鬼のいる世界で死神を気取る   作:りんごあめ

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時間は流れるもの。話はいきなり飛んでいくもの。


3.鬼殺隊はブラック企業だと思う

「あーしんど、ほんとにしんどい。流石にさぁ〜まともな休息なしで任務を続けて四件回してくるのはないわ〜。ほぼ毎晩野山を駆け回る羽目になったんですけど。これじゃ組織と敵、どっちが鬼だかわからんって」

 

 まっ昼間から一人悪態をつきながらすたすたと歩く。やがて大きな屋敷の前で足を止め、それを見上げる。

 

「いやぁ〜何日振りだ?六日くらいか、久しぶりに見ると安心感ハンパないな」

 

 一人呟きながら門をくぐり、屋敷の戸を引いて慣れたようにその屋敷の中を歩いていると、同じ格好をした男子二人組とすれ違う。

 

「おい、今のじゃない?噂の死神ってやつ」

 

「あぁ多分な。黒髪の長髪に白い羽織り、そしてあの刀身から柄、鍔まで全て純白の日輪刀。なんか他のやつらとは雰囲気違うよな」

 

「そうだな、というかなんで花持ってんだろ。手向けの花とかか?」

 

「あーそれじゃない?死神っていうしピッタリじゃん」

 

 あんま聞こえないようにひそひそ話してるつもりなのかもしれないけど丸聞こえですよ、と言いたくなったが喋るのも面倒なのでやめておく。

 こっちは連日の任務で疲れてんだし余計なことはしないでおこう。

 

 

 そんなことをぼっーと考えながらとある部屋の前で足を止めて軽く深呼吸をする、そして。

 

「カナエさんたっだいま〜!!しばらく俺に会えなくて寂しくなかったかい?あっ、またお花買ってきたよ〜!」

 

 勢いよく扉を開けて、それはもう元気な声で手を振った。

 

「あらあら〜おかえりなさい護廷くん。君がいないと屋敷が少し静かで寂しかったわ。

 お花いつもありがとね、今度はどこに飾ろうかしら〜」

 

「姉さん!護廷さんをあんまり甘やかさないでって言ってるでしょ!護廷さんももっと静かに帰ってこれないんですか!あと毎度毎度そんな大きな花束買ってこないでください、屋敷を花まみれにするつもりですか!?」

 

「なんだ、いたのかしのぶちゃん。」

 

「いますよ悪いですか!」

 

 にこやかに出迎えてくれたカナエさんとは打って代わり、今日も今日とてピキピキなさったしのぶちゃんが声を上げた。

 

「まぁそんなカッカしないでよ、ちゃんとカナエさんだけじゃなくアオイちゃんにも少しお花買ってきたんだし。しのぶちゃんには…………はい飴ちゃんあげる」

 

「なぜ!?そこは私にもお花じゃないんですか!どうして私だけ飴玉!?」

 

「いや、いつも文句言うからお花じゃないほういいのかなって。あれ?もしかして自分もお花もらいたかったの?あれれぇ〜??」

 

「はっ、そ、そういう意味じゃないです何言ってるんですか!!」

 

「ふふふ、今日も二人はなかよしね〜さすが同期で同い年なだけあるわね!」

 

「仲良しなんかじゃない!」

「仲良しですよ〜」

 

「ちょっと護廷さん!ふざけるのも大概にしてください!!」

 

 楽しそうに笑うカナエさんに吠えるしのぶちゃんにわざと被せるようにそう言うと硬く握られた拳が俺の肩に飛んできた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 最終選別から一年半とちょっとが過ぎた。

 

 あれから十日ほど経ってから家に日輪刀を持った刀鍛冶の人がやって来て、すぐに任務が通達された。

 

 来る日も来る日も命がけで鬼と戦う社畜生活……じゃなかった、鬼殺生活が始まった。

 

 まぁ無難に任務をこなしていき、現在俺は任務の時以外は原作でもおなじみの蝶屋敷に入り浸って生活している。

 

 目覚しい活躍により一年ちょいで柱まで上り詰めたカナエさんに与えられたこの屋敷、やはり原作同様に負傷した隊士達の治療や機能回復訓練を行う場としても使用されている。

 

 そんな場所に俺がいる理由はただ一つ。

 

 

 カナエさんがいるからである。

 推しだからである。

 

 

 しのぶちゃんの姉である彼女は原作が始まった頃には既に故人であり、回想なんかでちょいちょい登場するくらいで活躍の場はそこまで多くはないが生前鬼滅の刃を読んでいた俺の推しなのである。

 

 何故しのぶちゃんではなくカナエさんが推しなのか?そんなの簡単である。

 

 

 

 

 俺が『お姉さん』好きだからだ!!!

