僕は逆走してアスカを救う! ~シト逆転~ リバース・オブ・エヴァンゲリオン The 3rd   作:朝陽晴空

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第十四話 ヴィレ、トップアイドルの座

 アスカと夢のようなデートが終わってからしばらくして、日常を取り戻した僕達。

 ミサトさんは夕食の席で、得意気にポスターを披露した。

 ポスターは初号機、弐号機、零号機が背景。

 プラグスーツ姿の僕とアスカ、カヲル君、綾波が描かれている。

 

「原画はサ・ダモト画伯にお願いしたわ。カッコよく描けているでしょう?」

「ちょっと僕は美化されすぎてませんか?」

「そんなことないわ、真面目になったシンジ君の表情って、結構イケてるわよ」

 

 素早い動きでアスカが、ミサトさんからポスターを奪う。

 さっそく自分の部屋に飾るようだ。

 

 

 

「そう言えば、アタシのフィギュアまで売られているみたいじゃない。プラグスーツの所々が破けている、いかがわしい感じの物が」

「アレはシンジ君とアスカの話を聞いて、あたしの脳内イメージが膨らんだゆえの産物というか……」

 

 ミサトさんは露骨に目を反らして、詰問するアスカから逃れようとしている。

 意外にも助け舟を出したのは綾波だった。

 

「エヴァの維持には国家予算並みのお金がかかるの。葛城司令は頑張っているのよ」

「そうだったんですか!?」

 

 僕も心の中で、使徒との戦いをエンターテイメントのショーとした、ミサトさんのことを少し軽蔑していた。

 だけど今の話を聞いて、その評価を改めるべきだと僕は考えた。

 彼女はたくさんの資金を集めるための戦いもしているんだ。

 

 

 

 それでも僕とカヲル君のボーイズラブの薄い本がヴィレ株式会社から出版されて居たり、アスカや綾波のフィギュアが発売されているのは複雑な心境だ。

 さらに『新世紀エヴァンゲリオン』というアニメや漫画もメディアミックス展開される。

 ア・ンノという著名な監督が作って、興行収入は百億円を超えると予想されているようだ。

 

「それでさらなるテコ入れのために行われるのがエヴァパイロットの人気投票よ」

「どういうことですか?」

「使徒と戦う姿がウケてあなた達にも固定のファンが付いたわ。この機会を逃さず、世界のヲタク共から資金を巻き上げ……ゴホンゴホン、提供してもらうのよ」

 

 ミサトさんは人差し指を立ててウインクしながら、自信たっぷりに言い放った。

 アスカは呆れかえった顔で盛大なため息をつく。

 

「推し活を促進して、さらにお金を投下させようってえげつない作戦ね」

 

 

 

「人気投票だからって特別に意識する必要はないわ。アスカとシンジ君はいつも通りイチャついていれば良いし、レイも無理に笑顔を作ることもない」

「ちょっと、アタシ達をバカップルみたいに言わないでよ」

「実際のところ、そうなんでしょう?」

 

 ミサトさんにやり込められたアスカはそれっきり黙り込んでしまった。

 明日からの学校が心配だ。

 カヲル君には同じクラスの女子の親衛隊が居るし、アスカを推している男子も多い。

 僕とアスカは公認のカップルになっているけど、どんなことが起きるか分からない。

 

 

 

 

 

 

 投票期間は一ヵ月。

 一日一人一票が投票できる仕組み。

 加持さん達に付き添われての通学中も注目を浴びる。

 教室でも休み時間はひっきりなしに僕の席にみんなが集まってくる。

 困ったのは、女子生徒が僕を応援する度に、アスカからの嫉妬のこもった視線が飛んでくることだ。

 僕が鼻の下を1mmでも伸ばしたら、1m先からアスカのパンチが飛んでくるだろう。

 これからしばらく息苦しい生活が続くのかと思うと、ウンザリして来る。

 

「碇君、お弁当にタコさんウインナーを作っているんだ」

「凄え」

 

 昼食の時間にまで注目を浴びることになり、僕がアスカと綾波の分までお弁当を作っていることがバレてしまった。

 これはアスカにとってはイメージダウンにもなるかもしれない出来事。

 彼女は大急ぎで洞木さんに料理を習うことになったんだ。

 

 

 

「ほら、アンタの分のお弁当。このアタシが作ったんだから、感謝して食べなさい!」

「あ、ありがとう……」

 

 学校の教室という公衆の面前で僕にお弁当を渡すのは、アスカの得点稼ぎなんだろう。

 こっそりと渡してくれれば周りのみんなに気付かれなかったのに、恥ずかしいよ。

 でもアスカの指に巻かれていたばんそうこうから健気な気持ちが伝わってきた。

 野菜の形は整っていたけど、一回り小さい。

 たぶん洞木さんが切り直してあげたのかな?

