三門市の何処からでも見えそうな巨大な基地。ショッピングモールの何倍も大きな建物ではC級の正隊員が日夜訓練に励みB級、A級へと成り上がる為のランク戦や
勿論隊員以外にも一般の従業員も多数働いている為合計するとざっと1000人くらいはこの建物の中にいるのではないだろうか。
「クフフ・・・仮入隊試験は合格、当然の結果ですね」
フランがボーダーに入る事を決意した日以来、彼の分の書類も用意し試験に向けて一般教養や面接対策などを教え込んだ。基礎体力は田舎育ちでよく川や山に遊びに行っているので中々動ける方だ。よって勉強の方に全振りしたスケジュールなのでフランにとってこの日々は数日とは言え地獄そのものだったらしい。
ついでに自身、六道骸についてもある程度教えた。最初は幻術の事など信じないだろうと思っていた骸は意外とすんなり信じたフランに拍子抜けした。
現在はボーダー本部内で基礎体力、基礎学力、面接を難なく突破した骸が食堂で紅茶を啜っていた。かなり高得点を出したと自負している。トリオン量も”6”と問題無い。犯罪歴はこの世界ではまだ無い、書類を偽装する為にマインドコントロールしているがバレていないのでセーフだ。
「さて、フランは大丈夫でしょうか・・・」
この数日間勉強したとは言えアホの子のフランが試験に合格するビジョンが見えない。基礎体力はまだしも基礎学力と面接がフランにとっての鬼門だろう。後はトリオン量だが、聞いた話しによると極端に低くなければ大体合格出来るらしい。
「あれ、君は確か・・・・六道君!」
今回はたまたま受験者が多かったのか二つのグループに別れて試験を受けている。骸とフランは別々なってしまった。おそらく一緒に来た事で友人関係だと誤解され不正を防ぐ為の処置だろう。
そんなフランを待っている骸に気づいて声を掛けたのは以前モールモッドから助けて貰った嵐山だった。
「嵐山さんではありませんか。先日はお世話になりました」
「あぁ、気にしないでくれ。当然の事をしたまでだよ」
にこやかな笑顔で話す嵐山は「ここ座らせてもらうよ」と言って向かいの席に座ると再び話しを始めた。
「此処にいるって事はボーダーに?」
「えぇ、今日仮入隊試験を受けましてね。もちろん合格しましたが」
「凄いじゃないか、記憶が無いのに良く受かったね」
嵐山隊には自分が記憶喪失だと嘘を言っている。まさか嵐山が覚えているとは思わなかった骸は内心で驚き、紅茶を啜りカップをコースターを上に置く。
「記憶喪失と言っても一般教養は覚えてますよ。あくまで失ったのはここ数年の記憶らしいですからね」
「そうだったのか。何にせよ、入隊が決まったって良かったよ。困った事があったら何でも相談してくれ」
「クフフ・・・是非ともーー「お待たせしましたー」ーーフラン、遅いですよ」
談笑していると試験を終わらせたフランが戻って来た。他の受験者はもう終わっていると言うのにフランだけやたら時間が掛かっていた。
「すみません、トリオン検査で時間が掛かったんですよー」
「まぁいいでしょう。それでフラン、試験の結果は?」
「余裕で合格しましたー」
筆記試験はマークシート形式だったのでフランは適当に埋めてギリギリ合格し、基礎体力試験は平均以上の結果を叩き出していたらしい。
「えっと、2人は友人かな?」
リンゴの被り物を着用しているフランに不可解な目を向けるが流石はボーダーの顔、直ぐに状況を理解し臨機応変に対応している。
「友人なのではありません」
「師匠はミーの師匠ですー」
「し、師匠?」
数日間みっちり勉強に費やした事でいつの間にかフランは骸を師匠と呼ぶようになっていた。
記憶喪失の人間に小学生ほどの少年が物を教える、奇妙な関係を目の当たりにした嵐山は若干戸惑っている。
「あ、そろそろ失礼するよ。それじゃあ六道君、フラン君、正式入隊日でまた会おう」
仕事の時間なのかやや急いでその場を立ち去る。去り際に「フルーツのコスプレが流行っているのか?」と言っていた気がするがおそらく気の所為だろう。
