今回は割とまじめなお話でごさいやす。
「せーのっ!」
『お誕生日おめでとう!!!』
「あらあら〜みんなありがとう!私の誕生日のお祝い会を計画してたなんて全く気づかなかったわ〜」
机に並べられたいつもより豪華な料理の数々、そして飾り付けられた居間をぐるりと見回しながらカナエさんが頬に手を当て嬉しそうに顔をほころばせていた。今日はカナエさんのお誕生日会である。
妹の織姫が初めて蝶屋敷にやって来てから半年ほど経った。その間にも俺達は変わらず鬼と戦う日々を送ってきたのだが、変わったこともある。蝶屋敷に暮らす仲間、なんちゃって三姉妹が加わった。
なんちゃって三姉妹ってのは機能回復訓練などでおなじみ、きよちゃんすみちゃんなほちゃんのことである。顔がそっくりなのに姉妹じゃないからなんちゃって三姉妹である。
だってあんだけ顔似てたら姉妹だって思うじゃないか。なのに実はあの子達みんな苗字バラバラで姉妹じゃないと知った時は度肝を抜かれた。
まぁ世の中にはドッペルゲンガーだとか同じ顔の人間が三人はいるだとかいう話もあるしありえない話でもないんだろう。そう言い聞かせておくことにしている。
話を戻そう。今日はカナエさんという女神を誕生させてくださったお父様お母様、そしてカナエさん本人に生まれてくれてありがとう、そしておめでとうを伝え祝う一年の中でもとてつもなく大事な一日である。だがしかし俺は素直にこの年のこの日を祝うことができなかった。
ご馳走様を食べながら談笑したりそれぞれカナエさんにプレゼントを渡したりと皆楽しそうにしているなか、俺は一人固い表情をしている。
今年でカナエさんは十七歳、しのぶちゃんと俺は十四歳になる。
つまりは今年がカナエさんが命を落としてしまうその年ということである。
原作での情報によればカナエさんは十七歳の時にある鬼に敗れ、しのぶちゃんは十四歳にしてこの蝶屋敷を引き継いだとされている。
間違いなく今年、カナエさんは死んでしまう。
この場にいるみんなの顔を見回す。みんな笑顔で楽しそうだ、もしこの場からカナエさんがいなくなってしまったらどうなるか。彼女の命が失われるだけではない、みんなのあの笑顔も奪われてしまう。
そんなの絶対にイヤだ。奪われたくない、奪わせてなるものか。
だから、俺がカナエさんを救けるんだ。たとえ、
……俺の命に代えてでも。
「あっ、カナエさん!今から任務ですか?」
「あら護廷くんおかえりなさい、そうなのよちょうど入れ違いになっちゃうわね」
「いやぁ残念ですよほんと、数日ぶりにカナエさんとお茶できると思ったのに。ちなみに今回はどんな任務なんですか?」
「山を一つ越えたとこにある小さな村でね、村人達が襲われているらしいのよ」
「なるほどそれは大変ですね、カナエさん無事に帰ってきてくださいね。またお茶しましょ」
「えぇ、そうね。それじゃあ行ってくるわ、護廷くんは次の任務までちゃんと身体を休めておきなさいね〜」
「は〜い!カナエさん、困ったことがあったら言ってくださいね、どこへでも救けに行きますから!」
「それは頼もしいことね!じゃあ困ったことがあったらお願いするわね」
手を振って駆け出しいくカナエさんの背を見送ってから屋敷へと入る。
あぁよかった、今日はきっと違う。そう心の中で呟いてほっと息を吐く。
あれからこんな感じでカナエさんが任務に行く時はその詳細を聞くようにしていた。今回のは小さな村で不特定多数の人が襲われているらしい。あの鬼ではないハズだから大丈夫だ。ヤツは女性のみを狙って食べるというイカれた拘りを持っている。
それに恐らくヤツとカナエさんが戦うのは田舎の村ではなく、最低限は栄えている町のはず。今日は安心してカナエさんの帰りを待つことができる。
そうやってカナエさんの動向をいままで以上に気にする日々を送っていった。
一ヶ月が経った。特に変わりはなく皆元気に暮らしている。
二ヶ月が経った。問題ない、カナエさんもみんなもちゃんと生きてる。
三ヶ月、まだ何もない。至って平和だ。
いや、鬼と戦いに明け暮れる日々だから平和ではねぇな。
四ヶ月。大丈夫だ、これもしかしてヤツが現れることはないんじゃないか?そんな期待が俺のなかで湧き上がってくる。そうだよ、原作でそうだったから必ずしも起こるとは限らないんだ。俺とが幾つかイレギュラーな存在が混じってんだしな。これは案外イケんじゃないの?
五ヶ月経ってやっぱり何もなし。ヤツが現れることなんてない。これは勝ったな、ガハハハハハ!!
六ヶ月。
「姉さんならあなたが任務から帰ってきて疲れて寝てる間に任務に行ったわよ?
