もはや、誰にも相談できない。嘆くアイズはふと声に出した。
「レフィーヤは、どう思う」
返事を期待した訳では無い。ただ溢れる思いが言葉になってしまっただけだ。ちょっとばかり、ベルと同じく自分ではなく他の人を、ベートを選んだレフィーヤはどう判断するんだろうとしたドロリとしたものが心に沸いただけだ。
主語も目的語も無い言葉。普通ならば通じない言葉。だが目的意識がアイズと共有しているレフィーヤには充分だった。
「私、ですか」
「うん、レフィーヤはどう思う」
その言葉に、自分たちを放っておいて楽しくしている破廉恥で無礼千万で浮気者で通年誑しでエルフ堕としな兎をレフィーヤは見据える。
私だけでなくアイズさんまで放っておいて、ちょっと前まで戦った、それも洗脳誘拐されたフレイヤファミリアの方たちと仲良くするなんて何たる畜生。何たる非道。
やはり、アイズさんの近くにあなたを近づけたのは間違いでした。えぇ、過ちでした。異端児の時に寂しそうなアイズさんを元気付けられるのはあなたしか居ないと信じて見送ったのは私の愚かさの発露です。あなたと何かを話し合って穏やかになったアイズさんに安心していた私は馬鹿です。
あなたが、他人の心の柔らかいところを鷲掴みして離さないド畜生だと重々承知だったのに! それでも信じてました! あなたがアイズさんを尊敬する想いは揺るがないと信じていました!
その結果がこれだ! まさかアイズさんと同等以上に尊敬する相手を同時に増やす二股兎だったとは! アイズさんを見なさいアイズさんを。鷲掴みされた心に鋭い刃を突き立てられてピクリとも動けないアイズさんを! (*レフィーヤもピクリとも動いてません)
えぇ、よくわかりました。ほんっとうにっよくわかりました。そっちがそのつもりならこっちもやってやります。素直になってやりますよ! エルフとして人としてどうかと思ってましたけど素直になってやります。
この機を使ってアイズさんとの距離を詰めてアイズさんを私が癒やしてみせます。アイズさんの心の中で占めているあなたの場所を私が奪い取ってみせます。アイズさんの救難信号に応えてみせましょう!
思い返せばフィルヴィスさんも救難信号を出してました。ただ、私が気付かなかっただけ、ううん、フィルヴィスさんの側面を素直に受け止められなかったんです。私は過ちを犯しました。
だからこそ、フィルヴィスさんの時に素直になれなかった過ちを繰り返しはしません。私は変わったんです。
はっ、ザマァみるんですよ。あなたはそのエルフの方たちとよろしくやっていれば良いんです。素直になった私はあなたの分までアイズさんとよろしくやってみせますよ。それを指くわえて見てなさい。
えぇ、私と同族なのに
私に向けたことの無い顔と
私に向けたことの無い情を
むける方々とよろしく
よろしく
よろしく
よ、ろし、く…………
「アイズさん」
「うん……」
澄み切った眼差しで
「もはや様子を見て思考を重ねる時は過ぎ去りました。今や決断と行動の時です」
「? けつ、だん? こうどう?」
途方に暮れた自分とは違いレフィーヤには何かプランが有るのかと目を見開くアイズ(*二人とも視線はベルに固定したままです)に花の咲いたような笑みを浮かべて
「はい、あの男も女も関係ないド畜生破廉恥誑し兎を確保し、真っ当な人間へと矯正する決断の時です」
「ん?」
「まずは、私があの厄介な脚をアルクス・レイで無力化します。そして一緒に突撃して確保しましょう」
「……え?」
「で、ふん縛って適当な場所に連れて行って吊るして何を考えているのか何を知っているのか洗いざらい吐かせましょう。それから一つ一つ真っ当な人間へと矯正していく行動の時です。あ、ティオネさんとティオナさんは黒妖の魔剣と白妖の魔杖の足止めをお願いします」
「うん、いいよー」
「……えっ、ちょっ」
レフィーヤは素直になった。
とても。
「え?」
自分が断腸の思いで断念した実力行使プランを可愛い後輩に具体的かつ容赦なく宣言された。端的に「姐さんやっちゃいましょう」とせかされたアイズはまず困惑した。右横で賛同するティオナと、何わけわかんないこと言ってるのと普段のフィンに対する言動を棚に上げたティオネの言葉を聞きながら困惑して
迷った。
レフィーヤの提案(アイズの中では提案になった)に対する。選択肢は四つだ。
積極的反対
消極的反対
消極的賛成
積極的賛成
このどれかで迷う。
レフィーヤ先輩は無害(確信)byナノ