 

 

 

 

 いや、というのもね、生前の俺は一人っ子だったのよ。そんな中いろんな漫画やアニメで出てくる主人公より年上の穏やかで大人っぽい色気やらあの余裕のある包容力を放つ女性キャラ達に魅了されてしまったのよ。

 めっちゃ抱きついてヨシヨシとかして甘やかしてもらいたい、膝枕とか耳掃除とかもやって欲しい!

 

 と、友達に熱弁するといつも引かれた。周りは同い年や年下好きな連中しかいなかったのだ。なんでだよいいじゃねえかお姉さん。

 

 そんな俺が鬼滅の刃を読んでいて出会ったのがカナエさんである。プンスカ怒っているしのぶちゃんに対し、おっとり穏やかな態度でニコニコとしているカナエさんを見て俺はそれはもう見事に心を射抜かれてしまった。

 それに加えアニメによってもたらされたあの包容力たっぷりな美声である。もう最強じゃない?あのビジュに性格に声、どこを取っても完璧な『お姉さん』なのである。

 そんな推しと同じ世界にいるのだ、つまり上手くいけば恋人になりやがては結婚……なんてことも夢ではないのだ。推しの子ならぬ推しの夫である。

 そんな野望の実現のため、俺は日々カナエさんに猛アタックしているのだ。上手いことあしらわれているような気は……しなくもない。だがそれもまたいい!とりあえず推しと同じところで同じ空気を吸えているだけで今は幸せなのだ。それでいいのだ……。

 

 

 

 

 

 

「ふあぁ〜やっぱりカナエさんが淹れてくれるお茶は格別だねぇ……これを飲む為に俺は六日もここを離れて任務を頑張ったってもんよ」

 

 二人に騒がしく顔を出した後、カナエさんが淹れてくれたお茶を啜りお菓子を食べながら、俺はカナエさん達とほっと一息ついていた。

 

「ふふっ、いいところの茶葉を使ってるだけよ。私は何もしてないわ」

 

「そうですよ、相変わらず口ばっかり達者ですね護廷さんは。あと、六日ではなく八日の間違いです」

 

「へぇ〜?しのぶちゃんってば、わざわざ俺が帰ってくるまでの日にち数えてたの??」

 

「ちっ、違いますよ!たまたまです、変な勘違いしないでください」

 

「ほぉ〜ん?じゃそういうことにしといてあげる……あげるからさ、俺があげた飴玉ボリボリ噛み砕くのやめてくれる?せっかくだから味わって食べようよ」

 

 ものすごっい勢いで飴玉を噛み砕いているしのぶちゃんに苦笑しながら待ったをかける。そのカミカミしている姿はまるでリスのようで、ちょっと笑いそうになってしまうのだが、ここでそれをやってしまうと確実にまた怒られるのでぐっと堪えておくことにしよう。

 

「あっ、そうだ聞いてくださいよ俺さっきまたウワサされてたんすよ!もうやんなっちゃいますよねぇ。持ってた花束も手向けの花じゃね?とか言われちゃって、カナエさんへの愛をこめた贈り物だってのに……」

 

「まぁ護廷くん少し目立ちやすい身なりしてるし仕方ないかもね。

 女の子みたいに綺麗な長髪に白い羽織りで『死神の呼吸』なんていうちょっと特殊な呼吸を使ってるし、それにそんな真っ白な刀を持ってたらねぇ……物珍しさに噂されるのも無理はないわ」

 

「でもほんとに不思議ですよね。日輪刀は色変わりの刀と呼ばれてはいますが、柄まで色が変わるなんて。本来であればありえないことですからね」

 

 俺の出した話題に苦笑いするカナエさんにうんうんと頷きながらお茶を啜るしのぶちゃん。ほんとなんでこうなってんだろう。

 

 カナエさんの言う通り、今の俺は黒髪ポニテに山爺にもらった死神の隊長達が着ていそうな模様の白い羽織りを着ている。

 そして握った瞬間に刀身どころか柄まで全身ブワッと白く染まった日輪刀。なぜこうなったのかは俺にもさっぱりわからん。

 ちなみに上から下まで真っ白にした結果、刀鍛冶の方に俺が丹精込めて作った刀に何してくれてんだという大絶叫と共にぶん殴られた。いやこれは理不尽だろ、こっちだって理由知りたいってのにさ。やっぱり刀鍛冶の人達には変わった人が多いのかもしれない。

