妹系勇者ちゃんが僕の水浴びを覗いてくる件   作:ちくわサンド

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魔法(続)/面白い男

シラユキさん曰く、「魔法の訓練は精神の筋トレ」だそうだ。シラユキさんみたいな華奢な人が筋トレって言うのが面白くて少し笑ってしまったのは内緒だ。

 

最近、なんとなくその言葉の意味がわかってきたような気がする。

 

魔法は体力や筋力と似ている。

毎日コツコツやらなければ衰えるし、きちんと鍛え続ければだんだんと強くなってくる。

 

水や火を操ったり、風を起こしたり、岩を砕いたり重いものを振り回したり。意思、もしくは気力と言った方がいいかもしれない。

 

湯水を散布させるのに大した力はいらない。逆に、重い剣を飛ばして操り、攻撃するにはそれ相応の力を込めるという意思を、強く頭にもつ必要がある。

 

では、その筋トレとは何か。

 

簡単に言うと、「腕相撲」だ。

お互いに力を入れあい、ねじ伏せた方の勝ち。

 

実際の筋トレと違うのは、腕立て伏せのように一人でやるよりも互いにぶつけ合った方がよいということ。

 

 

たっぷりと距離を取ったシラユキさんが、自身の身長と同じくらいはある杖を構えた。

距離ができて小さくなったシラユキさんの動向はこちらから視覚で捉えることは難しいが、彼女が魔法を使うさまは傍で何度も見てきた。目に映らずとも、どんな振る舞いをしているかはありありと分かる。

 

シラユキさんの、普段どこを見ているともつかないぼんやりとした目線が、強くこちらを向いているのが、目ではなく肌で分かる。

 

『静まれ。』

 

シラユキさんの短い一言。その言葉は僕に向けられたものではない。

先ほどから騒がしくこの高原に吹いていた、頬を撫でる風に向かってだ。

シラユキさんの周りに不自然な風の淀みができる。

 

『黙れ。』

 

動きを整えられた風の淀みは、その一言で動きのみならず、まるで口を縫い付けられたようにその音すらも上げなくなった。半径にして10mほど。そこでは、まるでよく訓練された兵隊が整列しているかのように秩序正しく、強風は列を正し、沈黙し、彼女の命令通り待機している。風は彼女の言葉を、まるで王が家来に命令するかの如く聞き入れ、背筋を正して拝命している。僕が同じように言葉を紡いでも、あの10分の1だって再現できないだろう。

 

今日は風が強い。この手合わせは苛烈になるだろうな、とやや現実逃避気味に思う。微風くらいの日でもいい勝負をするのがやっとなのだ。

 

目の前のプレッシャーに気圧されそうになり、頬を汗がつたる。たった一言であれほどの用意をしてしまう彼女の力量にはいっそ惚れ惚れするが、いつまでもぼんやりしてるわけにはいかない。僕も準備をする。目を閉じ、できる限り意識を注いで、口を開いた。

 

『雨が降り、川が溢れ、風が吹いてその家を襲っても、倒れなかった。岩を土台としていたからである。』

 

彼女より言葉数は多く、ゆっくりと唱える。実践ならそうも言ってられないが、これくらいは許してほしい。僕の足元がぐらりと揺れ、地面が隆起する。そのまま僕の正面に半球体の形をした岩の盾が出来上がった。丁度5人くらいが入りそうな盾。僕が使い慣れた形、使い慣れた大きさのものだ。

 

正面は最も厚く固く、左右からの攻撃には風よけのような形を作る。背中ががら空きだが、今回はいいだろう。作った後で、星型要塞みたいな方がよかったかなと思ったが、後の祭りである。

 

この防御は正面からの遠距離攻撃に対しては有効だが、当然その性質上正面の視界が遮られる。つまり、彼女がいつ始めるか、僕は分からない。

 

集中を切らさず、待つ。

 

彼女の「じゃあ、いくよ」という、聞こえたか聞こえていないか分からない声が、開始の合図だった。

 

 

直後、僕の正面ど真ん中にひびが入った。

割られる、と思い、無意識に足が一歩下がる。なぜ。早すぎる。いつもなら数十秒は持つはずなのに。

 

彼女の風は一直線に、まるで剛力の戦士が重槍を投擲するかのごとく、僕の盾に突き刺さる。

ほどなくして、同じ場所、同じ大きさに二発目が撃ち込まれる。寸分の狂いもなく正確に。突き刺さった風の槍は僕の盾にダメージを与えると、まるで糸の切れた人形のように解け、ただの空気になる。

