赤宮結華は勇者である   作:三坂

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西暦2017年10月20日


本日の国会でなんとか新造艦艇の予算が降りた……。大社から強い反対があったけどなんとか無理くりで透すことが出来たわね……。
  
大社と親交の深い議員達からはそんな使えないガラクタに回すくらいならもっと有効なものに回せっていうブーイングがけっこう飛んできたけど…、アイツらだって人のことは言えないはず…。  

いつまでもあの子達を闘わけるわけにはいかないもの、勇者ばっかりに頼ればいいとかそんな甘ったれた連中なんかの話なんて最初から聞く耳なんて持つわけないでしょ?


……それにあの船が出来れば今の状況はかなり打開出来るはず……。
    


天の神には人類舐めてたら痛い目見るって教えてあげないとね…!!



湯月雪記録
新型艦艇新造についての補正予算会議にて


第七話 初代勇者システム

 

 

 

西暦2015年8月7日

神奈川県大和市と横須賀市の堺にて

 

 

 

夏に入ったとはいえまだまだ日が昇り初めて浅いのか太陽がゆっくりと姿を見せながら街中を照らしていく。あの化け物の襲撃から6日近く経った影響か、街のあちこちは荒廃しており、放置された車や襲撃を受けて破壊しつくされた建物が数を増している。

 

 

 

ブロロロ…!!

 

 

 

人がほとんど姿を消してしまった市内、そのため鹿などの動物が姿を現しては店に転がっていた食べ物を漁っている始末。そんな一変してしまった日本の町並みを背にエンジン音とともに5台の迷彩柄を施された車両が放置車両や瓦礫を縫いながら走っているのが見えた。 

 

 

 

鈴木「この先、2ブロック先を右折だ。そこならある程度道幅は広いからな。」

 

 

平城「了解っす。」

 

 

 

先陣をきる形で走行している第1特別偵察隊(以後第1特偵と呼称)所属のLAV(1号車)では助手席に座っている鈴木の指示を受けて運転を担当している平城仁井三等陸曹(21歳)が了解と答えながら2ブロック先の交差点を右折。それに続くように後続のRCV(87式偵察警戒車)(2号車)、HMV(3号車)、旧73式大型トラック(4号車)、LAV(5号車)の4両が続くように曲がっていく。

 

 

 

秋野「にしても…本当に人気がないわね…。当たり前っちゃ当たり前だけど……、数週間前じゃ全然想像出来なかったっていうか…。」

 

 

 

ターレットに背を預け、上面ハッチから顔を出しながら防楯付き銃架に備え付けられている5.56mm機関銃MINIMIのトリガーを握りながら周辺警戒をしていた秋野が静まり返り、自分たちのエンジンしか響いていないことに思わず眉を細めてそんなことを口にする。

 

 

 

平城「なんか終末世界みたいな感じですよねー。まっそのまんまなんですけど…、まさかアニメやゲームなんかでよく有りそうな光景が現実で起こるなんて…。信じられないっす…。」

 

 

秋野「そうね…、出来ればこんなことは起こってほしくなかったけど……、そうなった以上私達のやることはしっかりやらないと…。(ふと後続に視線をむけて)…そういえばRCVをよく組み込めたわよね?」 

 

 

 

そんな話の最中、ふと秋野は後ろを走行しているRCV(2号車)に視線を向ける。どうやら昨日の段階では含まれてなかったようだが今朝になって急遽決まったらしく、突然ではあるものの第1特偵に組み込まれたようだ。

 

 

 

鈴木「なんせ湯月曹長と姉川二尉が上層部に直接頼んで組み込んで貰ったらしい。なんせこの部隊だとどうしても火力不足は否めない…、だが戦車を入れようものなら機動力に難が生まれるからそれを踏まえた結果という訳だ…。」

 

 

秋野「だから今日突然組み込まれたんですね…。確かにRCVがあるとないじゃ火力と機動力面で大きく変わりますから…。」

 

