赤宮結華は勇者である   作:三坂

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西暦2015年8月1日
  
民間人を横須賀に退避させる輸送任務中に報告にあった『星屑』と接敵、そして戦闘に突入。
 
我が方は陸上自衛隊、宇都宮、古河、北宇都宮の3つの駐屯地を中心とした護衛部隊及び勇者としての加護を受けた少女達とともに迎撃開始。


まさに民間人を護るための闘いの火蓋が切られ、これは後に『佐野撤退戦』と呼ばれた。   

   
とある陸上自衛隊隊員のメモ

2018年5月4日
防衛省
四国支部の書類室より発見


第四話 戦闘

「配置急げ!!モタモタするな!!」

 

 

 

エンジン音が響き渡る中、それに負けない怒号があたりにピリピリと伝わってくる。最後尾の10式戦車から受けた不明生物接近の一報、民間人の載せたバスの車列を護るために各部隊は一斉に後方へと集結する。

 

 

 

『こちら中即−1、左翼展開完了!!』

 

 

『中即−2より中即−本へ、右翼側に展開しました。第戦−1から第戦−2も同様に各4両全車展開とのこと!』

 

 

『こちら中即−3、敵部隊との接敵まで後5分。オクレ』

 

 

『こちら中即−本、了解した。各自戦闘に備えよ、それと例の子たちは?』

 

 

『こちらも配置完了しています。指示があればいつでも行けるとのこと…!』

 

 

 

姉川と各部隊が連絡を取っている中、部隊は着実に配置を完了していっていた。10式戦車を始めとし、74式戦車や61式戦車を含んだ臨時の戦車小隊や、中央即応連隊を始めとした、HMV・LAV・WAPCなどの各高機動車や装甲車も隊員の盾となるように配置する。

 

 

 

『目標再度視認!!かなりの数がいます…!!』

 

 

「おうおう…総出でお出迎えってやつね…。総員攻撃用意!!」

 

 

 

ハッチかや少し身を乗り出した姉川の視線の先、そこにはくねくねと動く白い物体大群がこちらへと押し寄せてきているのが視界に広がっていた。思わず一瞬怯んでしまうがすぐさま我に戻り各員に攻撃用意の合図を出していくのであった。

 

 

 

 

 

「やっぱたくさんいるねぇ…」

  

 

 

…と迎撃ラインに展開している10式戦車、その砲塔上部に立つように結華と羽南の姿があり、少し離れてはいるがうようよと飛行しながらこちらに向かってくる不明生物の数にうへぇっという表情を浮かべる。

 

 

 

「うん…。あっでも、あのときに比べたらまだいいほうだとは思いますけどね……。」 

 

 

「言われてみればそうかー…」

 

 

 

羽南の意見に賛同しつつも結華はあのときの状況よりかはまだいいんじゃないかなという意見を述べている。確かに、天災発生直後に比べればあの集合体もいないし、数もそこまでという感じなので彼女の考えも間違ってはない。

 

 

 

「でも多いんだよねぇー…、しかも見た目というか顔が不気味だし…。」

 

 

「それは同意です…、あの顔はなかなかトラウマ者ですよ…。なんか夢にも出てきそうだし…」

 

 

 

そんなことを話しながらも羽南は腰につけていた刀入れから日本刀を両手に持って二刀流のように、結華は盾から軽機関銃を取り出して身構える。

 

 

 

「んじゃま!行きますか…!!結華ちゃん!死角のサポートと遠くの奴は任せたよ!!」 

 

 

「分かりました…!!あと無理は為さらないでくださいね…!!」

 

 

「わかってるよ…!!そっちもね…!!」

 

 

 

目線を合わせて頷いた直後、弾かれたように二人は飛び出していく。その様子をチラリと見つつ姉川はタイミングを合わせるように各部隊に指示を合わせるように指示を出して射撃合図を下す。

 

 

 

「二人を援護するわよ!!射撃開始!!」

  

 

ドドドドドドン!!!!

 

 

号令を待ってましたと言わんばかりに待機していた戦車小隊が一斉に射撃を開始、入り乱れるように対戦車榴弾が混じり合いながら不明生物へと無数に襲いかかっていく。現代の戦車の命中精度は目を見張るものがあり、尚且自衛隊の戦車は移動中でも高確率で当てられ複雑な地形で戦闘が行える安定性を持っている。 

 

 

ドゴォン!!!

 

 

…となれば停止状態からの射撃を外すわけがなく次々と砲弾を命中させていき、不明生物をどんどん撃破していく。しかしそんなのは関係ないと言わんばかりに白い波はどんどん押し寄せてくる。

 

 

ダダダダダダ!!!