 

 

 

 

 

「しのぶちゃん、ありえないなんてことはありえないよ。いま君の目の前にいる俺がそうなんだからね。まぁこれは前にも言った気はするけどさ、たまたま前例がなかっただけのことを一々否定してちゃ発展も変革も永遠に訪れないよ」

 

「またそれですか。ならなんです、人間の味方をする鬼もいるとでもいうんですか?」

 

「ハハッそりゃいつかは現れるよ、俺の勘がそう言ってる」

 

「フンっどうですかね、鬼なんてみんな自分勝手で嘘だって平気でつく卑怯な奴らじゃないですか!」

 

 飄々とした態度で言う俺にしのぶちゃんは語気を強めて吐き捨てる。

 

「まぁほとんどはそうだね、でもそういうやつもきっといるって考えたほうが楽しくない?楽しもうよ、人生」

 

「別にそんな楽しさ求めてません!!」

 

「私はそのほうがいいわね。鬼とも仲良くなりたいしきっとそういう鬼もいるわよね〜」

 

 不機嫌そうに声を荒らげるしのぶちゃんとは真逆に、頬に手を当てにこやかに笑うカナエさん。あぁ〜もう小さな仕草一つで画になる美しすぎるぅぅ!!

 

「おっ、さすがはカナエさん気が合うねぇ〜!やっぱ俺たち相性ピッタシだと思うんですよね。久しぶりに帰ってきたことだし今日は朝までいろいろと熱く語り合いましょうぜ!」

 

「あらあら、それは楽しそうね!どうしまょう〜」

 

「はあああ〜お熱いことですね!護廷さん宛に任務でもきてまた駆り出されればいいのに」

 

「ちょっとちょっとやめてよしのぶちゃん〜俺今日帰ってきたばっかりよ?そんな縁起でもないこと言わな──」

「カアアアア!!!!ガッ!?」

 

「ちょっと待てぃ!!来とる!不穏な鳴き声が聞こえて来とる!」

 

 しのぶちゃんが呆れたように頬杖をつきながら言った直後、俺の鎹鴉がバカでかい鳴き声を上げながら窓から入って来ようとして見事に壁に激突、墜落した。……なにやってんだろうちの鎹鴉、ほぼ毎回壁にぶつかるんだよなぁ。

 

「カ、カアアアア!ニ──」

「任務を持ってきたと言うのなら俺は今からお前を焼き鳥にする……!」

 

「……………ニ、任務、任務ゥゥ!!」

 

「よしおめェの心意気はよぉ〜く分かった!カナエさん台所借りますね〜!!」

 

 壁へ激突したことなどまるでなかったかのように平然と入ってきた鎹鴉を両手でしっかり掴み立ち上がる。

 

「護廷く〜ん」

 

「さぁ我が鎹鴉、ニックネーム紺野紺左衛門こと本名コンよ。味付けはタレと塩どっちがいい?ちなみに俺は塩が好きです。あ、本名とニックネーム逆か」

 

「ガアアア!ヤメロ、ヤメロオオォ!!」

 

「護廷くん」

 

「アッハイ」

 

「任務……いってらっしゃい♪」

 

「何だよぉおもおおお、またかよぉおぉぉおおおお」

 

 カナエさんのニッコリとした笑顔と共に放たれる圧に屈し、どこぞの巨人を従えてそうな戦士長の如き咆哮を上げた俺は蝶屋敷を飛び出し再び任務へと向かった。

 




・不定期開催!大正コソコソ噂話・
主人公の声は最強の呪術師や実力派エリート、
『強欲』の人造人間etc.....その他多くのキャラの声をやってらっしゃるあの人のような声をイメージしているらしいですよ。

護廷「ネタが思いつかなかったりすることもあるだろうし最初から不定期開催と保険をかけておくよ!だそうです。
……逃げるなァ卑怯者ォォ!!!」

よくある主人公の設定集みたいなのあった方よろしい?プロフィールやら技の設定的なのを書く感じになると思われ

  • 当たり前やろ書けや
  • いらんわそんなのよりはよ続き書けや
  • とりあえずカナエさんは今日も美しい
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