 

平城「それはいいっすけど…、そのRCVを指揮を降月二等陸曹に任せて大丈夫なんすっか…?いや信頼していない訳ではないですけど…。」

 

 

 

 

 

RCV(2号車)車内にて

 

 

 

 

降月「えっと…コイツが無線機で…、こっちが地上レーダー装置2号(改)…んでそれが近距離暗視装置か…よし…!」

 

 

 

同時刻、RCVの車内では車長席に腰掛けた降月が周辺に備え付けられている無線機などの機器をチェックしていた。本来であれば専属の車長が担当するはずなのだが、これは元々予備から引っ張り出してきた車両のため臨時で彼女が兼任することになったのだ。

 

 

 

花月「降月二等陸曹すみません…(汗)。上層部からの指示とはいえ私達の指揮をお願いして…、なんせこの子予備車両だったのを無理やり引っ張り出してきたので…。」

 

 

降月「いいのよ♪無理やり引っ張り出すように頼んだのは私なんだし…(汗)。貴方だって三週間前まえまで富士駐屯地所属だったのにこんなときに大変ねぇ…。」

 

 

水木「仕方ないですよ。状況が状況ですし、自衛官になると決まった以上有事は覚悟しておかないとですし…。…まあまさかその初めての有事が化け物との戦闘になるとは思いませんでしたが…(汗)。」 

 

 

降月「あはは……(汗)やっぱそうなるわよねー…。」

 

 

 

慣れない手つきで確認している降月を申し訳なさそうに花月沙弥香(20歳)が砲手席から見上げる形で謝罪の言葉を口にする。彼女は操縦手である水木一郎三等陸曹(20歳)と同じ陸上自衛隊富士駐屯地所属であったのだが休暇で偶然訪れていた(それぞれ別で)横須賀で天災に遭遇、そのままの流れで臨時で部隊に組み込まれて戦うことになったらしい…。

 

 

 

降月「そうゆう貴方達も大丈夫なの?正直いってこれが初の実戦みたいなものだし…。…まあ私も人のこと言えないけど…(汗)」

 

 

花月「大丈夫です…!この車両ではないですけど富士にいたときは、機関銃系の車両の砲手やってたので扱いについては問題ありません…!(フンス)」

 

 

水木「僕、こう見えてけっこう装輪系の操縦はトップクラスの実力持ってるので任せてください…!!それにこの辺はけっこう来るので土地勘もありますし…!」

 

 

降月「…問題なさそうね…♪でも無理は禁物よ、ぶっちゃけこうゆう任務は他の部隊からの支援はほぼ不可能に近いし少しの油断が死に直結するわ…。」

 

 

降月「……もちろん…!」

 

 

水木「…はい…!」 

 

 

 

まだ入って間もない二人のため大丈夫なのかという表情を浮かべていた降月であったが、二人からは問題なさそうな返答が帰ってきたため一安心したのかホッとする。だが油断してやられては元も子もないため油断しないように伝えつつ自身は周辺警戒を行うのであった…。

 

 

 

 

 

 

HMV(3号車)

 

 

 

永野「……(緊張しつつステアリングを握っている)。」

 

 

湯月「…そんなに固くならなくてもいいわよ…(汗)。私だって指揮任されてるだけでそこまで偉くないわよ…?」

 

 

 

降月は特に問題なく、新人自衛隊員の二人と打ち解けている中後続のHMV車内では見るだけで分かるほど緊張している表情を浮かべステアリングを握っている永野章(25歳)二等陸曹に湯月が苦笑いしつつフォローの言葉を投げかけていた。

 

 

 

永野「そっそうは言われましても…(汗)。部隊の指揮官を同乗させるなんて例にもなくて…、しかも人類の未来を背負ってる子達も同乗させてるとなれば…もしものことがあると思ったら…。」

 

 

湯月「永野君なら大丈夫よ、貴方の運転技量の高さはよく聞くしいつも通りにやればいけるって…!」

 

