酒場は盛り上がり真っただ中という時間。
あちらこちらで食器やら罵声やらが飛び交い、ウェイターにとってはまさに戦場といったところである。サリアたちは先に来ていたサラと合流し、ゆっくりと食事がしたいとのサラの要望を聞き入れ外のテーブルに移動して、それぞれが思い思いの飲み食いを始めていた。
「んん~っおいしい!やっぱりお肉!お肉こそ最高ですね!あ、ウェイターさーん、もう一人前をお願いします!」
食べ盛りのサリアは行儀で目に余るところをたびたびミズキに注意されながら、満面の笑みで分厚い肉を頬一杯にもきゅもきゅあぐあぐと食していた。
食べた分だけ大きくなる、という言葉をそのまま信じる彼女は、パーティーの誰よりも食べればその分大きさで勝てるに違いないと考えており、見ているミズキがもうそれだけで胸やけしそうなくらいの量を食べて飲んでしている。
なお、この世界では飲酒に法的な規制はなく、水よりワインが一般的な飲み物であるとされる所すらある。しかし、飲み物に趣向を凝らす余裕がある貴族のような家では子の教育のために早いうちには酒を与えないとされており、サリアのグラスにだけなみなみと注がれるのは
「ねぇミズキ、私もそろそろお酒を飲んでもいいと思うんです。もうすぐ15歳ですよ、私。早めにお酒との付き合い方を知るという意味でも、
「風習というものは守っているうちは無意味に感じるものだ。誰かに守らせる側になって初めてその大切さを理解するようになる。だから私はお前に酒は与えない。あ、おいこら、今ジュースと取り換えただろう、返しなさい」
不満顔を浮かべながら返されたジュースをぐいっと一気飲みするサリア。
「だってずるいです。このパーティーでお酒が飲めないのは私だけじゃないですか。みんなが楽しく飲んでいる中で、私だけ仲間外れみたいに感じます」
ちまちまと小分けにした料理を一つずつ口に運んでいたサラがそれに続ける。
「そうでもないんじゃないか?リオだってあまり飲まないだろう」
「...そういえば、あんまり飲んでるところを見ませんね。いや、飲んでたとは思うんですけど、ご飯が終わった後に一杯、とかそんな感じだったので、あんまりお酒を飲んでいる印象がないというか」
酒と言えば食事の席で出されるものだが、リオは食事中はサリアと一緒にミルクか水を飲んでいる。酒も飲まないわけではないが、飲んでも強くないワインが精々だった。
減っているのか減っていないのか分からない皿の中身をつつきながら、先ほどとは違い髪を束ねずそのままおろしているシラユキが、サリアの視線を感じ取ったのかそちらを向いて答えた。
「あれは悪酔いをする上に二日酔いもする。自重しているらしい」
「...具体的にはどうなるんですか?」
「...言わないでおく」
きーにーなーるーじゃーなーいーでーすーかぁー、と隣に座るシラユキに抱き着くようにダルがらみをするサリア。酒を飲んでも飲まなくても振る舞いが若干酔っ払いじみている気がする。なお、サラに関しては酒に酔ったらリオは本当にその辺の女に丸め込まれるのではないかと一抹の不安を覚えていたりするのだが、それは別の話である。
姿勢を戻したサリアは皿の中身の油で揚げられた魚の身を平らげると、そういえばといった様子で他の者たちに尋ねた。
「それで、件のリオはいったいいつ来るんでしょうかね?あんまり遅いんで結局食べ始めちゃいましたけど」
サラが辺りを見回しつつ、リオの人影が判別できないことを確認するとあきらめて席に着く。
「先ほどから姿が見えないな。本人は抜けられるといっていたからそろそろ来るとは思うんだが、やはり忙しいのだろうか」
「厨房でのお仕事に変わったんでしょうかね?...来ないなら遠慮なく頂いてしまいましょうか。リオさんの分は来たらまた頼むことにしましょう。その方がいいはずです」
そういいながら、リオの分にと残してあった若干冷めてしまった料理を食べるサリア。
料理は熱いうちに食べなきゃ失礼です!っと言いながらかっ食らっていくが、その様はミズキの注意のかいあってか、ギリギリマナーを守っていると言えなくもない振る舞いだった。
ーーー
お疲れ様です、リオです。
ちょっと想定していた展開と違うくらいに忙しい。完全に抜けどころを逃してしまった。
