すばらしきこのせかい・シンデレラガールズ・サーガ World Connect 作:デトネート
新子々。その小さな身体に秘められていたのは、死神ゲームの運命に抗おうとした、二人の少女の物語だった。
「……さあ、次はお前の番だ。ココ」
「……ん、次?」
店中で派手に大暴れをし、当然、周りから変な目で見られたココ達は、頭を下げながら早々に店を出て、再びワイルドキャットへと向かっていた。休めと言われても、どこか遊びに行けるほどの気持ちじゃない。今はコーヒーを飲んで、少しでも落ち着きたい気分だった。
その道中にて、昨日より尖った雰囲気が和らいだミナミモトは、ココにある話題をかける。それは、この数日でミナミモトが感じていた、ココの違和感についてだった。
「気づいてないとでも思ったか?お前の……心の中のトラウマ」
「……!?」
「ふん、やっぱりそうか」
「……?どういうことだ、ミナミモト?」
ミナミモトはずっと気になっていた。たまにその姿を見せる、ココの心の底に溜まった『何か』が。
「ココ……『友達』に隠し事はなしだ。教えろ……『渋谷凛と、一体何があった』」
「……別に」
明らかに機嫌が悪くなっている。カマをかけ、確信を持ったミナミモトは、次々と話を切り出していく。
「昨日、ネクが渋谷凛の話をした時、お前の様子が明らかにおかしかった。表情も冷めきって、まるで『死人』みてえなツラで……」
「死人……そんなの、当たり前でしょ。私もアンタもネクも、ホントは未央と卯月以外、みんな死んでるんだから……わざわざ、そんなこと思い出させないで——」
「話を逸らそうともムダだ。未央も卯月も……ネクも、凛について聞きたいことはあるはずだ。知ってることがあんなら、さっさとぶちまけて……」
「だから!!!なんでもないって!!!!!……私が不機嫌だったのは、『ヤなこと』思い出したからだよ……!!」
ココの目が今まで見たことのないくらい鋭くなる。その視線はミナミモトに向けられ、次に未央と卯月、そして、ネクに向けられる。
「私は……私は、知らないから!!ホントに何も!!あまりしつこいすると、怒るよ!!」
「ココ、ちゃん……?」
「私には、凛ちゃんを探す手がかりは何もないから、何も役に立つことは言えないよ。はい、お話おしまい!!早く羽狛さんのとこ行こ、ネク!!」
「……いや、待ってくれ」
その時、ネクは先を急ごうとする、ココの腕を掴む。
「聞かせてくれないか、お前の言ってるそれ。なんか、変に突っかかったんだ」
「はぁ?」
「いい迷惑なのは分かってる……でも、お前のあの明るい表情が、そんなしかめっ面になってるのが、やっぱり気になって……」
「え……えっ!?」
ネクから危うく勘違いされかねない言葉をかけられ、ココは思わぬ不意打ちに、顔を赤くする。反応をみて不思議がるネクだったが、思い返すことで、つい恥ずかしくなって、慌てる。
「あ……ち、違うんだ!!さっきは、それしか言葉が思いつかなくて……やばっ、今すごい気持ち悪いこと言ったような……」
「え、えと、ちょっと不意打ちすぎて、びっくりしちゃった……はぁ、やっぱり私、ネクには敵わないなぁ」
「いいよ、ワイルドキャットに着くまでの間、話してあげる。でも、別に凛ちゃんを探す手がかりにはならないし、結構ドロドロだから……その、聞くときは、用心してね」
——かつて、自分が死神ゲームに参加し、その後生きるために死神として生まれ変わったその日から、ココの毎日は想像を絶するほど過酷なものとなった。
死神のルール……死神はゲームの参加者を消滅、殺すことで寿命を得ることができる。それは逆に言うと、死神は、生きるためには必ず参加者である人を、自らの手で殺すしかないということ。死神ゲームに参加した……つまり、死を一度経験している自分が生きるためには、同じく悲しみの果てに死んだ、同じ境遇である参加者を殺さなければならない。
これは、小さく幼かった少女が、完全な死神となるまでの物語。
『私はリエン!これから七日間、よろしくね!!』
自分の目の前に現れたのは、橙色の髪をしたハツラツな女の子だった。名前は新梨遠(アタラシ リエン)といい、自分と同じく死神ゲームの参加者として説明を受けていたのを思い出した。
真っ白な部屋……審判の間と呼ばれる場所で、指揮者直々に説明を受けた後、参加者はエントリー料を徴収され、ゲームの舞台の渋谷UGへと放り出される。
