すばらしきこのせかい・シンデレラガールズ・サーガ World Connect   作:デトネート

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インバージョン、FRONTIERの大死闘からそれぞれ一ヵ月。双方の世界には、日常が戻りつつあった。
運命の死神によって翻弄された二つの渋谷だったが、その脅威が消えた今……平和が戻る、はずだった。


第三章 ウィルドクライシス編
#31 プロローグ『One Month Later』


「ふわぁ〜!!!!っと……」

 思いっきりあくびをかます昼下がり。いつの間にか落ちていたことに気づき、慌てて身体を起こそうとする。

「……あだぁっ!!!」

 その時、すぐ目の前にあったテーブルの角にぶつかり、頭を抑えるココ。ここはワイルドキャットのテーブル席。営業時間内にも関わらず、客はまるで少ない。

「ようやく起きやがったか、このゼタ遅起きが」

「いってて……ちょ、ちょっとくらい心配してくれてもいいんだよ?」

「ゴミは纏めて捨ててやってもいいんだぜ?」

「誰がゴミよ!!」

 ココの隣に座り、趣味でテーブルでカップを積み立てているミナミモトはいつも通りのやり取りを交わす。

「……あいつ、いつも積み立てて何になるってんだ?」

「シキもデザイン得意なんでしょ?ああいうの、よく共感したりする?」

「えっ!?……ええっと、そ、それは……」

 離れたカウンター席から、ビイト、ライム、シキは相変わらずのミナミモトをジッと見ていた。ここ最近はずっとワイルドキャットに集まり、情報共有を重ねてきたが、尖った個性同士がぶつかり合い、見事にバラけている。

「はぁ……もう一ヶ月が経つんだよ?そろそろ彼にも僕にも慣れたらどうだい?」

 苦笑いを浮かべるシキの前に、カウンター奥からコーヒーが置かれる。同じくビイト、ライムの前にも一杯ずつ置き、ヨシュアは何事もないように話しかけてくる。

「おっ、お前……そう簡単に騙されるかよ!大体、まだ謝って貰ったことないぞ、俺たち!!」

「謝る?謝ることなんてしたことないけど……勘違いじゃない?」

「ちょ、おい!逃げんじゃねえ!今日という今日は、絶対に謝ってもらうからな!!」

 ビイトはそう言うと、カウンターに乗り上がってヨシュアに掴みかかろうとするが、ヨシュアは軽くかわす。

「ふふっ、懲りないねぇ、君も。今日は捕まえてくれるのかな?」

「こんにゃろ……待ちやがれ!ぜってぇとっ捕まえてやる!!」

 澄ました態度でからかい、挑発に乗り、二人して店内をグルグルと走り回る。腕を伸ばして服を掴もうとするも、ビイトはやはりヨシュアに追いつけない。

「やれやれ……これ、もう何回目?」

「あはは……ビイトもヨシュアも、毎日やってるよねこれ……」

 もはや見慣れた光景に、呆れて物も言えなくなる。そんなライムに、シキは苦笑いでそう言う。

 昼寝するココ、その隣でオブジェを作るミナミモト、走り回って戯れるビイトとヨシュア、その様子を見るライムとシキ。

 

 

 

 ——時空サイキック、インバージョン(invasion)から渋谷を守り、一ヶ月が経った。謎の死神、八代未月、狩谷申輝によって齎された災禍の規模は凄まじく、東京中の各エリアはほとんど消滅してしまい、現在は渋谷UGのみが現存している状態だった。

 各都市は消え、『名もない都会』と化してしまった中、渋谷だけが元の姿を取り戻した。

 

 何処かへと消えた、桜庭音操と渋谷凛を除いて。

 

 あれからずっと、ヨシュア、羽狛を始めとした参加者達は、毎日ワイルドキャットに集まり、情報共有を行なってきた。ネクと凛の行方、あの死神の謎の力、他にも色々。

 狂った時間は元に戻り、それぞれが本来の形の生活へと戻ったが……

 

「おっはよ〜!!未央ちゃん、今日も元気に参上〜!!」

「みんな、おはよう!」

 