あれから他に働いているウェイターの子たちが数人加わってくれたのだがそれでもなお仕事量の方が多いありさまだ。時間が遅くなってくれば余裕ができるだろうからそこで抜けさせてもらおうと思っていたものの、わざわざオーナーの方からもう少しだけ働いてくれと頼まれてしまっては断れない。
というのも、先ほどから珍しく大勢の団体さんが来ている。
「おにーちゃん!こっちのテーブル料理足んないよ!じゃんじゃん持ってきて!」
「お、キミ、可愛いねぇ。どうだい、おばちゃんたちと一緒に飲まないかい?」
店内のテーブルの1/4ほどを占めるその客はほとんど全員が金髪碧眼の人間で構成されており、冒険者のような雑多さが見受けられなかった。金髪碧眼という人間自体は珍しくないが、それのみで構成された集団というのは少し異様に映る。どちらかというと金回りのいい商人だろうか。僕は皿をいくつも重ねたタワーを器用に運びながら、さっきから厨房とテーブルとを行ったり来たりしている。
裏手の子たちに洗い物を任せた後その人数の多さに改めて驚いていると、裏からオーナーが顔を出した。
「ごめんねリオ、いやぁ、私もここまで忙しくなるとは思ってなくて」
僕は彼女から差し出された水差しから水を注いで一口飲み、聞いた。
「いや、それは大丈夫なんですけど...一体どこの方たちなんですかね?この辺りの人たちではないようですが」
「なんでも王都からはるばる買い付けにやってきたっていうお貴族様のお抱えの商団らしいよ。もっとも、あいつらはその下っ端だろうけど。金払いがいいのは良いんだけど、行儀ってものを知らないね、田舎だからって舐めてるんでしょ」
見ると確かに大盤振る舞いではあるが、さっきからどうも口が悪いというか、態度がよろしくない。まぁ酒の席で大勢の集団を形成している輩なんて大体そんなものと言えばそうだが、それでも輪をかけて目に余る調子だった。
「いやぁ、いくら命令とはいえこんな辺境までわざわざ足を運ぶなんて退屈で仕方ないものになると思ってましたが、これは驚いた。案外楽しめるもんですなぁ」
「あぁ、やった仕事と言えば精々道中の露払いくらい。金払いはいいし、こうして遊ぶ暇までくださる。ボロい仕事ってもんよ」
「しっかし酒はまぁ及第点ってとこだが、飯は大したことねぇなあ。ほら見ろよ、このパン、カッチカチじゃねえか。王都周りの出店の方がまだ上等なモン出してるぜ」
「バッカお前、こんなとこに上等な飯なんかあるもんか。贅沢いうなって」
「飯はともかく、男は悪くねぇぞ。私的には王都の妙に着飾った男たちより、こういういかにも純朴っていうカンジの男の方がそそるわ。おい兄ちゃん、こっち来てお酌してくれよ!」
「えっと...ごめんなさい、まだお仕事が...」
「あぁん?固い事言うなって、ほら、つっかまえたぁー!」
そういうと通りがかったウェイターの子を無理やり隣に座らせる女。さっきからそんな感じで男を卓に付かせようとするせいで、仕事に回るウェイターの子たちがいちいち手を止めなければならず、仕事の周りが遅くなっている。ウェイターの子たちも酔っ払いを刺激しないようにやんわりと拒否をするが、腕や腰を掴まれてしまっては抜け出すこともできない。他にも、料理や酒を零して床を汚したり、気に入らない料理があったりすると怒鳴り散らかす始末。
ふと横を見ると、今の会話を聞いていたのであろうオーナーが笑顔のまま額に怒り筋を浮かべていた。言いたい放題やりたい放題な彼女らについに堪忍袋が限界らしい。
「リオ、つぶしてこい」
「何をです!?いや、なんでもだめですよ!?!?話を聞くにお貴族様つながりなんでしょうし、いつもみたいに無理やりってわけにはいきませんよ!?それに明らか腕の立つ人も何人かいますし、僕一人で全滅させろっていうのも無理ですからね??」
そうなのである。僕も最初の方は注意していたが、流石に規模がどんどん大きくなるにつれて一人で収められる程度ではなくなってきてしまった。
「そうなんだよなぁ...じゃあせめて、あそこで捕まってるウェイターを離すよう言っておいてくれ。ほら、あのテーブルだけで4人も拘束してやがる。仕事が進まなくてしょうがない。」
オーナーが指さした店の奥の方のテーブルには、集団の中でも一際贅沢をしている女たちが10人ばかりいた。男の子を侍らせて随分とご機嫌なようで、こちらには見向きもしない。今のところは座らせて酌をさせているだけのようだが、いつ悪戯をしてもおかしくない。
