「い、いや訳分からん。ありえないって、なんでまだ生きてんだよ。お前は死んだって記されてたはず……」
「ありえない、か。面白いことを言うね。ありえないなんてことはありえない……君がよく言っていた言葉ではなかったかな?」
鼻で笑いながら目を細め首を傾げるその男に、俺は舌打ちをしてため息をつく。
「……クソっ、そうッスねハイハイ!んで?とりあえず見当もつかないんであんたがここにいるワケを教えてもらっても?」
「いいだろう、ただしこの後話す私の提案を聞く気があるのなら……の話だがね」
「……聞くだけならな、ぜってぇロクな話じゃないんだろうけど」
胡座をかいて頬杖をついて吐き捨てると、藍染は「そうか。」と余裕のある笑みを浮かべて話しだす。
「100年ほど前、私は鬼殺隊として刀を握っていた。私が鬼狩りになったのはね、自らを人間より優れていると豪語する鬼達が気に食わなかったんだ。実際奴らは驚異的な力や再生力を持っていたし、人より優れているとも思うこともあった。
そんな中で私は疑問だった。なぜそんな優れた力を持っていながら数も少ない鬼狩りごときを何百年もの間滅ぼせないのか、とね」
藍染の話を目を閉じ黙って聞いていたが奴の疑問にたしかに。と思わず閉じていた目を開ける。
たしかに上弦の鬼なんて理不尽極まりない強さを持った連中が多いし、全滅していないほうがおかしいとも思わなくはない。まぁ産屋敷家の神がった采配もあったからだとは聞いているが。
「ある日追いつめた鬼に訊ねてみた。人より優れた存在などと謳っておきながら人の組織の一つすら潰すことができない。君達の上に立つ者は一体何をやっているのかと。
そして私は落胆した。鬼の王として君臨する男、鬼舞辻無惨の器の小ささに。
くだらん名前の縛りを設けたり、徒党を組むことを恐れ鬼達が群れないよう仕向け、奴の機嫌一つで簡単に鬼を殺したりなど、とにかく無駄の多い小物味溢れる無能な行動の数々に酷く失望したんだ。
元々は産屋敷家を失脚させ私が鬼狩りの長にでもなろうとしていたんだが──」
「なんかしれっととんでもないこと言い始めたぞコイツ」
パチモンといえど本物に負けず劣らずな野心家なようで、唐突な爆弾発言に思わず口を挟む。
「彼ら一族の奮闘で鬼殺隊が今日まで存続しているのは分かっているが、古くから続く隊の方針には少々思うところがあってね。
それに産屋敷への絶対的な忠誠心からか、古くからの考えに固執して新たな試みをあまり受け付けない隊士たちも煩わしかった。いっその事党首をすげ替えてしまおうかと思っていたんだよ。君だって分からなくはないだろう?」
「それは、まぁ……うん」
たしかにヤツの言うことも一理あるんだよなぁ。もう少しこうしたらいいのにとか思う所もあるし。柱でもなけりゃ発言力もないから変えるのは難しいのだけれどもね。
「話を戻そう。とにかく鬼舞辻無惨という男が人間より優れた力を持つ鬼の王であることに落胆した私は、彼に替わり自らが鬼の天に立とうとしたんだ」
「ふぅーん、ちなみになんでそこまでしてお前は天に立ちたいわけ?」
「簡単な話さ。私は私を支配しようとする者を打ち砕くためのみに戦う。鬼狩りなったのも人間より優れていると宣う鬼達を滅ぼしてみせるためさ」
「なるほど、どっかで聞いた事ある台詞だ。んで?裏切って鬼になったのになんで死んだのよ?そこまでは記されてなかったんだけど」
「あぁ。鬼舞辻無惨に忠誠を誓ったフリをして鬼になった後すぐ、人や他の鬼達を使って色々と研究をしてね。早いうちに奴の呪いを解除し血鬼術も完全に制御し、そこから倒す算段もつけたんだがそれでも奴には敵わなかったんだよ。
