事にせえよ」
火宮「はい!」
那智「エラいもんを見てしもうた…」
兵長「ですね……ん?」
後ろから曹長達が戻ってきた
肩には体格がそこそこいい米兵を担いで
那智「…?」
兵長「…アメ公」
藤原「炊事兵」
炊事兵「?」
藤原「コイツを頼む」
ドサッ
炊事兵「…?!」
藤原「…皆に料理してやってくれ」
炊事兵「……えっ…あっ……え」
藤原「久々の肉だ…」
古鷹「おっ 那智戻ったか どこ…ん 顔が青ざめてるぞ どうしたんじゃ?」
那智「あっ……いえ」
大宮「…よし、描けた」
火宮「おぉ…うまいですなァ!」
大宮「ほうか?久しぶりに描いたけえのう…」
古鷹「大宮 わしを男前に描いてくれよ」
大宮「はい」
火宮「……!」スンスン
古鷹「火宮?」
火宮「ええ匂いが…」
古鷹「……ん…?」スンスン
那智「炊事場の方からですね」
大宮「味噌汁の匂いじゃ…」
しばらくすると藤原曹長が兵士達を呼び
肉汁は残存兵士達に振る舞われた
炊事場
日本兵「温かい食いモンなんて久しぶりだな」
日本兵「肉汁らしいぞ」
日本兵「肉汁?!」
火宮「肉なんてどこから……」
大宮「んな事はどうでもええ!食われれば!」
那智「肉…うっ!」
伊勢「…大丈夫か?」
三島「雨野これ食って元気出せ」
雨野「うん……」
日本兵「早くくれ!」
炊事兵「まだ、あるから心配するな 次」
古鷹「肉なんて大層なものどこから手に入れてきたんじゃ?」
炊事兵「…藤原曹長殿が調達をしてきたみたいです」
古鷹「ほぅ…曹長殿が」
大宮「肉じゃ 肉じゃ!」
伊勢「大宮 気持ちは分かるが落ち着け
喉詰まらすぞ」
火宮「…おぉ……肉じゃ…ホンマに」
古鷹「………ほいじゃ…食べるかのぅ」
古鷹達は肉汁を口に運ぶ
大宮「…ん?…ちぃと硬いのぅ……食えんことないが…」
火宮「牛?鶏みたいじゃのう…生臭いな」
三島「雨野ゆっくり噛めよ」
雨野「あぁ」
那智「………」
伊勢「……?那智?食べんのか?」
那智「ちぃと具合が…」
藤原「食ってるか お前ら」
古鷹「あっ曹長殿」
藤原「そのままでいい」
古鷹「はっ……ありがとうございます 曹長殿」
藤原「しっかり食えよ」
那智「…曹長殿…この肉は……なんの」
藤原は目の色が変わった
藤原「………なんの肉だと思う?」
那智「………」
藤原「那智が思ってる肉かもしれんな
だが、食うことが出来るならなんでも食え食って生きろ」
那智「……」
藤原「…それと食い終わったら
必ず ご馳走様て言えよ いいな」
一同「はい」
伊勢「…那智?………まさかこの肉…」
雨野「……うっ!…オェェェェェ」
三島「雨野?!」
雨野「うっ……はぁはぁ…ご…伍長殿…まさか…」
古鷹「……気持ちは……分かるが食べよ…食べて生き抜くんじゃ……生き抜くんじゃ…わしは食べる!食べれる事に感謝じゃ!」
火宮「……わしも!」
8月に近づくにつれ
米軍は山中に籠る日本軍に対して徹底した掃討を展開するようになった。
穴蔵に砲撃 手榴弾 火炎放射攻撃や穴蔵を埋め日本兵を生き埋めや閉じ込めた
また、空からも米陸軍航空軍が戦闘機の増槽(燃料タンク)にナパームを入れ空中投下
ジャングルに潜伏する日本兵を焼き殺した。
Vooo…!!