「...オーナーが言ってきたらどうです?」
「バッカお前、お前よりはるかにか弱いお姉さんの私が行って殴られでもしてみろ、いよいよ収集もつかなくなるぞ。それに私はあいつらの親玉の方に用があるんだ。今日はこんなんだから常連のやつらにも申し訳ない。迷惑料としていくらか吹っ掛けないと気が済まないね」
それって僕だったら殴られても良いとか思われてはいないだろうか。いや、うーん...信頼ゆえと好意的に解釈しておこう。オーナーは商売はともかく喧嘩にはめっぽう弱い。それに、ウェイターを殴りでもしようものなら大手を振って被害者面できるし、僕だったらほぼノーダメージでもあるから都合がいいといえばいい。
もともとうちの酒場は顔見知った固定客の方が多い。それなりに長くやっているし、オーナーの趣味に賛同する輩が一定数いるんだとか。他所からやってきたお客も入ることは入るが、今日みたいにそれが店の多数派になるのは珍しい事だった。
...あんまり気が進まないが、確かにウェイターの子たちは返してもらいたいな。
僕は両頬を軽く叩くと、できる限りの笑顔を浮かべて彼女たちに近づく。酔っ払いに言葉を伝えて、いうことを聞いてもらうためにはまず好意的な姿勢を崩さないことが大切だ。ちょっと間違えるとすーぐ喧嘩しようとする蛮族みたいな連中も、こちらが下手に出ていればそうそう攻撃しては来ない。
僕が近づいていくのを捕まっていたウェイターの子たちは気づいたらしく、顔を明るくしている。僕は小さく手を振って返すと、ちょっと小走りになって歩みを進める。
目的のテーブルの傍まで来るが、話が盛り上がっているのか僕が近くにいることを認識してもらえない。随分大柄でいかにも荒くれって感じの女の人たちだ。年齢としては20~40程度だろうか。ぼさぼさの髪が暴れまわっていたり、服の一部を脱いでいたりと正直あまり近寄りたくない。
しかし、僕はこの酒場で争いや揉め事を収めることにかけては自信があるのだ。だてにここの治安維持係として雇われているわけではない。
僕はできる限り丁寧に、努めて笑顔で尋ねた。
「あのう...ちょーっとよろしいでしょうか?」
大口を開けてがやがや騒ぎながら楽しそうに酒を飲んでいた彼女たちがぴたりとこっちを見る。
大勢で騒いでいたところに突然誰もしゃべらない謎の一瞬が生まれ、気まずさに汗が垂れる。
僕が次のセリフを言いかけたところで、それよりも大きな声で向こうが反応した。
「おぉっと~?こいつはまた可愛い子がきたじゃんか、他の子たちよりも君はいくらかお兄さんだねぇ、私たちと一緒に飲みたいのかい?いいだろう、ほら、こっち来い」
そういうと彼女は自分の太ももを叩く。体こそ大きく引き締まっているが、酒の入った顔はだらしなくゆがんでいる。酒と香水か何かが混ざり合ったよくわからない匂いがして、思わず一歩後ろに下がりそうになる。
こちらをのぞき込んでくる顔はニタニタと笑っており、ちょっとお世辞にも褒めることはできない。みたとこオーナーと同じか少し若い程度だが、オーナーみたいに堅実な年季の入り方をしたような様子は一切なく、しわを誤魔化すような化粧が逆に鼻についた。
完全に酔っ払い迷惑おばさんだこれ。
あー...絶対文句言われる。男の子は仕事があるから離してーなんて言ったらぜーったい逆上するに決まってる。
「えーっと...実はお客さんの隣にいるウェイターの子はですね?今日はまだやらなきゃいけないお仕事が残っているのでして...お楽しみいただいているところ恐縮なのですが、一度仕事に戻らせていただけないかと......」
ーーー
結論から言うと、説得には失敗した。
そして楽しい時間に水を差されたと言って逆上され、大騒ぎされた。
ほーら、ほーら、僕の言った通りじゃん。
大体、男に酌をされたいならそういうのを売りにしている酒場に行けと言う話だ。ウチは基本的にはウェイターを眺めながら仲間内で酒を楽しむ場であって、ウェイターはあんたら専用の執事じゃないんだ。
これからどうしましょうかとオーナーに目配せすると、叩きだしていいからなんとかしてくれとしか返ってこない。あの人も打つ手なしのようだ。
何とかって言ったって...
