僕は逆走してアスカを救う! ~シト逆転~ リバース・オブ・エヴァンゲリオン The 3rd   作:朝陽晴空

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第十七話 四人目と不適格者

 今夜はいつも多忙なミサトさんも早めに帰宅。

 家族揃って楽しい夕食、のはずだったのに……。

 

「えっ、綾波をフォースチルドレンに?」

「そう、零号機に乗ってもらうわ。渚君は肆号機に」

 

 彼女から話を切り出された僕は驚くと同時に腹が立った。

 綾波に危険にさらしたくないために逆行までしてきたのに、それをふいにされたからだ。

 

「シンジ君、怒らないで。これはレイが強く希望してのことなのよ」

「綾波が……?」

「守ってもらっているだけで、何もできないっていうのも辛いってことよ! ねえ、レイ?」

「うん」

 

 アスカに声を掛けられた綾波は、こくりとうなずいた。

 僕と合体している間、彼女はそんな気持ちを抱いていたのか。

 

「謝るくらいなら、たまにはアタシに主導権を譲りなさい」

「う、うん、考えておくよ」

 

 今まで彼女が動いていたら引き起こされていたであろうトラブルを思い浮かべて、あいまいな返事をする。

 戦略自衛隊相手にA.T.フィールドをぶつけて脅迫しようと提案してきたこともあった。

 

「もしかして、参号機にも誰か乗せるんですか?」

「いいえ、適格者が居ないし、それはないわ」

 

 昔のネルフだったら、強引に適格者を増やそうとしたかもしれない。

 それならトウジがエヴァのパイロットになることはないと僕達は安心した。

 でも次の日学校に登校すると、思いもよらない事態になったんだ。

 

 

 

 

 

 

「ミサトさん、俺を参号機のパイロットにしてください!」

 

 ミサトさんの運転する車で学校まで送ってもらった僕達。

 (ちなみに綾波も一緒に乗るようになったために、彼女は四人乗りの車に買い替えた) 

 駐車場で待っていたケンスケはなりふり構わず、土下座してミサトさんに頼み込んでいた。

 周囲のクラスメイト達も、彼の行動を応援している。

 

「あたしもパイロットになって、渚君を守りたいです!」

 

 正座したケンスケの隣に割り込んできたのは、霧島さんだった。

 思わぬ事態にどよめきの声が上がる。

 さらに山岸さんが息を切らせて走ってきた。

 

「私をエヴァに乗せて下さい」

「ええーっ!?」

 

 大人しそうな彼女までもがそう言うと、駐車場は混乱の極致となった。

 三人に懇願されたミサトさんは額に手を当ててため息を吐き出した。

 確かに三人ともエヴァを起動させることはできるかもしれない。

 でも僕たちと同じように戦えるかどうかはわからない。

 

 

 

 ケンスケと霧島さんは平凡な中学生だ。

 僕も人の事は言えないけどね……。

 カヲル君は上手く使徒の力を抑え込んでいるけど、山岸さんに憑依している彼女が同じことができるかどうか分からない。

 エヴァの暴走を引き起こしてしまう可能性だってある。

 でも三人ともエヴァに乗りたいという気持ちは本物だ。

 だからこそミサトさんは生半可な返事ができないと思ったみたい。

 

「あなたたちの気持ちは分かりますが、エヴァには適格者しか乗る事は出来ません」

 

 

 

「どういうことですか、ミサトさん!」

「シンジ君達には生まれ持ったエヴァに乗るための資質がある、それは努力ではどうにもならないということです」

「くそっ! 何でだよ!」

 

