鬼のいる世界で死神を気取る   作:りんごあめ

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2ヶ月の空白、きっと皆様の記憶の中からはこんなチンケな小説のことなど消し飛んでいたことでしょう、勝手に消えてまた勝手に浮上して細々とやっていきたいと思うとります。

久々ですがお手柔らかにおねげぇしやす。



12.夢はやっぱりいいトコで醒めるくらいがちょうどいい

 カナエさんが柱から退いてから一年の月日が流れた。

 

 まぁ一年経っても生活はそこまで大きくは変わらず、俺やしのぶちゃんは来る日も来る日も鬼の頸目掛けて日輪刀を振り回す社畜生活。

 

 カナエさんが宣言通り蝶屋敷で怪我人の治療などの後方支援に専念。

 アオイちゃんはカナエさんの一件で自分も戦いたいと思うようになったらしく、近くの村に住む水の呼吸の育手の元へ通い剣を習う日々を送っている。

 きよちゃん達なんちゃって三姉妹とカナヲちゃんはカナエさんの指導のもと、機能回復訓練を傷ついた隊士達へ行なう日々を送っていた。

 

 

 

 

 アレ、俺としのぶちゃん以外だいぶ生活変わってない?

 

 

 

 

「いや、しのぶちゃんも結構変わったか。何も変化がないのは俺だけだなぁ」

 

「あら、どうしたのよ護廷くん。そんなにため息ついちゃって」

 

 そんなことを思いながら相も変わらず蝶屋敷の居間でくつろいでいるとカナエさんがやってきた。

 

「一年経ったけど俺だけなぁんも変わってねぇなと思いまして」

 

「そんなことないわよ?護廷くんもちゃんと成長してるわ。背も伸びたしそれにほら、この間階級が『甲』に上がったじゃない。柱になる日も近いんじゃないかしら」

 

 たしかにカナエさんの言う通り先日、階級は柱の一つ下である『甲』にはなったがそういうことじゃないんだよなぁ。

 

「私はしのぶのほうが変わってないかなーなんて思うけどね」

 

「いやいや、めちゃくちゃ変わりましたよ。だって──」

「だって……なんです?」

 

「うおっ、なんだよいたのかしのぶちゃん」

「たった今任務から戻ったところですよ?それで、私がどう変わったというんですか?」

 

 突然耳元で囁かれギョッとして顔を上げるとそこには、カナエさんが着ていた蝶の翅のような模様の羽織を着たしのぶちゃんがにっこり笑っていた。

 

「ほら全然違うじゃん!前のしのぶちゃんなら俺が『いたのかぁ』とか言うと、いちゃダメなんですか!!とか怒ってきたじゃん!?

 やっぱりこんなの、こんなのしのぶちゃんじゃない……!」

 

「もう、護廷さんったら失礼ですね〜。少し大人になったんですよ、それくらいで目くじらを立てないくらいに……。荷物部屋に置いて来ますね」

 

「…………しのぶちゃんのチビ」

「今なにかおっしゃいましたか〜??」

 

「ぎゅやあああっっ!!冗談だって痛いってごめんって!なんだよしっかり目くじら立てるじゃんかよぉぉ」

 

「あら?私は怒ってなんていませんけど??では今度こそ失礼しますね〜」

 

 手の皮を全力で抓られ悲鳴を上げる俺にそう穏やかに言ってスタスタと居間を後にするしのぶちゃん。その後ろ姿を見ながら俺は苦い顔をする。

 

「ったく、必死すぎて見てらんないね」

 

「まぁまぁ、あの子なりに頑張っているんだから温かく見守ってあげましょ?」

 

 

 

 しのぶちゃんはカナエさんが柱を辞めてから雰囲気が変わった。

 平たく言えば、原作でよく見たあのニコニコ微笑むおしとやかな淑女へと変貌を遂げていた。カナエさんが死なずに済んだから性格まで変わりはしないだろうと思っていたのだがそんなことはなかった。

 

 姉さんの分も頑張るんだとか自分が姉さんの代わりになるんだとか、そういう強い決意や、鬼を許さないという彼女本来の憎悪と姉の鬼とも仲良くしたいという相反する気持ちを抱えたしのぶちゃんの精神はやっぱり擦り切れ、疲弊してしまった。あえて口悪く言うならばおかしくなったと言っても過言ではないだろう。

