僕は逆走してアスカを救う! ~シト逆転~ リバース・オブ・エヴァンゲリオン The 3rd 作:朝陽晴空
間を置かずに連続して攻めてきた使徒だけど、次が現れるまで一ヵ月のインターバルがあった。
僕たちはのんびりと過ごせたかというと、そうじゃない。
ネルフでは大きな政変が起こったんだ。
人類補完計画に必要なロンギヌスの槍。
独断で宇宙空間へと飛ばした件で、父さんは完全にゼーレからの信頼を失ったみたい。
更迭された父さんの代わりに総司令となったのは……冬月副司令だった。
父さんは名前ばかりの名誉司令という閑職に回された。
降格された彼はそれでも復権を狙っているみたい。
でももっと驚いたのは、その後だ。
冬月さんが総司令になると、ネルフにいたほとんどの人が、ゼーレにNOを突き付けたんだ。
ネルフの目的だった人類補完計画に、反旗を翻したみんなは『ヴィレ』と言う組織を作った。
彼もゼーレが推し進める計画には、賛成していなかったみたい。
「えっ、あたしがヴィレのリーダーに!?」
てっきり冬月さんがそのまま新組織のトップに立つと思っていたミサトさんは目を丸くしていた。
家に帰った彼女に話を聞かされた僕達も驚いた。
「これが新しい組織、ヴィレのロゴマークなの?」
「そう、冬月さんが心のこもった組織になるように、って願掛けして書いたみたいよ」
ロゴマークには見方によっては『心』という漢字に見える達筆の象形文字が使われている。
「それでミサトはヴィレのリーダーを引き受けたの?」
「あたしは老練な副司令になってほしいと思っているんだけどね、新しい時代は若い人間が切り拓くものだって彼は言うのよ」
ミサトさんはそう言って、ワインをくいっと飲み干す。
憂鬱そうな彼女の表情を見るなんて、久しぶりだ。
前の世界で加持さんの死の一報を聞いたミサトさんは、ひどく落ち込んでいた。
「意外ね」
「やっぱりあたしに総司令なんて似合わない?」
「ううん、へたり込んでいるミサトが」
「へっ?」
アスカがそう言うと、彼女は裏返った声を漏らした。
まだ知り合って日の浅い僕たちだけど、腹を割って話せるようになったかな。
「だって、ミサトはどんな時も自信満々じゃないの」
「リツコやあなた達があたしを支えてくれているからよ」
「それがリーダーとして大切だと思うけど」
僕も声には出さなかったけど、アスカの意見に賛成して大きくうなずいた。
父さんに大きく欠けていた部分をミサトさんは持っている。
作戦部長の器に収まる人じゃないと僕も思っていた。
「じゃああたしがとんでもない作戦を立ててもOK?」
「リツコさんに止めてもらいます。暴走するとしゃれにならないですから」
「あたしは怪獣か!」
突っ込みを入れた僕。
そういって僕の背中に飛びかかるミサトさん。
ギュッと胸が押し付けられる。
「あーっ! 何をどさくさに紛れてシンジに抱きついているのよ!」
アスカがやきもちを焼いて声を上げるけど、背中のミサトさんの感触は気持ち良くて。
耳を微かに揺らす吐息も心地よかった。
「シンジもアソコを大きくしちゃって……! えいっ!」
さらにアスカに正面から抱きつかれてしまった。
至近距離で見る彼女の顔は綺麗だ。
熱烈なキスをした僕たちは、また合体。
「ミサトのヤツ、シンジにこんなに胸を押し付けて……早く引き離しなさい!」
アスカの怒鳴り声が僕の頭に響く。
彼女の意思では体を動かせない。
僕はミサトさんの体を押しのけずに、抱きつかれたままでいた。
「……でも、こんなのも悪くは無いかな……」
ポツリと出たアスカのつぶやきに、はっと気が付いた。
僕たちは両親から抱き締められた経験がほとんどない。
今のミサトさんの温もりを、彼女も感じているんだ……。
これからはキスするだけじゃなくて、手を握ったり、抱き締めたりしてあげよう。
「日本に来て、アンタと同居することになった日の夜、アタシと背中合わせでずっといてくれてありがとね」
「僕が寝たふりをしていたことに気づいてたの?」
「何となくね。あの時シンジが逃げなかったから、加持さんのことでミサトに反発しながらも、同居を続けられたんだと思う」
二人で長めの脳内会話をしていると、ミサトさんはゆっくりと体を離した。
そして僕の頭をわしゃわしゃと撫でて、
「励ましてくれてありがとう。ヴィレのリーダー、引き受ける事にするわ」
と吹っ切れたような笑顔で言った。