 

 

戦車小隊の射撃に少し遅れる形で、装甲車両から軽機関銃と重機関銃の曳光弾が絶え間なく打ち続けられていく。周囲にいた自衛隊員達も隣でしゃがみながら小銃や対戦車ミサイルで攻撃して負けじまいと攻撃の手を強める。

 

 

 

「やっぱり…!俺たちの攻撃が効いてるぞ…!!」

 

 

「昨日とほとんど一緒だなこりゃ…!!化け物どもか紙切れのように殺られていってるぞ…!!」

 

 

「少女達の力借りねぇと戦えないっていうのは情けねぇ話だが…今はそんな悠長なことは言ってられないからな…!!…となりゃあの子達を支えることが俺たちの使命ってことさ!」

 

 

 

最初は少女達の力を借りられないとこの化け物と戦えないという情けなさを痛感した彼らであったが、そんなことをいま嘆く時間ではないという雰囲気を見せて、今は彼女たちを全力で支えようという意思の元化け物に対して攻撃の手を強めていく。

 

 

 

「おらお前ら!!おしゃべりする暇があるなら早く弾持ってこい!!化け物どもは待ってくれねぇぞ!!」

 

 

「射撃の修正も逐次しておけよ!!万が一あのかわい子ちゃんに当たりそうになるなら准尉に何されるか考えたもんじゃないからな!!」

 

 

「え?そんなに姉川二尉怒ったら怖いのか?」

 

 

 

そんな会話を挟みつつも乱戦状態になっている二人に砲撃が当たらないように最深の注意を払いつつも最大限の支援攻撃を続けていくのであった。

 

    

 

 

 

 

 

 

「貰った!!」ズバーン!!   

 

   

 

こちらに襲いかかろうとしてくる化け物、その怒涛のタックルを羽南はひらりと交わして逆に火炎に包まれた二刀流のカウンター攻撃をお見舞いし、圧倒的な火力の高さを生かした連撃で次々と燃やしながら切り裂いていく。

 

 

 

「次!」

 

 

一体、また一体と倒していくがそれを感じさせないような物量で白い物体はどんどん押し寄せてくる。…がまるで背中に目があるかのようにひらりと交わして一撃加えていくが、流石に毎回そんな動きが出来るとは限らない。彼女も人間であるため必ず死角というものは生まれてしまう。

 

 

ー…!!ー

 

 

なんとかうまいこと彼女の死角に潜り込めた化け物はそのまま流れるように羽南の背後へと迷いなく襲いかかっていく、…が目の前の獲物に囚われすぎて大事なことを見落としていた。

 

 

 

ダダダダダ!!!!

 

 

突如として機関銃の連射音とともにどこからか飛んできた無数の弾丸が化け物の体に無数の穴を開けていき、先ほどの勢いはどこへと感じさせるように擱座してしまう。

 

 

 

「ナイス結華ちゃん!!」

 

 

「んもー…!後ろはちゃんと見ててください…!ただでさえ乱戦は死角が多いのに……!!」

 

 

「いやーごめんごめんー♪私乱戦の方がやりやすいから…!それにいざとなれば結華ちゃんが護ってくれるっていう安心感があるからね♪」

 

 

「全くー…。」   

 

 

 

相変わらず乱戦で闘っている親友のことが心配なのだろう、少しムスーとした表情を浮かべている結華であるが、羽南は特に気にしていないようでごめんごめんと謝りつつも化け物をばったばった切り裂いていく。だがそれでも数が多いようで結華の元に下がりつつ思わず愚痴が彼女から溢れる。

 

 

 

「前よりも確かに少ないけど…それでも厄介だねー…。流石にここで足止め喰らうわけにもいかないし…いつ新手が来るかわからないから……。」

 

 

「ですね…。なら早急に決着つけましょう…!」

 

  

「へ?早急って言ってもどうや…(ゴゴゴ!!)。あわわ!?」

 

 

自分の愚痴を聞いてそれなら早急に決着つけようという結華の言葉に首を傾げながら訪ねた直後、突如足元に魔法陣が展開される。それに驚いて羽南が慌てるように避けた後に魔法陣内から陸上自衛隊が保有するSSM−1(12式地対艦誘導弾)が何台も姿を現す。

 

 

 

「発射!!」

 

 

 

結華の発射合図とともに待ってましたと言わんばかりにSSM−1が一斉に攻撃を開始。勇者の能力で呼び出したため残弾を気にする必要がなく打ちっぱなしが可能となっているため、通常ではあり得ないような連射スピードで上空に打ち上げていく。

 

 

 

シュゴゴゴゴゴ!!!

「おっ…音が凄いよこれぇ…!!?」

 

 

 

いくら誘導弾とはいえ、本来であればこんなマシンガンのような連射速度で地対艦ミサイルをぶっ放すことはあり得ない。そんな頭おかしいのではないかというレベルの量が化け物の群れに襲いかかる。

 

 

 

ドドド!!!  