藤原「ん?……!」
上空に米軍の双発戦闘機P-38 3機が来襲した
古鷹「敵機じゃ!」
Vooo……!!!!
P-38は藤原達に向かって ナパーム弾を投下して行った
Huuuuuu!!
那智「伏せろ!!」
火宮「ひぃっ!」
BOOOO…!!!!!!
日本兵「……ぎゃぁぁァァァ!!!」
ナパーム弾は他の日本兵達の近くに落ち広範囲に大炎上を起こし焼き殺した
日本兵「熱いぃぃぃぃ!!あぁ!!あぁ!!」
伊勢「あぁ!!…大久保!!」
那智「ただの爆弾じゃないぞ!」
Vooo…!!
藤原「敵機とは逆の方向に逃げろ!!」
Huuuuuu!!
BOOOON!!!
藤原「うわぁっ!!」
古鷹「曹長殿!!」
Huuuuuu!!
BOOOON!!!!!!
金木陸軍上等兵「こっちです!!!」
大宮「あぁ?!」
西村陸軍軍曹「こっちだ!!早く!!」
古鷹達は言われるまま呼ばれる方に走り斜面に身を隠した
Vooo……!!
那智「はぁはぁ…はぁはぁ!」
古鷹「お前ら全員無事か?!」
一同「はい!」
大宮「アメ公のヤツら…なんちゅぅ爆弾使いよるんじゃ…」
火宮「はぁ…あぁ…ひぃっ……ひぃっ」
大宮「火宮しっかりするんじゃ」
金木「行ったようですね…」
三島「…助かりました」
西村「軍曹 ……怪我ありませんか?」
古鷹「…あぁ…助かったよ 軍曹は大丈夫か?」
西村「はい…あっ自分は西村です」
西村達はボロボロの濃緑の防暑略衣を着ていた
古鷹「ほぅ……ふぅ…ありがとう西村軍曹 わしは古鷹じゃ」
三島「…ん?裸足?」
金木「あっ自分たち 高砂族です」
雨野「高砂族……?」
古鷹「台湾の原住民じゃ」
三島「はぇ…台湾」
金木「はい、あっ自分は朝鮮人ですが
西村軍曹は高砂族です」
西村「どうも 」
古鷹「…あっ!藤原曹長殿!」
坂を上がると辺り一面は草木が燃え
傍には誰か分からない日本兵の焼死体数名のが転がっていた
古鷹「……惨いのぅ…」
那智「炭化しとる……」
火宮「はぁ……あぁ…あぁ!」
大宮「火宮 大丈夫じゃ アメ公は去った
大丈夫じゃ」
那智「(…火宮)」
火宮「…はぁ…っ…」
大宮「火宮?」
火宮は燃え盛る軍医少尉の前で立ち止まった
火宮「軍医少尉殿………」
火宮はしゃがみ辛うじて残ってる軍医鞄を外し自分の肩に掛けた
火宮「……」
高砂族日本兵・八木陸軍伍長「軍曹殿!」
西村「八木?」
八木「アメ公ですら!」
西村「…!……数は?…早速来たか」
八木「小隊程度です!」
西村「最近はアメ公だらけだな…行くぞ」
古鷹「わしも行きます」
西村「古鷹軍曹……」
古鷹「助けて貰った恩返しですわ」
西村「ありがとうございます」
伊勢「しかし、軍曹殿弾薬が…」
西村「弾薬ならありますよ」
野営地
古鷹「おぉ…こんなに……おっこれは短機関銃?! 」
西村「自分たちは※薫空挺隊で その為 短機関銃を装備してました もっぱら自分たちはこっち(潘刀)を使いますけどね
」
日本・朝鮮・台湾から成る空挺隊
レイテ島ドラッグ・ブラウエン敵飛行場襲撃し全滅する
古鷹「空挺じゃったのか……精鋭じゃのぅ」
西村「でも…自分たちを除いてほぼ全滅しました…
なんとかレイテからルソンへ逃れてきました…
あっそうだ アメ公の武器もありますよ
これとか」
古鷹「おっ M1半自動小銃じゃなあの
わしはこれじゃな…」
西村「弾もありますよ どうぞ」
古鷹「ありがとうな」
西村「軽機や重機はありませんが」
那智「わしは…短機関銃にしよ」
伊勢「使った事あるんか?」
那智「あぁ 昔、マレーで伝令中隊に居った時に使ってたわ」
三島「わしも短機関銃にしようかのぅ」
八木「操作を教えますね」
大宮「騎兵銃まである……あっ擲弾筒も」
火宮「わしは三八式でええ」