 

「見守るって、あんな張りつけたような笑顔をする妹ほっといていいんですか」

 

「私も心配で無理しなくていいって声はかけたんだけどね。大丈夫よって笑うばかりで……きっと今はああするので精一杯なんだと思うわ、そうじゃなきゃやっていけないくらいに。

 だから落ち着くまで好きにさせてあげようかなって。ときには信じて待つことも必要なのよ?」

 

「それは、まぁそうですね……」

 

 そう微笑むカナエさんに俺は歯切れの悪そうに答える。

 

「君が心配してるってことはあの子もわかってると思うわ、妹のこと気にかけてくれてありがとね」

 

 そう穏やかな声で微笑むカナエさんに笑い返して俺は席を立つ。そろそろ任務に行かなきゃならない時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、なんでしのぶちゃんもいるわけ?」

 

「私も驚きましたよ、急に報せが入ったんですもの。隊士が複数やられたから護廷さんと同行して鬼の討伐にあたれとのことです」

 

「ふーん、予想より被害が大きくなったから急遽追加でってことね」

 

「そういうことです、加えて負傷した隊士もいるみたいなのでその治療も兼ねての派遣だそうですよ」

 

 任務地へ向かう途中、蝶屋敷に帰ってきたばかりだったはずのしのぶちゃんが合流してきたため話を聞いていた。

 しのぶちゃんの話からすると少し厄介な鬼なのかもしれないな。

 

 

 

 

 

「ふぃ〜到着っと、ひとまず怪我した隊士達のとこ行きますか」

 

「はい、この町の藤の花の家紋の家で静養中だそうなのでそちらへ使いましょう」

 

 翌日の昼頃に任務先である町に着いた俺達は藤の花の家紋の家に向かう。

 鎹鴉の案内で屋敷へと向かい、家の人から出迎えられる。要件を伝え中に入り連れられた部屋では床に臥す少年と、そんな彼を顔を青くして心配そうに見つめる少年が一人。

 

「指令により治療に参りました、『甲』の胡蝶しのぶです。生き残ったのはお二人だけですか?」

 

「同じく『甲』の護廷です、よろしくどうぞ」

 

 丁寧な挨拶をしたしのぶちゃんに便乗して一応ぺこりと頭を下げておく。そんな俺達に顔を青くしていた隊士が顔を上げ挨拶を返してきた。

 

「階級『壬』の青島です。お願いします、こいつを助けてください!血鬼術をくらってうなされてて……生き残ったのは俺達だけなんです、どうかお願いします!」

 

 見たところ、13歳くらいだろうか。そんな青島くんが今にも泣きそうな声で懇願してくる。

 そして頭を下げる彼の肩にポンと手を置いてしのぶちゃんは優しく笑いかけた。

 

「大丈夫ですよ落ち着いてください、私も全力を尽くしますので」

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷くうなされていますね、それにすごい熱です。彼は鬼に毒かなにかを撃たれましたか?」

 

「いえ何も……俺もそいつも同じように鬼からの攻撃を受け負傷したんです、なのにそいつだけ突然苦しみだして倒れて……!」

 

「そうですか鬼の毒でこのような症状が現れた方なら見たことがあるのですが、彼には毒などを注入された痕がみられませんね。血鬼術についてなにか鬼が話してはいませんでしたか」

 

 大粒の汗をかき、苦しそうな顔でうなされている少年の診察をしながらしのぶちゃんが問う。

 

 たしかに毒を打ち込まれこういう状態で運び込まれてきた隊士を俺も見たことがある。そして他の生存した隊士や隠なんかに話を聞けば、鬼が毒を売ってやったと得意げに言ってた……なんてこともしばしばあったりして。

 鬼の皆さんってそういうとこあるんだよね、調子乗ってリスク管理がガバガバっていうかさ。まぁ無惨な頭したナントカさんの血を引いてるわけだし仕方ないのかもしれないが。

 

 そうなればもうしのぶちゃんの勝ち確である。ちょちょいと毒を調べ上げ、ちゃっちゃと血清を作り上げてしまう。

 

 だがしかし今回は違った。しのぶちゃんの問いかけに青島くんは首を静かに横へ振った。

 