鬼である限り鬼には敵わない。これだけは逃れることのできない不変の
いま一歩というところで敗れた私はある実験に使われた。
別々の鬼を掛け合わせより強大な能力を持つ鬼を造るという実験だった。そうして君達が戦っていた鬼に混ぜられ今に至るという訳だ」
「散々他者を実験台に使って最期は自分が実験に使われるたぁ皮肉な幕引きだな」
「ふっ、今の話は嘘だよ。私はわざと敗けたような形を取ったのだ。最後は私自身が実験体となる実験さ、後の世で鬼の身体を乗っ取り再びあの男と相見えようというね。奴の驚く顔を想像するとなかなかに面白そうだとは思わないか?」
藍染の話を聞き終えた俺がそう鼻で笑うと、ヤツも顔色を変えることなく鼻で笑い返した。
「いや狂ってんなお前、マッドサイエンティストのやることじゃねぇか……。でも結局ここで長いこと立ち向かうこともできず、黙って生きてるたぁ流石に可哀想だなお前。実験失敗じゃんか」
ついでにそんな憎まれ口でも叩いてみれば藍染は怒るでも悲しむでもなく、突然フッと口角を上げた。
「それがそうでもないんだよ」
「は?んなわけないだろ、何もできねえからこんなとこで椅子に縛り付けられてんだろ?」
「いままではそうだったかもね、だが今は君がいる。私が最初に話したことを覚えているか?提案がある、そう言ったはずだよ……護廷十三朗」
その言葉に眉をひそめ身構える。たしかに提案がどうとか言っていたと思い返す。一体何を言い出す気だ……?
「私と手を組まないか?」
「いやです。俺は忙しいんでね、そろそろ帰りますよっと」
「待ちたまえ話は最後まで聞くべきだよ」
引き止める藍染を無視して立ち上がりくるりと背を向ける。
「端的に言うが、君がここを出るには私の力が必要不可欠なんだよ」
「……詳しく聞こうか」
にわかには信じ難いことを口にした藍染に再び向き直り腰を下ろす。その様子に満足げに口元を緩ませた藍染は淡々と告げる。
「君は夢喰いという血鬼術にかかりこちらへやって来た。本人も言っていたかもしれないが、この術は自力で解くことはできないんだよ」
「なっ、嘘だろ……じゃあしのぶちゃんが鬼を倒さない限り俺ほんとに目覚められないのかよ!?」
目を見開いて声を荒らげる俺を気にすることなく、藍染は続ける。
「ほぼ不可能、と言う方が正しい。目覚める方法はある」
「術を解く方法があんのか!?どうすりゃいい、時間がない早く教えろ」
「そう急がすとも教えてやるさ。血鬼術の発動方法は覚えているか?あれと似たようなことをしてやればいい」
「てことは……鬼にこちらから鬼に頭突きを叩き込めと?」
「もっと簡単なことさ、額をどこか硬いところへ叩きつければいい。血が出るくらいにね。
ヤツの虫にはいくつか命令が出されている、その一つが『体内に侵入後、強い衝撃を受けたら直ちに傷口から自分の元へ戻ってくること』だ。本来は精神を崩壊させる程強い衝撃を受けた脳の刺激に反応し、虫がその脳を喰らうことで力を蓄え身体をも喰い破り飛び出てくる。
しかし彼は臆病でね。体内侵入後に突然非常に強い衝撃を受けるなど予定外の事態が起きれば、頭の傷口から何もせずにすぐ逃げ帰ってくるように設定しているのさ」
説明を聞きなるほどと頷く。
「そりゃ自力じゃ出れねぇな。意識を失って自分の身体は動かせないし味方がいたとしても普通、わざわざ身体を危険に晒すようなことはしないもんな」
「そう、そこで私の出番だ。私の技で君の身体に幻覚を見せ錯覚させることで少しの間動かし、地面にでも額を叩きつけてやって虫を逃亡させる。虫が麻酔針のような役割も担っているから虫が出ていけば意識も戻り、戦闘に再び参加できる」