「そう言えばフラン、何のトリガーにしたんですか?」
トリガーには【
「突撃銃型でアステロイドにしましたー。近接でガンガン削り合うのは面倒なので。師匠は?」
《アステロイド》は特別な効果はないがその分威力が高い通常弾。
「僕はスコーピオンにしました。欲を言えば長ものが良かったのですがね・・・」
《スコーピオン》はいつでもブレードを出し入れ自由、重さもほとんどゼロで手以外のところからブレードを出したりできるし、トリオンの調節によってブレードの形や長さも変えられる。そのかわり耐久力が低いから受け立ちとかすると結構簡単に折れたりもする。
「フランは【
単純にトリガーが無い事で骸が得意とする棒術は封じられた。因みに孤月(槍)を使う隊員はボーダー内に1人いるが、それはA級隊員の特権でオーダーメイドした物なので、C級、B級は使用出来ない。A級以上になればトリガーを自分好みに改造出来るらしい。
「師匠なら幻術使えるしどのトリガーでも嫌がらせ出来そうですよねー」
「クフフ・・・術士は嫌がらせしてなんぼですからね」
怪しい笑みを浮かべアジトへ帰ろうとする2人。
骸は気付いていた、このフランが実は歴代マフィア最高クラスのとんでもない才能を持っている事を・・・
一つ予想外だったのはその才能はマフィア間だけでなく”ボーダー”にとっても言えることだ。その事はまだボーダー本部上層部しか知らない事実だった。
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ボーダー本部会議室、中央に大きな長方形のテーブルにはそれぞれ責任者クラスの人物が集まっていた。ここでは日夜様々な議論を繰り広げられている。現に先程まで”玉狛支部”が
会議も一段落し数分の静寂の中、最初に口を開いたのはボーダー本部司令、つまりボーダーの最高責任者である城戸正宗だった。
「今期の新規隊員だが、とんでもない逸材が入隊したらしいな?」
「えぇ、おかしな被り物をしていますがボーダーの歴史を遡ってもこれ程の者は・・・」
メディア対策室長の根付は冷や汗を掻きながら受験の結果用紙に目を光らせる。
受験者 フラン
基礎学力 22/100
基礎体力 73/100
トリオン量 27
「これ程のトリオン量・・・やはり特例で昇級させその力を発揮させるのが良いだろう。基礎学力は酷いものだが、この身体能力ならA級B級でもやって行けるだろう」
「彼は既にチームを組んでいる。それにその提案には乗らないと言っているらしいじゃないか」
開発室長の鬼怒田の言葉に異議を申し立てるのはボーダー本部長の忍田真史。
現在でボーダートップのトリオン量は14なのでフランの27という数値はボーダーにとって重宝すべき物、放ってはおけない人物だ。
「一緒に来ていた六道骸とか言う奴だろう?あんな何処にでもいる様な奴と組ませるよりもB級上位やA級の部隊に入れた方がより実力を発揮できるに決まってるだろう!」
「彼の意志を尊重すべきだ!」
忍田の発言で議論がヒートアップし鬼怒田も反射的に椅子から立ち上がる。
「まぁまぁ2人とも落ち着いて。確かに鬼怒田さんの言う事は一理ある、だが無理矢理従わせて士気が下がっては元も子もない。ここは1度自由にさせてあげましょう。六道君もトリオン量はやや低めだが基礎学力、基礎体力ともにかなり優秀な成績を収めている。十分期待に値する隊員だと私は思いますよ」
外務・営業部長の唐沢は鬼怒田を宥める、渋々納得する鬼怒田は再び椅子に座り腕を組む。
「その件はもういい、後数時間で遠征部隊が帰還する。それまでは各自仕事に取り掛かれ。以上、解散だ」
今夜、忍田と玉狛支部長の林藤を抜きにした会議で、近界へ遠征に行ったボーダーの最精鋭部隊による玉狛支部の
しかしそれはボーダーのあるS級隊員によって阻止されたという事は骸やフランは知る由もなかった。