「いえ何も、血鬼術であることに間違いないとは思いますが……ただ一言、終わることのない悪夢へようこそと気味悪く笑うだけで……」

 

「なるほど、敵はとりあえず戦わされるダークライさんみたいなもんか。みかづきのはねどっかに落ちてねぇかな」

 

「ふざけないでくださいね護廷さん。まぁたしかに彼の様子は悪夢にうなされてるようにも見えなくもないですが」

 

 こっちを見ながらため息をついたしのぶちゃん。すぐに向き直りふむ、と考えるように顎へ手を当て立ち上がる。

 

「ひとまず試してみたい薬があるので準備してきますね」

 

 にこりと笑いかけ歩きだすしのぶちゃん。そんな彼女によろしくお願いしますと頭を下げた青島くんは寝込む少年に声をかける。

 

「胡蝶さんがお前のこと治してくれるかもしれないぞよかったな!」

 

「よかったな、ダチが助かりそうで」

 

 嬉々とした声で顔を明るくさせる彼に思わず笑みをこぼす。そんな俺に青島くんは強く首を縦に振った。

 

「はい!こいつとは選別のときからの仲で、俺が今日まで生きてこれたのはこいつのおかげなんです!」

 

 そう言ってから青島くんはおもむろに立ち上がり襖に手をかける。

 

「そうだ、今日はずっと閉め切ったままだったな。もう夕方だけど陽の光を浴びといたほうが気分もきっと良くなるよな!」

 

「ははっ、ほんと仲間おも──」

 

 

 

 

 

 

 ほんと仲間想いのいいヤツだな。多分そう言ったはずだ。しかし俺のその声は勢いよく襖を開けた青島くんに届くことはなく、代わりに──

 

 

 

 

 

 

 

 

グチャァッッ!!!

 

 

「……!!」

「………は、……おい。どうしたんだよ…赤間……?おい!!」

 

「どうしたんです?今すごい音が……ぇ!?」

 

 突如として臓物を辺りに撒き散らし部屋中を紅に染めあげた床に臥す少年によって掻き消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「よかったんですか?彼を連れてこなくて」

 

「そりゃ愚問だろしのぶちゃん。あんな状態でまともに戦えるわけないだろうさ。そもそも彼じゃ階級的にも力不足だろうね、残念ながら」

 

 暗く染まってぼんやりと月の光だけが輝く森の中、俺としのぶちゃんは硬い声色で言葉を交わす。

 

「まぁそうですね、でも彼の気持ちを考えると少し可哀想ですよ。親友の仇を自分で討てないだなんて」

 

「仇を討つことだけが死んだダチのためになるとは俺は思わないけどねぇ。本人にも言ったが死なずに生きることも立派な恩返しでしょ」

 

「鬼に恨みがある人達にはそういう考えは難しいんです。羨ましいですよ、すぐに切り替えて前を向けて」

 

「こらこら、俺を能天気なヤツみたいに言うんじゃないよ。俺だってさぁ結構ムカついてんだよ?ああいう悪趣味なのは反吐が出るってもんよ」

 

 顔を合わせることなく俺達は淡々と語らいながらその歩みを進めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如として少年が爆発するように血を吹き出した後、しのぶちゃんがすぐに原因の究明に当たった。しかし、

 

「すみません、やはり彼の血液からは毒など鬼の成分は検出できませんでした」

 

「そうか。しのぶちゃんでもわからないんじゃ血鬼術への対策の立てようがねぇな」

 

 声のトーンを落とし眉を落とすしのぶちゃんに俺もため息をついて頭を抱える。

 いきなりなんの前触れもなく身体を爆散させるような術を使う鬼なんて原作にはいなかったはずだし、原作知識でどうにかってこともできないし完全に手詰まりである。

 

 というか普通にヤバくない?寝てただけなのにいきなり身体を爆発させて臓物ぶち撒けさせるとかめちゃくちゃ怖いんですけど。上弦の鬼でもさすがにそんなことしませんよ?