そう答えた藍染はスっと静かに立ち上がった。手足を縛っていたはずの枷は初めからなかったかのように粉々になって消え去りその役目をおえた。
更には手をかざし握るように指を折ると1本の刀が出現し、彼の手にすっぽりと収まった。
「あまり動いてしまうと私が存在を保っているのが向こうに知られてしまうからね、椅子に座して静かに待っていたんだ」
握った刀を眺めながら口角を上げた藍染は俺の前に立ち、刀を握った手を突き出した。
「さぁ、もう一度聞こう。私と手を組む気はないか?その気があるなら柄を握るといい」
「……お前の手を借りなきゃどうにもならないんだもんな、しゃあない。だがよ、俺を助けてお前になんの得があるってんだよ」
柄を握る前に気になっていたことを問いかける。
ここで俺を助けて術をから解いてやったところでこの男には得はないはずだ。そもそもあの鬼の中に存在している訳だし、鬼が死んだらこいつも死ぬはずだ。メリットなんざ何もないじゃないか。
「そうだね、私からの条件を伝えていなかったね。端的に言うと君の中に入らせてもらう、たったそれだけのことだよ」
「はァ!?ちょっと待て何言ってんだよ、お前それ俺のこと乗っ取る気満々じゃねぇか!」
とんでもない提案に声を荒らげ後ずさりする。やっぱりこいつ、ろくな奴じゃねぇ!
「そう思うのも無理はない。だが安心したまえ、既に君の精神世界の中に私は入っているんだよ」
「お前ぶった斬るぞオイ、もう入ってんじゃねぇか」
止まらない藍染の爆弾発言にこめかみをヒクヒクいわせながら食ってかかる。しかしそんなこと気にもとめずに藍染はふっ、と声を漏らす。
「気付いていなかったのか。君の中にいるからこうして私達は言葉を交わすことができているんだよ。君の精神の中に作った私の精神世界、それがここさ。
今までも虫に私という因子を潜ませて血鬼術使用と共に他者の中に入り込もうとした。しかしそれが叶う者は一人も現れなかった。これが成功しているということはつまり、君の身体と私は非常に適合率が高く相性が良いということになるね」
淡々と答えた藍染は、だが、と言葉を続ける。
「安心したまえ、君の身体の主導権を奪い自らの物にしようなどとは思っていないよ。先程話したように私の目的は鬼舞辻無惨を討つこと、目指すところは君と一致しているんだよ。君がそれを達成すれば私の願いも成就される、争う必要などないではないか。
それに君に接触して分かった。護廷十三朗、君は未来からやって来たんだろう?そんな面白い存在はそういるものではない。私はね、見てみたいのさ。未来より現れ、未来を知り、未来を変えようとする存在……そんな君が掴み取る未来がどんなものなのかを、ね」
おいマジかよ、遂に俺がこの時代の人間じゃないことを知る人が現れてしまったよ。口ぶりから察するに転生ではなく単純に未来から遡ってきたと思われているようだが。
後ずさっていた俺に声色ひとつ変えることなく、一歩、また一歩と距離を詰めつけていくその男に俺は後ずさりをやめ、静かにその顔を見上げる。
「私は君という一人の人間が紡ぐ物語を観る傍観者となりたい。まったく、事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだよ」
言い終えた藍染の顔を見たまま、僅かな沈黙。その後決意を固め口を開く。
「傍観者、っていうからには自分が表に出て暴れてやろうって訳じゃないんだな?」
「人を理性のない獣のように言うのはよしてもらおうか、そこは信用してもらって構わないよ」
「そうか……でも馴れ合う気はないかんな。俺は俺だし、俺のやりたいように好き勝手やるからな。文句一つだって言うんじゃねぇぞ」