 だけど人気投票のおかげで、アスカの手作りお弁当が食べられることになるとは嬉しい驚きだ。

 

 

 

 いつも教室で本を読んでいた綾波の行動にも変化が表れる。

 彼女はアイドルには笑顔が必要だとミサトさんの教えを受けて、休み時間には女子トイレの鏡に向かって笑顔の練習をするようになったみたいだ。

 綾波は真剣に人気投票を盛り上げて、エヴァの資金獲得の手助けとなるべき努力をしている。

 男子達は女子トイレに近づくこともできずに涙を飲んでいるみたいだけど、そのいじらしい姿に、女性票も伸びそうな気配だ。

 

 

 

「僕も人気投票に向けて何か一芸でも身に付けるべきなのかな……」

「君はそのままの自然体でいいよ。余計なことをしない方が良い。お笑い芸なんかしたら、それこそドン引きして逆効果だよ」

 

 僕の考えを読んでいたかのようにカヲル君は忠告してくれる。

 

「それよりも君は何か楽器が演奏できるかい? よかったら僕と一緒にセッションしないか?」

 

 僕はカヲル君の提案を受けた。

 彼がピアノ、僕がチェロのデュオユニットを結成。

 音楽室で定期的にコンサートを開いてポイント獲得を狙う。

 

 

 

 そして投票日の十五日はバレンタインデー。

 世界中でチョコレートが飛ぶように売れて、日本へと送られてくる。

 ヴィレ株式会社はチョコレート業界に大きな力を持つように事前に工作。

 チョコが売れる度にロイヤリティ収入が得られる仕組みを作っていた。

 ちゃっかりしているなミサトさん。

 もしかしたら冬月先生の策略かもしれない。

 

 

 

 中間選挙の象徴ともいえるバレンタインチョコ。

 最近は同性でもチョコレートを贈るのに抵抗が無い人が増えているから、アスカや綾波が有利かと思ったけど、僕のところにもトラックに積みきれないほどのチョコレートが配送された。

 なぜか男性からのチョコレートも多いことに僕が不思議に思っていると、ケンスケが理由を教えてくれた。

 なんとネットに僕の写真を加工して、髪の長い女性にしたものが出回っていた!

『性転換 碇シンジ』で検索するとファンアートまで出てきて、僕は得体の知れない寒気を感じた。

 でもヴィレの人気投票を盛り上げるためだ、僕が我慢するしかない。

 

 

 

 そうして僕にとっては地獄のような後半戦が過ぎて行った。

 加持さん達は過激なファンが僕達に危害を加えないか、影で守ってくれていたようだった。

 人気投票が終われば、とりあえず過熱しすぎたファンの心理は収まる。

 ア・ンノ監督も『新世紀エヴァンゲリオン』の続編は作らないと言っていたし、前のような平穏な生活に戻れるように祈りたい。

 

 

 

 人気投票の結果発表は新東京ドームサッカー場で行われることになった。

 他にも施設があるのに、どうしてサッカー場でするのか理由が分からなかった。

 観客席には数万人のサポーターが詰めかけていた。

 入場料もエヴァのメンテナンス代に充てられる。

 今日だけでざっと数千万円だ。

 

 

 

「さあ皆様、お待たせしました! 一か月に及ぶ人気投票の結果発表です!」

 

 サッカー場のピッチに設けられたステージの真ん中で、MCのミサトさんが声を張り上げる。

 得票数の状況は公式には一切公開されていない。

 SNSなどで憶測が飛び交うだけだ。

 下馬評ではアスカが優勝だとされているが、結果はどうなるのか……。

 ミサトさんと同じステージに立っている僕達四人は、落ち着いて発表の時を待った。

 照明が消されて暗くなり、ドラムロールの音が鳴り響き、緊張感が高まる。

 

 

 

「得票数一位は! 『ラブラブアスカシンジ』でした!」

「ええーっ!?」

 

 観客席から落雷のようなどよめきの声が上がる。

 僕達も驚いてミサトさんの方に振り向いた。

 

「静粛に! 理由を説明します! 今回の人気投票では『アスカ×シンジ』と書かれた用紙が一番多かったのです。本来ならば無効票となるものですが、特例として有効票と致しました!」

 

 すると僕とアスカの二人にスポットライトが当てられる。

 こうなっては手をつながないわけにはいかなくなった。

 

「さあ、勝者のカップルに祝福を!」

 

 最初はミサトさんの提案に戸惑っていた観客席からもパラパラと拍手が上がり、そのうち地鳴りを思わせるような大きなスタンディングオベーションになった。

 

 

 

「それでは、『LAS』優勝記念イベントして、シンジ君とアスカには合体してもらって、人間大砲の弾となってゴールインしてもらいましょう!」

 

 ミサトさんはこのためにサッカー場を選んだのか。

 サッカーゴールにはマットが敷かれて、人間大砲用の大砲がゲートから現れる。

 そして観客席から湧き上がる「合体!」のコール。

 

「アスカ、どうしよう?」

「ここまで来たら後には退けないでしょ!」

 

 アスカの方から僕に向かってディープキス。

 数万人が見つめる中で僕たちは合体した。

 服は僕が着ていたものが継承されて、アスカも服ごと僕に吸収される。

 

「合体したシンジ君には人間大砲の中へと入ってもらいましょう!」

 

 

 

 僕はお笑い芸人タレントじゃないんだから、人間大砲なんてやったことがない。

 ミサトさんはA.T.フィールドがあるから軟着陸できるだろうと軽く言ってくれるけど。

 こんなくだらないことに貴重な僕の力を消費させないでくれるかな。

 僕が中に入った後、火薬に点火されて人間大砲が発動する。

 轟音と共に僕の身体は宙を飛び、サッカーゴールへと飛び込んだ。

 

「シンジ君とアスカがめでたくゴールインしたところで、今回のイベントは終了させて頂きます」

 

 

 

 こうしてヴィレの社運を賭けた人気投票イベントは終わった。

 傾きかけていたヴィレの財務諸表も一気に改善されたようだ。

 アスカの言う通りバカ騒ぎはこれっきりにして欲しい。

 でもこの時僕たちは、次に現れる使徒が目に見えない強敵だなんてすっかり忘れていたんだ……。




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