 

 

「んなことどうでもいいです、とりあえずあの鬼畜生を殺せばいい話ですよね……?」

 

 俺達の会話を聞いていた青島くんが低い声でそう言ってきた。先程までは声を枯らさんばかりに泣き叫んでいた彼だが、さっきまでとは雰囲気が別人である。目を真っ赤に腫らしてはいるものの、瞳孔がかっ開いておりバッキバキだ。バキバキすぎてちょっと怖いくらいなんですけど、年下の子にビビってしまって少し恥ずかしいですこんちくしょう。

 

「そりゃそうなんだけどさ、このまま無策に突っ込んでも彼の二の舞になるだけかもしんないだろ?ここはもう少し慎重に……」

 

「もう俺は怒りでどうにかなってしまいそうですよ……今すぐにでもアイツを殺したいんです、瞳に文字を刻んでいたあの気味の悪い鬼を……!!」

 

「「っ!?」」

 

 血が出るほど唇を強く噛み締め拳を強く握りしめる青島くんの言葉に、俺としのぶちゃんは目を見開いて顔を見合わせる。

 

「瞳に文字と言いましたが、もしかしてなにか数字が刻まれていましたか?」

 

「……たしかそうだったと思います。数字は壱だったような……」

 

「…………まじか。なら君に戦わせる訳にはいかないね」

 

「なっ!どうしてですか!!戦えます、怪我ならもう大丈夫です!!」

 

 声を荒げ俺に掴みかかってくる青島くん。そんな彼の手を振りほどくことなく俺は答える。

 

「君はまだ入隊したばかりで知らないかもしれないが、その相手は十二鬼月っていう鬼の中でも特に強い連中なんだ。階級の低い新人には流石に荷が重すぎる」

 

「そんなっ、じゃあ俺はこんなとこで黙って指咥えてろってことですか……そんなのあんまりだ…うっっ…ぐっ……!」

 

 話を聞いた青島くんが嗚咽まじりにその場にへたり込む。そんな彼に俺はしゃがみこんで目線を合わせ、震える両肩に優しく手を置いた。

 

「君の気持ちはわかるよ。親友が殺られてすごく悔しいよな、鬼が憎いよな。だからこそ君は生きようぜ。生きて親友のことを忘れないでやってくれ。

 敵討ちだけが死んだ仲間への恩返しじゃない。親友は君まで死んじまうことは望んでないと思うよ。約束する、その鬼は絶対に俺達が倒してくるから君は信じて待っててくれ。これは受け売りだが……信じて待つってことも大事なんだってよ。

 まっ、初対面のやつらをいきなり信用しろってのも難しいとは思うけどさっ!」

 

 そう言って優しく笑いかけながらポンと肩をたたくと、青島くんは鼻水をすすりながらゆっくりと頷いた。

 

「……お願いします、あいつの……みんなの仇をとってください…!!」

 

 震える声で精一杯しぼりだしたその言葉を聞き、スっと立ち上がった俺は刀を撫でて、

 

「おう、どーんと任せときな少年!」

 

 自信満々な笑顔を見せ自分の胸を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼が言っていた場所はおそらくこの辺りでしょうね、ほんとに突然開けた場所に出ましたね」

 

 青島くんから聞いたように森を進んで行くと突然、ぐるっと円を描くように木の生えていない広場のような場所に行き着いた。

 戦ってくださいと言わんばかりに綺麗な円になっており、格ゲーのステージなんかにありそうな本当にお誂え向きな場所である。

 

「ん〜?また来たのか……そう何度もやって来るとは鬼狩りも随分と暇を持て余してるようだね。羨ましい限りだ」

 

 突然、気の抜けた声が聞こえてきた。すぐに刀を抜きその声の主を探すとソイツは隠れる気などまるでないように気の枝に座り、ブランコでもこぐように足をブラブラと振って遊ばせていた。

 

「いえいえ、暇なんてありませんよ。忙しいからこそこうやって立て続けに来ているんですよ。こんばんは、木から降りてきていただけますか?少しお話でもしませんか〜?」

 

 そんな様子を見ながらしのぶちゃんがにこやかに声をかけた。そんな彼女に一瞬目を丸くしたソイツはすぐにはははと小さく笑った。

 

「お話しようなんて面白いこと言ってきたのはお前が初めてだよ。でもさ〜ウソはいけないな、2人とも刀抜いて私のこと殺る気満々じゃないか」

 