リエンは、両親が花びらで作ってくれたというお守りをエントリー料として徴収され、自分もまた……記憶の一部分を徴収されたようだった。恐らくそれは死因の記憶、そして、大切な『誰か』の記憶。いるかどうかも分からない、でも何故か消えたということだけが分かる、とても奇妙な状況だった。
『うーん、エントリー料って、確かその人の『一番大切なもの』が取られるんだよね?だったらその記憶は、君にとってとても大切なものなんじゃないかな?』
『私にとって、一番大切な?』
お互いに未契約であったため、生き残るためにも、自分はリエンと契約を結んだ。
死神ゲームとは簡単に言うと、死神と呼ばれる存在が繰り出す化け物、ノイズをパートナーと共に退け、最終日である七日目にゲームマスターと呼ばれる特殊な死神を倒す、というものだ。
『一日目から六日目』にはゲームマスターからの指令、ミッションが一日一つ出され、それをクリアしなければ参加者は皆、即消滅となる。無事に七日目まで生き残り、ゲームマスターを倒せば、参加者側の勝利。
生き残った参加者の内の一人だけが生き返ることを許され、そしてその一人に選ばれなかった者はもう一度ゲームに参加するか、死神となるか、はたまた諦めて大人しく消えるか。
リエンは生き返り、お父さんとお母さんにごめんなさいを言いたいらしい。どうやらリエンは両親と喧嘩別れのまま命を落としてしまったらしく、もう一度家に戻って、お父さんとお母さんを両腕で抱きしめたい、そう望んでいるようだった。
でも、肝心の自分には……生き返ってしたいことなんて、何もなかった。学校でもいつもクラスでひとりぼっち。友達なんて言える人は誰もいないし、だからなんも面白くない退屈な日々。
一番大切な記憶なんて言っても、どうせこんな自分の記憶だ。所詮、両親に祝ってもらった誕生日か何かだろう。と、明確な理由を持っていたリエンと比較して、自分の軽さを実感する。
そして、そんな風にネガティブなことばかり呟いていた時、
『……なんていうかさ、リエンって輝いてるよね。学校でも友達多かったみたいだし、生きてて楽しそうだし……何もない私からしたら、すっごく羨ましいや』
『ん〜?いやいや、全然そんなことないよ?私だって、悩みたっくさんあるし。空気を明るくしたいから、こんな風に振る舞ってるけど、ホントはすごく怖いし……死んだらどうしようって思ったら、今にも泣いちゃいそう。まあ、実際はもう死んでるんだけどね』
『リエン……』
『ねえねえ、なんかさ、私たちって結構似てるよね?ほら、『名前』とかもそうだし。
私、君と一緒にパートナーになれて、本当に良かったって思ってるよ……!それに、君の記憶もちゃんと元に戻したいんだ!」
「私の勝手な考えだけど……もしも元の記憶が、君の『今まで』に深く関係してきたんだとすれば、それを取り戻せたら、君はちゃんと生きる希望を見つけられるかもしれないから……私は、いつでも君のことを応援してる!パートナーとして、友達としてね!!』
リエンはいつでも、記憶を失い、生きる意味を失くしていた自分を励ましてくれた。
初日から最終日までずっと、リエンも不安と恐怖で押しつぶされそうに決まってるのに、いつも自分に笑顔を見せてくれた。その優しさに、自分は救われていた。
やがて自分とリエンは、他のパートナーの人たちと協力することで、その回のゲームマスターを倒し、ゲームに勝ち残った。そして温かな祝福の光に包まれ、呼び出された場所は再び審判の間。ゲームの指揮者と名乗る者が現れ、まずは祝福の言葉、そして次に生き返ること者が選抜された。
結果、選ばれたのは自分でもリエンでもなく、この七日間で最もミッションをクリアした回数が多かった、別のコンビの内の一人だった。自分たちはポイントが足りず、生き返ることを許されない。そのため指揮者は、生き返りたければもう一度ゲームに参加するようにと言った。
大切な花のお守りを取り戻したリエンは、そのお守りを指揮者に自ら渡し、再びゲームに再参加することを決める。でも、無事に記憶を取り戻し、しばらくの間静かにうずくまっていた自分は、
『私を……私を、死神にしてください』
『……!?君、それじゃ生き返れないよ!?ゲームに勝って記憶を取り戻して、生きる希望が見つかったんじゃ……』