「ふふっ、疑り深いな君は。構わないさ、それが君の紡ぐ物語だというのなら、どこまでも付き合おう」
数度の問答を経て、俺は息を吐き笑い捨てる。
「わーったよ。んじゃッ、地獄まで付き合ってもらうぜ……!」
そう叫んだ俺は刀身を下に向け待っている藍染の刀の柄を思い切り握りしめた。
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「さぁその目でしかと見届けなさい!貴方の大切な人が無惨に八つ裂きにされる姿をッッ!!」
悦に浸った声で一人の少女の胸元へと尖った爪を突き立てようとする鬼。その狂爪が突き刺さるその寸前、それは腕ごと身体から斬り離され地面へと転がり落ちた。
「……むむ?おかしいですね、今の今まで貴方は無様に倒れ込んでいたはずなんですが」
「まーなんつうか、アレだ。よくよく考えりゃこれは夢みたいなもんでさ、お前に何されようが本当の彼女には傷一つ付きやしないんだよなって気付いちゃったワケよ」
きょとんとした顔で見上げる鬼にぽりぽりと頬をかきながら俺は、その間抜け面を静かに見下ろす。
「でも、夢だからって鬼が人を襲うとこを見過ごしてちゃさぁ〜鬼殺隊失格ってもんじゃない?
ってなワケでそろそろお前との記憶旅行もお終いにして現実へ帰るために声かけに来たわ。まっ、腕斬ったのはそのついでね。痛くなんかないだろ?どうせ夢なんだしさぁ」
そんな俺の飄々とした態度をおかしなものでも見るように、笑い声を上げながら鬼はふらふらと立ち上がる。
「くっ、ふふふっ……私の説明を忘れたんですか?自力でこの血鬼術を解くことなど不可能、貴方にはどうすることもできないんですよ!」
「そうだな、俺にはなんもできないね。俺には……なァ?」
「……?なにをいって──」
「やぁ、久しぶりだね」
「な、お前は藍染……!?だが何故!お前はあの日、私が取り込んで消えたはずじゃ……」
突如、俺の背後から現れた男に焦燥の色を浮かべる鬼に対し、藍染は余裕に満ちた笑みで答える。
「君が鈍感で助かったよ爆喰羅。おかげで私は今日まで生きていることができた。だがしかし、君の見る世界は実に退屈だった。
だからね、そろそろ居所を変えようと思ったんだ。君などとは比べ物にならないくらい面白い人物の元へとね」
そう告げながら俺の横に立つと、藍染は握っていた刀を下に向かせ自分も柄をそっと握りしめた。
「私を取り込み、私の力を手に入れてもなお、その程度の術しか使えない君には落胆したよ。そろそろ夢を見るのも終わりにしたほうがいい。なに、これまでたくさんの人間に夢を見せ愉しんだのだ。次は君が夢から目覚める番さ」
「ぐううう、ふざけるなふざけるなふざけるなァ!裏切り者が偉そうに!あの方に無様に殺され私に吸収させられた負け犬の分際で上から物を語るなァァ!!!!」
ひどく激昂し、荒々しい声で暴言を吐き散らす鬼を静かに見据え、一呼吸おいた藍染はゆっくり口元を緩ませ。
「あまり強い言葉を遣うなよ。弱く見えるぞ」
「ッッッッ!!!!!」
どこか聞き覚えのあるそんな言葉を言い放った。
「ぶっはははははっ、まさかこんなとこでその言葉が聞けるとはッ。いいね、そういうのは嫌いじゃない」
「そうか。お気に召したのならよかったよ。さぁそろそろ君にもこんな世界から出ていってもらわなきゃね。期待しているよ、君が未来を捻じ曲げ、どんな未来を掴み取るのか」
「へっ、ここでどっしり座って見とけよ。ったく、組む相手が俺でよかったなお前。
俺は悪魔と相乗りする勇気はねぇが、死神くらいとなら相乗りしてやれるくらいの器の大きさしてるかんな。2人で1人の死神代行にはくらいなってやらァ」