町で綺麗な女性ばかりが跡形もなく行方不明になってるんですって、それにまだそんなに寒い時期じゃないのに時々辺りが凍っていたりすることもあるみたいで間違いなく鬼の仕業だろうとのことです」
「……っ!?」
「ああっー!ちょっと何やってるんですか護廷さん!湯のみ割れちゃったじゃない!!」
しのぶちゃんの言葉を聞いた途端、胸がドクンと一際大きく跳ねたのを感じた。持っていた湯のみが手をすり抜け床に落ちて割れる音も、それにピキピキなさるしのぶちゃんの怒号もうわの空。聞こえているのに聞こえていない、そんなふうになるほど俺の意識は目の前のことから遠ざかっていた。
ヤツだ、あの鬼が現れる。
結局運命なんてものからは逃れられないらしい。まったく容赦ないったらありゃしない。
「カナエさんが任務に行った町ってどこ?ここからどのくらいで行ける?」
できる限り冷静に、そう言い聞かせ深呼吸してから問いかける。
「たしか、一つ森を抜けた先にある町のはずです。今から急いで行くんなら今日の夜中には到着するんじゃないかしら」
「しのぶちゃんいますぐ鎹鴉で産屋敷邸に伝令を、手の空いてる柱の皆様に大至急カナエさんのもとへ行くように伝えて!」
「はっ、え?いきなりどうしたんですか?柱って……」
「俺の思い過ごしならそれでいい、カナエさんが危険かもしれないんだって!」
「危険ってどういうことですか」
なかなか素直に頷いてくれず若干の苛立ちを覚えながら、いつもより眉間に皺を寄せ険しい表情をしているであろう俺に神妙な面持ちで訊ねるしのぶちゃん。
「カナエさんが…………死ぬかもしれない」
こんなのを告げるのは酷だとは思いつつも俺はハッキリとしのぶちゃんに言い放った。
「なに、言ってるんですか?姉さんが……?冗談やめてくださいよ、柱である姉さんが死ぬなんてそんな……!」
「冗談言ってるように見える?こうして大急ぎで羽織りを着て刀を腰に納めようとしている俺が嘘をついてるとでも?それにカナエさんが遭遇するのはおそらく十二鬼月だ、それも上弦のね」
「上弦の鬼!?…その根拠はなんです?」
「……俺の勘がそう言ってる。前から時折未来が見えるっつってただろ。それに流石に俺でも愛しの人が死ぬとかそこまで不謹慎なことは言わないっての」
任務に行く時と同様の準備をしている俺を見たしのぶちゃんはようやく信じ始めてきたようで、一瞬考え込むように俯いて頷いた。
「……今回ばかりは信じてみることにします。私も鎹鴉を飛ばしたらすぐ姉さんのいる町に向かいますので護廷さんは先に行ってください」
「いや、しのぶちゃんは怪我の手当てができるように屋敷で万全な状態で待っていてほしい。それに敵は上弦の鬼、今のキミが来ても正直相手にならないよ」
「それを言うなら護廷さんだって!柱でもないあなたが相手になるとでも!?」
俺の言葉に声を荒げて食ってかかるしのぶちゃん。なんとなくその声色や表情からは自分が相手にならないと言われたことへの怒りよりも、俺のことを心配しているような気持ちが見えた気がした。
「んや、勝つことは厳しいだろうね。というか流石に勝つつもりはねぇよ、鬼が撤退する朝まで持ちこたえんのが目標さ。それもキツいだろうけどまぁやれるだけやってみるよ」
柱が応援に来ればそれこそお役御免だろうし。と付け加えて笑ってみせる。そうさ、今の俺じゃ上弦の鬼なんていうバケモンの頸を取るなんて無理な話だろう。
だから朝までカナエさんを殺されないようにするか、途中で来てくれるかもしれない柱の応援まで全力で耐久レースをするのが今回の目標である。
そんな俺の目的を聞いたしのぶちゃんは厳しい表情のまま頷く。
「わかりました、姉さんをよろしくお願いします。ちゃんと二人とも生きて帰ってきてくださいね……!」
「おう。カナエさんのことは任しとけ、じゃっ行ってくる!」
軽く手を振った俺は蝶屋敷を飛びだし全速力でカナエさんのいる町へと駆け出した。
頼むから間に合ってくれよ……!