 

結華「しばらくよろしくお願いしますね…!永野さん…!!」

 

 

羽南「よっろしくー!!」

 

 

永野「うぉぉぉぉ…!!こうなれば意地でも最後まで走りきってやりますよ…!!(目を光らせながら)」

 

 

湯月「……(汗)(本当に大丈夫かしら…?別の意味で…)。」

 

 

 

可愛い子二人の声援を受けてスイッチが入ったのか目をギンギラギンに輝かせながら先程の不安げな表情がまるで嘘かのようなテンションになる。そんな永野を見てこれはこれで大丈夫なのかという苦笑いを湯月は89式小銃片手に浮かべているのであった。

 

 

  

 

 

 

 

ちなみに乗車内訳はこんな感じ

LAV(1号車)

平城三等陸曹

鈴木陸曹長(副指揮官)

秋野二等陸曹

 

RCV(2号車)

降月二等陸曹

花月二等陸士

水木二等陸士 

 

HMV(3号車)

永野二等陸曹

湯月曹長(指揮官)

赤宮結華

焔羽南

 

 

旧73式大型トラック(4号車)

坂出三等陸曹

大宮一等陸曹

仁科三等陸曹

新見三等陸曹

 

LAV(5号車)

麻木二等陸曹

古田三等陸曹

櫻木陸士長

 

 

 

 

そんなこんなありつつも車列は特に問題なく予定通りの進路を取って目的地へ目指しながら進んでいた。上空を見てもあの化け物の姿は確認出来ず天災当初の状況とはまるで嘘かのように静寂な時間が流れている。だが空から視線を戻せば地上はハッキリいって地獄のような有様と言ってもいいほど酷いものであった…。

 

 

 

秋野「…こりゃ酷いや……。」

 

 

 

ターレットリングに背中を預けながら周辺警戒をしていた秋野はあることに気づいたのか、眉を細めて少しキツそうな表情を浮かべていた。そう言われ鈴木達も視線を向けた先、そこには化け物から子供を護ろうとしたのだろう…母親だったものの無残な肉片が残されており子供も顔から下が無くなって血まみれになって横たわっている。

 

 

 

平城「うへぇ……酷いっすね…(キツイのか視線を逸す)。」

 

 

鈴木「……最後まで子供を護ろうとしたのか…親の鏡だな……。秋野、後続の車両にも無線で伝えろ。特にあの子達には見せないようにな…。」

 

 

秋野「了解です…。こんなのまだ幼い子達に見せていいものではないですからね…。」

 

 

 

こんな光景を見ることがほとんどないため平城も思わずうへぇという顔をしながら思わず視線を逸してしまう。そんな部下を見ながら鈴木は秋野に後続の車両に伝えるように指示を出す。あまりにも酷すぎる遺体のため、キツイものは直視しないようにするためでもあるがなによりも結華達のような幼い子達に見せないようにするための意図が強い。

 

鈴木の指示を受けて秋野が胸あたりにつけている無線機のマイクスイッチを入れて後続の車両に事細かに報告していく。その間にも鈴木は無残な最後を遂げてしまった親子に向けて静かな黙祷を捧げつつも無抵抗な市民をあざ笑うかのような襲われ方に怒りが徐々に湧いてきていた。

 

 

  

ー……クソッタレが…、天の神なんか知らねぇけどな…。だんな理由があってもこんなことをやっていい理由にはならねぇ…。見つけたら神様だろうがソイツの首締め上げてやる…。ー

 

 

 

そんな思いを背に車列は目的地である堀白の住んでいる場所に向けて進んでいくのである……。一体彼の家はどんな建物なのだろうか……?そして神様の協力を得て作られたシステムとはなんなのだろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

湯月「ここがあの堀白研究員の家か…けっこう立派なところに住んでるわねぇ…。でも見た目は至って普通だしここで実験をしてたとは思いにくいわ…(汗)」

 