 扉を開き、溢れんばかりの笑顔で店内に入ってくる少女たち。

 二人はこの世界の住人ではないため、今も元通りには戻れていない。時間が元に戻り、リセットされた現在は、336プロダクションに所属し直し、新人アイドルという形で活動を続けている。

「あれ?二人とも、来るの早いじゃん。まだ朝なのに?」

「はぁ……ゼタ寝坊助のヘクトパスカルが」

「え……ああっ!?嘘!今何時!!」

 店の時計を見て、朝を無駄にした罪悪感に机に突っ伏すココ。その衝撃でカップタワーが揺れ、慌ててミナミモトはバランスを整える。

「ぬおっ!?あ、あぶねっ……」

「……あー、やらかしたー、最悪ー、もーいやー」

「えー、またお昼まで寝てたの、ココッペ?そんなに不規則な生活、女子のお肌の天敵だぞ〜?」

「あははっ、ココちゃん、朝に弱いよね」

「うぐ……な、何も言えない」

 鋭い言葉に、ピンクのフードについた耳を抑え、痛くするココに触れた後、

「そしてー、相も変わらずお二人さんは元気だね〜?」

「ヨシュア君もビイト君も、いつも仲良しだね」

 もう慣れたように、ヨシュアとビイトの戯れ合いを笑いながら見る。

「ちょ、未央に卯月まで!!誰がコイツとなんか仲良しになるんだよ!」

「もう、素直じゃないなぁ。僕はもうとーっくに許してるのに」

「いや、お前が言ってどうする!」

 キレのいいボケとツッコミのコンビネーションをかますビイトとヨシュア。側から見ればそれは完全に……

「あれ?なんかお兄ちゃんも満更じゃなさそう……」

「おやおや〜?ひょっとして、ベストパートナー的なやつじゃない〜?」

 ライムと未央がすかさず切り込み、ビイトは思わず顔をしかめる。

「ぎく……い、今のはタイミングが良かっただけでさ……」

「そう?どう見てもお友達だったよね、僕たち?」

「だから、お前が言ってどうすんだそりゃ……」

「ふふ、僕も君に手慣れてきたんだよ」

「な、なんか気にくわねぇ……」

 上手いこと言いくるめられたのか、ビイトは追いかけるのを止め、ため息をつく。ヨシュアの鼻につくような態度はそのままで、二人は話し続ける。ライム、未央もその中に混ざると、卯月はカウンター席に向かい、シキに話しかける。

「シキちゃんも、おはよ!」

「あ、おはよ!卯月!」

 お互いに微笑みながら、卯月はシキと隣に座って、置かれていたにゃんタンを弄る。

「卯月、にゃんタン好きだよね」

「ふふっ、大、大、大好きだよ!!シキちゃんのこれ、触ってて気持ちいいし、思わず抱きしめたくなっちゃうんだ〜」

「そりゃ、もっちろん!世界で一つだけのお人形だもん!」

「ん〜!!やっぱり可愛い〜!!」

 浮かべる満面の笑みに、思わずシキも嬉しくなり、話を次々と吹っかけていく。最近の流行、服のデザインについて、制作費用や期間、様々な勉強に着手していることを、シキは卯月に話す。

