すばらしきこのせかい・シンデレラガールズ・サーガ World Connect 作:デトネート
第一章はネク視点と凛視点に分かれていて、視点の切り替わりの際には、いつも『五行』改行しています。
他にも、『』は強調、過去を表し、[]は主要キャラ以外のセリフ、〈〉はノイズの声、と使い分けをしています。
#1 プロローグ 『FORGOTTEN』
渋谷。
昼間も夜間も、どんな時でもこの街は、明るさや騒々しさに包まれている。
様々な思考の持ち主が集い、それぞれの思考をぶつけ合い、新たなる世界への可能性を日々生み出し続けている。世の中の利便さ、金稼ぎ、音楽、グラフィティアート、全ての人から求められているものからそうでないものまで、この渋谷によって、様々なジャンルで進化が始まっているのだ。
ここを訪れるほとんどの人々は、新たなる世界への可能性に満ち溢れる渋谷を良く、そして好ましく思うだろう。
だが彼は、違った。
うるさい。耳障りだといい、ヘッドフォンで耳を塞ぎこみ、自ら世界を狭める。世界を広げろ……彼の尊敬する人物はそう言うが、やはり彼にはどうしても耐えられなかった。
世界は俺一人でいい。自分自身がその全て。他人の価値観なんて意味はない。
「俺は誰かと分かり合うなんて、一生できない」
そう言って、彼は再び孤独に歩き出す。この雑音だらけの街、渋谷を。
「って、おい!!こんなのおかしいだろうがぁぁ!!!」
大きな声に驚くと、目の前には謎の少女がいた。
「私の知ってるネクはこんなんじゃない!!」
少女は両腕を前後に、頭を左右に激しく振る。
金髪にピンク色のパーカーとエメラルドグリーンのスカート、胸の部分には大きなリボンをつけ、背中には紫色の小さいリュックと、黒くて若干禍々しい羽のようなものをつけている。
彼女の名は新子々(アタラシ ココ)。渋谷UGにて死神として活動している……が、個人で擬似平行世界を創り出したり、死神の本来の職務をほっぽり出して外へ遊びに行くなどと、未だに謎の多い存在だ。
「……は?なんだよ、急に大声だして……」
「なんだよ、じゃないでしょ!?どうしちゃったの?君、そんなギスギスした奴じゃなかったじゃん!」
そう言い、ココは少年の肩を掴み前後に思いっきり揺らす。見た目は少年よりも一、二年幼いくらいだが、中学生とは思えないほど化け物じみた腕力で、少年の腕は感覚を失っていく。
「ぐおっ……や、やめろよ!」
派手な服装の少女が甲高い声で騒ぎ立てる。その結果、当然周りの視線は一気に自分に降り注ぐことになる。少年にとって、これは中々にストレスがかかるものだ。
橙色のツンツンとした髪に、紫がベースカラーの服と白色のズボン、左手には黄色いリストバンドをつけていて、足首まであるかなり変わった大きい靴を履いている。
彼の名前は桜庭音操(サクラバ ネク)。常にヘッドフォンをつけていて、お気に入りの音楽を聴きながら、渋谷のカリスマデザイナー、CATの路上グラフィティアートを見て回るのが趣味の、15歳の少年だ。
「わわっ!ご、ごめん!!ネクの肩ちっちゃ過ぎて、つい力入っちゃった!!」
ココが手を離すと、痛んだ肩をグルグルと軽めに回し、ネクは舌打ちをする。
「気持ち悪いな……誰なんだよ、お前……ってか、なんで俺の名前を?」
「だ、誰!?って……うっそ、でしょ……」
この少女は、まるで知り合いであるかのように、ずっとこの調子で話しかけてくる。
……正直、ついていけない。
さっと横を通り過ぎようとするが、ココに腕を掴まれ、ネクは動けなくなってしまう。
「っ!?は、離せよこの!!」
「いーや、だめ!!やっぱり、例の二人が言ってたことは本当だったみたいだし……とにかく、私と一緒に来てもらうから!!ほら、早く!」
そう言うと、ココは腕を引っ張り、自分よりも身体の大きいネクをいとも簡単に引っ張っていく。なんとか抵抗しようとするが、ココの常人とは思えないような力には敵わず、ネクはそのまま連れていかれてしまった。
(くそっ、面倒くさい奴に捕まっちまった……だから、人は嫌いなんだよ)
ネクはいつかの日のように人を、そしてその人が集まる原因の渋谷を憎らしく思っていた。その感情は目の前の少女、ココによってさらに火力を強め、頂点に達する限界にまで達する。
「もう……お願いだから、全部消えてくれよ……!!」
そんな小さくも重々しい声は、周りの人々に届くことはなく、意味のないただの音の波となって消えていった。
「うわ〜!!遅れる遅れる!!」