 

三発目を耐えたタイミングでその理由が分かった。いつもよりも攻撃が細く、一点に集中されているのだ。

 

以前遠征に行ったとき、体から生えた針を飛ばす魔物と闘った。その時の攻撃に似ているのだ。最も、魔物なんかよりこちらの方が断然威力があるせいで、それを模倣しているとはすぐには気付けなかった。恐らくその復習をしてくれているのだろうが、相変わらず手加減の下手な人である。

 

『恐れるな、私があなたと共にいる。』

『私は勝利の右手で支える。』

 

二つ、僕が汎用としている補助の魔法を唱える。

 

ひびが入るダメージと、補助によって治る修復がようやくトントンくらいだ。

 

誤解のないように言い訳しておきたいのだが、これは僕の魔法が弱いわけじゃない...と思う。僕だって一応勇者パーティーの一角であり、出会ったころから比べたら見違えるほどの研鑽を積んできた。並大抵の人間の防御魔法だったら初撃で貫通されていたと自信を持って言える。

 

彼女の魔法が強すぎるのだ。

 

ぴしぴしと、嫌な音がする。土の欠片が跳ね、僕の頬を掠めた。

 

どのくらい時間が経っただろうか、5分くらいは経っていてくれると嬉しいのだが。

 

これは「耐久訓練」だ。文字通り、僕の盾の強度を鍛えるための訓練。僕のすべきことはただ一つ、彼女の魔法を耐え抜くこと。本来ならば僕が防御、彼女が攻撃と役割が明確に分けられているだけに、僕たちはその役割に特化している。初めは吹けば飛ぶような弱さだった盾は彼女と訓練を重ねる過程で見違えるほど強くなった。自惚れと言われればその通りなのだが、この強度で魔物の強烈な一撃からパーティーメンバーを何度も守ったという自負もある。

ただ、そんなものはまだ甘いと言わんばかりに、まるで修行を始めたばかりの頃のようにバカスカとこちらにダメージを与えてくる彼女。その姿は見えないが、絶対いい笑顔を浮かべて嬉々として僕に魔法を撃ち込んでいるに違いない。彼女のSっぷりは何度も見てきている。

 

東国に生まれ、西国に育ち、両国の魔法体形を網羅し、ありとあらゆる破壊のための魔法を手中に収めていると言われる鬼才。彼女が望めば、森を焼き尽くすほどの大火事は魔物を火刑に処するための聖火となり、大海からやってくる津波は首をはねるための流水の断頭刃となる。その武勇は大陸全土に唄われ...

果ては、嘘か誠か、かつて勇者をも破ったとすらにわかに噂される、正真正銘の大魔法使い。

 

風が強くなる。一点特化の攻撃はそのままに、さらに面に対する攻撃が加わる。ひびが入るほどの威力ではないが、まるで川の河口に転がっている石のように、表面からどんどん岩が削られている。当然、生身で食らえばどこまで吹っ飛ばされるか分かったもんじゃない。攻撃にバリエーションが追加され、さらに苛烈になっていく。これでも前提として言うならば大分手加減されているはずなのだ。本来なら攻撃手段としては風は岩に対して微妙...なはず。コレを見ているとその常識も疑いそうになるけど。

 

彼女の本質は「雪」。冬になったり、北の国々に遠征したりすると、彼女は目に見えて生き生きとする。そしてその魔法を思う存分振るい、振るうべき相手がいなくなったら訓練と称して僕をサンドバッグにするのだ。黒髪をたなびかせ、白い吹雪の中を舞うという、その名に違わぬ冬の魔法の女王っぷりには、畏怖を超えた美しさがある。

 

 

 

 

...あ、まずい。負ける。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

妙な男、というのが私がリオに対して抱いた印象だった。

 

育ち柄、これまで見てきた男というのは使用人か、誰かの夫として囲われた者かのどちらかで、それ以外の男はいないものだと思っていた。

冒険者を始めて...というより、貴族の立場を抜け出して暮らし始めて、そこでそれ以外にも男というものがいるということを知った。子どもをあやしたり、育てたりする者。洗濯をする者。料理をする者。学者をする者。鍛冶をする者。給仕をする者。娼夫をする者。

冒険者をする者もいないわけではない。エルフのように魔法に才があったり、女並みの腕っぷしを持っていたりする者もいた。

 