『……うん。この記憶を取り戻せて、私、ようやく本当の私に戻れた。生きたい。もう一度生きて……会いに行きたい、私の『友達』に』
『……だったら、なおさらなんで!!』
『私の大事な……リエンの邪魔、したくないから』
『えっ』
リエンは自分を応援してくれた。そして、そんなリエンと一緒に日々を過ごしていく内に、自分も同じくリエンのことを思っていつのまにか応援していたのだ。お父さんとお母さんに会って、直接ごめんなさいを言わせてあげたい。でも、また自分も参加することになれば、リエンは確実に次も自分と組もうとしてくる。
そして、ゲームで勝ち残った時、もしも自分が選ばれてしまったら。
選ばれなかったリエンはどうなる?また次のゲームに参加し、もしもそこで死んでしまったら、自分はリエンを置き去りにして見捨て、一人元の渋谷に戻ることになる。
そんなこと……今までずっと励ましてくれた友達を見捨てるなんて、できるわけがない。
少しでも、リエンが生き返れる『可能性』を増やすためにも、自分はこの日、【人から死神】になった。
『リエン……私も絶対に諦めない。リエンが向こうに行った後に、私も死神から元の参加者に戻って、生き返る。だから……次のゲームに勝ち残って、先に向こうで待ってて』
『……うん、分かった。私も諦めない。必ず生き返って……また君と会う。約束だよ』
しかし、
『えっ……寿命、って…』
死神になった自分を待っていたのは、想像を絶する地獄だった。
何も知らなかった自分が死神の心得として受け取ったメールには、死神のルールが短く簡単にまとめられていた。そして、その中から一つ、自分は驚くべき内容のものを見つけた。
死神にはポイントというもので寿命が与えられ、それが尽きれば消滅する。ポイントを稼ぐ方法は……
『そんな……だから、今までの死神は、必死で私たちに襲いかかって……みんな、生きる、ためだったんだ』
次のゲームが始まるも、自分は何も行動できなかった。
本当なら、初日が始まった時点ですぐにリエンを探し、離れたところから影でサポートしようとしていたのだが、そんなことをすれば違反者として取り締められ、即消滅。
以前のゲームにも参加していた参加者にコンタクトを取ろうにも、背中の羽がそれを強制的に不可能にする。その羽は、参加者の命を消すためにある死神の象徴。
これでは寝返ったと勘違いされ、話どころか言葉すら聞いてくれないだろう。自分はかつての参加者にも死神にも誰にも会わないようにして、なんとかこの一週間をしのぎ、リエンが生き残り選ばれるのをただ祈ることしか出来ない。
いくらなんでも一回のゲームでポイントを獲得できなかったとしても、すぐに死ぬようなことはないと思う。
そんな甘えた考えをしながら、自分はビルの上から渋谷を見下ろしていた。すると、
『えっ……う、うわぁぁぁぁぁ!!!!』
突如、足がついていたはずの地面がなくなり……いや、地面から自分の足が離れ、宙へと身を投げ出される。
ジェットコースターのように、自分の顔に、荒れ狂う風が吹き付けてくる。
『ひいっ、っ……っ!!!だ、誰か!!誰かぁぁ!!助けてぇぇ!!!』
羽を広げようにも、何かに縛られているのか開けない。気づけば、あんなに遠かった硬い地面はすぐそこに……その時、今度は足に何かが巻きつけられた。それは黒い布のようなもので、同時に今度は、自分の身体が逆に昇り始める。
どうやら自分は、誰かに突き落とされたらしい、直前まで考えていたこと、自分のこれまでの行動。間違いない、自分は脅しをかけられたのだ。今目の前にいる冷酷な女性の参謀、『鉄仮面』に。
『……そ、そんな……ぁぁぁぁっ、ぐ……』
そのしなやかな指で首を絞められながら、自分は運営側から、明確な宣告を受けた。
[これは警告です。もしも、誰も殺さないまま明日、七日目を終えようとするなら、貴方を即刻処刑します。
血しぶきを吹き上がらせるか、他人を犠牲にして生きるか、どちらを選択しても、貴方は苦しむことでしょう……ゲームを、友達などとの待ち合わせに利用したことを、未来で、永遠に後悔しなさい]
『うっ……あぁぁ……』
『はぁ、はぁ、ごぼっごば……』
窒息して意識を失い、気付いた時には既に最終日へと突入していた。ビルの下を見下ろすと、生き残ったいくらかの参加者が散り散りになって次々とゲームマスターの元へと向かっていくのが見える。