午前9時50分、少女は手にコロッケパンを持って家を飛び出す。朝ごはんは何があったとしても必ず食べろと言うのが渋谷家のルールで、このような光景は、少女にとってはそこまで珍しくはなかった。走りながら、コロッケパンを口に運び、グイッと押し込む。
「おげっ……ち、ちょっと詰めこみすぎたかな……」
だが、入れすぎて喉を詰まらせたため、一旦近くのベンチに座り、ゆっくり一口一口かじりながら食べる。急にリラックスしたせいか、パンはどんどん小さくなっていき、あっという間にお腹の中に消えていった。
「ふい〜、ご馳走様……って、あ!」
いけない。こんなベンチに座って、パンを食べてる暇などないに決まってる。
「やばいやばい……急ぐんだった……」
そう言い、少女は人の波を掻き分けて全力疾走でトワレコへと向かう。
少女の名は渋谷凛(しぶや りん)。長い茶髪をしていて、蒼い瞳に蒼いジャケット、蒼いジーンズと、まるで蒼という文字をそのまま人にしたような姿の15歳の普通の少女である。今日は午前10時からトワレコで行われる、あるアイドルの握手会イベントに友達と行く約束をしていた。
「はあ、はあ……お待たせ、シキ……どれくらい待った?」
「……どれくらい待った、じゃないよ!集合時間一時間前だよ!?ほんとに行く気あるの?」
凛の前にいる少女は頰を膨らませて、可愛らしく怒りを露わにしている。黒いブタ…ではなくネコの人形『にゃんタン』を大事そうに両手でぎゅっと抱きしめている。短い茶髪に、黒縁のメガネ。黒いシャツの上に無地の緑色のジャケットを着ていて、花柄のスカートを履いている。
彼女は美咲四季(ミサキ シキ)。凛とは同じ高校に通っていて、同じクラスでグループ活動の際に初めて話し、二人ともアイドル好きだったということで意気投合してそれからかなり仲がいい。
「ご、ごめん……緊張して、出発前についまた寝ちゃって…」
「いや、どうやってドキドキしたまま二度寝できるの?」
「うぐ、本当に悪かったって……」
鋭いツッコミを入れられ、凛は前に両手を合わせながら、シキに軽く頭を下げる。
「まあいいよ。正直、そんな気にしてないし……ってああ!10時まであと一分しかない!早く行こ!!」
少女は凛の腕を掴み、走ってトワレコに入ってイベントスペースを目指す。
ネットでこのイベントの情報を知ってから、数ヶ月。テスト、模試対策、部活、全てを忘れて二人は今日という日を心から待ち望んでいた。
「皆さん、こんにちは〜!!」
「みんな〜!!おっ待たせ〜!!」
いつも、テレビでしか見たことがなかった憧れの存在が今、目の前にいる。
凛は感激のあまり、シキの服で目をこする。
「ううっ、本物だ……本物のしまむーとちゃんみおが目の前に……私、今日まで生きててよかったよ……っ!!」
「うん、そうだね!ってちょっと!?勝手に人の服で目拭かないでよ!ハンカチ使って、ハンカチ!!」
シキは凛を引き剥がし、ズボンのポケットからハンカチを引っ張り出し、凛に渡す。なんだかんだ言って結局優しい、凛はそんな友達のシキのことが大好きだった。
「ご存知だと思いますが、改めて自己紹介させてもらいます!島村卯月(しまむら うづき)です!皆さん、今日はよろしくお願いします!!」
元気よく自己紹介をして、ぺこりとお辞儀をする卯月。とても礼儀正しく元気な子ということで、世間からの評価もなかなか高い大人気のアイドルだ。
「そして〜!!私があの超有名な本田……」
「「しまむー!!頑張りますやって〜!!!」」
「いえええええい……ってこら、そこ!!わ、た、し、を、忘れるな〜!!」
ノリツッコミをキレキレに行い、会場中にどっと笑いを生み出す少女。
名前は本田未央(ほんだ みお)で、その明るくパッションな雰囲気が、凛とシキの二人を虜にしていた。
「う、うわぁ……!!聞いた?そこだって!!私たち、話しかけてもらっちゃったよ、シキ!!」
「うん!あのツッコミを生で……しかも私たちにしてくれるなんて、嬉しすぎるよ、凛!!」
二人は興奮と緊張で頰をほんのり赤らめながら、両手でハイタッチをする。テレビの中でしか見たことがなかった憧れの存在についに直接話しかけられた。そのインパクトは、二人が今までに感じたことのないものだった。
「……すぅーっ、ふぅー……」
トークイベントが終わって、トワレコではついに人気アイドルユニット、『シブヤマチ』の握手会が始まった。
今、凛の目の前ではシキと未央が握手をしている。シキはこれまで見たことのないくらいの笑顔を浮かばせながら、両手の感覚を噛み締めて味わっている。もうすぐ、もう間も無く自分も同じ感覚を……そう考えると、凛は身体の震えが止まらなくなっていった。