 

 

それから走り続けること数時間ほどが経過し、お昼時が近づいてきたタイミングで第1特偵の車列は目的地である堀白元研究員の家に到着した。見た目は少し高級そうではあるが至ってどこにでもありそうな一軒家の感じが漂っており、本当にこんなところにビデオで言っていたものがあるのかという疑問が思わず浮かんでしまう。

 

 

 

湯月「っていかんいかん…(首を降って)。そんなこと考えてる暇はなかったわね…。私達はここに用があって来たんだし…。」

 

 

鈴木「湯月曹長…!各自準備が出来たとのことです…!」

 

 

湯月「分かったわ、すぐ行く。」

 

 

 

だが今はそんなことを考えている余裕がないことを思い出して慌てて首を降って本来の目的を思い出す。それとほぼ同じタイミングで鈴木が準備完了したとの報告をしにやってきたため、すぐ行くと答えながら湯月は隊員達の元へ戻るのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

堀白元研究員宅

玄関前にて

 

 

 

湯月「それじゃ中には私と結華ちゃん・羽南ちゃん、秋野二等陸曹と坂出三等陸曹、櫻木陸士長で行ってくるわ。残りはここで待機、敵が来ないか警戒をお願いするわね?」

 

 

鈴木「了解しました…!ここはお任せください…!湯月曹長もお気をつけて…!」

 

 

湯月「ありがとう…♪んじゃあとは頼んだわよー。みんな、行きましょうか…!」

 

 

突入要員一同「「はい(了解)…!!」」

 

 

 

あとのことはここにいるメンバーに任せて湯月達はいよいよ建物内部に入るために入口へと向かうことに。正門にたどり着くと秋野が門の扉に手をかける、すると特に鍵をかけていないのかすんなりと音を立てて慣性にそって開いた。

 

 

 

秋野「開いています…、誰か中にいるのでしょうか……?」

 

 

櫻木「それはわからんが…、だがまるで俺たちが来ることを見越してかのような動きだな…。入ってくれと言わんばかりに…。」

 

 

坂出「…とりあえず入ってみましょう。そうすればこの謎も分かるかと……。」

 

 

湯月「そうね、ひとまず中に入りましょう。見た感じあの化け物に壊された形跡は無さそうだから中は問題ないとは思うけど…、用心に越したことはないわ。二人とも、行くわよ(視線を向けて)」

 

 

結華「分かりました…!(AA-12(フルオートショットガン)を構えつつ)」

 

 

羽南「こっちもいいよー♪(日本刀を両手で握りつつ)」

 

 

櫻木「……(今更だが、お嬢ちゃん銃の持ち方手慣れ過ぎないか…?ちゃんと持ち方理解してるし…なによりも構え方が明らかに子供じゃないんだよな…(汗))。」

 

 

 

…と結華が呼び出したショットガンとその持ち方が気になったのか心の中で櫻木がかなり気になるようなツッコミを入れる1幕があったものの、秋野や結華を先頭に坂出、湯月・櫻木、羽南の順に敷地内を進んでいく。

 

 

 

結華「にしても広いねぇ……(キョロキョロ)。」

 

 

羽南「そりゃ元有名な研究員ならこれくらい当たり前だよー。前テレビで見たことあるけどけっこう稼いでたみたいだし♪」

 

 

秋野「…ということはそのお金を研究に回す余裕もあったという意味で捉えられますね…。」

 

 

湯月「えぇ…そうね…。」

 

 

 

結華が周囲をキョロキョロして庭の広さに驚きを見せており、その隣では羽南が最近得た知識を披露してドヤ顔を浮かべていた。そんな二人を見つつ湯月と秋野は、それだけの資金があるなら例のシステム開発にも回せる余裕があるという意味でも捉えられられるのを小声で話している。

 

 

 

坂出「あっあそこが入口みたいっすよ。(指差して)」

 

 

櫻木「広いようで案外すぐにつくもんなんだな……。」

 

