ありふれた複合世界線   作:混合化合物

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九話 吸血鬼の決意

 

 

 単独で行っていたオルクス大迷宮の探索はアレーティアを加え続行した。

 

 高い魔力を持ち無詠唱・無陣で全属性の最上級魔法さえも操り、吸血によって魔力の回復を行いダメージは自動で再生する。アレーティアの戦闘能力は高かった、少なくとも"大迷宮"の魔物を圧倒する程度には。

 しかしそれは後衛の魔法使いとしてであり、機動力に関しては身体強化込みでも優れているとは言い難い。

 

 アレーティアの同行によって探索を遅れさせない為に、ほとんどPSIを常時発動する事になった。

 

 

 トランス 『リカーニセンス・ビット』

 

 自分の視聴覚と繋がっているトランス結晶体、大きさは七センチほどで瞳の模様が描かれた半透明の球形だ。簡潔にまとめてしまえばPSI能力によるドローン。それを十〜十六個程つくって先行させている。傍受の類いを警戒する場合は有線式にするが射程が狭まるので今は無線式で最大距離まで飛ばしている。

 

 

 探索そのものはビットで行い、自分達は最短ルートで先へ進む形をとった。

 

(長時間の探索には向いていないやり方だが仕方ない。同行させるメリットも少しはある)

 

 戦闘や探索は一人で十分、そこに助力は一切いらない。

 

 メリットは探索を終えた後のアレーティアの行動の方だ。わざわざ"反逆者"の真実を知りに行きたい、と言うことはエヒトに歯向かう気でいるとゆう事。祖国や叔父の仇討ちをするつもりなのだろう。叔父の遺書を受け取った後の、王族としての振る舞いが物語っている。

 

 それはトータスの問題をどうこうする義理の無い自分にとっても好都合。アレーティアはトータスの問題を解決する然るべき人物に当て嵌まる。

 このまま"反逆者"ならぬ"解放者"の真実を知ってもらい、エヒトに関する諸々の問題を任せてしまえばいい。自分は地球に帰還さえすればトータスに関わる事は無いのだから。

 

 

 そんな思惑もあって、効率が悪くともアレーティアの同行を認めたのだ。

 

 

 

 

 探索開始から四日。アレーティアの魔力が尽きる度に血を与えて(小瓶に移して渡している)回復させる必要があったため、結局は探索ペースが下がってしまったが"大迷宮"の百階層に辿り着いた。

 

 

 

 "大迷宮"の最深部だけあって広大だった。規則正しく並んだ柱の一本一本が直径五メートルを超えているにも関わらず、全く狭いと感じない程に広い空間を使われていた。今迄の階層の多種多様さとは違い、いっそ荘厳な雰囲気すら漂っている。

 

「この階層が最深部でしょうか」

 

「これだけ造り込んでおいて通過点だとしたら、造った人物はいい趣味してるよ」

 

「そうだとしても進むのみです」

 

「違いない」

 

 そんなやり取りを交わしながら、これまでの階層同様に『リカーニセンス・ビット』を先行させていたが小細工は仕掛けられていない、奥に巨大な両開きの扉があるのみだ。

 

 

 真っ直ぐに進んでいき扉の前の最後の柱を過ぎた時、巨大な魔法陣が現れる。

 

「ここまでで一番デカいな」

 

「この魔力の高まり、強敵ですね………!」

 

 魔法陣の赤黒い輝きが増し、姿を現したのは──ー

 

 

「「「「「「クルゥァァァアアン!!!」」」」」」

 

 

 不可思議な啼声を上げる魔物。赤、青、黄、緑、白、黒、と異なる色の頭をした長い六つ首、体長三十メートルの巨体に鋭い牙と赤黒い眼光の化け物。首が一つ足りないのでモドキだが、ギリシア神話のヒュドラが近いだろうか。

 

「まぁ、そこまでヒドくはねェだろ」

 

 自分の呟きと同時に、赤頭が口を開け広範囲に火炎を吐き出した。

 アレーティアは横に飛び退き柱の陰へ、自分は赤頭の真下に踏み込むことで躱す。

 

