本編⬇
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那智・わしは那智清人 元帝國陸軍 第105師団の伍長じゃ
大東亜戦争最中 ルソン島で戦死した
はずじゃが……何故か何十年後の日本に霊体として蘇った
理由はわからんが…
わしの他に上官の古鷹陸軍軍曹殿と戦友の伊勢も蘇ってとる……謎じゃ
伊勢「何ぶつくさ言うとるんじゃ?」
那智「いや……なんでもない……」
伊勢「……」
伊勢は那智の方を見つめる
那智「ん?なんじゃ」
伊勢「首はなんともないか?」
那智「え?首?」
伊勢「……あっなんでもない」
那智「?……それにしても……ホンマにここは未来の日本なんか」
伊勢「ほうじゃ わしも信じられんが未来の日本で廣島じゃ」
那智「こんとに変わるんじゃな……みなマスクつけとるし。
わしらの時代の面影があまり残っとらんな 奨励館と相生橋ぐらいしか……わからん
川は変わらんが」
古鷹「マスクは今、世界中に流行っとるコロナ ちゅう風邪が原因じゃ……まぁ流行風邪(スペイン風邪)みたいなもんじゃのう。お前らは知らんか…廣島は壊滅したんじゃ
例の新型爆弾で綺麗さっぱり無なってしまったんじゃ」
那智「 ………」
古鷹「原爆やピカやピカドンとか言われとるらしい
確か正式名称が……原子爆弾……リトルボーイ じゃったな」
那智「…原子…爆弾?」
古鷹「詳しい事は近くにある資料館に行くとええ」
那智「資料館?」
古鷹「その原爆を昭和20年 8月6日 8時15分
米軍のB-29と言う大型爆撃機から投下したんじゃ
……廣島は一瞬にして壊滅したんじゃ
その何日後の8月15日 日本が降伏したんじゃ」
那智「……」
伊勢「…投下後は想像を絶する地獄絵図だったらしい」
那智「……っ」
那智は歩き始めた
古鷹「…那智?どこ行くんじゃ」
那智「……家(うち)が気になるんです」
伊勢「那智…行っても 家はないと思うぞ」
那智「わかっとる……ほいでも見たいんじゃ 確かめたいんじゃ」
伊勢「…那智」
那智達は家があった国泰寺町(旧雑魚場町)に向かった。
古鷹「ほうか、那智は雑魚場町じゃったか」
那智「はい」
古鷹「っちゅうことは…爆心地から近いんじゃのう。わしは宇品町じゃ……伊勢は?
伊勢「水主町です」
古鷹「ほうか……那智の住所じゃと…ここじゃな」
那智の家があった場所は月極駐車場になってた。
那智「……ちゅ…駐車場……ここなんか……ここに…家が……あったんか」
古鷹「………」
那智「…ホンマに……なんも残っとらんのですね……っ…すゞ子……靖男……うぅぅ…」
伊勢「…那智」
那智「軍曹殿……すゞ子や靖男がどうなったか知っとりますか?」
古鷹「……スマン わしにもわからん
じゃが……ここの記憶が残っとるかもしれん」
那智「記憶?」
古鷹「日本には古来から八百万の神が居る どんな物にも魂が宿るんじゃ…じゃけぇ
これにも魂が宿るんじゃ……地面に手を当て 魂を感じ取るんじゃ そうすると記憶が見られるかもしれん」
那智「……地面に手を……」
古鷹「ほいで念じるんじゃ
わしら霊にはそんとなことも出来んじゃよ」
那智「念じる………っ!」
那智が念じ始めると景色が一変し
時が遡り始めた。
那智「……っ……おぉ……」
古鷹「ところで、那智… あんまり思い詰めると悪霊化するで」
伊勢「遅いですよ…」
古鷹「…まぁ大丈夫じゃ、ワシはお札持っとる」
伊勢「なっ、なんでですか!?いうか、軍曹殿…ご自分の家には……」
