僕は逆走してアスカを救う! ~シト逆転~ リバース・オブ・エヴァンゲリオン The 3rd 作:朝陽晴空
僕は碇シンジ。
エヴァ初号機パイロット。
さっきまで初号機に乗って白いエヴァ達と戦っていた。
ミサトさんから聞いた話だと、白いエヴァ達は、ネルフのみんなを殺した悪い奴らの仲間らしい。
でも奴らの正体なんてどうでもいい。
奴らはアスカの乗る弐号機を、持っていた槍で串刺しにした、憎むべき『敵』だ。
だけど量産機が羽を伸ばして空に浮かび上がると、初号機も羽を広げて翔び上がった。
その後、目の前が真っ白になった。
気が付いたら頭上に星空。
足元には白い砂の砂漠が広がる。
周りには地平線しかない。
静かな世界に立っていたんだ……。
「えっ、あそこに倒れて居るのは……アスカ?」
辺りを見回すと、白い砂漠の中に落ちている、【赤い物】を見つけた。
あの赤いプラグスーツと金色の髪アスカに間違いない。
アスカを見つけた僕は白い砂を撒き散らしながら、アスカの元へと走る。
だんだんと近づくにつれて、アスカの赤い部分が多い事に気が付いた。
倒れていたアスカは……全身から血を流していたんだ……。
それはきっと、弐号機が槍で滅多刺しにされたせいだ。
「シンジ……」
アスカがそう話すと、口の端から血の筋が垂れる。
出血をなんとか止めようと考えたけど、何もできない。
自分の着ているプラグスーツを破ろうとしたけど、僕の力で破れるものじゃない。
アスカはそんな僕の手を止めるように押えた。
「今度は助けに来てくれたんだ……」
「うん、ミサトさんと約束したんだ、アスカを助けに行くって」
「アンタ、らしいわね……」
アスカは口からさらに血を吐き出した。
口の周りがさらに赤く染まる。
「アスカ、それ以上喋っちゃダメだ!」
「ありがとう……、シ、ン、ジ」
最後の力を振り絞ったアスカは僕に向かって微笑むと、ぐったりと体の力を抜いて目を閉じた。
「アスカ、目を開けてよ、アスカっ!」
身体を強く揺さぶって呼びかけても、アスカは全く反応を示さなかった。
抱き締める身体に残る温もりが、アスカが生きていた事を感じさせた。
「僕がグズグズしていないで、もっと早くアスカを助けに行けば……うぉぉっ!」
腕の中でアスカの身体はどんどん冷たく硬くなっていく。
そんな僕の前に、青白い幽霊のように二人の人影が浮かび上がった。
いつもの服を着た父さん。
もう片方は綾波……? いや、違う。
【00】と書かれた白いプラグスーツを着ているけど、大人の女性だ。
「父さん……生きていたの?」
二人とも身体は幽霊のように透き通っている。
でも僕は間抜けな質問をしてしまった。
「シンジ、お前は新たな世界を創造する力【アディショナル・インパクト】を手に入れた」
質問に答える代わりに、父さんはスッと腕を僕に向かって突き出した。
すると目の前にオレンジ色に光る野球のボールほどの球体が出現した。
「これはサードインパクトによってL.C.L.と化したヒトの結晶。この力を使えば、新しい世界の創造主になれるわ。そうすれば、大地も建物も、シンジの思いのままよ」
父さんの隣に立つ女の人の優しい声。
きっとこの人は母さんなのだと思った。
こんな状況じゃなかったら、再会を喜びたいところだけど……。
「新しい世界なんて要らないよ! 僕はアスカが……この腕の中に居るアスカが好きなんだ! 自分でアスカを創るなんて……嫌だよ!」
ほとんど体温を失いかけているアスカをさらに強く抱いて、僕は叫んだ。
しばらくの間、沈黙が流れる。
幽霊のように透き通った父さんと母さんは、無表情のままだった。
「ならシンジの望むようにその力を使いなさい」
抑揚のない声で母さんはそう言った。
怒っているのか、喜んでいるのか、悲しんでいるのか。
感情は全く感じ取れなかった。
目の前に浮かぶL.C.L.の球は様々な方向にオレンジ色の光を放ち始めた。
頭上に広がっていた星空は青空になって、まるで夜が明けたかのようだった。
もし、自分の願い通りに時間を巻き戻す事が出来るのならば。
この胸に抱いたアスカとも離れ離れになってしまう。
「アスカ、今度は絶対に助けるから」
僕は抱きかかえていたアスカに顔を近づけて思い切りキスをした。
二度目のアスカとのキスは、冷たい鉄を舐めたような死の味がした。
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