ポケットからウェットティッシュを取り出し、身に走る緊張を紛らわそうと凛はティッシュを手に擦り付ける。少し湿ったティッシュで手を包み、ゆっくりと張り詰めた緊張の糸を解いていく。
「……あ、ありがとうございました!いつも、応援してますからね!!」
「えへへ!これからもずっとよろしくね、し〜たん!」
「えっ……し、しーたん!?」
握手してくれるだけでなく、さらにあだ名までつけてもらえたことに、シキは嬉しくて大声を出してしまう。
「……あ、ありがとうございます!あだ名までつけてもらえるなんて……ほんとに嬉しいです!!」
「そんなに喜んでくれて、私も嬉しいよ!今度もまた、この可愛い猫ちゃん連れてきてね!!」
未央はシキが抱えているにゃんタンの顔を人差し指でつつく。
「は、はいっ!また、是非来させてもらいますっ!!」
「むしろ、こっちからお願いするよ!絶対また会おうね!!」
未央はウィンクしながらシキのことを見送る。シキは未央に手を振りながら、名残惜しくも会場を後にした。
そして、未央は遂に凛の方を向いた。
「じゃあ、次の人どうぞ〜!!」
「ひ、ひうっ!」
まだ心の準備が出来ていなかった凛は、腑抜けな声を出してしまう。未央はこちらに来ない凛を見て、凛に近づいていく。
「ありゃ、緊張しちゃったのかな?ねね、君、大丈夫?」
ポンと凛の背中を軽く叩く未央。我を取り戻した凛は未央の顔を見て、「すみません」と言う。緊張のあまり、ぼーっとしてしまっていた。
未央は凛の顔を見て、「気にしないでいいよ」と優しく声をかける——
ん?
「……あ、あれ?」
この状況、何か、おかしいような……?
空間が、急に静かになる。ふと見回してみると、卯月をはじめ、この場にいる全員がピタリと静止している。もちろん、目の前にいる凛も。
でも、そのことじゃない。
今、自分が感じているこれは、この状況に対してではない。この記憶……この出来事そのものがおかしい。なんだこれ……?
「な、なにこれ……なんか、凄い違和感が——」
『思い出して』
「……!?なに!」
正体不明の違和感。それに顔をしかめていると、突然、目の前にある少女が現れる。金髪で、知らない制服を着ている……?
『……あなたたちは、本当に『シブヤマチ』だったの?本当の本当に、あなたたちは二人だけで歩んできたの?』
「二人……いや、違うよ!私たちは三人で一緒に……はっ!?」
ピキピキと未央の頭の壁にヒビが入る。小さなヒビはやがて大きな亀裂となり、壁に致命傷を与える。
様々な感情、感覚、記憶が溢れ出してくる。卯月、自分、そして『もう一人』と共に歩んできた道が、次々と浮かび上がってくる。
「そう、だ、『しぶりん』……だよね?ほんとに、本当にしぶりんなんだよね……?」
『そうだよ。あなたが今、目の前に見ているのは偽りでも夢でもない。紛れもなく現実の……あなたの世界の本人』
『さあ、思いっきり感じてきなよ。あなたたちの、懐かしの温もりを』
そう告げると、金髪の少女は指をならし、パチンと高い音を響かせる。するとそれを合図に、一瞬止まっていた世界は何事もなかったように動き出し、少女も幻かのよう、どこかに消えた。
「?…………あっ」
未央は目の前の少女の顔を見て、思わず驚く。
何故なら、そこにいたのは、いつもすぐそばにいた『忘れるはずがない』存在だったからだ。
今、始まる。
「……金髪の黒ブタ少女……あのヘッドフォンを始め、色んな奴らに接触しているみたいだけど…あいつ、何者なの?」
「……さーね。ま、怪しい奴な間違いないんだけどサ。今はとりあえず要警戒で、もし変なことしだしたら……でいいんじゃないカ?」
この渋谷、世界の未来をかけた、
「……はぁ、めんどくさ〜。幹部って本当だるいわね」
「まぁまぁ、そうガッカリしなさんな。おニューな渋谷の未来のため、精一杯仕事してやろうゼ」
「……ふふふ、そうやって張り切ってるの、なんかアンタらしくないわね。まぁいいわ。精一杯、黒幕としてワルやってやるわよ♪」
ゲームが。
今回はプロローグのため少なめですが、これから先の物語の文字数は、平均して一万、多くて二万です。
既に完結しているため、エタることはありません。そのため、そこそこの長さを分かった上で続きを読んでくれたらと思います。
これから先は次々色んな言葉やキャラクターが出てくるので、そこらの詳しい説明は、補足説明等にまとめてあります。