「へ〜、シキちゃんは、裁縫が得意なんだね」

「夢中になれる何かって言われたら、迷うことなく裁縫って言えるくらいには、ね?デザイナーの夢に向かって、まだまだ頑張らないと!」

「私、シキちゃんが将来ブランド立ち上げたら、絶対に買うよ!」

「ほんと!嬉しい〜!!」

「もちろんだよ!これからずっと、応援してるね!!」

「ありがと、卯月!!言ってくれると、私ますますやる気になっちゃうよ!」

「あははっ!」

「ふふっ!」

 一度もにゃんタンを肌身離さずに持ち続け、シキと終始仲良く話し続ける卯月。そうして二人が花を咲かせた後に、今度はビイトが未央に話を始める。

「なあ、そういえば最近はどんな感じなんだ、未央?」

「え、私?」

「ああ、アイドルのことだよ。ライムが世話になったのも少し前のことだし、あんまし話聞かなかったからな〜」

「ん〜そうだね……もちろん、当然頑張ってるはいるけども……」

「……調子は、あまり優れないのかい?」

 軽く話しかけ、初めは楽しそうにしていた未央の表情が、少し暗くなる。

「ちょっとだけ、寂しいかな?ほら、しぶりんにも、一度会った後だから」

「……そっか、未央ちゃんも卯月ちゃんも、凛ちゃんとは大切な友達だったんだもんね」

「そう。私たちの事務所の346プロダクションは、少し前に酷い断裂が起こっちゃって、それからこの世界に来たから……よく考えちゃうんだ」

 インバージョンの決戦後、未央、卯月は自分達が世界を超えてきた、別世界の存在であることを全員に打ち明けた。

 二人を含め、時間改変とは関係のない、向こう側の346プロダクションの騒動は、未だに続いていると考えていた。

「……別の世界、それも並行世界とはまた違う異世界からの存在……初めて聞いた時は驚いたさ。僕ですら干渉できない『世界間移動』を、RGの次元で実現したと言うんだからね」

「渋谷のコンポーザー様ですら到達できない場所……定義の存在しない異世界か。例の死神どもの力……『不協和』も含めて、次元レベルに狂った話だぜ」

 異世界の存在に気づくことのできなかったヨシュアに便乗するよう、話の中に座っていたミナミモトとココが入り込む。

「私のディゾナンスノイズも、その、『不協和』って力なんでしょ?なんなんだろ、不協和って?」

「へっ?使ったお前が分からねえのか?」

「しょうがないでしょ、ビイト!私は、あの死神達にいいように操られてたんだから!!」

「……ミナミモトの言う通り、不協和の力は通常の死神が扱うような力じゃない。あれほどの力は本来、さらに高次元の存在が使うものだ。次元レベルの不一致……基本的にあり得ない話だ」

 ヨシュアですら分からない未知の力、『不協和』。インバージョン後に、奴らの分析を進めたことで明らかになった、異常な力を今はこう称している。

 これまでに確認された不協和の力は、ココ、未月、申輝、そしてネク、凛のフリーフロー、オーバーロード。

 絶対的であるコンポーザーのヨシュアを打ち負かしたあの力は、存在自体が異常であり……

 

 それは、どう考えても『上位次元』が絡んでいることを示すものだった。

 

「私やしまむー、しぶりんが世界を超えたのも、ココッペの紫色のノイズも、ねっくんのあの力も、よっしゅんより上の人が仕組んだってこと?」

「ヨシュア君。そもそも、コンポーザーの上、って存在するの?」

 未央とライムが、上の人の存在を示唆する。すると、ちょうどカウンター奥から出てきた男、羽狛がその話に言及する。

「良いところに気付いたな、未央、ライム。コンポーザーはこのエリア、渋谷エリア内での頂点に立つ存在。

だが、上位の次元を全部ひっくるめて見てみれば、その上は確かに存在する」

 確かに、羽狛がそう表現することには理由があった。

「そうだね、早苗君。下位次元の存在は上位次元の存在に気づくことは本来出来ない。RGからUGが見えないように、干渉は出来ないんだ」

 

 この世界には、『次元』というものが存在する。特殊次元のノイズの次元、最下位次元のRG、第二下位次元のUG、そして、そこから先にもいくつもの次元が存在するとされている。ヨシュア、羽狛が存在する第○位上位次元、そして更なる上位、天使達がいるそれらは総じて『天界』と呼ばれている。

 ……かつて死神ゲームを始めた創始者、恐らくはこの次元階級の頂点に立つ存在。その存在は、全ての次元内の誰一人も、これまで知ることはできていない。存在するかも分からない、憶測でしか判断がつかない、恐らくいる存在。

 

「も、もしもよ、ヨシュアよりもやべぇような奴が、『渋谷崩壊』に絡んでんだとしたら……」

「……そん時は、やべぇなんてもんじゃすまねえ。渋谷どころの話じゃない、この世界全部に関わるほどの大事件になる」

「奴らは実際、不変の時間軸に干渉したんだ。何が目的なのか、存在は何者なのか、計算にはデータが致命的に足りねぇ……」

「そ、そんなにすごいことだったんだ。私たちの世界、間、移動って……」

 ビイトの想像する恐ろしい展開、羽狛、ミナミモトはそれを現実的なものとして捉えていた。目的も存在も不明だが、渋谷を狙おうとしていたことは事実だ。

 