 黒い髪に白い肌。そんな姿をしたソイツは木から飛び降りるとゆっくりと腰を折りお辞儀をして口を開いた。

 

「はじめまして、鬼狩りの方々。私は爆喰羅(ばくら)、皆を素晴らしき夢の世界へ誘う案内人さ」

 

 ひらりと手を動かしお辞儀をする、そんな品の良さを感じさせるような振る舞いをした鬼に俺は鼻で笑って刀を握り直し再度力を込める。

 

「素晴らしき夢ねぇ?お前が夢の世界へ引き込んだ少年は親友と俺の目の前ではらわたを爆散させるなんていう凄惨な最期を迎えてたんだが?悪夢の間違いだろ」

 

「そんなことはないさ。彼はその身を綺麗な赫に染めてくれたんだ、あれだけ美味な血になっていたんだ、いい夢を見れた証拠じゃないか!!あはははは」

 

 ゆっくり首を振りそんな訳のわからないことをほざく鬼に煮えくり返りそうな怒りを抱きながら首を傾げる。

 

「赫に染めてくれた?美味な血になっていた?妙だね、まるでその場にいたかのように言うじゃねぇか」

 

「あぁ、あの場にはいなかったよ。でも私の可愛いお友達がそれを見せてくれる……運んでくれるんだぁ……」

 

 そう言いながら鬼は右手を自分の額の前まで持ってくると、容赦なく額の中へと突き刺した。

 

「アハッ!ほら見えるかい鬼狩りさん、私は身体にね、虫を飼っているのさ!」

 

 そう笑った鬼は突き出した右手で蚊のような虫をつまんでいた。

 てめえの頭の中に手を突っ込んで血を吹き出しながら虫を取り出しそれをニッコニコで見せびらかしてくるとかいうグロすぎる光景にドン引きしている俺にご満悦なのか、鬼はさらに顔をうっとりさせながら話を続ける。

 

「ふふふ、私はこの虫さんを他人と接触した時に植え付けることができるのさ。方法は簡単、おでことおでこをコツン、と当てることで虫を植え付ける。

 そしたら虫が記憶を読み取りその人が記憶の奥底に沈めた思い出したくないモノを見せてやるんだぁ。

 

 そうやって人の精神をぐちゃぐちゃにして破壊することでその人間は死んでしまう。最後に虫がその人の身体を爆発させ無理やり外に出てきて私の元へ帰りその血を美味しくいただくって寸法。簡単でしょ?これが私の血鬼術、夢喰いだよ」

 

 なるほど、青島くんが突然ああなったのは虫に身体を喰い破られたからってわけか。いや、めっちゃグロくない?それでヘラヘラ笑ってるとか最低だよコイツ。

 ……やれやれ、鬼ってのは本当に悪趣味なヤツらばっかりだ。最初から最後までとことんタチが悪い血鬼術じゃねえか。

 

「わざわざ術の詳細を教えてくれてありがとよ。おかげでとても胸糞悪くなりましたが、おかげで戦い方もなんとなく決まってきましたわ……」

 

「おっ?ほんとに?でもぉ難しいんじゃない?だって──」

「そんなことないですよ」

 

「ふぇ?」

 

 余裕たっぷりに笑う鬼だったが突如として背後から聞こえてくる声に間抜けな声を上げた。

 

「おでこをコツン、と仲良くぶつける前に後ろからやってしまえばいいだけのことですよね?」

 

蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 ── 真靡き

 

 俺が鬼と話している隙に背後へ回り込み身を潜めていたしのぶちゃんが一瞬といっても過言ではない速度で接近し、鬼の背を貫かんとする。

 

「だって君達の魂胆、みえみえだもの♪」

 

「……っ!?」

 

 軽く笑った鬼は何食わぬ顔で身体を捻りしのぶちゃんの突きをすんでのところでひらりと躱すと脚にぐっと力を込めて跳躍、そうして曲芸でも見せるかのようにくるりとムーンサルトのような動きでしのぶちゃんの背後に着地したその直後、振り向きかけていたしのぶちゃんに正拳突きを繰り出した。

 

「ッぅ……!」

 

「オイ無事かしのぶちゃん!?」

 

「ええ、刀でなんとか受け流しましたのでご心配なく」

 