雨野「これならアメ公倒せるのぅ」
古鷹「よし……お前ら行くぞ!」
米兵「なぁ…C中隊のダチから聞いた話なんだけど…トンプソンを持ったジャップソルジャーがいるらしい…」
米兵「トンプソン持ったぐらいでなんだよ 」
米兵「ソイツはスコーピオン(サソリ)て呼ばれて
何人の仲間がそいつに殺られてる…」
米兵「強いあだ名だな ジャップには勿体ない」
米兵「スコーピオンは戦闘に長けてるジャップだ…」
米兵「フッ…スコーピオンがなんだ 俺がぶっ殺…」
BARRRRRRRRR!!Zip!Zip!
古鷹「真ん中を狙えぇ!」
一同「はい!」
米兵「ジャップ!!」
米兵(少尉)「ッ!」
米兵「隊長がやられたァ!」
古鷹「指揮官を潰した…!撃ちまくれ!!」
PAPAPAPAPAP!!
BAN!
米兵「トンプソン?!…スコーピオンだ!」
その場から逃げ出す米兵を 西村軍曹達が襲い掛かる
潘刀で米兵の喉元を切り裂いた
米兵「……ッ!?」
PAPAPAPAPAP!!
BAN!BAN!
古鷹「伊勢!手榴弾じゃ!」
伊勢「はい!」
pin!Gtu!……
米兵「グレネー…」
BOGAN!!
米兵「ぎゃぁぁ!!」
伊勢「もう1つおまけじゃ!」
…BOGAN!!
米兵「…退却!退却!」
米兵達数人は 退却した
古鷹「…撃ち方止め!」
那智「た…短機関銃は凄いのぅ
挺進隊(空挺隊)になれば良かったかのぅw」
古鷹「ジャングル戦には短機関銃が似合うんじゃ 正直、三八式より役に立つぞ」
大宮「ん?…雨野」
雨野「アメ公も皆若いですね……」
大宮「10代ぐらいか?」
西村「あの!古鷹軍曹 何故、指揮官てわかったのですか?」
古鷹「…指揮官だと武装が軽装なんじゃ
それに胸元とかに拳銃嚢を付けてたりしとるんじゃ
あと、奴さんの鉄帽の後ろに白線がある 縦線じゃと士官らしいんじゃ 下士官は横」
西村「な…なるほど…!敵さんの事熟知してるですね……」
古鷹「亡き曹長殿の教えじゃ…
にしても…アメ公の奴ら こがいな所まで…そろそろケリをつける気じゃな…」
西村「…そうですね 最近、敵斥候隊(偵察隊)の活動が活発化してます……ん?!」
古鷹「?」
西村「誰か来ます!」
八木「誰だ?!」
藤原「味方だ 安心しろ」
古鷹「……藤原曹長殿!」
藤原「……古鷹! 貴様無事だったか!!」
古鷹「曹長殿も無事でなによりです!」
藤原「あぁ、なんとかな」
古鷹「自分たちはこちらの西村軍曹のおかげで助かりました」
西村「西村です!」
藤原「部下を助けていただきありがとうございます」
日本兵「…裸足?」
大宮「高坂族じゃ」
那智「高砂族な」
大宮「アッ」
火宮「ふっw」
藤原は防暑略衣の胸ポケットから
地図を出した
藤原「……っと……古鷹 この先に何キロか進んだところに深い森がある そこまで進もう」
古鷹「はっ!」
藤原「西村軍曹 貴様、原隊は?」
西村「全滅しました」
藤原「よぉし、俺に付いてこい」
西村「はっ!」
八木「軍曹殿 装備類は?」
西村「手分けしてできる限り運び出せ」
八木「はっ!」
那智「ん?! 誰か来る!」
古鷹「アメ公か?!」
現れたのは米兵数名と武装した民間人らしき数名だった
西村「あれは…」
古鷹「…便衣兵か?」
便衣兵・私服を着て民間人に装った軍人
支那戦線は中國 國民党軍の便衣兵が多く日本軍を困らせた
西村「比律賓人のゲリラです」
古鷹「ゲリラ?」
西村「抵抗組織の民兵です」
ルソン島の戦いにおける日本軍の敵は米軍だけではなくフィリピン人のゲリラもそうだった。
日本占領期にはあらゆるフィリピン人ゲリラが日本軍に抵抗した。
古鷹「民兵…バレないうちに隠れるぞ!」
米兵「……!ジャップ!!」
PAPAPAPAPAP!!