 恐らく、インバージョンだけでは終わらない。この先も、『奴ら』はこの渋谷に何かを仕掛けてくる。

 

 シキ、卯月もいつの間にか輪に入り、全員でこの先に待ち受ける死闘を想像する。その想像以上の何かが起こることは、疑いようのない真実である。

「……そのためにも、ね」

 表情の強ばる未央、卯月、シキ、ビイト、ライム、ココ、ミナミモト、羽狛の前で、ヨシュアは勇気づけるように言う。

 

「僕たちは、会いに行かなくちゃいけない。消えたネク君と凛ちゃんに」

 

 

 

 

 

「ね〜、お母さん。ちょっとネクの様子見てきて良い?」

「別に良いわよ。あの子、ハナコに振り回されてるんじゃないかって、ちょうど心配してた頃だったわ」

「ははっ、不器用そうだもんね、そういうの」

 夕方、空が紫色に染まり出し、街に人工の明かりが広がり始める。時間を確かめ、身につけていたエプロンを素早く脱ぎ、私服に着替えて凛は店の外に出る。

「今日はもう手伝いはいいわ。でもハナコがいるんだから、遅くまではダメよ」

「分かってるよ。じゃ、いってくるね」

 母に軽く伝えると、マスクで顔を隠しつつ、幻想的な色彩の渋谷を、駆け足で渡っていく。ネクは多分……そう予想して、スクランブル交差点を渡り、ヒカリエ方面へと抜けていき、凛は自分たちの事務所へ向かう。

「……あ、やっぱり、いたいた」

 正門から入り、そこから横に逸れた所にある噴水広場。リードを必死で握り、息を上げながら格闘していたネクがそこにいた。

「おーい、ネク〜!!」

「り、凛!よかった!手伝ってくれ!!こいつ、どんだけ……ってうおっ!!」

 リードの先に結ばれた凛の愛犬、ハナコは、飼い主が見えたその途端に、ネクを振り解いて凛の元へと飛び込んでいく。人の少ない通りだけを散歩するはずが、気づけば346プロダクションの敷地内までやって来ていた。振り回され続けたネクは、目を回したようにふらつき、噴水の縁に手をついて身を休める。

「こんな小さい子犬に振り回されてるって……やっぱし不器用だね?」

「す、すごい、元気に動き回るんだぞ、そいつ……てか、肩痛っ……」

「ふふっ、お疲れ様。今日はもう上がっていいってさ」

「ああ……ありがと、な」

 尻尾を振っておねだりするハナコを抱き抱えて、凛は疲れ果てたネクを見て笑う。噴水の飛沫が僅かに当たる中、ぐったりと石の縁に座るネクの隣に、ゆっくりと同じく座り込む。

 そこから見上げる、紫がかったオレンジの空。ネオンの光も着き始め、都会ならではの独特の雰囲気に、二人は心を酔わせる。

「なんか、久々かも。ここから見る、渋谷の空って」

「なんせ、数ヶ月も空いたんだ。最近になって、やっと戻ってきたくらいだもんな」

「実家の花屋手伝うなんて、もう感覚忘れてたよ。ネクに手伝ってもらわなかったら、どうなってたか」

「……俺、今日散歩しかしてないけどな」

「……あれ?そうだっけ?」

 凛の実家は花屋、ネクはそれを既に知っていた。『何度か行ったこともあるし、母親に会ったこともある』。ここ最近、ネクと凛はほぼ毎日、母の花屋で共にお手伝いとして働いている。

 

 

 

 ——伝説の夜明け。そう語り継がれるライブ、FRONTIERから一ヶ月が経った。あの日、音流天を倒したことで、指揮者を失った下級死神達は行動理念を失い、346プロダクションと死神の抗争は完全に終わりを迎えた。

 最後まで歌い抜いた九人のアイドル達は、ようやく取り戻した平和な日々へと戻り、それぞれが自分の生活を取り戻しつつあった。唯一行き場のないネクは、女子寮が改修中のこともあり、現在はこの346プロダクションの地下室を使わせてもらい、そこで生活している。