古鷹「………だいぶ前に行ったわい。もちろん家はさっぱり無うなっとったわ。子孫も居らんけえのう…」
伊勢「ほうですか…」
那智「………っ……うぅぅ……」
1945年(昭和20年) 8月6日
那智「おっ……家じゃ……家じゃ…凄いのぅ…」
住民「…朝から警報驚いたわ」
住民「ほうね …ほいでもなんもなくてえかったわ」
住民「ホンマね〜にしても今日も暑いね」
那智「……ん…」
那智は玄関前で止った
するとすゞ子が戸を開け外に出てきた。
那智「すゞ子…!すゞ子!」
那智はすゞ子に駆け寄るが通り抜けた。
那智「………っ………すゞ子…」
すゞ子「ええ時間に空襲警報も解除されたし…っと、さて、建物疎開に行こうかね…」
※隣組の割り当てで、一人一軒家を壊すことになっていた。
那智「……こんとに傍に居るのに掴めないんじゃな…すゞ子……靖男……」
すゞ子「靖男〜、お母ちゃん建物疎開に行ってくるけえ、ちぃとお留守番しとってね」
靖男「うん………母ちゃん!」
那智「靖男!靖男!………ん?」
すゞ子「…なんね?」
Vooo……
靖男「…あれ!Bじゃ!」
すゞ子「…え?ありゃあ、ほんまじゃ…警報解除になっとらんかったんかねえ、おかしいねえ」
那智「……B…」
回想
…古鷹「米軍のB-29と言う大型爆撃機から投下したんじゃ
……廣島は一瞬にして壊滅したんじゃ
」
那智「…!! すゞ子 靖男逃げぇ…!」
カッ
8時15分、突如 上空に閃光と轟音が鳴り響く
那智「……わぁッ!」
那智は眩しい閃光の中目を見開く
那智「……!!」
建物は一瞬に吹き飛び
すゞ子達や周りの人達はガラス片等が突き刺ささり 皮膚は熱傷し垂れ下がり赤黒く変色し
見るのも無惨な姿に変わっていった
傍に居た婦人たちは数秒で黒焦げの塊に変わり果てた。
那智「な…なんじゃ………
すゞ子!!靖男……!あああぁぁぁぁぁ!!…やめてくれぇぇぇ!!やめてくれぇぇぇぇ!!!!」
…廣島は一瞬にして壊滅。
すゞ子は爆風に飛ばされ失神したのち、気がついた時には辺りは真暗闇であった。
すゞ子「(痛い…苦しい…熱い…何…?何があったん…?)」
すゞ子は全身が焼け爛れ、両手の爪の先からは皮が垂れ下がり、服はぼろぼろに破れていた。
すゞ子「……?あっ、や…靖男!靖男!靖男どこなん!?どこに居るん!?」
靖男「お…母ちゃん……」
すゞ子「靖男!無事じゃったんね!」
靖男「お母ちゃん…」
すゞ子が暗闇に目が慣れてきた頃、ようやく靖男の姿が見えてきた。
靖男も同じく、身体中焼け爛れ、顔はたらいのように膨れ上がり、足元には長い「ボロ」を引きずっていた。
那智「……うぅぅ…すゞ子…靖男………これが原爆………アメ公は…こんとな惨い爆弾を落としたんか……あぁぁ……!」
すゞ子「や…靖男…ほんまに靖男なん…?(嘘、お化けみたいじゃ…もしかして…ウチも大怪我しとる…)」
靖男「お母ちゃ…ん…痛いよぉ、苦しいよぉ」
すゞ子「………とりあえず、救護所か病院探そう…そこで治療してもらおうね…」
那智「…わしは…なんも出来ん…すゞ子や靖男がこんとな酷い目にあっとるのに
見る事しか……出来んのか……うぅぅ……」
すゞ子らは負傷した人の群れについていった。
負傷した人達は人とは呼べる状態ではなかった。
那智「……地獄じゃ…地獄じゃ
戦場よりも地獄じゃ……」
その人達の群れは火のない暗いところへ、市の外れの方へ歩いて行った。
すゞ子らは右往左往しながらも、やっと火の手のないところまで行けた。
すゞ子「靖男…ここまで来たらもう安心…じゃっ…ウッ」
急に胸苦しくなり吐いた、黄色い粘液ばかりであった。