 そのまま跳躍し真上の赤頭をアッパーカットで破裂させる。 しかし、空中の自分に対して青頭と緑頭が攻撃を加えようとする。

 

「〝緋槍〟! 〝砲皇〟!」

 

 その瞬間を狙い澄ましたアレーティアの魔法が青頭と緑頭を穿った。

 これで残りの頭は三つかと思われたが──ー

 

 

「クルゥァアン!」

 

 白頭が啼くと、白い光に包まれた赤と青と緑の頭が一度に再生した。

 

「白は回復役ですか!」

 

「再生力は大したモンだな」

 

 自分は純粋な体術で空を蹴り白頭に迫ろうとしたが、再生した赤頭、青頭、緑頭が一斉に仕掛けてくる。上方へ軌道を転換して回避する。

 ヒュドラモドキの半数の頭の意識が自分に向いたタイミングで、アレーティアが反対側に回り込み白頭を狙い撃つ。

 

「〝凍雨〟!」

 

 放たれた氷撃は割って入った黄頭が肥大化して受け止め、白頭には届かない。それに受け止めた黄頭は大して傷付いていない。

 

「盾役まで………! 一体なのにパーティを相手にしているようですね」

 

(アレーティアの言う通りに、ヒュドラモドキの各頭がパーティプレイをしているのなら黒頭は)

 

 と、役割に思い至った直後に当の黒頭が大きく啼いた。

 

「クルゥアァァァアン!」

 

「チィッ、やっぱりデバファーか!」

 

「っ! ………はぁ!」

 

 闇属性魔法によって唐突な不安感と恐怖が襲うが、自分もアレーティアも即座に跳ね除ける。

 それでも一瞬、動きが鈍った所を自分には火炎と風刃が、アレーティアには氷礫が降り掛かる。

 

「ぅぐ、〝城炎〟!」

 

 アレーティアは多少被弾しつつも炎の壁を生み出し重傷は避けた。

 

「あぁ、鬱陶しいな……!」

 

(図体のデカさと再生能力で無駄に手間がかかってる。PSIを使えば瞬殺だが探索に少し使い過ぎか、ある程度は"過去視(サイコメトリー)"の為に温存したい)

 

 自分は魔力を体表で循環させてやり過ごしながら思考し、戦術を取捨選択する。

 

 火炎と風刃の勢いに任せて天井に着地。天井を瞬時に十数回蹴って加速し、ヒュドラモドキ目掛けて急降下する。

 

「一番邪魔なのはお前だ、盾役!」

 

 狙ったのは黄頭、急降下した勢いのままに防御体勢すらとらせず踏み潰す。

 

「タネは分かった、閉じてろ」

 

 白頭が啼声を上げて再生させる前に、土魔法で鉱物混じりの杭を創って残りの頭の口を縫い留める。

 

 ここまでの戦闘で、どの色の頭も口を開け啼声を上げる事で固有魔法を行使していた。ならば、開けさせなければ抵抗は物理に絞れる。

 

「魔力の気配からして胴体にもう一つ頭が隠れてる。トドメは任せた、アレーティア」

 

 魔力の気配と胴体に近づかせない戦闘の様子から、まだ頭が隠れているのは気付いていた。下手に頭だけを狙えば胴に隠れてた七つ目の頭が姿を現れるだろうが、まとめて薙ぎ払ってしまえば関係ない。

 

「任されました! 〝蒼天〟!」

 

 直径十メートルを超える青白い炎球が縫い留められた頭ごと、ヒュドラモドキの胴体を灼き尽くす。

 以前、自分がベヒモスに加減して放ったのとはワケが違う、アレーティアの最上級魔法はヒュドラモドキに確実にトドメを刺した。

 

 

 

 ヒュドラモドキの絶命と共に、重々しい音を立てながら扉が開いた。

 

 新手を警戒しつつも扉の先へ進むと、其処に広がっていた光景は迷宮内部とは思えない程に穏やかなモノだった。

 

「凄い………!」

 

「へぇ! ここまで出来るのか!」

 

 

 長閑な自然風景── その一言に尽きた。

 

 