 かつてシンデレラプロジェクトが一時的に使用していた際の残り物がいくつも見つかり、思い出の品を引っ張ったりもした。

 バッジに吸収されたアイドル達は、一時的に力を貸した後に再びバッジへと戻ってしまい、それ以来影を潜めている。そのため、部門は全面再開ではなく、小規模の案件を多数、から大規模の案件を少数、の活動方針で動いていた。

 

「お前も大変だよな。朝はレッスン、夕方はこうして店の手伝い、あと犬の散歩とかも。疲れないのか?」

「別に平気だよ、ステージに出るわけでもないんだし。それに今は、この手に戻ってきた平穏を、思い切り噛み締めたいんだ」

「……楽しみたいって、ことか。良かったな、大切な日々を取り戻せて」

「うん……ネクも、いつも助けてくれてありがとね」

 ふと感謝されたネクは、少し澄ました表情になってカッコつける。

 

「だって、約束しただろ。側で戦わせてくれって」

「……えっ、告白?」

「違う!!」

 

 凛はそんなネクをからかって笑う。少し慌てた素振りを見せ、ネクは話を逸らそうとする。

「ほんと、変な奴……急に赤面しだしたり、上がったり、と思ったら今度はからかったり……」

「ちょ、そ、それは掘り起こさないでよ!!男の子と行き過ぎた話するのは、ちょっと流石に恥ずかしいって……」

「あんまり、男と話し慣れてなかったのか?」

「れ、恋愛沙汰とは無縁だったんだよ……今まではね」

「……って、だから俺は違うぞ!?」

 経験がないと言う割に、妙にネクの扱いには手慣れている。不思議に思うも、特に不快感があるわけじゃない。ネクも凛も、なんだかんだでお互い、日々の雑談を楽しんでいた。

「ふふっ、ナイスリアクションじゃん?」

「なんだよ、それ……ははっ」

 笑い合うと少し座る位置を変えて、話しやすいように近づく。

 

「でも、私本当に思ってるよ。ネクと友達になれて良かったって。あれから毎日楽しいし」

「俺もだ。凛と一緒にバイトしてから、花にも詳しくなれたしな。それに何より……友達と一緒に過ごしてると、やっぱ楽しいんだ」

「うん……分かるよ。落ち着くんだよね、心を通わせられる誰かがいるって」

 

「……」

「……」

 