 

 

いろいろ話しながら進んでいると案外すぐに玄関へとたどり着く。それに驚きを見せながらも秋野がゆっくりと扉の取手に手をかけて手前に恐る恐る引こうとする。

 

 

 

ガチャ

秋野「……嘘でしょ…?ここも開いてる…。防犯意識ガバガバすぎない…?」

 

 

櫻木「俺たちが入れるようにしていたんだろ……。この自体が起こることを予測していたならこうするのも用意のはずだ……。」

 

 

湯月「とりあえず、突入しましょうか…。秋野さん、わかってはいるとは思うけど油断しないようにね…、もしかしたら連中が中に潜んでるかもしれないしから…。」

 

 

秋野「わかってますよ…、それじゃ入りますね…!(手前に扉を引いていく)」

 

 

 

するとこの扉もすんなりと音を立てて開きかけ、まさかここも開いているなんて思ってもいなかった秋野は一瞬驚きの表情をしつつも少し呆れたような顔をする。そんな彼女を宥めつつ、こうなることを予測していた相手ならこうなることは用意に想像が出来ると櫻木は冷静に分析していた。

 

湯月も同じ意見なのか、とりあえず突入するように指示を出しつつ奇襲の警戒をするように秋野に伝えてゆっくりと扉を引き中へと足を踏み入れる。

 

 

 

コツ…コツ…

 

 

櫻木「あの騒動の割には部屋はそこまで荒れてないんだな……(キョロキョロ)。んで、俺たちはどこに行けばいいんだ?湯月曹長。」

 

 

湯月「うーん…、そうゆうシステムを作ってたとなると隠し部屋みたいなのでしてたっていう線が怪しいのよね…。天の神とやらに悟られずにやるとなれば…。」

 

 

羽南「つまり映画とかにあるような地下室みたいなのがあるってことですか?」

 

 

湯月「それが一番近いとは思うんだけど……、果たして本当にあるのか……。」

 

 

結華「…あの…ちょっといいですかね?」

 

 

 

建物の中に足を踏み入れると、案外荒れていないようでそこには生活空間がそのまま残された室内が広がっていた。それを見ながら櫻木はどこに行けばいいのかを尋ねるがそこまではビデオに乗っていなかったため湯月もハッキリとは分からないようで少し首を捻りながら考え込む。

 

別に宛がないわけではないものの、彼女が考えていることも今のところ仮説でしかないため確証的なものが見つけられずにいた。そんな最中、とある方向を見ていた結華が声を上げて一同に問いかける。

 

  

 

秋野「んー?どうしたのー結華ちゃん?」

 

 

坂出「なんか気になるものでもあったのか?」

 

 

結華「あっはい…、皆さんのお助けになるかは分かりませんが…。あそこの壁…、一部分だけ色が違うなーって思って…。」

 

 

湯月「壁の色が一部だけ違う…?ちょっと失礼。(壁に近寄る)」

 

 

 

秋野と坂出の問に答えながら指差した先、そこにはぱっと見特に変わりもない普通の壁があった。だが結華にはその壁の一部分だけ色が違うように見えるらしい。そんな彼女の発言に引っかかったのか湯月がみんなに少し待つように伝えてその壁と近寄っていく。

 

 

 

湯月「結華ちゃんの言ってたおかしなところってこの辺かしら?」

 

 

結華「そうです…!そのへんが怪しいなって思って…。」

 

 

 

結華にどのへんの壁がおかしいのかと尋ねながら彼女が教えてくれたあたりの壁にゆっくりと手を当てる。…少し暗くて見えにくいが確かに言われたところの壁の色も少し違うように感じて肌触りにも異変を感じていた。

 

 

 

湯月「……(確かに、この辺だけ肌触りが全然違うし…おまけに結華ちゃんの言うとおり壁色も少しだけ違…(ガコ!!)…ふぇ?(慌てて手を離す)」

 