ミサトさんはヴィレの総司令となると、リツコさんを副司令として、旧態依然としたネルフへと戦いを挑んだ。
ネルフ本部でも内部分裂が起こり、父さんたちは負けて、施設はヴィレに接収された。
前まではゼーレが資金力でネルフを支配していたけど、今度はクレイディトと言う民間団体が、みんなからお金を集めてヴィレを支える。
クレイディトは予算の透明性を確保するため、クラウドファンディングで資金を募っていた。
ヴィレはネルフと違って、使徒を倒す意思を持った組織として、ネルフとは反対にクリーンなイメージを持たれているようだ。
ミサトさんを旗印とした冬月さんの作戦は大当たり。
負けた父さんたち旧ネルフのメンバーは、しばらくの間、人類補完計画を企てた罪により収監されることになった。
「あの、父さんは大丈夫でしょうか?」
「まだ人類補完計画が遂行できる可能性が残っているうちに、自殺するような人ではないわ。彼の前にユイさんと会えるかもしれないとエサをちらつかせれば、駒として使えるわよ……ふふふ」
笑みを浮かべるリツコさんに、僕とアスカは恐ろしいものを感じた。
父さんは彼女のお母さんにも酷いことをしたんだから、自業自得かな。
しばらく牢屋で頭を冷やすといいよ。
「これからは、あたしの帰りが遅くなる日が続くかもしれないけど、二人きりだからってやり過ぎはダメよ~ダメダメ♪」
おどけてミサトさんは話したけど、気を引き締めないといけないな。
今まで夜は家に彼女がいることが重しになっていた。
キスをして合体しても、ツッコミ役は不在。
回数を重ねるうちに、僕たちはディープキスでなければ、合体までには至らないことに気が付いた。
同じベッドで寝てしまえば、きっと一線を越えてしまう。
止めてくれるミサトさんはもういない。
そこでリツコさんが提案したのが、綾波との同居だ。
彼女が同じ家にいると意識するだけでも、僕たちは踏み止まることができる。
アスカも最初はとても渋い顔をしていたけど、最終的には賛成した。
「本当にいいの?」
「気に入らないけど、ときどきシンジへの気持ちを抑えきれなくなる。部屋に行って襲いかかろう、なんて考えたこともあったわ」
前の世界では、部屋に入るなと扉にプレートまでかけていたアスカだけど……。
ある日の夜、廊下に漏れ出てくる、アスカのあえぎ声を聞いてしまっていた。
「シンジ……、シンジ……」
その時アスカの部屋に踏み込んでしまったら、大変なことになっていただろう。
僕も自分の部屋に戻り、右手でなんとか興奮を鎮めた。
少なくともエヴァのパイロットでいる間は妄想の彼女で我慢しないと……。
朝起きて、顔を合わせたときは、恥ずかしくてアスカの顔を見れなかった。
でも彼女も何も言ってこなかったのは、同じ思いだったからかな。
まさか僕に聞かれていたとは、気が付いていないと思うけど……。
父さんは綾波を目覚めさせるのに大反対したけど、知ったこっちゃない。
総司令になったミサトさんの承認を得て、綾波は零号機の予備パイロットとなった。
カヲル君がいる限り、彼女が零号機に乗ることはないだろう。
目覚めたばかりの綾波は、前に出会った頃のように無表情でいることが多い。
これから彼女に人間らしいことを教える綾波育成計画。
僕たち二人は教育係。
「綾波、お肉ばかり食べているのは良くないよ」
「野菜もバランスよくとりなさい」
前の世界では肉や魚が食べられず、小食だった綾波も、そのうち大食いタレント顔負けになっていく。
身体もふくよかに育っているかもしれないと観察していたら、アスカに弁慶の泣き所を思い切り蹴られた。
「胸をもむのはやめて! 股をまさぐるな!」
綾波はアスカと同じ部屋で寝ることになったんだけど、好奇心旺盛な彼女はアスカの身体にも興味津々。
向かいの部屋から聞こえてくるアスカの悲鳴。
僕も眠れない夜を過ごした。
さらに、驚くべき出会いがあった。
綾波が加わっても、相変わらずアスカと僕の取り合いをしていたカヲル君。
そんな彼が曲がり角で女の子と激突。
ぶつかった女の子の名前は霧島マナ。
彼女はアスカに負けないくらい元気な子。
綾波と一緒に転入生となった彼女は、周囲の女の子のやきもちを気にかけずに、カヲル君に大接近。
彼を質問攻めにしていた。
「あの女、露骨に渚のヤツに近づいて、エヴァのことを聞き出そうとしているなんて怪しいわ。きっと戦略自衛隊のスパイかなにかよ」
アスカの推測は当たっているかもしれない。