 草木が生き生きと生い茂り、奥には清浄な地下水を引いた滝がある。滝壺から流れていく水が川を作っていて、複数種の魚が自由に泳いでいた。何も植えられていないが畑と家畜小屋まであり、魔物は一匹たりともいない。

 何より、部屋中に射す暖かな光。照明器具による無機質なモノでも、特殊な鉱石によるモノでもない。太陽光そのものが、天井に設置された円錐状物体の底面部に浮く球体から降り注いでいる。

 しかも、その球体は地上の光を魔法でもってきているのでは無く、核融合反応を魔法で再現した疑似太陽と呼ぶべき物だった。近年の事だが、核融合は地球では科学技術として極々一部の天才達が確立している。つまりコレは、製作者たる解放者達が紛うこと無き天才だった事の証明と言える。

 

 

(優れた人物達だったのだろうと思ってはいたが、これ程とは)

 

 

 

 暫しの間、自分もアレーティアも感嘆に呑まれていた。

 

 

 

 

「……………そろそろ探索を再開しないとな」

 

「そうでした。先ずは、あの住居を調べましょう」

 

 我に返り、岸壁を加工して建てたと思われる三階建ての住居へ足を進める。

 

 

 住居の一階はリビング、台所、トイレ、露天風呂、とプチ贅沢なレベルの生活空間。特に重要なモノは無い。

 二階の部屋は封印がかけてあった。術式を解析してみると、一律の鍵で開く仕組みの様なので後回し。

 三階は一部屋のみ、だが一番重要なのは見て明らかだった。

 部屋の中央には直径八メートルの大掛りな魔法陣、自分でも完全には看破できない程の高度な術式だ。その向こう側には黒い服装を身に纏った白骨死体が椅子に凭れかかっている。

 

(あの服装………視た覚えがある。オスカー・オルクスの遺体か)

 

「あの遺体の方が"反逆者"でしょうか?」

 

「状況からしてそうだろうな。…………んで、神代魔法はこの魔法陣から得られんの?」

 

「恐らくは」

 

「ま、確かめればいい事か」

 

 示し合わせるでもなく揃って魔法陣の上に乗る。

 すると魔法陣が発光し、記憶を覗かれる感覚がした為に咄嗟に遮断しかけるが踏み止まる。覗こうとした範囲は"大迷宮"に入ってからの事柄のみ、試練を乗り越えたかを確認する目的の様だ。

 記憶の精査を終えると発光も弱まり、白骨死体と同じ服装の青年 オスカー・オルクスの立体映像が現れた。

 

『試練を乗り越えよく辿り着いた。私の名はオスカー・オルクス、この迷宮を創った者だ。"反逆者"と言えばわかるかな?』

 

 

 生前に記録したのだろう音声と映像が再生されていく。

 

 

『ああ、質問は許して欲しい。これは記録映像の様な物でね、生憎 君の質問には答えられない。だが、この場所に辿り着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何の為に戦ったのか…………メッセージを残したくてね。この様な形を取らせてもらった、どうか聞いて欲しい。我々は反逆者であって反逆者ではないということを』

 

 

 オスカー・オルクスが話す内容の大半は"過去視(サイコメトリー)"で知った情報と変わらなかった。しかし、一つだけ聞き捨てならない要素があった。

 解放者達が神代の時代から続く神々の直系の子孫であった、とゆう件だけは初耳だ。

 

 

 神が人と子を成すとゆう事自体はよくある話だ、何ら不可思議な事では無い。だがそれは、神が全能者或いは超越者足る存在であればの話。

 それ以外なら、人と人外が子を成すには生殖方法が近似していなければ不可能に近い。自分の識る限りでも悪魔や物の怪、化生の類いとの混血も存在しているが、その条件を無視できた例はほとんど無いのだ。

 ディンリードとアレーティアの件で、エヒトが全能には程遠いのは証明された。エヒトはかつて在った自身の肉体を失い魂や精神のみに成り果て、自身の器を創れもせずに他者の肉体を狙っている。地球から自分達を召喚したのもカラダ目当てとゆう事だろう。