 

 

これは何かあるかもしれないと思っていた矢先、その予想が見事的中したかのようにガコッという鈍い音とともに手を当てていた壁の一部が一段奥へと下がる。それを見て少し慌てるように湯月が手を離した直後にモーター音とともに壁が下へと下がっていき開いていく。

 

 

 

湯月「これは…。(開いていく扉を見ながら)」

    

 

櫻木「どうやらこの子の予想が的中したな…。まさか映画のような仕掛けを実際に目の当たりにするとは……。」

 

 

坂出「…ですね…。というかこんな仕掛けがあるってことは……。」

 

 

秋野「…ビデオで言っていたっていう堀白研究員の言葉は正しかったということになるわね……。恐らくこの先にその答えがあるってことでしょう…。(89式を構えつつライトをつけて。)」

 

 

 

まさか本当にあるとは思っていなかったようでそれぞれは驚きを隠せずにいるようでお互いの顔を見合わせている。だがこの仕掛けがあるということはビデオで堀白が言っていたことの信憑性が現実的になっていることを指していた。

 

 

 

湯月「つまりここから先は未知の領域…、各員警戒を怠らないようにね?結華ちゃん、羽南ちゃんも何かあればちょっとのことでもいいから教えてくれる?」

 

 

結華「はい…!」

 

 

羽南「ふふーん♪私に任せて♪」

 

 

 

いくらここに招かれたからとはいえど、中に何があるかも分からない以上警戒するにこしたことはない。そのため、湯月は隊員達に指示を出しながら二人にも少しの異変でもすぐに答えるように伝える。それから準備が整うと各自ライトで照らしながら壁の先、地下へと続いていく階段を降りていくのであった……。

 

 

 

 

 

   

 

 

 

地下室へと向かう階段にて……

 

 

入った当初こそ真っ暗でライトを照らす必要があったのだが少し進んでいくとセンサで反応したのかいきなり眩しくない程度に明るく階段廊下が照らされる。どうやら電気は来ていないが非常用発電機が作動しているようでそこから電力が来ているのだろう。

 

 

 

秋野「本当…用意周到っていうか……初めて見る未確認存在の言うことをよくここまで聞けるわよね…。いくら人類が滅ぶからって言われたとしても…、私なら信用しない自身があるわ……。」

 

 

櫻木「そのへんも含めて変わってると言われてたからなぁ…、現役のときの奴は…。だからこそその未確認存在も頼ったのかもしれないのかもな。」

 

 

 

ここまで用意周到となると逆によくその未確認存在の言うことを信用出来たなという表情になりつつ秋野は先陣を切りつつ歩みを進めていた。

 

そんなことを話しながらもまるでシェルターを方物させるような構造の階段を降りていくと目の前に厳重そうな電子ロック付きの扉が佇んでいる。どうやらここは開けっ放しにはしていないようで解除するにはパスワードが必要らしい。

 

 

 

湯月「ここは私が開けるわ。ビデオにこの扉ののパスワードらしきものが書かれた紙が映っていたからたぶんそれでしょう(ピピピ)。」

 

 

 

どうやら湯月はこの電子ロックのパスワードを知っているようで慣れた手付きでポケットからメモした紙を取り出して順番通りに打ち込んでいく。すると機械音が鳴ると同時に扉のロックが解除される音が聞こえてくる。

 

 

 

湯月「それじゃあのビデオの答え合わせと行きましょうか…!(ゆっくりと開けていく)」 

 

 

一同「「……(頷く)。」」

 

 

 

 

そう呟くと湯月が重厚そうな扉をゆっくりと押していき開けていき中へと入っていく。結華達もそれに続くように進んでいくと、そこには映画などでよく見るまんまの地下研究所のミニ版が広がっていた。堀白の姿は案の定確認出来ないが、それでも様々な研究をしていたのだろうか見たことないような道具まで置かれているのが確認出来る。

 

 

 