ネルフ本部に侵攻した戦略自衛隊とヴィレの関係は、表向き良好。
使徒が実際に現れたから、日本政府も間違いを認めて、使徒殲滅に協力するといっているらしいけど……。
「僕はシンジ君が好きなのに、困ったな」
「それは友達としてって意味でしょ? 私、もっとあなたのこと知りたい」
カヲル君は本気(ガチ)で僕を愛していると話している。
だけど周りのみんなは、冗談として受け止めていた。
ネルフがヴィレに変わっても、僕たちの日常生活には大した影響はない。
ミサトさんが総司令になって家に帰る時間が減ってしまったのは残念だけど、家ではいつもの彼女のペース。
僕とアスカと綾波の三角関係を冷やかしているけど、綾波にはまだ恋というものが理解できていないみたいだ。
「そう言えば、学校で文化祭があるんだって?」
「はい、前の世界では使徒が攻めて来て中止になっちゃいましたけど」
夕食の席で、ミサトさんにそう答える僕。
僕とトウジとケンスケと委員長で、バンドまで組んで練習したんだけどね。
その成果を披露する機会が無くて残念だったかな。
「今度バンドを組むときはアタシをボーカルにしなさい!」
「えっ、アスカが歌うの?」
「なによ、文句でもあるワケ?」
「いや、歌っているところを聞いたことなかったからさ」
まだトウジ達からバンドを組もうと誘われたわけじゃない。
こちらから話を切り出したら不自然に思われるかな?
でも二人は消極的だったころの僕を知らないわけだし……。
次の日学校に行くと、バンドの話は意外なところからでてきた。
洞木さんが歌う曲の伴奏を、アスカに頼んだんだ。
アスカは綾波と霧島さんにも声を掛けて、四人組のガールズバンド『KASH』を結成。
「あれ? アスカがボーカルじゃないの?」
「ヒカリがね、鈴原に自分の歌声を聞いてほしいんだってさ。そこまで言われちゃ、アタシがワガママを通すわけにはいかないじゃない」
アスカはワガママを通す気の強いだけの女の子じゃない。
友達に思いやりを見せる優しい一面もある。
そのギャップに萌えているのかも。
「なによ、その生暖かい目は」
彼女はワザと怒った表情を作るけど、それは照れ隠しだ。
明確に指摘するとパンチやキックが飛んでくるから言わないけど。
楽器の弾き方が分からないアスカ達に指導してくれたのは、青葉さんだった。
彼女たちの中でも、特に綾波の集中力は凄かった。
家にいる時は、ご飯とお風呂の時間以外、片時もギターを離さなかった。
本番前の練習でも、難しい演奏でもよどみなく指が滑らかに動いている。
教えた青葉さんが腰を抜かすほどの腕前まで彼女は上達した。
アスカと霧島さんも綾波に負けないくらい頑張っていたけど。
使徒の襲撃もなく、無事におこなわれた文化祭。
『KASH』の構成は。
洞木さんがボーカル。
綾波がリードギター。
アスカがベーシスト。
霧島さんがドラム。
体育館でのライブは大盛況だった。
アスカが綾波にリードギターのパートを譲ったのは、彼女の実力を素直に認めたからだ。
エヴァに乗って戦う時も、エースパイロットにこだわり過ぎなければいいけど……。
弐号機が無茶をしそうになったら、キ、キスをして止めればいいよね!
ライブの歌に乗せてトウジに思いを伝えた洞木さんは、それから恋人同士として付き合うことになったみたいだ。
内気だった彼女は彼になかなか自分の思いを伝えられなかった。
前の世界では、トウジにきつく当たっていた委員長を見ていたから少し違和感があるけど、二人が幸せになったからいいかな。
ケンスケも心から二人の交際を祝福していた。
「ねえ、聞いた? 夜の校舎に長い髪の女の幽霊が出るって話」
「そ、そんな話をして脅かすなや!」
文化祭もつつがなく終わったある日、朝のホームルームの前にアスカがしたうわさ話。
トウジは関わり合いになりたくないと怖がって教室を出て行ってしまった。
追いかける洞木さんとケンスケ。
「鈴原がホラーが苦手なのは意外ね」
「それで、その幽霊がどうかしたの?」
「見た生徒の話だと、髪を長くした渚に似ていたらしいのよ」
「……気になるね」
「そうでしょ?」
僕はカヲル君のことを知っているようで、知らない。
夜の学校で何かを企んでいるのか突き止めないと。
今夜は綾波も巻き込んで三人で夜の学校を探検することになった……。
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