今僕の目の前には大柄なおばさんが3人、ガンを飛ばしてきている。男の子を離すのなら代わりに僕に接客をするように要求してきて、それを断ったらこんなことになってしまった。おばさんが僕の手や腰を掴もうとするのを、周りのテーブルや椅子にぶつからないように最小限の動きで躱す。僕が多少身のこなしができると分かるや否や、3人がかりで捕まえようとしてくる。段々ヒートアップし、右から左から後ろからの大立ち回りになり、ついには明らかに殴って気絶させるつもりであろう一撃まで混ざり始める。なかなか捕まらない僕に腹を立てたのか、単に酒に酔ってけんかっ早くなっているだけか、その両方か。自分たちのテーブルをひっくり返し、ガシャンバタンと大騒がせだ。周りの客は異常を察知したのか僕とこの人たちを避けて半円状に不自然に距離を取っている。
これ以上暴れられたら他の料理や設備がめちゃくちゃになりかねないし、下手したら怪我人がでるかもしれない。
女の内の一人が投げた食器が僕の横を通り、後ろにいたウェイターの子にあたりそうになる。すんでのところで他のお客さんが止めてくれたが、今のは流石に危なかった。
そういうことするなら、こちらも実力行使だ。
オーナーに今一度確認を取る。叩き落していいかどうかの確認だ。
GOサインが出るやいなや、右から僕を羽交い絞めにしようとしていたであろうおばさんの膝を蹴って動きを止め、肘で顎を横殴りして意識を飛ばす。ミズキさんが言っていた。意識を飛ばすなら顎、戦意を折るなら鼻を叩くといいと。
僕は基本的に後衛を努めているが、自衛のため基本的な体術も教わっている。その道の人に敵うほどではないが、そこらのチンピラ相手ならこれで十分だ。
僕が反撃に出たのが意外だったのか、大きく動きを止める他のおばさん二人。ありがたいとばかりにそのうちの片方に近づくと、向こうもなりふり構わなくなったのか本格的に殴りの構えに出た。
右手大振りのストレートを体をよじって躱し、相手の左側面を叩こうとする。
相手はそれに気づいており僕の手を抱えるように捕まえようとするが、僕の足払いをもろに食らって膝から崩れる。そこに意識を狩る一撃。顔の周囲にばかり意識が行きすぎだ。まぁ、流石に腕力で抑えられたら抜け出すことは難しいだろうから、怖い手ではあるのだが。
男にいいように沈められて完全に頭に血が上ったのか、ブチ切れ状態で襲ってくる最後の一人。
これが傑作だった。無策に正面から突撃してきたのでどう料理してやろうかと構えていれば、なんと床に零していた酒に盛大に足を滑らせ、自分から後頭部を床に強打。そのまま悶絶して動かなくなってしまった。あまりにも自業自得な様に周囲から大爆笑が起こった。
結果、完勝。
「キャー!!リオさん素敵ー!!かっこい!!!」
「さっすがー!抱いてー!」
「Winner!りーーーおーーーー!!!」
「やっぱ最高だぜーーーーー!」
ふうふうと、ウェイターの子たちや常連客に茶々を入れられながら片手をあげて勝利ポーズ。
やんややんやと盛り上がっているのは常連客のみ。お仲間の方を見ると完全に静まり返っていた。どうやらこの三人、彼女らの集団の中でも偉い方だったらしい。凄く気まずそうだ。
「お疲れさまでしたリオさん、3対1の場面でしたが、30秒と持たずに瞬殺でしたね」
ウェイターの子がどこからか取り出したおたまをマイクみたいに口にかざしながら勝利者インタビューを始める始末である。この子さっきまでこのおばさんたちにべったりくっ付かれて震えていたのに、案外肝が太いのかもしれない。
...いや、見世物じゃないし、ていうかコレ後処理どーしよ...衝動的に沈めちゃったけど、お仲間さんいるんだよね...まぁ、楽しんでくれたんならいっか...