 二人は笑みを浮かべて、どこか満ちた気持ちで渋谷の夜空に浸っていた。何かを言わなくても、一緒にいるだけで落ち着く。

 信頼できる友達として、ネクと凛は、互いを認め合っていた。

「あれ?お二人さん……ひょっとして、良い雰囲気だったりして?」

「お、お前ら……いつの間にそんなことになってたんだよ!?」

 夜の都会に浸っていたその時、後ろから声をかけてくる少女達がいた。その声を聞き、ネクと凛は肩を跳ねさせて、後ろを振り向く。

「……加蓮!?奈緒!?い、いつからそこに!!」

「お前ら、い、いたのか……!?」

 奈緒は頬を赤らめながら、加蓮は頬を綻ばせながら、凛とネクの元へと歩み寄る。

「ち、違う!!盗み見じゃない!さっき侑芽さんとちひろさんがハンバーガー奢ってくれるって言うから、何がいいか聞きにきたんだよ!!」

「そうしたら……ねぇ?ひょっとして、お邪魔だった?」

 からかってくる加蓮と、冗談ではなくテンパっている奈緒に、二人は勘違いされる。

「だ、だから違うって!!俺は——」

 慌てながらも、ネクは必死で誤解を解こうと早口で話していると、

「奈緒ちゃ〜ん!!杏、チーズバーガーがいい〜!!」

「はいは〜い!!きらりも同じく同じく〜!!!」

「……柔らかな食感の奏でるレクイエム……我が求めし最高の一時を、この眼は既に視ているっ!!!」

「……チーズバーガー、か。ふっ、いいね、ボクもそれにしよう」

「なんで今ので分かるんだにゃ……みくと李衣菜チャンはてりやきで決まりだにゃ!!」

「え?私はそうだけど、みくはフィッシュじゃないの?」

「なんでにゃ!?魚は絶対に嫌にゃ!!てか、知っててわざと言ったにゃんね、李衣菜チャン!!」

 ネクが話すよりも前に、ハンバーガーにそそられて出てきた全員によって、その場は掻き乱されてしまった。

 侑芽から伝えられて走ってきたのか、レッスン終わりの全員が、タオルを首に巻いた状態で、噴水の奈緒に詰め寄ってくる。

「うわぁぁっ!!ちょ、待った待っ……って、え?ハンバーガー?告白?あ、あれ、アタシ何しにここに来て……」

「な、奈緒!?どうしよう!奈緒の頭がパンクしちゃったよ、凛!!」

「知らないよ、加蓮!!勝手に私とネクの邪魔したからこうなったんでしょ!!」

「り、凛!?おま、この状況でふざけ始めたら収集つかなくなるって……」

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!?ネク君、凛ちゃんに告白したにゃんか!?」

「ぇぇぇぇぇえ!?マジ!?ロック通り越し過ぎでしょ、それ!!?」

 奈緒は目を回し、加蓮がその背中をさすり、凛とネクはわちゃわちゃともみ合いになり、みくと李衣菜はさらに誤解を深める。

「おー、復活したてのアイドルに告白って、中々アウトローなことするねー、ネク君」

「お〜!!!ふれ〜ふれ〜、ネ〜ク君!!!が〜んば〜れ、ネ〜クく〜〜〜ん!!!!」

「ふっ……そうかい、分かったよ。そうさ、誰にも心を留める権利なんてないんだ。ボク達はただ、その行く末を見届けよう」

「異界者よ、お前は我が友。お前の魂と我が魂は永遠に不滅だ。そのことを刻み込み……前へ進むがいい!!」

 もみ合いになっていたネクの肩を叩き、何故か熱い応援を送る蘭子、飛鳥。無関心を装いつつもチラチラと見てくる杏、事務所中に響き渡るくらいの大声で名前を呼ぶきらり。

「ど、どうして……どうしてこうなったぁぁぁっ!?」

「ああっ!!ちょ、ごめんってばネク!!」

 ついにパンクしてよろめき、噴水に飛び込みかけるネクを、慌てて凛は必死に抑える。

「うわ、重っ!!み、みんな引っ張って!!手伝って!!」

「うぉぉぉぉお、やばいやばいやばいやばいやばい!!!」

「もう!!二人して、何やってんの!?」

 焦る凛の身を、後ろから抱き抱えるように支える奈緒と加蓮。なんとかバランスを崩したネクを支え切ったと思ったのも束の間、

「あ!!大変にゃ、凛ちゃん!!」

「やばい凛ちゃん!!ハナコちゃんが!!」

 みくと李衣菜の間を抜け、凛の腕から離れてしまったハナコが、正門側へと走っていってしまう。

「うそ!待って、ハナコ!!……あっ」

 急いで追いかけようと凛は身体の向きを変えるが、同時にネクを離してしまい、

「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」」」」

 なだれ込むようにネク、凛、加蓮、奈緒は噴水へと突っ込んでしまった。すっかりずぶ濡れになり、髪型もウェアもぐちゃぐちゃになってしまう。

「……あー、やった」

「ラグナロク……これが、終焉……」

「捕まえた〜!!凛ちゃん!!ハナコちゃんはちゃ〜んと……ゆ?」

「ま、まあ、きっとそんなことだろうとは思っていたさ。やれやれ……」

「嘘つけ!!何、他人ズラしてるにゃ!!飛鳥チャン思いっきし応援してたにゃ!」

「なんか……久々にロック〜!!って感じでも、なさそう?あ、あれ?」

 みく、李衣菜、杏、きらり、飛鳥、蘭子は急いで濡れた四人を噴水から引き上げる。

 結局、全員がハンバーガーにありつけたのはそれから三十分もしてのことだった。濡れた頭にタオルを巻きつつ、ネク、凛、加蓮、奈緒は敷地内のカフェで、全員と共に夕食を頬張った。

 

 

 