トンと胸を叩く俺を見た藍染は鼻で笑い、こちらを一瞥した後視線を正面に戻す。
「そういうことは自分で言ってしまっては魅力が半減してしまうものだよ。
これから技を使う訳だが、死神の呼吸の使い手ならば私の技の名くらい知っているね」
「おう、当然。そりゃみんな一度は真似したことあるってもんよ」
前へと向き直り呼吸を揃え、その名を口に出す。
「「砕けろ──鏡花水月」」
鏡が粉々に割れるように、世界が砕ける音が音がした。
──────────────────────
「アハハはっ!どうしましたッ、動きが鈍くなってきてますよ!!」
「っ…………お気遣いありがとうございます。ですが心配にはおよびませんよ……ッ!」
瞳孔をこれでもかと開かせながら、腕を鞭のようにしならせ続ける鬼の攻撃を刀で受け流し、私は鬼へと言葉を返す。
護廷さんが血鬼術に堕ちてからおよそ三十分。私は彼を抱きかかえたまま、私は鬼へ攻撃を与えることもできずに防戦一方を強いられていた。
「もう、その方地面に置いて戦ったほうがよいのではないですか?あなたも動きにくいでしょう」
「そうしたいのはやまやまなんですが、そんなことすればあなたは彼を狙うじゃないですか。彼を死なせいためにもこのまま戦うしかないんですよ」
実際、護廷さんを少し離れた木の陰に横たわらせ戦ったけれども、あの鬼は私には目もくれず彼を首の狙いにいった。彼を離す訳にはいかない。
護廷さんが血鬼術を受けてしまったのは私のせいだ、私がやられそうになって駆け寄ってきたからこんなことになってしまった。
責任はとらなくては、刺し違えてでもこの鬼を倒して血鬼術を解く。それまでは絶対に死なない。必ず鬼へ毒を撃ち込み倒してみせ──
「戦いの最中に考えごとですかァ?」
「ぁ、しまっ……ぅッ!?」
思考をめぐらせているうちに注意が少し逸れてしまっていたらしい。刀を構えるも完全には間に合わず、攻撃を受け流し損ねた私の身体は高く宙へと舞った。そしてその衝撃でつい、手を離してしまう。
「ぐっ……不味、ぃ…」
「入り込んだ虫がしっかり食べ終えるのを待つのもいいですが、たまにはこうして私自身が頭を潰して食べてしまうのもまた楽しいんですよねぇ……くくっ」
「ぁ……ダメ、起きて…起きてください護廷さんッ!!」
頭から真っ逆さまに落ちていく護廷さんに舌なめずりをした鬼が獲物を狩る獣のような目で彼へと飛びかかっていく。そしてその光景を私は届くはずもない距離から手を伸ばし、無様に声を荒らげるだけ。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!やめて、その人を殺さないで。私の──
「ぬわっっ!?んぐっ!!」
しかし血を流し倒れ込んだのは無抵抗の相手に襲いかかったはずの鬼のほう。見れば、鬼は額に斬り傷がつけられ、ぱっくりと割れたそこからは赤黒い液体が滝のように流れ出していた。
その直後、ドサッと鈍い音を立ててもう一人地面へと叩きつけられピクリとも動かずうつ伏せに倒れ伏していた。
いったいなにが、あの一瞬で何が起きたっていうの……?受け身を取って着地した私は眉間に皺を寄せ、ただ困惑する。それは鬼も同じなようで、溢れ出る血を眺めながらゆっくりと私のほうを向いた。
「は、ははっ!これは一本取られましたよお嬢さん、まさかあの距離から攻撃する術をもっていたとはね……!」
「いえ、残念ながら今のはわた──」
その刹那。
「痛っったァァァああぁ!?!?!?」
なんとも間抜けな声が森中に木霊し思わず肩をビクリと震わせる。