 そんな輩が人と子を成したなら肉体が在った頃の事であり、その肉体は人と近似していた証左。子孫たる解放者達の種族は無統一で異形の特徴も無い事から、種族的には人間族に近く人外では無い証明。つまり異世界人か までは定かでなくとも、エヒトは神ならざる人であった事が立証された。

 

(只人が驕り高ぶり神気取りか、呆れるな)

 

 余りの馬鹿馬鹿しさに一度は無いものとした可能性が正しいと裏付けられてしまった。正直な所、流石にそうであって欲しくはなかった。解放者達然り、ディンリード然り、一廉の人物達がそんな幼稚な存在に振り回されて生涯を終えたのかと思うと、形容し難い感覚に囚われる。

 

 

『君が何者で何の目的でここに辿り着いたかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何の為に立ち上がったのか。…………君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たす為には振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを』

 

 オスカー・オルクスの映像は話をそう締め括り、消えた。

 記録の再生が終わるのと脳に疼痛が奔るのは同時だった。神代魔法が直接刻み込まれていく。魔法の授与を終えると共に魔法陣の発光も収まった。

 

 

「取り敢えず、望み通りに神代魔法の入手と"反逆者"もとい"解放者"の真実を知れた訳だが…………アレーティアはこれからどうする?」

 

 察しはついてるが、念の為に確認しておく。

 

「私は、神殺しを果たします……!」

 

 アレーティアは決然と言い切った。

 

「自由に生きてもいいんじゃないのか? 長いこと閉じ込められて、ようやっと解放されたんだ。なのに、わざわざ神殺しの難行に臨むのか?」

 

「…………あの部屋から私を解放し、ここまで同行させてもらったクレイには話しておくべきでしょうね。私が封印された本当の経緯を」

 

 

 そう言うと、アレーティアは自らの過去の詳細を語り始めた。

 

 

 

 

「当時も戦乱の絶えない時代でしたが、私が女王として治めていたアヴァタール王国は鬼神の国と称されるに相応しい武勇と栄華を誇っていました」

 

「先祖返りの吸血鬼として幼い頃から強い力を持っていた私は、国防の為に幾度となく戦場に立って数え切れない敵兵を葬りました。辛く苦しい事も多かったけれど、それでも守りたいと思える良い国だったのです」

 

「ある時、長く続いた戦乱を終える転機が訪れました。当時から大陸最大数であった人間族に神託が下ったのです。私の天職"神子"は神の代行者の証である、と。神の代行者に選ばれる、かつてない偉業。これを契機に戦乱を終結させられると世界中が歓喜していました」

 

「ですが宰相であったディンリード。私の叔父は教会と対立すべきと主張して、僅かな側近と共に孤立していったのです。強く優しく聡明だった叔父様が太平に繋がる道をなぜ拒むのか、平和が訪れると信じたかった私は気付けませんでした」

 

「そして、私が教会に迎え入れられる直前に叔父様が主導するクーデターが起こり、意識を奪われたままにあの封印部屋に閉じ込められたのです。王位を簒奪する為には私が邪魔なのだと言い捨てて」

 

「真っ暗な封印部屋でずっと考えていました。私に確かな親愛を注いでくれた叔父様が、国を想い政を為していた叔父様が。なぜ王位の簒奪の為にクーデターを起こしたのか、なぜ私を裏切ったのか。どうしても分かりませんでした、どうしても私の知る叔父様と重なりません」

 

「そんな中、クレイが見付けてくれた叔父様のメッセージは幾ら何でも信じ難いものでした。信仰されていた神は邪神に過ぎず私は代行者などではなく、神の降臨の生け贄にされる所だったのだ、と」

 

「然しそれなら全てに筋が通ります。不自然だった世界情勢にも、私を殺さずに閉じ込めた事にも。ですがそれでも、信じたいけれど、受け容れ切れません。だから確かめる事にしたのです。叔父様の言う事が本当なら"大迷宮"の奥に神代魔法と共に"反逆者"の真実が遺されている筈、それが証明に成ると……………」

 

「…………事実、遺されていたオスカー・オルクスの記録を聞いて明確になりました。叔父様達が正しく、世界中が間違っていて、私が手を取るべきだったのは信じるべきだったのは、神や教会ではなく叔父様達の方だったのです」