 吹き飛ばされながらも体勢を立て直し着地したしのぶちゃんに駆け寄るが本人は涼しい顔をして静かに鬼を見据える。

 

「あ〜いけない!つい楽しくなって口調が砕け過ぎていました!悪い癖なんです、すみませんね」

 

「いえ、構いませんよ。鬼の皆さんはいつもそんな感じですし慣れてますので」

 

 額に手を当てあちゃーと言わんばかりの顔で謝る鬼に朗らかに笑うしのぶちゃん。

 う〜ん、どっちも嘘くさいですねぇこれは。お互い本心隠して笑ってますよ感全開で怖いですねぇ、直視できないですねぇ。女の戦いってこういうのを言うんだろうなぁ……。

 

「素晴らしい身のこなしですが私にはそう簡単にはその刃、届きはしませんよ。だって私はあのお方から選ばれし十二人が一人……十二鬼月なんですからねぇ……?そこらの鬼とは一味違いますよ??」

 

 ネットリした声で自慢げに瞳に刻まれた文字を見せてくる鬼の爆喰羅さん。そんなヤツに一度顔を見合わせた俺としのぶちゃんは一言。

 

 

 

 

「「え、知ってますけど?」」

 

 

 

 

「アレ、おかしいですねぇ。これを伝えた時は皆さん驚き萎縮するというのに……そもそも知ってます?十二鬼月」

 

「「え、知ってますけど?」」

 

 目をぱちくりいわせる鬼に二度、声を揃えて首を傾げる俺たち。はぁ、とため息混じりに仕方なく俺は口を開く。

 

「昨日戦った隊士から十二鬼月だってことは聞いてんだよこっちはさ。それにお前、下弦じゃん。こちとら一回上弦と斬り合ってるんでね。あん時と比べりゃそこまでビビるもんじゃないかなって」

 

「ええ、私も間近で上弦を見ましたけど放ってる殺気が全然違いましたね」

 

 追い討ちかけるように続けるしのぶちゃんの言葉を聞いた鬼は一瞬固まり大きなため息をつく。なんか露骨に残念がってるなぁ。

 

「まぁいいでしょう。ならば私の術でその時の恐怖を思い出させてあげますよ!」

 

 半ばやけくそになった鬼がそう語気を強め接近してきた。

 

 こうして俺達と鬼との戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

死神の呼吸 参ノ型 射殺せ──神槍

 

「ふむ、余裕ですね!」

 

「くそっ、反応が速ぇ……」

 

蟲の呼吸 蝶ノ舞──戯れ

 

「おや、どこ狙ってるんですか?地面??」

 

「さすがは十二鬼月、他の鬼より身体能力が高い……」

 

 弄ばれるかのような態度を取られ焦りを感じ、つい舌打ちがごほれる。

 下弦といえどもやはり十二鬼月、なかなか一筋縄ではいかない。

 

 ヤツの血鬼術を警戒しあまり長い時間接近戦をするのは危険だと判断した俺達はしのぶちゃんの突き技や俺の神槍や千本桜といった技を主体としたヒットアンドアウェイな戦法で戦っているのだが、これがなかなか上手くいかない。

 鬼の身体能力がやたらと高くて一発技を放ったくらいではヒラヒラ躱されるし、逆にカウンター攻撃をくらいそうにもなるしでとにかく苦戦を強いられていた。

 

 

 

 そんな攻防が十分程続いた頃。

 

「そぉい!」

 

「ッッ!」

 

 しのぶちゃんが仕掛けた攻撃を受け流され蹴り飛ばされてしまった。そうして蹴り飛ばされた先で木に激突し倒れ込む。

 

 起き上がるまでに生じる隙、そんなものを見逃すはずもなく。ニヤリと歯を見せ笑う鬼は更に追い討ちをかけようと一直線にしのぶちゃんへと駆け出していく。

 

「起きろしのぶちゃん!早くッッ!!」

 

「さぁ、おやすみなさい……お嬢さん!!」

 

 全速力で鬼の背を追いながら叫ぶ。よろよろとようやく起き上がったしのぶちゃんだが既にもう眼前へと迫った鬼が手を伸ばしている。

 血鬼術を使われでもしたら戦闘には戻れなくなる。そうなりゃあの鬼を倒すことも難しくなる。悔しいが今の俺にアイツを一人で倒せるほどの力はない。なんとしてでも血鬼術を使わせることだけは阻止しないと……!

