緋弾のアリア GuiltySniper 作:TaMaNeGi
『遠山キンジ、元強襲科のSランク武偵。入試試験で教官も含め無力化。その年のトップで入学。』
これだけ見たらとんでも無い凄腕ね。記録も残っているからSランクという評価も頷けるわ。
――でも――
『昨年末探偵科へ転科、ランクもEへ降格。』
問題はコレ。
アサルトでSだったのになぜインケスタなんかへ転科したのか。それが解せないわ。
ランクだっていきなり最低のEに降格になってる…。
――明らかにあの時見た実力はSランク相当よ――
この間にいったい何が…。
「それに、キンジだけじゃなくコイツもね…。」
アリアが次に見たのはキンジの同居人である月出里 長臣のデータ。
『強襲科のCランク、平凡な実力ではあるが一点遠距離射撃という点については見張るものがある。狙撃科でも十分通用すると言われており狙撃科Aランク相当の腕前。』
そう、なぜ狙撃科の本分である遠距離射撃が得意なのにわざわざ強襲科なのか。
明らかに選科ミスである。まあ当の本人は「マークスマンも居たっていいだろ?」と気にしていないようだったが。
――それにアイツ、調べたけど生年月日と学年が合ってないのよね。――
一般校からの転入生って事になってるけど不自然な点が目立つわ。コレは突っ込んで調べてみる必要があるかもしれないわね。
それと実力も見ておきたいし。
そうと決まれば強襲科ね。
おかしい……。
「どうしたのよ。さっさと構えなさい。」
と俺の前で二挺のガバメントを抜いてそう言ってくるのはアリアその人。
――なんでこうなってんだ。――
俺は射撃訓練に来てただけだぞ。
なのになんでアリアと模擬戦なんてことになってんだ。
俺は今、模擬戦場にいる。
目の前にはやる気満々のアリア。
――どう見ても逃げられる状況じゃねぇな。――
取り敢えず話が見えないであろう読者の皆さんに軽くこうなった経緯を話そうか。
ガァン!
ガァン!
ガァン!
いつもどおり午後、シューティングレンジで射撃訓練していた俺。
「へぇ、やるじゃない。アンタ。」
ちょうどHK41のワンマグ20発を撃ち終えたところでいつの間にかレンジにいたアリアに声をかけられた。
「アリアか、前も言ったろ。 俺は接近戦より遠距離射撃の方が得意なんだ。」
「そうだったわね。 先日は聞かなかったけどなんで狙撃科じゃないのよ?」
まあ、そうなるわな。
無難に誤魔化しておこう。
「確かに得意だが他と比べてって事だ。 本職のスナイパーには劣るからな。 なら強襲科で遠距離もこなせるって方がいいかなって思っただけだ。」
あながち間違いじゃないしな。
コレで納得してくれりゃ苦労はしないんだが…。
「ふぅん……、まぁ口ではどうとでも言えるし。今はそっちのほうが都合いいから深くは聞かないわ。 それよりもアンタ、アタシと戦いなさい!」
「は?」
って感じで今に至る。
やべぇなぁ、ギャラリーも増えてきちまったし……。
方や強襲科Sランクの凄腕武偵、方やCランクの平凡武偵。
どう見ても勝敗は決まってるだろうよ。
しゃあねぇ、こうなっちまったからには腹を括ろう。
「わぁったよ、貴族様のご期待に添えるかどうかはわからねぇがやってやる。ただし一回だけだ。」
今回は皮肉たっぷりに言ってやる。
さすがのアリアも挑発と分かったのかニヤリとすると――
「上等よ! アタシを挑発したことを後悔することね。」
「ハッ! やってみやがれ!!」
イケね、乗せられてる気がするぞ。
まあイイか。
思考を切り替え二挺のハイキャパガバを抜き構える。
「「先手必勝!!」」
そう言うと互いに突っ込む。
まさか互いに考えてることが同じだとは……。
いや俺が単純思考になってるだけか…?
お互い銃をぶっ放しながら接近する。
何発か被弾するが気にしない。
――いや、正確に言うと気にする余裕が無い、か――
それほどまでに正確な射撃だった。
あんな細い腕でよく反動を制御できるなと素直に感心した俺は正常だと思う。
さすがはSランク武偵ってか?
こっちもただやられるのは趣味じゃないんだ。
足掻けるだけあがいてやんよ!
――コイツ、出来るわね。――
コレが戦っていて純粋に思ったこと。
Cランクでここまで出来る奴なんてそうそう、いや全くといっていいほどいない。
なぜなら実力があればあるほど上のランクに上がるから。
なのにコイツ、確実にBランク以上よ…!
たったひとつ変わっただけだろう、とそう思う人間は少なくないはずだ。
だがこの差は実は大きい、ランクはひとつ上げるのにも苦労する。
それこそA,Bランクともなればそれ相応の実力者なのだ。
射撃自体はレーザーポインターもある分精度も悪くない。二挺持ちはそれ故に射撃精度に難が出るけど上手く道具でカバーしてるわ。
けど、データ通り接近戦は苦手みたいね。さっきから要所要所で甘い場所があるわ。
――最も、それでも顔に出さず普通に戦闘を続けていることに驚きだけれど。――
それにアイツ、銃ですら鈍器として使ってくる。
急所への射撃を咄嗟に見切って銃をぶつけていなしてくる。
攻撃も突きが鋭い、やっかいね。
ストライクヘッドなんて見た目で付けてるんじゃないかなんて思ってたけど考えを改めないといけないわね。
―― 一旦距離を取り素早くマグチェン――
とは言え勝てない相手じゃないわ。
「すげぇ……。」
誰が発したかはわからない、どっちのことを言ったのかも。
ただ、模擬戦開始前のざわつきがなくなっていると言う事が全部を語っているだろう。
実際タケオミが強襲科で接近戦の訓練をやっていることはかなり少ない。
基本的にはシューティングレンジでの射撃訓練メインなのだ。
互いにガバメントを往なし、往なされ。
しばらく拮抗していたこの勝負。
しかし決着は意外なほどにあっさりとつく。
――キツイ――
今まで模擬戦でここまで濃密な物はあったろうか……?
いや、無いな。
そもそも俺自身強襲科で模擬戦なんて殆どやってない。
昔キンジがいた頃ぐらいか。
ガキキンッ…!
っ!? リロードッ……!
集中力を切らせた俺に追い打ちをかけるが如く、両手のガバが二挺そろってまさかのホールドオープン。
弾数管理など基礎中の基礎。
リロードタイミングをある程度コントロール出来ない様では話にならない。
特に今みたいな戦闘中はもってのほか……!
それほどまでにタケオミにこの模擬戦は"キて"いた。
更に悪いことは続くというが。
ガツンッ。
しまったッ!
マガジン落とした…!?
疲労による集中力の低下にあわせ焦りもあったのかもしれないけど・・・。
コレは最早笑うしかない。
アリアがこの隙を見逃すはずもなく。
ガバメントをぶっ放し、固まっていた俺の両肩に直撃。
「ガァッ…!」
そのままよろけ、後ろに倒れた俺。
体勢を立て直そうとしたが時既に遅し。
既に目の前には漆黒のガバメントを構えたアリアが――
「チェックメイトね。」
「みたいだな……。」
ということでようやっとガンアクション回です。