慌てて声のしたほうを見てみるとそこにはうつ伏せからムクリと起き上がり、よろめきながら自身の頭を抱える少年の姿があった。
「っったくあんのバカ!ちょうど頭から落ちてってのにわざわざ振りかぶりさせやがって!死ぬかと思ったわ、お花畑見えたっての!!」
その声の主に私は目を見開き、唇を震わせる。
ああ、よかった。まだ鬼を倒した訳ではないというのに、既に私は勝ちが決まったかのように安堵に包まれてしまっている。
「は……?なぜ、アナタ…目覚めてるんです?」
「あ?あーそっか、虫は俺がたった今握り潰しちゃったもんな。情報の共有もできてねぇのか。お前がビビりで無駄な指令を作ったおかげで目覚めることができたわ、あんがとよ」
声を潜め首を傾げる鬼に対し、彼は額から流れ落ちる鮮血に顔を真っ赤に染めながら、好戦的な笑みで刀を肩に背負い言い放つ。やがて視線を私の方をへ送り、「さて。」と口角を上げて刀を胸の高さまで上げて切っ先を狙い澄ますように鬼へと向けた。
「ほな、お礼参りといきましょか」
「っ、私の術を破ったくらいで調子に乗らないもらえます?また夢の世界へと堕とせばいいだけのこッ!?!?」
死神の呼吸 参ノ型 卍解 ──神殺槍 無踏連刃
言葉を言い切ること待たずして、無数の突きが鬼の身体へと吸い込まれていき、赤黒い血飛沫が飛び交う。
「なッ…ぐァっ!先程までとは桁違いの攻撃速度ッッ、一体何をしたッ!?」
まったくその通りだ。さっきの突き技の速度、いままでの護廷さんとはまるで別人かと思ってしまうような動きだった。突きの速さだけでいえば勝っていたはずの私を軽々と凌駕していた。この短時間の間に一体何が起こったというの……?
「よっ、しのぶちゃん。ゴメンな油断して迷惑かけちまった」
と、考えているうちにいつの間にか私の横に来ていた護廷さんがポンと手を肩に置きながら謝罪の言葉を口にした。先の剣術とは打って変わり、驚くほど普段と変わらない飄々とした態度。そんな彼に目をパチクリさせながら彼の言葉を胸の中で笑い飛ばす。まったく、何を言っているのでしょう、
「いえ、お気になさらず。むしろ油断したのも迷惑をかけたのも私のほうです、申し訳ありません。
……ふっ、原理は知りませんが、本当に護廷さんなんですよね?まだ戦えますか?」
「はっ、どこをどう見てもいつもと変わらぬカッコイイ護廷さんだろ?大丈夫、今の俺は血鬼術を……いや字が違うな。血気術を使えるからね!もうあんな鬼に遅れは取らねえ、ド〜ンと任せときな!!」
あぁ、よかった大丈夫そう。いつも通り変だ、護廷さんだ。
互いに刀を強く握り直し肩を並べ、敵意の目をして向かい合う鬼を見据えながら私は誰にも聞こえぬ小さな声で呟く。
「期待してますよ。」
次回、決着。
もうそろそろ原作開始までもっていきたいところですねぇ。まぁまだ書きたい話があるのでもう少し先にはなってしまいそうなんですけどね…
就活やら国家試験の勉強やらで書く時間なかなか取れなくて更新が滞るのが心苦しい、ちまちまとでも書いていくので気長に待っててもらえるとありがたい。
よくある主人公の設定集みたいなのあった方よろしい?プロフィールやら技の設定的なのを書く感じになると思われ
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当たり前やろ書けや
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いらんわそんなのよりはよ続き書けや
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とりあえずカナエさんは今日も美しい