「はっ、は、はっ……はっくしゅ!!!さ、さぶっ……」

「だ、だだだ大丈夫、な、奈緒……?」

「奈緒も加蓮も、もう大袈裟な……って、ふっくしゅっ!!」

「ひ、冷えるな……」

 すっかり夜空が広がり、日が沈み、風が濡れた身体を冷やしていく。いつまでも元気なハナコをみんなに任せて、ネク、凛、加蓮、奈緒は広場のテーブル席に座っていた。すると、

「おーい!!みんな〜!!」

「みんな〜!やーっと乾きましたよ〜!!」

 震える四人の元に、ビルの大扉を開いて、侑芽とちひろが走って向かってきた。事務所内の洗濯機を貸してもらい、今まで服を乾かしてもらっていた。

「侑芽さん、ちひろさん!!やった、乾いたってさ!!」

「よ、よかったぁ……マジで神様じゃん、侑芽さん、ちひろさん!!」

「は、ははははは早く早く!!このウェア凍える!!」

「あ、ありがとうございます!!よし、中入るぞ!!早く!」

「うん!!早く早く!!……ふっ、くしゅっ!!」

 

「……最初より、中で身を嗜めることは、しなかったのだろうか?」

「ほう、キミがそんなことを言うなんて、珍しいじゃないか」

「逆に言うと、そんだけ四人がおっちょこちょいってことでしょ……」

「にょわっはっは〜〜!!!!!ま〜〜ってよハーナコちゃ〜〜ん!!!!」

「きらりちゃんは相変わらずにゃんね……元気が有り余ってるにゃ」

「改めて見てみると、すっごい乱雑だなぁ……ねぇ、みく。これさ、最近よく聞く『おるたなてぃぶロック』って奴に似てない?」

「……いや、何言ってるか全然分かんないにゃ」

 

 一ヵ月もすれば、奇妙な生活も当たり前に変わる。住む世界が変わってしまっても、それに慣れ始めている自分がいるのだ。シキの夢を応援する卯月、アイドルとして有り続ける未央、友達と楽しい日々を過ごすネク。

 どの世界でも、彼らは今を全力で生きている。

 

 

 

 しかし、そんな日々にも、終わりは訪れる。

 再び終わるように、再び始まる。そうして世界は続いていく。

 

 

 

「……ンハッ」

 

 

 

 代々木第一体育館。警備の目を掻い潜って登り、天井部にて何かを回収する男がいた。

「これで、ある程度の不協和を回収できたか。だが……予定よりも長い時間がかかったな」

「は〜、あの方も人使いが荒いんだからさ〜。浄化大好きなくせに、興味が湧いたから廃棄って、酷いよ全くね〜」

「……ま、もう何もかも終わるんだけどね?」

 ニヤニヤと口元を動かす中年の男は、急に奇声のような声を上げ、ビブラートを効かせて両腕を広げ叫ぶ。

 

 

「シンデレラガールーーズ!!運命の死神を滅ぼしたことは認めてやる……だーがー……どの道、渋谷はもう詰んでるんだよね〜!!!ン〜〜ハッ!!!」

「助かる方法はたったの一つしかない……お前らが死に物狂いで守ったこの街を、ほ〜っぽって逃げるしかないんだよ!!この!!薄情!!者〜!!とか言われちゃったり!?」

 

 

「……ま、なんて、な。この世界の誰でも、『ウィルド』を止める、ましてや倒すなんて出来るわけない。

何をしようとしてるか知らないが……この先で、選択を間違えないようにな……『ツグミ』」

 かつての同僚の名前を呼ぶと、新宿唯一の溢れ者と化した『執行人』は……ここに、渋谷滅亡を予言した。

 




あらかじめに言うと、ここから先は『新すばせか』のネタバレ、そして要素が出てきます。
ですが、あくまでゲストキャラという立ち位置で出てくるので、そこまでストーリーを知る必要はないです。そういうストーリーが最低限必要なキャラクターは、キャラクター欄で保管するので、本編で言及するつもりはないです。

主にメインは、『初代すばせか』と『デレマス』からなる、このオリジナルストーリーです。

あと、これまでのボスノイズ(重要局面での敵)を簡単にまとめたので、ボスノイズ紹介を投稿しました。
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