ショウとは別に少女がヒスイ地方に送り込まれたそうです。 作:クロの騎士
頑張るぞい!
翌朝。
目を覚ました私は、朝食の準備を始めた。
と言っても、リュックから木の実を取り出すだけ。
今日はオボンの実とオレンの実にした。
「ルージュさん」
朝食を食べ終えた私に声を掛け来たのはウォロさんだった。
「おはようございます、ウォロさん」
「はい、おはようございます。よく眠れましたか?」
「えぇ、グッスリと」
それは良かった。
相変わらずニッコリスマイルでウォロさんは応える。
「ところで、最近この辺りで幽霊が出るそうです。ルージュさんは見ませんでしたか?」
「ウォロさんの後ろにいる子なら見ましたよ」
「………後ろ?」
ウォロさんが振り返ると、そこにはヨマワルがいた。
「うぉ!?」
「ぽわーん♪」
ビックリ大成功!
そんな感じでヨマワルが嬉しそうに鳴いた。
「ま、まさかジブンが背後を取られる日が来るなんて……」
よほどショックだったのだろう。
何だか悔しそうなウォロさんである。
「……話を戻しますが、幽霊が出るんですか?」
「えぇ。あちらに火吹き島と言う場所があるのですが、どうやらあそこを住み家としているようです」
幽霊の正体は大体ゴーストタイプのポケモンと相場が決まっている。
だが、本当に幽霊がいないと言う根拠はない。
「亡霊とかでしょうか?」
「亡霊……もしもそうなら、先代のキングかもしれませんね」
そう言えば、この群青の海岸にはキングがいないらしい。
不慮の事故で命を落としてしまい、後継者も育たぬままなのだそうだ。
「キングの不在で荒ぶるポケモンが出ていない訳ですが、変わりに幽霊騒ぎとは……中々興味深いです」
ウォロさんは遺跡や伝承が好きと言う話だ。
だが、どうやらオカルトも好物らしい。
目をキラキラさせていた。
「そうそう、幽霊の調査で近々ギンガ団から調査員が派遣されるようですよ」
「調査員……ショウかな?」
「さぁ? ですが、その可能性は高いでしょう」
「……いいように使われているっぽいですね」
「まあ、信頼を勝ち取る為ですから仕方がないですよ」
信頼を得るには行動するしかない。
そんなことは理解している。
だが、一番心配なのは頑張っているショウをアッサリ切り捨てないかだ。
(もしも彼女が捨てられることになるのなら、私が支えてあげないと……)
そうならないのがベストだが、役に立たないと見なされて捨てられた実例なので、彼らを信じることは出来るはずもなかった。
===
ウォロさんと別れた後、私は砂浜を歩いていた。
「折角の海なのに……泳げないのは無念だわ」
全裸で泳いでもいいけど、痴女扱いされると困る。
まあ、水着で泳いでいたとしても、この時代ではそうなるのだろうなぁ~。
「諦めるしかないか」
と呟いた時、目の前の空間が歪んだ。
確か「時空の歪み」だったかな?
ウォロさんに教えて貰った。
歪みが発生した場所では、珍しいポケモンや道具が落ちているらしい。
「…………」
本来であれば、近づくのは躊躇うところである。
だが「全てのポケモンと出会え」と言う使命がある今、行かないと言う選択肢はなかった。
「ついでに、珍しい道具を持ち帰ればウォロさんが喜びそう」
と言う訳で……
「行ってみよう!」
「ピカチュウ!」
「…………」
「ぽわーん♪」
私はピカチュウたちを引き連れて、時空の歪みに突入するのであった。
===
しまったな……
カイは時空の歪みの中を歩いていた。
結局、キングの後継者問題は進展せず。
それどころか仲違いして終わってしまった。
そのことを引きずりながら集落へ戻ろうとしていた時、突如として時空の歪みが発生したのである。
「早く此処から出ないと……」
カイと彼女の隣にいる相棒のグレイシアは、時空の歪みを真っ直ぐと突き進む。
しかし、その途中で後ろから殺気を感じ、振り返るとそこにはサイドン二体とドサイドン一体がいた。
「グレイシア、冷凍ビーム!」
グレイシアの冷凍ビームが三体に直撃。
怯んだ内に反対方向へと逃げる。
だが……
「っ!! もう一体!?」
別のドサイドンが待ち伏せをしており、カイとグレイシアは四体に囲まれてしまった。
「ど、どうしよう……」
万事休す。
グレイシアは威嚇をするが通用せず、ドサイドンたちがじりじりと近づいてくる。
(こうなれば一点突破で……)
もしも突破出来なければ、そこに待つのは死であるカイは覚悟を決め、グレイシアに前方のドサイドンに攻撃を命令しようとした……その時である。
「ヨマワル、シャドーボール!」
聞き覚えのある声が聞こえたと同時に、目の前にいる一匹のドサイドンにシャドーボールが直撃。
更に、カイとグレイシアは空から現れた赤いポケモンに捕縛され、そのままドサイドンたちから脱出。
そのまま時空の歪みの外まで運ばれた。
「大丈夫ですか?」
そこにいたのは、やはりルージュだった。
「る……ルージュさん?」
彼女の顔を見た瞬間、カイの目には涙が溢れ出てきた。
そして、ルージュの胸へと抱きつく。
「こ、怖かった……怖かったです!」
シンジュ団の長とは言え、まだ若い少女である。
死ぬかもしれない場面で助かり、安堵するのは当然であり、あまりの恐怖に泣き出すのは当たり前のことだろう。
「……怖かったよね」
よしよしとカイの頭を撫でるルージュ。
その姿は姉妹か……親子か……それとも恋人か……どのようにも見えるかもしれない。
===
あの後、カイさんと共にテントまで帰ってきた。
「あう……あううぅ」
平常に戻り、とても恥ずかしいと思っているのだろう。
カイさんの顔が真っ赤であった。
(これは昨日の件については聞かない方が良いかもしれないな)
もしも聞いたら、カイさんが大爆発してしまう恐れがある。
(なんにせよ、無事でよかった)
しばらくして、時空の歪みが消えた。
この現象も時空の裂け目と何か関係があるのだろうか?
あるとすれば、このまま放置するのは不味いのかもしれない。
次回はショウちゃん登場……そして、修羅場発生?