 

「今思えば何もかもが可怪しかったのに………!! 信仰にのめり込んでいった父母も、信望溢れる叔父様を排斥しだした重臣達も、戦乱の最中に流布された神託を妄信する民も、種族の垣根もなく神の代行者を望んだ世界も、全てが異様でしたのに!!」

 

「神が世界を弄びこの身を狙うとゆうのなら、私は因縁を清算しなくてはなりません……! 祖国の仇を討ち、側近達の忠義と叔父様の願いに報いる為に!!」

 

 

 

 アレーティアが話す間、基本的に無表情な彼女にも様々な感情の色が過っていた。

 郷愁、寂寥、猜疑、悲哀、悔恨、慚愧、憤怒、憎悪、決意と移ろって、目の端には涙が滲んでいた。

 

「成程な。そりゃあ、我関せずとはいかんよな。けど泣きたいなら泣いてもいいんじゃないか?」

 

「いいえ………! たとえ愛する祖国が滅びていても、女王の肩書きを下ろす訳にはいきません。神との因縁を清算するまで、私はアヴァタール王国の女王として在り続けます………!

涙を流すのはタダのアレーティアになった時です」

 

「……………人の決意に水を差すのは野暮だったな。悪い、忘れてくれ」

 

 自分は軽率な発言を謝した。

 封印部屋で読み取っていたのはディンリードの思念であってアレーティアの思念では無い。決意の程を量るためと言えど、安意に踏み込むべきでは無かった。

 

「嫌です。代わりに一つ頼みを聞いて貰います」

 

 アレーティアは謝意を拒絶して要求を突き付けてきた。為政者だっただけあって強かだ。

 

「………流石に、内容に拠るな」

 

「そう身構えずとも結構ですよ? 鍛練に付き合って欲しいだけですから」

 

「神殺しの為に?」

 

 特段に無茶な要求でもなかったので問い返すと、アレーティアは頷いて理由を述べる。

 

「私の戦術は魔法が主体で接近戦は不得手……神殺しを果たすには全ての神代魔法を集めるだけでは足りません。貴方は高度なレベルで魔法も格闘戦も熟せる、相当な手練れでしょう? ですから教示を頼みたいのです。…………何やら得体の知れない力も持っている様ですし」

 

 どうやらPSIに気付いていたらしい。まぁ 当たり前か、サソリ相手の時に堂々と使ったしな。

 

「その程度なら構わないが……僕が抜けてられる時間があとどのぐらいか確かめてからだな」

 

「集団から抜け出して来ているのでしたね、それで構いません。零から独学で始めるよりは効率的です」

 

「なら一旦消えるから、戻ったら始めよう」

 

「ありがとうございます」

 

 自分の血を小瓶に入れて渡してから、王都へ転移する。

 

 

 

 

 王都の部屋に転移した後、頭を押さえる。

 

「ぁァ〜〜〜ッ。二つの意味で頭が痛い………」

 

 一つ目は勿論 エヒトの正体だ、まさか本当に只人だと確定するとは。本音はアレーティアに任せて終いにする積もりだったのだ。

 しかし、相応の存在が理由や矜持をもって為しているのでも無く。卑小な只人が自らの悦楽の為に引っ掻き回してる上に異世界を巻き込んだならば、相応の落とし前はつけなければならない。

 予定は変更、帰還ついでにエヒトは始末する。

 

 二つ目は神代魔法の授与の際の疼痛が抑まらないのだ。幸いにも大した痛みではないので無視していたが、長引き過ぎている。アレーティアの様子では直ぐに抑まっていたのに、自分だけ未だに続いている。

 原因が分からないだけに、コチラはどうしようもない。悪化しない限りは無視する。"過去視(サイコメトリー)"を行使するのも後回しになってしまったが、仕方が無い。

 

 

 食事ついでに国と教会の動向を探り、念の為に他生徒の様子も把握しておく……想定外は起きていないので放置。帝国の使者が来るのも予定通りに四日後。

 問題は無い。そう判断して仮眠をとり頭を休めた。

 

(やらなきゃならない事は………増える一方だ、な)

 

 

 

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