BAN!BAN!
火宮「ひっ!見つかった! 」
古鷹「早う!隠れるんじゃ!」
BARRRRRRRRR!!
金木「クソ!」
藤原「おい!ゲリラは撃つな!民間人だ!」
金木「しかし……」
古鷹「ええから来い!金木!」
BAN!BAN!
Zip Zip Zip!
日本兵「…っあ!」
藤原「佐伯!」
BAN! BAN!
BARRRRRRRRR!!
金木「…あぁ!クソ!ゲリラの奴ら狙い撃ちしやがった!!」
藤原「…っ!…逃げるぞ!」
BAN!BAN!
米兵「挟み撃ちにしろ!」
ゲリラ「こっちだ!!日本兵を逃がすな」
伊勢「っ……!」
雨野「こっちからも?!」
火宮「挟み撃ちか」
PAPAPAPAPAP!!
西村「…クソ!曹長殿!」
藤原「……ゲリラを撃ちながら押し通れ!」
古鷹「……っ!」
BARRRRRRRRR!!
BAN!BAN!
ゲリラ「ギャッ!」
ゲリラ「撃ち返せ!」
西村「手榴弾を使います!」
pin!Gtu!
米兵「グレネード!」
BOGAN……!!
米兵とゲリラが吹き飛ぶ
BAN!BAN!
PAPAPAPAPAP!
雨野「……っあ!」
三島「雨野! おい 大丈夫か?!」
ゲリラ達が雨野達を狙い始めた
BANBAN!
PAPAPAPAPAP!!
PAPAPAPAPAP!!
ゲリラ「あぁ!」
那智「…っ!三島ぁ!早う連れてけ!」
三島「はぃ!雨野のしっかりするんじゃ!」
那智「……!伊勢!手榴弾!」
PAPAPAPAPAP!
BOGAN……!