そう思っていると、最初に気絶させたおばさんがゆっくりと立ち上がった。
...まじか、一晩くらい気絶していてくれると思ったけど、案外丈夫な手合いだ。
そして、流石にここまですれば諦めてくれるだろうと思っていたのが甘かった。
この都市のルールとして、酒の席での喧嘩や争いは素手でやる。どんなにヒートアップしていても、何を賭けていてもそうだ。それはこの酒場という暴力的な空間に残された最後の枷であり、不文律であると、この都市の人間ならだれもが理解していた。
そう、
おばさんはゆらりとテーブルに戻ると、置いてあった荷物から自分の得物であろう大剣を取り出し、鞘を捨てた。
ランプの明かりを反射し、赤く光沢を放つ刀身。
明らかにその場の雰囲気が剣呑なものになり、観客の喧噪もぴたりと止む。
そこには先ほどまでの酒の席の余裕はなく、純粋な敵意が込められていた。
おばさんはこちらを睨みつけると、さっきとは打って変わって冷徹な声で言った。
「あたしゃぁな、これでも傭兵ごとで食ってんだ。傭兵に大切なものは何か、分かるか?
実力と評判だよ。こんなしょうもねぇ片田舎で、それも男相手にノされてたなんて噂になろう日にゃあ、二度と客からの依頼なんて来やしねぇ」
おばさんの仲間であろう人達が説得しようと試みるが、完全に頭に血が上っているのか、全く聞き入れようとしない。
キラキラと光る刀身を見せびらかし、こちらへ向けている。
まっずい。事態は最悪の展開だ。
僕は万が一に備え近くにいたウェイターの子たちに離れるように言い、近くの皿にあった果物用のナイフを手に取り片手で構える。丸腰よりはマシだ。
「安心しなよ、殺しはしねぇ...ただ、てめぇがあたしらより下だってことを、てめぇとそこの連中に分からせてやる必要があるって話よ...あんたをぶちのめして、泣き叫ぶ顔面をぐちゃぐちゃになるまで殴りながら、ボロ雑巾になるまで犯してやるのさ...やれ」
瞬間、僕の両足に締め付けられたような痛みが走った。見ると、さっきまで気絶していたはずの他の2人の手から、黒く長い鞭のようなものが伸びている。
大剣を抜いて見せたのは僕や他の注意を引くため、もといこいつらの意識が戻っていたことに気づかせないためだったのか
切り離す、無理だこの短いナイフじゃ。そもそも鞭みたいなだけで、これが何なのかも分からない、縄?ただの縄がこんなふうに巻き付いたりしない
一瞬、その縄に浮かんだ刻印が目に入る。
これは...奴隷商人の...
そう思考する隙も与えず、右と左からそれぞれ力を加えられて引っ張られ、大股を開いて無様に床に転がる。
背中を思いっきり床にぶつけ、肺の空気が無理やり叩き出された。
僕が苦しんでいると、鞭を操っていた二人は左右に展開し僕を大剣を持っている女の前まで引きずられ、それぞれの鞭を脇にあった柱の中腹に縛り付けた。
腰を少しだけ浮かせた状態で真っすぐ大きく開脚したまま、大剣女の前で無防備に体を晒す僕。
上体を起こして何とか反撃しようとするも、すぐさま先ほどの奴らに二人がかりで抑えこまれて身動きが取れない。いつの間にか、手に持っていた果物ナイフも捨てさせられていた。
僕が魔法を唱えることができると察したのだろう、大剣女は二人に指示をすると、手際よく何かの布切れで口を覆われた。
助けをと辺りを見渡すと、常連客の冒険者連中とこいつらのお仲間と思われる集団とで既に踏んだり蹴ったりの大乱闘が起こっていた。ウェイターの子たちは店の奥に避難したのか、一人も姿が見えない。こちらは流石に刃物沙汰にはなっていないが、向こうの方が数が多く劣勢である。
両手両足、口を覆われ、体を固定され完全に抵抗する手段を奪われる。何とか身をよじって脱出を試みるも、女二人がかりで抑えられてはびくともしない。
僕の上半身を抑えている女たちが鼻息を荒くしてるのが分かった。
動けないのをいいことに、僕の体を好き放題にする三人。胸をまさぐられ、尻を揉まれ、汚い体を擦りつけようとしてくる。
僕の下半身に足を押し付けたり、踏みつけたりしながら愉悦の表情を浮かべる大剣女。足を閉じようにもしっかりと縛り付けられた鞭はびくともせず、情けなく股間を敵にさらしたままだ。
間髪入れずに大剣女が僕の服を切り刻み、裸に剥こうとしたその瞬間―
「私のリオさんに、何してくれてるんですか?」
その黒紅色の髪を綺麗に揺らした、一筋の聖剣が見えた。
続きます