 ミサトさんが冷酷に言い放つと、ケンスケはコンクリートの地面を殴って悔しがった。

 霧島さんも山岸さんも歯を食いしばって、拳を握り締めている。

 学校の生徒達の面前で断言したのは、きっと他にもエヴァに乗りたいと思っていた人の心を折るためだ。

 僕たちエヴァのパイロットは14歳の中学生。 

 もしかして自分もエヴァに乗れるかもしれないと希望を持つ人が出てくるのは仕方のないことだ。

 ミサトさんはそんな希望の芽をバッサリと切り捨てたんだ。

 そしてきっと僕たちを嫉妬から守るためでもある。

 絶対にエヴァに乗れないと分かれば、僕たちにライバル心を抱くこともない。

 その日からケンスケも、熱狂的にエヴァに乗りたいと口にしなくなった。

 

 

 

「第壱中学校の生徒達は、みんな適格者候補なんでしょ? 使えるものは何でも利用するんじゃなかったの?」

「頭数ばかり増やしても仕方ないわ、船頭多くして船山に上るよ」

 

 アスカの言葉に、リツコさんはそう答えた。

 新しくパイロットを育成するのには資金が掛かるというヴィレの財政事情もあったようだ。

 ミサトさんが身も蓋もない言い方をすると、ケンスケと山岸さんはアイドルとしての商品価値を見い出せないらしい。

 裏を返せば、僕やアスカ、綾波やカヲル君はアイドル並みのルックスと華を持っていることになるけど……複雑な気分だ。

 

 

 

 それなら霧島さんは?

 乗り物の操縦経験があるようだし、ミサトさんも彼女の風貌には問題はないと考えていた。

 でも加持さんに彼女の素性を探らせたところ、霧島さんは戦略自衛隊、日本政府、日本重化学工業共同体の三重スパイだった。

 ヴィレの最新技術を盗む密命を帯びた人間を重要な施設内に入れるわけにはいかない。

 彼女がカヲル君に近づいたのも、それが目的だったみたいだけど、アスカの見立てによれば霧島さんは今では本気でカヲル君のことが好きになっちゃったみたいだ。

 

 

 

 フォースチルドレンに選ばれた綾波は、僕たちと同じハーモニクステストや訓練を受けるようになって喜んでいた。

 ミサトさんはエヴァに乗るだけで何もしなくていいとは言っていたけど、綾波はやる気満々だ。

 広報活動のために、定期的に行われるエヴァの撮影会でも、綾波はエヴァのパイロットとして周知されるようになっていた。

 零号機に乗った綾波の初めての実戦が楽しみだと声も上がっているけど、僕とアスカは複雑な心境だ。

 

「綾波が無茶をしないように気を付けないとね」

「そうね、アタシ達の妹だから」

 

 同じ家で暮らしている間に、僕とアスカには綾波を妹のように思う気持ちが芽生えてきた。

 それは同時に、ストッパーとしての役割が少し薄れたことを意味する。

 合体するほどのディープキスはしないけど、回数も増えてきていた。

 

 

 

 世間では四人目のエヴァパイロットが誕生したと盛り上がっているけど、僕たちの気持ちは沈んでいた。

 守るべきものが一つ増えてしまったのだから。

 カヲル君が零号機を守ってくれるとは言ってくれたけれど……。

 次に現れる使徒のことを考えると、僕達は不安でたまらなかった。

 

「大丈夫、いざという時のためにダミープラグの開発に着手したわ」

 

 そう言って三人の女性と一緒に発令所にやってきたのはリツコさんだった。

 ダミープラグが完成すれば、僕たちが乗っていなくてもエヴァは戦い続けてくれる。

 

 

 

 前の世界ではトウジの命を奪うことになった忌まわしきダミープラグ。

 でもこの世界では綾波やみんなの命を守る頼もしい存在になって欲しい。

 ダミープラグの開発を行うのはマンツーマン。

 零号機のダミープラグはリツコさんがしてくれるのなら安心だった。

 

 

 

 僕はリツコさんが連れてきた三人の女性のうちの一人、カエデさんとペアを組むことになった。

 ダミープラグ開発のため、僕とカエデさんはたくさん話をする必要に迫られた。

 僕の隣の席に座るアスカの刺すような視線が痛い。

 家に帰ったら、いつもよりたくさんキスをしないといけないな、と僕は思うのだった……。




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