リオはどちらかというと、前者、貴族の夫のような雰囲気をしていた。どこかゆっくりとした別の世界を生きていそうな雰囲気を身にまとう、そんな人間。もっとも、その印象は出会って間もなく覆された。

 

「僕に、魔法の修行をつけてください」

 

まだ、あいつも私も今みたいにサリアたちと徒党を組んでいなかった時の頃だ。私は家を飛び出し、思うがままに力を振るっていた。

人生を生きてきて、様々なことを見聞きし、体験し、驚いたり戸惑ったりした。しかし、あの言葉を初めて聞いたときほど驚いたことは、後にも先にもない。

 

男が?魔法の?修行?

 

 

うん...うん?

 

素直に、意味が分からなかった。人生で初めて、意味が分からない、ということがどういう気分なのか、初めて知った。誰かにものを教える時、相手が何が分からないかが分からないということはあったが、そういうことではない。頭がぽかーんとして、思考が停止した。

 

魔法はその者の人格によって形が変わる。私のように暴力や破壊や支配を愛する血気盛んな者は特に、必然荒事向きの魔法を使う。女は血気盛んなもので、荒事は女の仕事だ。この世にある魔法のほとんどは、当たり前だがそういった野蛮な力となる。

 

一方で、そういった争いごとを好まない男連中や、一部の頭がお花畑な連中なんかは、何かを守ったり癒したりする魔法を使えたりする。だが、そういう連中は大抵道に咲く花が傷つけば涙を流し、かすり傷一つ負うだけで震えあがるような連中ばかりで、闘いの「た」の字も知らない。中には、魔法の才を磨き、教会で祈りをささげ、莫大な癒しを行う男もいたりするが、それだってやっぱり戦いの場に出てくるようなやつじゃない。

 

詰まるところ、リオは男として妙だった。そして、ある意味イカれているとさえ言えるということは、すぐに分かった。

 

 

何かを失うことを恐れる、ということにかけて彼は、リオは、狂気のような、恐ろしいまでの執着を見せた。大抵、男というのは徹底的に与えられる側の存在だ。心の底から何かを欲したり、渇望したりしない。

 

それがまるで、何も得ることができなかったかのように、これまで鳥籠で生きることしかできなかった鳥が、初めて空を飛ぶ力を手に入れ、それを手放すことを良しとしないかのようにリオは飢えて見せた。

 

その思考は、魔法となって表れる。

 

男のような何かを守るという健気さと、女のようにすべてを望む強欲さ。そして彼らしい、自らの足で歩み、手に入れるという探求心。与えられる雛ではなく、与える親鳥でもなく、その心のままに空を駆ける鷹のように。これが彼を構成し、彼を無二の魔法使いにしてみせた。土を愛したかと思えば、土で魔物を殴り殺そうとするくらいだ。もしあれがあと少し、心の底から暴力を愛していたならば私を超える傑物になっていただろう。

 

 

リオが自身を囲うように、魔法を展開する。岩でできた要塞。彼が初撃を防ぎ、その防御が解けたとたん間髪入れずに私が範囲攻撃をする。その単純な連携だけで、そのへんの外敵は無傷で完勝できる。あまりにもその組み合わせだけで戦闘が終わってしまうので、サリアやミズキたちが出番がないとぼやくようなくらいだ。

 

その岩を、一つ一つじっくりと練った風で叩く。あまりコレは得意ではないが、それでも一応は全力だ。当たり前のように防がれて、思わず口角がにやりと上がる。

 

10分耐えたらリオの勝ち、貫いたら私の勝ち。私が勝手に制定したルールだ。冒険をしていて10分以上戦い続けることは経験上ほぼない。盾として求められる時間をきっちり守り切れれば、その間に仲間が倒しきれる。

 

ただ、手加減をした並大抵の攻撃では、リオは10分なんて当然のように耐えてしまうだろう。

 

だから、力を込めて叩くのだ。ギリギリ、10分は耐えられないくらいに。耐えられるかもしれないという余裕をほんの少しだけ持たせておいて、だんだんと本気の入れ具合を強くしていく。彼はあの岩の後ろでどんな表情をしているのだろうか。余裕のなさに顔を歪めているだろうか。

 

 