那智「……?!??……すゞ子!すゞ子!」
靖男「…お母ちゃん…水…飲みたい」
すゞ子「……ほうじゃ…ね…あそこに防火用水があるけえ…飲も…」
すゞ子は欠けたお茶碗に水を汲み、靖男に飲ませた。
靖男「…おいしい…」
すゞ子「えかった…」
しかしこの後靖男は倒れ、うわ言を呟きながら死んでしまった。
那智「…ん?……靖男?…靖男?」
すゞ子「…靖男?…靖男?……靖男?!」
すゞ子は靖男を揺らすが反応は無く
心拍音を無かった。
すゞ子「え?…え?靖男?!靖男?!靖男!ねぇ!靖男!!靖男ったら!!」
那智「…あぁ…靖男………ん?」
警防団「水を飲ませたらいけん!」
女學生「?!…えっ……?どうしてですか?!」
警防団「大火傷負った人らに水を飲ませると飲んだことに安心して死によるんじゃ!」
すゞ子「……えっ……嘘………靖男は…ウチが水を飲ませたから……ウチが靖男を殺した…あぁ…ああぁ!」
那智「すゞ子!……すゞ子!」
すゞ子「ウチが…靖男を殺してしもうたんじゃ……靖男を…子どもを殺して……」
那智「…すゞ子の責任と違う…すゞ子は何も悪くないんじゃ…悪くないんじゃ…すゞ子…」
那智はすゞ子を抱きしめる
すゞ子「……ごめんね…ごめんね…靖男…うぅぅ……」
戸坂国民学校(臨時の救護所)
衛生兵「重傷者以外は水は与えんように!
どうしても飲みたい方は 手ぬぐいかなんかに水を染み込まさせ しゃぶらせて飲んでください!!」
患者「なんでじゃ!」
衛生兵「一気に水を飲むと死ぬからです!」
すゞ子「……(やっと救護所へ着いた…ウチだけでも…ウチだけでも生きにゃあ…清人さんに会わんといけんのよ…清人さんが還って来た時に困ってしまうけえ…)」
軍医大尉「 鑷子!……遅いぞ火宮、どこ行っとったんじゃ!」
那智「火宮…?……火宮て……あの
……あ、そういや火宮のお兄さんは…軍医と言うとったな……」
軍医中尉「すんません、工兵橋まで行っとったんですが、負傷者で溢れかえっとって、市内には行けんで帰ってきました…」
軍医大尉「…市内は壊滅か。まぁええ…はようお前も準備せえ、治療に当たるんじゃ」
軍医中尉「はい!」
村人「まだ負傷者が来ますよ〜」
村人「川べりの死体をなんとかしてくれ!」
那智「あぁ……ルソンで最初に見た
野戦病院を思い出すのぅ…こんとな酷い光景じゃった……ほいでもここにおるのは兵士では無く…民間人じゃ…民間人がこんとな目に…」
眼鏡をかけ血塗れの白衣と三式軍衣を着た陸軍の軍医中尉は被爆者の手当を始めた。
軍医中尉「………いけんな、益々重傷者が増えるばかりじゃわ
オマケに三度以上の火傷だらけじゃ…」
衛生兵「赤チンくれ!!」
この頃には既に日が落ちていたが、火災はまだまだ盛んであった。
看護婦「どうしたんです この黒いのは…」
患者「わか……わから……わからんのです 雨のようにじゅ……じゅう……重油が」
村人「アメ公がガソリン撒きよったんじゃ!」
看護婦「…ここに居ってください」
すゞ子「はい…」
那智「すゞ子…すゞ子…」
看護婦長「火傷の確認取って!」
看護婦「失礼します……全身に三度以上の火傷…」
看護婦長「中に運んで!」
看護婦「中の方へ」
すゞ子「は……はい」
那智「……クソ……クソ……アメ公が!!……ん?……風景が……」
8月8日
那智「あ……」
兵士「この人もか……そっち持て」
兵士「はい」
兵士たちは死亡した被爆者を埋葬するのに手一杯だった。
軍医中尉「何をやるにも人手が足りん…!一人一人…まとも診られん…!」
衛生兵「仕方ないです、この量の負傷者ですけえ、一人一人に時間を割くことは出来ませんよ…」
