1限目を終え休み時間、織斑一夏が接触してきた。
「俺、織斑一夏」
「あぁ、知ってるよ。そっちも知ってると思うが、大津魁人だ。よろしく頼む。」
「よろしく。なぁ、魁人って呼んでいいか?」
「好きにしろ。」
冷たい態度を取るのには訳がある。もちろん、初対面で相手が信用できるかわからないというのもあるが、俺にはこの世界で最初に目が覚めてからの記憶がない。
この状況下では、自分の交友関係もまともに把握することもままならない。そこで、親しくするのは、十分に信頼できるかを見定めてからにしたのだ。
まぁ、先程の自己紹介が演技でないのなら、悪い奴ではないのだろう。
「魁人は、ISについてどれくらい知ってるんだ?」
「最初に貰った参考書の内容は大まかにだが把握している。」
「だ、だよな…」
「まさかと思うが、そこさえも把握してないのか?」
「じ、実は…」
どうやら筋金入りのバカのようだ。この分なら、下手に冷たくするのは、こちらに利益はないだろう。少し呆れつつも、俺は警戒心をやや解く。
「今からでも、読んでおいたらどうだ?」
「それが…」
「ふむ、参考書を確認もせずに電話帳と間違えて捨ててしまった、か。」
「は、はい。」
自分の行動で落ち込んだ様子を見せているが、自業自得という言葉以外に思いつかない俺も俺か。一先ず俺は自身の参考書を織斑に差し出した。
「い、いいのか?」
「言っただろ、大まかにだが把握している、と。それに、大体の内容はノートにまとめている。授業に支障はきたさんだろう。」
「マジか!ありがとう、魁人!!」
「礼には及ばん。早く1ページでも多く読んでおけ。日本の男は頭がよろしくないと思われるぞ?」
「お、おぉ!」
座席がすぐ後ろなこともあり、織斑は参考書に目を通しだした。
織斑が席に戻った途端、また次の来訪者が現れた。
「ちょっと、よろしくって?」
「…なんのようだ?」
近づいてきたのは、おそらくイギリス系お嬢様と言ったところか。
「まぁ、何ですのその態度は!」
「俺はクラス全体に名を明かしてはいるが、君は名も名乗ってすらいない。」
「……セシリア・オルコットですわ」
「改めて、大津魁人だ。で、なんのようだ?」
「日本の男性はレディへの礼儀が「その程度の戯言なら、席に着いた方が良い」なんですって!」
オルコットが怒りを露わにしたタイミングで、始業を告げるチャイムが鳴る。
「くっ、また来ますわ!」
俺はそれを聞き流しつつ、織斑に参考書を貸したため、ノートを開いた。
「そうだ、クラス代表を決めていなかったな。」
織斑教諭が授業開始直前に思い出したような口ぶりで、話しが切り替わる。
「誰か、やる者はいないか?自薦他薦は問わんぞ。」
自薦他薦は問わない、この言葉に悪寒を感じたのは俺だけではないだろう。後ろで参考書を焦り読んでいる男も顔を上げていた。そして、次の瞬間からだった…
「はい!織斑くんがいいとおもいます!」「私も!」
「私は大津くんに!」「うん、大津くんで!」
と、教室中あちこちで俺たちの名が挙がっていく。なんとなくそんな気はしていたのだ。
なんせ、世にも珍しい男性操縦者。強さを見たいもあれば、客寄せパンダのような扱いでもあるだろう。しかし、織斑教諭が「自薦他薦を問わん」といった時点で、名前が挙がった瞬間に拒否権は無くなるのだろう。とにかくこの場を止めなくては…
「納得いきませんわ!」
どうやら、俺が直接動く必要はなくなったようだ。先の一言で、教室内が静まり返ったのだ。
「ほう、納得いかないか。」
織斑教諭が煽りに行った…。
「当然ですわ!代表候補生たる話私を差し置いて、実力も考慮せず、ただ物珍しいというだけで男性を推すなど…だいたい!文化的にも後進的な国で「そこまでだ」」
流石にこれ以上は不味いと思い、ストップをかける。
「な、なんですの!」
「貴様、国を背負う代表候補生ならば、自身の言動には気を付けろ。」
己の言動を振り返り、すぐさま口を閉ざす。
「謝罪しておくのなら、今のうちだと思うぞ?」
「…こ、この度は、国家代表候補生として、品位を落とすような振る舞いと私の言動で、皆様にご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」
先の発言は流石に不味いとクラスの雰囲気から察したのか、すぐさま謝罪行動に移った。何より、織斑教諭の手がグーになっていたので、危うく墓石の用意をするところだった。
「ふむ、大津。お前がクラス代表でいいな?」
「え?」
ちょっと出しゃばり過ぎたか、目を付けられてしまったようだ。
「初日のクラスで、どんな相手に対しても物おじしないその発言力と対応・態度…貴様なら十分にクラスを纏められるだろう。」
「織斑教諭、流石に仕事内容も聞かずに安請け合いは致しかねます。それに、織斑一夏を推している者も居ます。彼女らの意見を蔑ろにするのも如何なものかと…」
「それもそうか…」
相手の意見に反対するときは、別の意見を差し出すべし、だ。
「ですので、他薦された自分と織斑一夏。それから、納得のいっていないそこの代表候補生を交え、模擬戦…でも行い、改めてクラス代表に誰が適任かを聞きましょう。流石に、彼女たちだって、なんの選考要素もない状態で他薦していますし…」
我ながら完璧な代案だ。他二人の実力を量るのと同時に、自分がどこまで戦えるのかも確かめられる。
「では、その案をそのまま頂くとしよう。…織斑!」
「は、はい!」
「模擬戦は、お前の専用機が届き次第行う。準備を行っておくように!」
「わかりました。」
「では、授業を開始する。」
一先ず、ガソリンに火が引火する前に鎮火し、授業が始まるのだった。
本作2話ををお読みくださりありがとうございます。
うp主の酒飲みでございます。
さて、一先ず次回への戦闘フラグが立ちました。
セシリアさんには原点より少しばかし柔軟になっていただきました
過激すぎると怒られますので(笑
次回も早く投稿できるように努めて参りますので
よろしくお願いします