最初の頃は私の盾としては全くもって不十分、いない方がいいくらいだった。私だって男が戦力として数に数えられるなんて夢にも思っていなかった。ただ、男を痛めつけることは好きだったので、かつ珍しい手合いだったので、少しだけ、ほんの少しだけ遊んでやっていた。そのうち自ら首枷に繋がれて、娼館にかかる金が浮くようなら、連れまわしてやっても悪くないと思っていた。

 

その後、私は人生で初めて、自分の考えが外れていたということを理解した。

 

リオは自分のすべきことを理解していった。

より固く、より強く、鉄を叩いて強くするように、叩けば叩くだけ強くなった。無力な男を殴って愉しんでいたはずが、今まで現れなかった「自分と並び立とうとする魔法使い」を相手にしていた。故郷のどんな女だってしていなかったその目を、非力で、細くて、軟弱なだけだったはずの彼がしていた。

 

彼は私にとって初めて見る、対等な何かになっていた。吹けば飛ぶような弱い土くれは、今では私が安心して背中を預けられる盾だ。

 

 

あぁ、愉しい。嬉しい。あれからしばらく経って、妙な勇者連中と出会って、徒党を組むようになって、それでも彼は変わらない。

むしろだんだんと手加減の幅が縮まり、今ではほとんど何の気兼ねもなく叩くことができる。人間というくくりで見れば、そんな相手はこいつくらいだろう。聖剣使いの規格外どもはノーカンだ。

 

彼の盾がついに限界を迎えて、割れる。運のないことに、崩壊した岩の一部が頭に当たって気を失うリオの姿が遠めに見えた。...少しやりすぎたかな。

 

丁度、戦いに幕を下ろすようにぽつぽつと雨が降ってくる。言葉を唱えることなく小さな魔法を使い、濡れないように自分の頭上の雨だけを避けさせた。

...強くなりそうだ。もう少し早くこの雨が降ってきたら、まだ勝負は分からなかったかな。

 

少し前、彼は私を師として仰ごうとしたことがあったが、私はそれを許さなかった。私にとって、彼は弟子というには刺激的すぎる。そんな関係で終わらせるには、面白すぎる。

 

なんて思っていると、雨はどんどんと強さを増していく。このままでは彼がずぶぬれになってしまう。待機させておいた風を手放し、歩いて彼の方に近づく。

 

頭を打って気絶したようだが、あいつの丈夫さはよく知っている。この程度で大事になったりはしないだろう。大口を開けて伸びている彼に、そっと手を伸ばした。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「雨、強くなってきましたね」

 

パタパタと窓を打ち付ける雨を横目に、サリアがそう零した。

先ほどまで庭で手合わせをしていたが、雨が降る気配を察知した私たちはそれを途中で止め、宿に戻ってきていた。本当に軽い手合わせだったため、二人とも汗すらかいていない。

 

「サラもどっか行っちゃいましたし、ユキもリオもどうせ魔法の打ち合いでしょう?夜ごはんまで丸々暇になってしまいました。またシャトランジでもしますか?」

 

「別に悪くはないが、こうも毎回やっているといい加減少し飽きてこないか?」

 

それはそうですけどー、と、両手を机の上で伸ばしながら足を前後にフラフラさせるサリア。好戦的なことは悪くはないが、余暇を楽しめないというのもそれはそれで困りものな気がする。

 

「飽きませんよ私は!だってまだミズキ相手にほとんど勝てませんし。せめて駒落ち2つくらいでは勝てるようになりたいです」

 

私たち5人の中では、駒遊戯(シャトランジ)はサリアが一番弱い。去年の冬に散々負かされてから、サリアの毎日は手合わせかコレかの二択になっている。毎回付き合わされていると、流石にまいってくる。どうせなら実力の近いリオとやればいいのだろうに。

 

「それじゃあダメなんですよ!もうちょっとしたらまた冬が来るでしょう?それまでにリオよりこっそり強くなっていなきゃダメなんです。去年の冬は通算56勝78敗で大きく負け越していますからね。今年の冬こそは勝ち越したいです。」

 

細かいことを覚えているやつだ。

 

「ねぇミズキ、やっぱり私もユキたちについていい?って聞いちゃだめですかね?どうせ手合わせするんでしたら、みんなでやったほうが...」

 

サリアのその言葉に、ひらひらと手を振って答える。

「やめとけやめとけ。魔法使い同士でやりたいこともあるんだろう。それに」

サリアに軽く目をやりながら、揶揄う調子で言う。

 

「あいつらの仲を邪魔しちゃあ悪いだろう?」

 