すゞ子「…清人さん…靖男…」
那智「すゞ子………」
軍医中尉「(…いけんな、この人はもうすぐ死ぬ…)」
すゞ子「ごめんね…ごめんね………………」
那智「……すゞ子?……すゞ子?! おいすゞ子!!」
衛生兵「…死にましたよ。遺体を運んでもらいましょう」
軍医中尉「…あぁ」
那智「……すゞ子…すゞ子
……あんとな惨い死に方じゃったんか……二人とも……アメ公のクソ野郎!!クソ野郎じゃぁ!!」
村人「チクショーッ、罪のない女子供をこんとな目に遭わせおって!」
村人「仇を討ってくれー!」
患者「医者がなんで診んのじゃ!!」
軍医中尉「(どうせ死ぬ人たちに手を取られとったら、なんも出来んようになる…)
今は助かりそうな人らを治療するのが最優先なんじゃ…許してつかあさい」
那智「…………なんて惨いんじゃ、惨すぎる……人間が人間に…こんな残虐なことを……………ん あっ……風景が……すゞ子!…すゞ子!」
那智「……すゞ子…すゞ子…すゞ子………」
古鷹「…………」
那智「……軍曹殿…廣島にあんな地獄が起きとったんですね………」
古鷹「廣島以外にも……長崎もほうじゃ
3日後の8月9日 2発目の原爆が落とされたじゃ……」
那智「長崎にも……………………
軍曹殿……わしは今ほど…戦争が……憎いと思った事がありません……すゞ子や…靖男を……あんな目に遭わせた…戦争が憎い!…憎い!」
伊勢「那智!いけん!悪霊化してしまう!」
古鷹「……那智…辛いがこれが戦争なんじゃ…」
那智「ほいでも軍曹殿は悔しくないんですか?! 軍曹殿じゃって!奥さ…」
古鷹「……わしも分かる…那智みたいに見てきたんじゃ……須磨子や…一成や…紗子が死ぬ時を…わしは…最期まで見れんかった……
大事な人が死ぬことろ……わしには見れんかった…何十人ものの戦友を看取って来たのに……家族のは見れんかった……あまりにも惨すぎてのぅ……」
那智「…軍曹殿」
古鷹「……わしは須磨子たちが見られんかった……未来の日本をワシがまだ亡霊である限り見ようと思うんじゃ
……せっかく那智も居るんじゃから 見てこうじゃなあの アイスフラチペー美味いぞ」
那智「…軍曹殿w」
古鷹「那智…起きた事は……どうする事も出来ないんじゃ…それに…わしらは救えんかったし……どうする事も出来んかった…それを悔やんでも仕方ないんじゃ……那智…今は……亡くなった人達まで日本…平和になった日本を見ていこうじゃなあの」
那智「……ほうですね」
伊勢「那智
見てこう……今の日本を…わしはピッピさんと見ていくぞ のぅ」
ピッピさん「ピッピ」
那智「…伊勢 ほうじゃな
わしらが夢見た平和な日本を見るとするかのぅ……」
古鷹「ほうじゃ 那智!」
那智「そういや…軍曹殿……あの力凄いですね…すゞ子や靖男の最期が分かりました……看取ることも出来…すゞ子は救護所で謝りながら…息を……」
古鷹「…ほうじゃ その事に1つ疑問があるんじゃ」
那智「疑問?」
古鷹「この力は 話によるとこの土地の記憶だけ見ることしか出来んのじゃ」
那智「え?」
古鷹「ほいじゃけ 距離が離れた救護所まで見られたて事は不思議なんじゃ」
伊勢「…もしかしたら…すゞ子さん達の魂がここに居るかもしれんのぅ
……死んでしまっても 那智の帰りを待っとるかもの」
那智「…すゞ子…すまなんの……待っとても わしも死んでしもうたんじゃ……
ほいでも…ありがとう すゞ子」
古鷹「…さぁ!アイスフラチペー飲みに行くぞ!」
那智「ええっ?!」
伊勢「また、腹下しますよ」
END