自分は悩んだ。早くしなければ、七日目は終了してしまい、自分はあの鉄仮面、虚西(コニシ)に今度こそ殺される。しかし、それはノイズを作って襲わせ、自分と同じ境遇の、何の罪もない不幸な人に手をかけるということだ。
自分が今まで戦ってきたノイズを今度は自分が作り、参加者を殺すために放つ。これじゃ、本当に裏切ったのと何も変わらない。
そして、心の中のでの葛藤を続けているうちに、下にとある一人の少女が現れた。どうやらその少女は、近くの店に寄っているパートナーを一人外で待っていたようだった。
一時の気の迷いが心に芽生えた。しかし本当は、それは気の迷いではなく、自分の心の弱さだった。とても、自分は愚かで浅はかだった。
ノイズを初めて作った。赤いただの雑魚ノイズだが、初めてにしては良く出来ていた。『コウモリ』、『カエル』、『ミング』の形を模した怪物は、自分の命令に気持ち悪いほど素直に従い、その少女に不意打ちをかけた。必死でサイキックを使って抵抗しようとしても、ミンクの細長い身体でバッジを弾かれ、コウモリに鋭い羽で身体中を擦り傷をつけられ、最後にカエルが泡で身体中を溶かされる。
少女は成す術もなくあっけなく死んだ。
見るも無残な姿で死に、その身体は粒子となって空へと消えていった。
泣いた。遂に自分は本当の意味で死神となってしまった。もう後戻りはできない、これから先、自分は人を殺した罪を背負い、一生を過ごすことになる。
リエンに、なんて顔を合わせればいいのだろう。膝をつき、自分は少女の死んだ場所でひたすら許しを請い続けた。立場を考えれば、何も間違ったことはしていない。死神として、当たり前のことをしただけだった。でも、自分にとってそれは、あまりにも悔しすぎる結末だった。
大粒の涙を流し、嗚咽を吐く。地面に突っ伏し、そして拳を握りしめて叩きつけようとしたその時、
『やめ、て……』
聞き覚えのある声が耳に入る。恐る恐る振り返るとそこには、
『……リエン……なん、で……』
『そっか……あの子……死んじゃったんだ……』
『えっ……そん、な……まさか……』
身体が震えると同時に、目の中にある涙のダムが決壊する。止めようにも止められない。目から無意識に流れ出すそれは、皮肉にも、ずっと自分が会いたかった友達の今の様子と重なっていた。
彼女の身体から粒子が溢れ出している。思いつく限りの最悪の考えが、自分の脳裏に浮かぶ。まさか、さっき自分が適当に選んで殺した少女は……
『ああっ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!』
死神のルールが記されたメールの内容にあった。パートナーの片方が死ねば、契約関係にあるもう片方も自動的に死ぬ。死んだ瞬間から残された『タイムリミットは七分』。それが過ぎれば、パートナーもろとも共に消える。エントリー料も、生きる希望も、何もかも。
『そんなぁ……なんで……なんでなの!!!!!私は……いつも支えてくれたリエンと、一緒にまた会うって……一番したくなかった、誰かを犠牲にしたのに……それなのに、なんでこんな……!!!!』
『…ううん、君は間違ってない。タイミングが悪かった……ただ、それだけだよ』
『ううっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
『泣かないで……私は知ってるよ、君が死神になって、すごい苦しんでたことを……全部、私のためを思って、耐えてきてくれたんだよね……』
リエンは今日、近くにいた死神たちから盗み聞きをし、とある話を聞いていた。
それは、出来の悪い死神を処罰するという内容だった。
なんでも、誰も殺さなければ、動きもしないし、誰の目にも写らずに、ただ隠れながら日々を過ごしているダメダメな死神がいると。何度メールで役割を果たせと伝えても、殺したくないと拒否し続けたと。
『私……お父さんとお母さんに謝れなくなるのはすごく辛い。辛いけど……それよりも、君みたいな優しい子が私のパートナーで……友達でいてくれたことがもっと、嬉しかったんだ……私は、君のことを絶対に責めたりしない……だから君も——』
『リエン……?待ってよ……ねえ、待ってよ!!!お願い!!!!おねがいだから……いかないで』