途端に、サリアは両手で頭を抱えて前後左右にぶんぶんと振り回しながら、唸り始めた。その身体能力で全力で振れば、頭がとれるんじゃないかと思うくらいに。

 

「ねぇ!!やっぱそうなんですかねぇー!?そうなんですかねぇー...!?本人たちは違うっていってますけど...明らかに仲いいですし、付き合いも...」

 

順番としては、私とサリアだけだったパーティーに、まずサラが加わった。そこにリオと出会い、リオがユキを引っ張ってきた。紹介したい魔法使いがいるなんて言ってあのシラユキを引っ張ってきたときは、それはそれは驚いたものだ。

 

私がサリアに剣を教えたように、リオの師はユキにあたるらしい。

当然、知り合ってからの年月もそっちの方が長いはずだ。

 

サリアは疑っているが、私は本当にユキがリオに手を出していないことを知っている。前々から酒の席で何度も聞いたし、何より、リオに手を出せるような関係ならわざわざ私やサラと一緒に娼館なんか通わないだろう。

 

...どれだけ金のかかった娼館の高級娼夫より、リオの方が男としてイイのは明白だ。

 

「やっぱり、年上の方が頼りがいがあっていいんですかねぇ...カラダ?やはり体なのか?でもミズキやサラならともかく、ユキと私はそう大差ないし...もしやリオは貧乳好き...?それなら私にも...」

 

ユキが聞いたら殴りそうなことを言っている。

 

「でもやっぱり女として胸が大きくないのはちょっと...ねぇミズキ、胸が大きくなる筋トレとかないんですか?というかミズキのそれはどうやって手に入れたんですか?」

 

 

 

親から貰っただけだ。やかましい。

 

 

 

ーーー

 

 

 

岩の一部に魔法を入れ雨除けをつくり、リオを寝かせる。リオのそれとは違い、何かを守るという意思が全くこもっていないそれは少し力を入れれば簡単に崩れてしまうだろうが、雨露を防ぐには十分だ。

 

リオの腰のあたりを覆う布の中に手を入れ、まさぐる。別に体をどうこうしようというわけではない。リオが身に着けている小瓶を抜き取ると、傷口に振りかけた。彼がちょくちょく自分で作っている傷直しの薬。本人は飲み薬だといっていたが、まあ上からかけても大して変わらないだろう。

 

もっとも、それを使わなくてもリオはそのうち目を覚ますだろうし、目を覚ましたら自分で癒しの魔法を使うだろう。ただ、早く帰りたかったのと雨の中おぶっていくのも億劫だったので少しでも早く起きないかなと思って薬を使った。雨が止むのが先か、リオが起きるのが先か。

 

暇つぶしがてらこいつの服でも乾かしてやろうと思って、寝ているリオに目をやる。

 

....寝ているときはまるで普通の男みたいだな。

 

私の太ももの上で気を失っているリオ。私も随分とこいつに絆されているな、と昔だったら考えられないような扱いに自分でも苦笑する。リオは男としては上物だ。外見だけ見れば。中身は男とは思えない、健気さとは無縁なやつだが、それでも憧れるやつは結構いる。

 

 

うちのお子様勇者のように。

 

 

私も昔はこの男を抱きたいと思っていたし、今でもほんのちょっとは思っている。サリアが意識するのも無理はない。だけどそれ以上に、今は一人の魔法使いとしての意識が勝っている。...男はもう少し可愛げで弱い方が好みだ。戦うとしてならともかく、抱くとしてなら歯向かってくる男は趣味に合わない。まぁ、仲間として意識するあまり、異性としての好みからは外れたともいえる。

 

 

ただ、先ほどから規則正しく寝息と共に上下する胸に目を奪われるのは、それはそれ、これはこれというものだ。

 

雨で濡れて艶の出た髪。体に張り付きそのラインをありありと主張する衣服。ほんの少しだけ薫る男の汗の匂い。女としての本能に強く訴えかけるような、耽美な男。先ほどまで私と渡り合っていた強気な仲間が、途端にまるで抱かれるのを待つ子犬のように私にその体を預けて、目をつむっている。

 

 

...今日の夜は娼館にいこう、と心に決めた。

 

 

 

 




未だ登場しないサラさんはいかに。
サラ「!?」

次回、「大人組/子供組」


他にもいろんな貞操逆転小説書いてるのでよかったらぜひ。
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