そう何度も祈りながら俺は日が沈みかけ茜色に染るなかひた走った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はァ、はァ……ゴホッ!?」
「いやぁすごい、すごいよ君は!たった一人でよく頑張ったよ!勝てない相手だと分かっているのに果敢に挑んでくるその姿、月の光を受けて舞う君は本当に蝶のように美しかったよ!」
血を流し肩で息をする満身創痍な私とは対照的に傷一つ無い身体で余裕の笑みを浮かべる鬼。
上弦の鬼とこんなにも圧倒的な力の差を見せつけられるなんて思いもしなかった。こんなのじゃ柱失格ね、自分の無力さに悔しさばかりが募っていく。
これだけ必死に戦ったというのに鬼は平気な顔をしている。それなのに私はあの扇子に斬りつけられ至るところから出血し、時折意識が霞んでしまう。
極めつけは血鬼術をくらい凍りついてしまった肺だ。あの鬼が言うには肺胞が壊死しているらしい。呼吸で戦う私達に対して吸ったら致命傷にもなり得る技を使うなんて、あまりにも分が悪すぎたわ。もう花の呼吸の技を放てるかどうかもわからない。いえ、息をするだけでもこんなに苦しいんだもの、もうきっと技を放つなんて無理ね。残念だけどもうお手上げだわ。
「たくさん頑張ってボロボロになってもう辛いよね、俺と一緒になって早く楽になろう。そして俺と一緒にずっと生き続けようよ!」
鬼がこちらに向かってくる、きっと私はそれにどうすることもできない。
あぁ、私はもうすぐ死んでしまう。私が死んだらしのぶもアオイもカナヲも。すみ、きよ、なほもみんな悲しむかしら。みんなが悲しまないように笑顔で一緒に暮らしていたのに、きっと泣かせてしまう、悲しませてしまう。最期に酷いことしちゃうわね、みんなのお姉さんとして最低ね、本当にごめんなさい。
しのぶには……ううん、みんなには鬼殺隊なんかやめて普通の女の子としてお婆さんになるまで幸せに生きてほしいな。前から書いていた遺書にもそう書いていたし私のお願いごと、きっとみんなは叶えてくれるよね?
あの子達だけじゃない。キミにもとても悲しい思いをさせてしまうよね、護廷くん。
しのぶにはよく目くじらを立てられてたけどすごく私を慕ってくれた男の子。
いつもお花を買ってきてくれてやり過ぎだなんて怒られていたけれど私はいつもとっても嬉しかったわ、本当にありがとう。
それなのにあれだけ想いを寄せてくれてたのにいつもはぐらかしてばかりいてごめんね、こんな終わりを迎えるなら少しくらい応えてあげてもよかったなって今更になって後悔してるわ。
そんな強くて優しいキミならしのぶ達のことを任せられるから、どうかあの子達をお願いね。
動きがゆっくり遅く見えている、ほんとは目にも止まらないくらい速いはずなのに。それにいままでのことが次々と頭のなかで思い出されていく、これがきっと走馬灯というものなのだろう。
辛いこと悲しいことがたくさんあった。でもそれと同じくらい、それ以上に楽しい思い出もたくさんできた。この思い出を胸に遠くからみんなことを見守っているから。みんなが幸せな日々を送れることを祈ってるわ、頑張ってね。
それでもやっぱり。
「もっとみんなと仲良く笑っていたかったな──」
「さよなら、花柱ちゃん!俺のなかで共に永遠に生き続けよ──ッッ!?
なんだよ〜せっかく感動のお別れをするとこだったのに。邪魔立てはよくないぜ?」
「………ぁ…!」
鬼の魔の手は私に届くことはなく。それどころか届くはずだったその手は右も左も綺麗に斬り落とされていた。
すぐにその腕を再生させながら不満の声をあげる鬼の視線の先に目をやる。夜のなかだというのに月明かりに照らされるその人が誰なのかすぐにわかってしまった。
やっぱりキミは優しいね。私が困っていたらいつでも助けますって前に言っていたけれど、本当にこうやって助けに来てくれるんだものね。
「今日は月が綺麗ですねぇ……まぁ一番綺麗なのはカナエさんですけど。
そんな綺麗なものが揃ったいい夜に一匹、汚ねぇゴキブリ野郎が紛れ込んでんなァ」
「あははっ!面白いこと言うねキミ。ゴキブリ野郎ってのはもしかして俺のことかい?」
屋敷の屏の上から刀を担いで見下ろす護廷くんに私は思わず笑みをこぼした。
次回、護廷くんがカナエさん救出という原作ブレイク目指して頑張ります。
ここでみなさんにお知らせ的なものを1つ。
護廷くんへの質問コーナーをやってみようかな思うてます。
護廷くんの前世のことなど、本編ではあんまり触れないことをはじめとした彼に聞いてみたいことなんかがもしあれば活動報告にお書きください。内容はなんでも構いませんので〜
次回からあとがきのスペースを使って『護廷くんの談話室』的なタイトルのミニコーナーを作って質問にお答えいたします。
何も来なければひっそりとなかったことになり消滅するだけですがね〜( ˆᴗˆ )
護廷「コソコソ噂話が思いつかなかったときの保険かぁ」
コソコソ噂話とセットでお送りすることもあるから…逃げてなんかないから…
よくある主人公の設定集みたいなのあった方よろしい?プロフィールやら技の設定的なのを書く感じになると思われ
-
当たり前やろ書けや
-
いらんわそんなのよりはよ続き書けや
-
とりあえずカナエさんは今日も美しい