この日、自分は生きる希望になっていた友達を、この手で殺した。手違いなんかじゃ済まされない、消えた、失った命はもう、永遠に戻らない。
『なんで、なんで消えちゃうの……お父さんとお母さんに会いにいくんでしょ!!!ダメだよ、諦めちゃ……ずっと、私だって応援してたのに!!ねえ!!リエン!!!りえ……』
無意味だと悟った。彼女は死んだのだ。これ以上彼女のことを叫んでもなんにもならない。
そう、何も。
『——っ』
それから、自分は髪を金色に染めた。派手な洋服を着て、ネイルをつけて……今までの自分の趣味とは、正反対のことをし続けた。
とにかく、自分じゃない誰かになりたかった。そしてかつての姿など忘れたように、あれから多くの参加者を殺し、自分は生き続けた。
必死に抗い続けた新子々だったが、結局、その犠牲を背負う運命からは、逃れることができなかった。
「……言ってたと思うけど、聞いても面白くなかったでしょ?人の心の裏側なんて、そういうもんだよ」
ネク、ミナミモト、未央、卯月は彼女の悲壮な姿を見て、形容しがたい感情を覚えた。悲しいとも違う、怒りとも違う、最も近いもので言えば、むず痒さかもしれない。手の届かない、悔しさと苛つきが混じり合うような。
「いや、ココッペは悪くないよ……本当に悪いのは、その鉄仮面っていう人だよ!!そんな残酷なことが平然と言えるなんて、どんな奴なんだろ……」
「その名の通り、鉄仮面みてえな奴だ。いつも同じ表情で、目的のためなら手段は選ばない。だが、そいつも既に前のゲームで、ネクに倒された」
「ネク君が、凛ちゃんを事故で失ったって言った時、ココちゃんもリエンちゃんのことを思い出しちゃったんだね……もう、絶対に死なせたりなんかさせない。凛ちゃんは、私たちが守るよ」
「ああ、全部元に戻すんだ……なあ、ココ」
「何、ネク?」
ネクはココの前に、小指を突き出す。
「指……きり?」
「俺と契約した……ってことは、お前はもう死神じゃないだろ。だから……これが終わって、全部が丸く収まったら、元の世界のハチ公で、一緒に会おう。
『死神』としてのお前は……今日で終わりだ」
「ネク……」
「このことを話して良かった、って思えるくらい、これから楽しい毎日にしよう。シキもビイトもライムも……それからもちろん、ミナミモトも、未央も、卯月も。これは、その約束だ」
微笑みながら振り返って、三人の姿を見る。三人も同じく微笑み返し、考えは共に同じだと反応した。
「ううっ……うん!!」
震える声を抑えながらも、嬉しそうにネクの小指に自らの指を絡めるココ。そして、その上から順に被さるようにして、ミナミモト、未央、卯月が小指を合わせていく。
みんな、大切な友達なんだ。もう死神として、誰かを殺さなくてもいいんだ。自分も、誰も、苦しまなくていいんだ。
今こそ、それぞれが痛みに包まれた過去から、解き放たれる時なのかもしれない。
「うっ……ううう……っ……!!」
「……泣くなよ、ココ。今からお前を待ってるのは、きっと楽しくて明るい未来だ。それを……リエンだって、望んでるはずだ」
「そ〜だよっ!!そしたらさ、今度は私たちの事務所にもみんなでおいでよ!」
「うん!私も未央ちゃんも凛ちゃんも!!みんな、いつでも歓迎するよ!!」
「……楽しいこと、もうたくさん見つかったじゃねえか。俺の言った通りだっただろ?友達に隠し事はなしってな、ココ」
「ううっ……うるさいよ、ばかぁ……」
恥ずかしさをごまかすために、強くミナミモトをはたくココ。
微笑ましい光景に、みんなが心和む。溢れ出す心からの笑顔が、心から心へと伝わり、また新たな笑顔を生み出す。
「はははっ……お、着いたぞ、みんな」
笑顔で話している内に、ついに彼らはワイルドキャットへと到着した。
決して休んだ訳ではなかったが、さっきまでとは違い、今の全員の気分は明るいものになっていた。
ここからはもう、ひたすら前に進み続けるだけだ。明るい明日に向かって、ただひたすらに。
もはや迷いはない。先にある希望を信じて、その希望を掴むために歩むだけだ。
ココの過去編、ミナミモトの過去編が、これで終了しました。
新子々の昔の友達である新梨遠は、この物語上でのオリジナルキャラクターです。(八代未月、狩谷申輝と同じく)
次回は丸々一話凛パートになっています。