 

 

 

化け物に避けるという知識(あっても誘導妨害が出来ないためどっちにしろ地対艦誘導弾から逃げられない)がないためミサイルの大群はそのまま迷いもなく次々と突き刺さって爆発していく。その音はこちらまではっきりと聞こえており、白い物体がいた場所は黒煙や白煙に包まれいるようだ。

 

 

 

「ふぅ……疲れた…」ブゥン

 

 

「あっあの数を全滅……、結華ちゃん…あんたそんなキャラだったけ……?(汗)」

 

 

 

先ほどまである程度いた白い物体の群れがこの一瞬にして消え去ったことに驚きを隠せないようで、羽南は開いた口が塞がらない状態になっていた。そりゃ普段の性格知っていれば突然こんなことすれば誰だってそうなるでしょうよ。

 

その当の本人は役目を終えたSSM−1を魔法陣に戻しつつ盾の歯車を調整していつもの雰囲気に戻っているようだ。一部始終を見ていた自衛隊員達も羽南と同じような気持ちらしく、驚きと困惑の表情を浮かべていた。

 

 

 

「まじかよ…。あれだけいた化け物共を一瞬で……。」

 

 

「俺らには到底出来ない芸当だな…。やっぱ勇者の力ってすげー…。」

 

 

「だなぁ…、というか地対艦誘導弾をあんなぶっ放し放題なんて実際じゃ出来ない分なんか爽快だよ…(汗)。」

 

 

「あれだけいた化け物をあっという間に…、流石というか…、なんというか…。…でもこんな形で、彼女達の能力が活かされるなんてね…」

 

 

 

姉川自身も改めて勇者の能力の高さを思い知らされたのか驚きを見せながら複雑な感情を見せており、話しながらこちらに戻ってくる二人に視線を向けつつ呟いていた。

 

 

 

「……はぁ…。」

 

 

「ため息が零れてますよー、姉川先輩…♪」

 

 

 

思わずため息が溢れたのを聞かれたのか後ろから聞き慣れた声が聞こえたためそちらに視線を向けると、そこには丁度部隊状況の確認を終えた湯月が隣に歩み寄ってくる。

 

 

 

「聞かれちゃったか…(汗)。本当、貴方が声をかける時に限って本音が漏れちゃうのよ…。」

 

 

「本当びっくりなぐらいタイミングいいですよねぇー、あっそれはそうと各部隊の状況確認が終わりました。隊員及び民間人の死傷者はなし、弾薬、燃料の補給も完了してるのでいつでも出発出来るとのことです…!」

 

 

「なら、さっさと移動してここから離れましょう。いつ奴らが来るかもわからないし…なによりこの戦闘音で寄ってくる可能性もあるから。」

 

 

 

ひとまず襲撃は凌いだとはいえ、またいつ奴らが来るかどうか分からないためすぐさま移動することを姉川は伝える。それを受けて展開していた中央即応連隊を始めとした各部隊は定位置へと速やかに戻っていく。

 

 

 

「中即−本よりマルヒト、車列の出発用意完了 オクレ。」

 

 

「マルヒト了解、マルヒトより各車。これより再び出発する。周囲の警戒レベルは最大限にせよ。」

 

 

 

出発用意が完了したことを確認すると再びV型8気筒ディーゼル音を響かせながら先頭の10式戦車が移動を開始、それに続くように後方の車列も移動していく。

 

 

 

「でもあの白い物体の集合体は今回現れませんでしたね…。てっきり今回も融合してくるとは思ってたんですが…」

 

 

「単純に数が足りなかったとかじゃないのか?あれになるにもかなりの数がいるだろうし、ほら鬼怒川のときもそうだったろ?」

 

 

「あー…たしかにな…。あれは見ていていいものではなかったな…。」

 

 

「条件とかがあるんだろうな…。それにあいつらも生物の一種だ。そうポンポン出せないもんなんだろう…、がそんなことは今はどうでもいい。問題なのは今後だ…」

 

 

 

とある高機動車の車内では小銃片手に隊員たちが何やら話しているようで、内容はもちろんあの化け物達のこと、そして今後再び起こるであろう展開だ。

 

 

 

「仮に横須賀にたどり着けたとしてもだ…。日本中…いや世界中がこうなっている可能性があるとなれば地球上に安全地帯がない可能性があるぞ…。」

 

 

「言われてみれば…、あの地震と化け物が関係しているとなれば地球上どこに出現してもおかしくない…。」

 

 

「そうなれば…今は横須賀が安全地帯になっているが…様々な面で物資不足に陥るかもしれないな…。人間考えていることは同じだからな…。」

 

 

 

世界中がこうなっているとなれば、仮に横須賀に防御陣地を敷いたとしてもいずれかは弾薬や燃料が尽きてしまう。食料はなんとか集められるだろうが、首都圏などや隣県から逃げ延びてきた民間人を何年も賄えるかということになればカバー出来るかどうかわからない。そうなれば最悪は食料の奪い合い、略奪や横領などの避難所内の治安悪化を引き起こして、下手すれば内部から崩壊しかねない。

 

 

 

「かと言ってあーだこーだ言ってもその流れを変えることは出来ないぞ。俺たちやれることは精一杯やっておけばいいさ、そのへんは上がどうにかするだろうし…、向こうにつけば何らかの情報が得られるだろ。」

 

 

「…だな…。」

 

 

世界がどうなっているかもわからないという不安な状況にかられつつひとまずは横須賀に向かってから今後のことを話し合おうということで、目の前の任務に集中するのであった。

 

 

 

 

 





第五話 横須賀
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