 

 そう頭の中で考えを巡らせ鬼の注意をこちらへ向かせるため刀を投げて突き刺そうと日輪刀を乱暴に握り直し、後ろに引く。

 

 

 

 

 

 

「やっぱりやめましょう」

「は?」

 

 振り上げていた頸をゴキゴキと鳴らして360°回転させこちらを向いた鬼は、

 

 

 

 ゴンっ。

 

 

 

「まずはあなたから旅立っていただきましょうかぁ……綺麗なお兄さん?」

 

「……ぁ。」

 

 俺の額めがけて勢いよく頭突きを叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 カラーン。カラーン。

 

 

 鐘の音が聞こえてくる。

 

 

「聞こえてくるでしょう?鐘の音が」

 

 

 鐘の音とともにあの鬼は声が頭に直接語りかけてくるように聞こえてくる。

 

 

「さぁ、これから楽しい夢の世界へ旅に出るよ」

 

 

 絶えず鳴り続ける鐘とともに再び聞こえてくる。鬼の声。

 視界が歪む。しのぶちゃんが何か言っている気がするが見えない、聞こえない。聞こえるのは相も変わらず、カランカランと空虚な鐘の音。

 

 

「楽しい夢だがそれは覚める事なき永い夢………終わることのない悪夢へようこそ」

 

 その言葉とともに視界は黒く塗りつぶされ、俺の意識は完全に途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 四方八方、どこを見渡しても延々と拡がる暗闇。存在している物など何一つなく、そこに生きる動物もいなければ勿論人間などいる気配などないその空間。

 

 そんな何一つ存在しないはずの空間に一人。男が椅子に腰かけていた、否。縛られ拘束されているかのようにその椅子に座る男は一人愉しげな笑みを浮かべて目を閉じる。

 

「ほう、案外早かったな。私としてはもう少しここでゆっくりと待っているのもやぶさかでないと思っていたのだが……。なるほど、世界は私を置き去りにはしてくれないらしい」

 

 口元の緩みを戻しゆっくりと眼を開いた男は、語りかけるように再び口を開く。

 

「今のうちに悦に浸っておくといい、貴方が天に立っていられるのも残り僅かなのだから」

 

 何もないその空間で男の声だけが静かに響き渡った。

 




椅子で縛りプレイをされてる男とは一体()

・不定期開催!大正コソコソ噂話・
しのぶちゃんの刀は既にあの毒を注入することに特化した特注品となっています。これは元柱であるカナエさんに口利きしてもらい刀鍛冶の里の里長に熱烈なプレゼンを行って制作まで漕ぎ着けたらしいですよ。柱以外の隊士で特殊な刀を特注してもらったのは現状しのぶちゃんだけなのだとか。

護廷「なるほど、コネを使うとはしのぶちゃん強かですわね」

しのぶ「人聞きの悪い言い方しないでくださいよ護廷さん。ちょ〜っとだけ姉さんを通じてご挨拶させていただいただけですよ。里長さんも快諾してくださいましたし何も後ろめたいことなんてありませんよ?……ね?ね〜?」

護廷「わかった、わかりましたからそんな圧強めに迫ってこないでもろて」



改めまして投稿を2ヶ月以上空けてしまいすみませんでした。実習が忙しかったのとしっかり病んでしまってうつになりかけて(ほぼなってた)いたので書くことができませんでした。



そうしてなんとか実習を終え、身も心もボロボロになり7月に入ってからの私は…………リコリコにニヤニヤする日々を送っておりました( ˆᴗˆ )てぇてぇよあの子達……
まぁそんな感じで影響されやすい私なので近々護廷くんとカナエさんの長編百合物語が展開されているかもしれません(?)
そんな時はコイツす〜ぐ影響されてらぁとほくそ笑みながら軽くケツを蹴ってやってください。こちらは全力でケツを蹴り飛ばしますので。

よくある主人公の設定集みたいなのあった方よろしい?プロフィールやら技の設定的なのを書く感じになると思われ

  • 当たり前やろ書けや
  • いらんわそんなのよりはよ続き書けや
  • とりあえずカナエさんは今日も美しい
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