藤原「はぁはぁ…なんとか逃げ切ったな」
古鷹「火宮 雨野の診てやれ」
火宮「はい………大丈夫だ 雨野
少し抉っただけじゃ…歩けるか?」
雨野「…はい…なんとか」
西村「アメ公ならまだしもゲリラが来るとは……参ったな……」
那智「ん?西村軍曹殿!大丈夫ですか?!」
西村「……え?…あっ」
西村は脇腹を負傷していた
那智は防暑略衣を破き 傷口を見た
那智「はぁ……かすり傷」
西村「…はぁ…流石、靖國神社の御守りじゃ…助かった」
西村は那智に御守りを見せた
那智「火宮!西村軍曹殿の手当を」
西村「自分は大丈夫です 雨野さんの方を」
古鷹「はぁ………っ……」
古鷹は頭は抱え深いため息をしていた
那智「軍曹殿…」
古鷹「あ?……あぁ大丈夫じゃ」
那智・軍曹殿はゲリラと言え民間人を撃た事を悩んでると思った。
翌日
Vooo…
日本兵「行ったか?」
藤原「クソ!アメ公のヤツらめ!」
西村「よく、毎日飛ばしますね…」
古鷹「これじゃ迂闊に歩けん……」
大宮「焼かれるのは嫌じゃ…」
雨野「カトンボめ…」
三島「装備が重いのぅ…」
火宮「泣き言いうな 帝國軍人じゃろ!」
那智「アメ公の野郎…わしら殺す為に躍起になっとるな……」
伊勢「あぁ…」
藤原「…よし…間隔を取り前進開始」
古鷹「はい!」
前進を再開ししばらくすると 日本兵2人と遭遇した
その中には近藤少尉の姿があった
近藤「ん?…古鷹軍曹じゃないか!」
古鷹「お久しぶりです!近藤少尉殿 ご無事でしたか!」
近藤「あぁ…なんとかな」
藤原「藤原曹長であります!」
西村「薫空挺部隊 西村軍曹であります!」
金木「同じく薫空挺部隊 金木上等兵であります!」
八木「同じく 八木伍長であります!」
近藤「貴様ら挺進か」
西村「はっ!原隊は全滅しましたが…」
近藤「そうか… 藤原曹長…兵士はこれだけか?」
藤原「はっ!そうであります」
近藤「そうか…俺の指揮下に入れ」
藤原「分かりました!……あれ?少尉殿
その略衣は?」
近藤が着ていたのは米軍の兵下士官用トロピカルシャツだった。
近藤「ああ、前着てた略衣がボロボロになってな アメリカのを拝借したんだ」
藤原「アメ公のですか!」
近藤「なかなかいいぞ」
古鷹「近藤少尉殿と伍長の方は2人ですか?」
藤原「いや、15人くらい居る」
古鷹「15人?!」
藤原「あぁ、野営地に案内しよう」
野営地
近藤「ここは森が深く岩陰が何ヶ所あるから 隠れ家には最適だ」
那智「確かに…これだけ深いと敵は分かりませんね……」
近藤「焼き払えば話は別だがな…」
堂島中尉「近藤 」
濃緑の防暑略衣を着 襟に陸軍中尉階級章を着けた陸軍中尉と
防暑略衣に 顔半分に包帯をし割れた眼鏡を掛け 左胸ポケット下に陸軍少佐の階級章と右肩に参謀飾緒を付けた陸軍少佐が歩いてきた
近藤「参謀殿 中尉殿」
藤原「…藤原曹長であります!」
古鷹「古鷹軍曹であります!」
西村「薫空挺部隊 西村軍曹であります!」
中川「中川です」
堂島「歩兵第31連隊 堂島だ よろしく」
那智「…まだ、こんとに兵士がおったんじゃのう」
伊勢「当たり前じゃ 我が軍は比島決戦
十一号作戦に総力を挙げ52万近くの兵士を動員したんじゃ」
那智「52万?!……」
伊勢「じゃが……ちりじりになってしもうたがのぅ」
古鷹「…で、敵はその倍じゃ」
那智「倍…流石…物量の国ですね…」
古鷹「じゃが、敵もそんだけの戦力を動員してくるいう事は…敵も早うケリをつけたいんじゃな」
那智「……もう、我々は8ヶ月近くも戦ってるんですね…」
古鷹「ほいじゃけぇ、敵も必死じゃ
わしらは命がある限りこの比島にアメ公を引き付け内地には絶対に行かせん!沖縄が落ち 内地が焼け野原になろうと多くの敵はここで食い止めるんじゃ」
那智・伊勢「はい、軍曹殿!」
古鷹「もうそろそろこの戦いも……終わるかのう…」
那智・わしは軍曹のその言葉を聞き
意地でも生き抜いてアメ公共を食い止めてやると決意した。
そして、その思いと一緒に生き抜いてすゞ子や靖男に会いたいと願った。
しかし……その願いは叶わんかった…。
ルソンの螢たち 後編へ