結華「凄い……、まさか現実でこんなのを見れる日が来るなんて……(見惚れている)。」

 

 

?「おや、どうやら本当に来てくれたみたいですねー。堀白さんの来客者さん?」

 

 

羽南「…!?!(反射的に日本刀を構える)。…ふぇ…?」

 

 

秋野「誰…!?(銃口を向ける)…ってへ…?」

 

 

 

まさか現実でこんな光景を見れるとは思っていなかったため、結華が凄いという表情を見せていると突如として背後から声が聞こえてくる。それに驚いたのか湯月以外が一斉に振り返って臨戦態勢になりかけるが、そこにいたものをみて思わず拍子抜けた顔になってしまう。

 

 

 

?「おやおや、まだ名を名乗っていないのにいきなりそれとは…。人間というのは手荒い歓迎がお好きですねぇー?」

 

 

 

そこには先程までいなかったはずのスイカサイズ並みの光る物体が浮遊しつつこちらに話しかけて来ていた。しかも変な言葉ではなくれっきとした日本語で、更にはまるで人が話しているかのように……。

 

 

 

櫻木「…あんた何者だ?(少し警戒しつつ)。」

 

 

?「何者…ですか。確かに名を名乗らないのも失礼ですな。まあだからといって名前はないんですが…、とりあえず精霊の一人とでも言っておきましょうか。」

 

 

坂出「精霊…ですか…、あの化け物達の仲間ではないんですね…?」

 

 

?「当たり前ですよ。アイツならすでに襲っていますしこのような見た目はしていません、それに堀白研究員にこっちで言う技術提供をしたのは私なんですから。」

 

 

結華「…大丈夫…!この光は敵じゃない、雰囲気でなんとなくだけど伝わってくるから(AA-12を降ろして)。」

  

 

 

敵じゃないと言われても簡単に信用が出来るはずもなくしばらく警戒したような雰囲気を見せていた秋野達であったが結華と羽南にはそうでないことが分かるようでお互い構えていた武器を降ろす。

 

 

 

精霊「ふむふむ、貴方達が選ばれた勇者のうちの二人ですか。まだお若いようですが雰囲気で激戦を繰り広げてきたというのはひしひしと伝わってきますよ。」

 

 

湯月「…貴方がビデオで堀白研究員の言っていた正体ね。まさかここで出会うとは思わなかったけど……、それで彼はここにいるの?」

 

 

精霊「ほう、そちらの女性は動じてませんなー。流石と言ったところでしょう…って話が脱線しましたな、堀白様は生憎外で掃除中に天災に見舞われ…そのままですな。」

 

 

秋野「…なんかしっくりこないやられ方ね…。予言を聞いていた割には…。」

 

 

精霊「予言していたとはいえ、私でもいつ起こるかなんて正確には把握が出来ていませんでしたからね。そもそもあっちのから技術を持って逃げるのが精一杯でしたし…。」

 

 

 

湯月だけは落ち着いたような表情で話しかけつつ堀白の居場所を尋ねるが案の定精霊からはすでにこの世からはいないという返答が帰ってきた。どうやら予言は出来ても正確な日付を把握出来るわけではないようで彼もそこまでは対処出来なかったのだろう。 

 

 

 

精霊「っとと…話が逸れましたな…。彼がいなくなっても私がここにずっと居たのも貴方達にあの化け物の正体を語るため、そして彼らに対抗するための力をお伝えするためです。……堀白様が私の願いで作り上げてきたものを……。」

 

 

湯月「それじゃ…お願いしようかしら?彼が何を伝えたかったのか……そして、あの化け物達の正体とその目的も……。」

 

 

精霊「えぇ…それではお話しましょうか……。彼らの正体……そして堀白様が作った「勇者システム」というものも……。」 

 

 

 

 

 

 

そう呟くと精霊と言う光の発光体はまるで人がしゃべるかのような口調で静かに話し始めていくのであった……。






第八話 滅びの遣い
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