ショウとは別に少女がヒスイ地方に送り込まれたそうです。 作:クロの騎士
私はヒトカゲです。
目覚めると、私の隣で寝ていたはずのカイさんがいなくなっていた。
もしかして、寝ぼけていたのだろうか?
それとも先に起きて何処かに行ってしまったのだろうか?
「来たなら起こしてくれればいいのに……」
私を気づかってくれたのだろう。
で、起きるまで待っていたが、カイさんも睡魔に襲われて眠ってしまったのかもしれない。
恐らく、この群青の海岸に用事があったのだと思う。
私を起こさずに出て行ったのも気づかいと言う奴に違いない。
「で、どのくらい寝てたのだろうか?」
時計がないので正確な時間が解らない。
外に出ると、まだ日が高かった。
せいぜい一二時間くらいかな?
まさかまる一日寝ていたなんてことはないだろう……多分。
「ピカチュウ、デオキシス、見張りありがとね」
テントの外にいた二匹に感謝の言葉を述べる。
さて、これから海岸でも散歩してみようかな?
全てのポケモンと出会うには、まず自分から行動するのが一番だろう。
「でも、全てのポケモンと出会うって簡単じゃないよね?」
そもそも規模はどのくらいなのだろうか?
ヒスイ地方の全てのポケモン?
それともこの世界に住む全てのポケモン?
もしも後者なら無理難題な気がする。
ポケモンの中には、滅多に現れない珍しいものもいると聞く。
例えば、目の前にいるデオキシスなんかがそうだろう。
この子とは運良く出会えたけど、他の珍しいポケモンたちに出会える確率なんて低い気がする。
「……ハッキリ言って無理ゲーじゃない?」
だが、此処で諦めてしまう訳にはいかない。
「取り敢えず、縁を信じて頑張ってみよう」
私は砂浜の上を歩く。
近くにいるポケモンは、タマザラシやブイゼルなどのみずタイプが多い。
後はニャルマーとムックルとモンジャラ……結構、色々なポケモンがいる。
まだ町や村が少ないから、ポケモンの種類が豊富なのだろう。
「夜行性のポケモンもいるだろうし、夜になるまで待ってみよう」
しばらく歩いた後、私はテントへ戻る。
そして、日が暮れるまでゆっくり待つことにした。
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ゴーストタイプのポケモンの殆どは、イタズラ好きだと私は思っている。
小さい頃、夜中に起きるとゴースやゴーストなどのポケモンが、部屋の中に侵入してくることがよくあった。
だからか、ゴーストタイプのポケモンを怖いとは感じない。
「でも、いきなり現れるとビックリするよ……」
「ノワーン」
目を開けると、ヨマワルの顔があった。
驚きのあまりその顔を殴ってしまい、今は私の膝の上で撫で撫でしている。
ところで、ゴーストタイプってノーマルタイプと格闘タイプの技は効果が無いはずだよね?
私って何タイプなんだろうか?
まあ、いいか。
「ピカァ……」
近くでピカチュウがガックリと項垂れている。
ヨマワルの侵入を許したのが、よほどショックだったらしい。
ちなみにデオキシスは、項垂れているピカチュウの背中をポンポンと叩いている。
どうやら、夜中は交代交代で見張りをしてくれているみたいで、ヨマワルが侵入した時がピカチュウの番だったようだ。
「ノワーン」
見張りのピカチュウを掻い潜り、テントに侵入したこのヨマワルは、色々な意味で凄いと思った。
===
娘が十歳になると、他の子供たちのようにポケモンを貰って旅に出た。
母親として、表向きでは笑顔で送り出してあげたが、裏ではとても心配しており、それは今も変わらない。
「自分が母親となって、初めてお母さんの気持ちがよく解ったわ」
台所に立ち、娘が帰って来るかもしれないと毎日ご馳走を用意している。
が、今日も帰ってきそうにない。
娘がいなくなってから数日。
果たして、いつ帰って来るのだろうか?
「……でも、もしかしたら私よりもこの子の方が辛く感じているのかもしれないわね」
一つのモンスターボールを見つめた。
中には娘の相棒が入っている。
娘は、旅先でポケモンを捕まえることが少なかった。
理由を聞くと「可哀想だから」と言うことらしい。
「…………」
私はモンスターボールから娘の相棒……リザードンを外に出した。
「ぐぅ……?」
出したのが娘じゃないからか、首を傾げるリザードン。
しばらくして、私に背を向け、飛び立とうとしていた。
恐らく娘を探しに出掛けるのだろう。
「待って!」
私はリザードンを引き留めて、一度家の中に戻る。
そして、娘の着替えやお弁当なんかを鞄に入れ、リザードンに渡した。
「娘に会ったら渡してちょうだい」
「グゥ……」
コクリと頷くと、リザードンは羽ばたいて行った。
本当なら、私も着いて行きたい。
でも、私は家で娘の帰りを待つことにした。
何故なら、それが母親としての務めだと思ったからである。
===
空へ飛び立ったリザードンは、テンガン山にあるやりのはしらまでやって来ていた。
「グゥ!」
何かを呼ぶように叫びリザードン。
すると、目の前の空間が歪み、そこから二体のポケモンが現れた。
「…………」
「…………」
二体のポケモンは沈黙しながらリザードンを見つめる。
そして、彼が望んでいることを感じ取り、力を貸すことにした。
「グギャグバァ!」
「パルパルゥ!」
二体のポケモンにより空間に大きな穴が空く。
リザードンはその穴に向かって飛んでいった。
「…………」
「…………」
二体のポケモンはリザードンが中へと入っていたのを確認した後、穴を閉じる。
そして、自分たちもまた何処かへと姿を消すのであった。
最初、テンガン山ではなくとある森の小さな祠で時渡りが出来るあの子に協力して貰うと言う内容にしていたのですが、ルージュがいる場所はタダの過去の世界ではないので、パルパルさんたちに変更しました。
それでは、また次回もよろしくお願いします。