とあるタイムパトロール隊員の特殊任務   作:本城淳

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のび太の結婚前夜編第二話です

商店街でどら焼きを買いに出掛けた際に、老婆を助けたのび太。
老婆から「良いお婿さんになる」と言われたのび太は上機嫌で街を歩いていたのだが………


不安な気持ち

商店街からいつもの住宅街へと入ったのび太は相変わらず上機嫌で歩いていた。

相当嬉しかったのだろうのび太は「ルンルルンルルーン♪」と鼻歌を歌いながら、軽やかに歩いている。

 

「エヘ、良いお婿さんかぁ♪しずかちゃんの良いお婿さん♪なぁんちゃってね♪」

 

デレデレとだらしなく歩くのび太。そののび太の後方をタケコプターで追っている玲雄とタケル。

 

「サトリメットを使わなくてもわかる………のび太君の脳内は今、静香さんとの結婚式の妄想でいっぱいなんだろうな……確定した未来じゃ無いっていうのに、相変わらず楽天的な………」

「まぁ、いいお婿さんになれると言われれば、ああもなるんじゃねぇの?まぁ、将来結婚できるかどうかわからねぇ俺からしてみたら、羨ましい限りだけどな」

「花形の機1所属じゃモテるだろ?ブタゴリラ顔はともかくとしてさ」

「レオ………この野郎。この誰がブタゴリラだ?」

「冗談だって!冗談!暴れるなよ!のび太君に気が付かれるだろ!ごめん!ごめんってば!冗談だって!」

 

空中でじゃれ合う二人。

 

『二人共。じゃれ合ってないで集中してよ。最近は平和だけれども、いつ『虫スカン』や『雪山事件』みたいに突発的な事件が起きるかわからないんだから。あと、ブタゴリラをあだ名にする人間に失礼だからね』

 

ヒデキから注意が入る。

確かに平和に慣れてしまい、気を抜きすぎたのかも知れない。

 

「ごめんよヒデキ。それにしても、ブタゴリラなんてあだ名の人間なんて、普通にいないでしょ」

『いつも美味しい野菜を買ってくる八百屋の息子さん、木手博士の先祖、エイイチさんの友人なんだけどね?本当にそう呼ばれているらしいよ?』

「本当にいるのかよ………ブタゴリラ………」

「しかも『八百八』の息子さんかぁ………あのおじさんの口癖ってけっこう耳にのこるよねぇ………」

 

ブタゴリラのあだ名が本当にいた事に周囲もひどいなあ………と思うタケル。

一方で玲雄は八百八の店主の熊田熊八の事を思い出していた。熊八の口癖は「らっしゃい」。事あるごとに「らっしゃい」と口走るので、ついつい耳に残ってしまう。

何故玲雄が熊田熊八を知っているのかと言えば、凝り性のヒデキが八百八の野菜を気に入ってしまい、「野菜なら八百八」と拘っているので度々買い出しに行かされるからだ。

 

『そう言えば、前にヒデキが『共時性』について話したことがあるけど、木手博士のご先祖様とかも何故か僕達に似ているよね?』

「共時性?」

 

頭上にハテナマークを浮かべている玲雄とタケル。

普段使わない言葉を理解しろと2人に求めるのは酷だろう。

ヒデキはその事に苦笑混じりのため息をつく。

 

『また脱線を………ほら、以前に僕達の関係と僕達のご先祖様の関係はとても似ていると話をしただろう?』

 

そう言われて玲雄もタケルも思い出す。

 

「そう言えば、僕達も思っていたよね。それが?」

『面白い事に木手博士のご先祖様………木手英一くんとその周囲も、まるで僕達のような人間関係が形成されているんだ。話に出てきていた八百八の熊田薫くん………ブタゴリラくんは性格が丸くなった剛田武くんに。野ノ花みよ子さんは好奇心旺盛になった静香おばあちゃんに。(とんがり)浩二君はツッコミ成分が強い骨川スネ夫君に、木手英一君がドラえもん君に、木手英一君が作ったロボットのコロ助君がのび太くんに………って感じかな』

 

一応は確かめるものの、ヒデキと木手博士は仲が良い事もあり、自分達と木手英一の共時性の一致が嬉しいのか口が回る彼。

のび太達の繋がりの場合、自分に似ている出木杉英才が今ひとつ距離があるのに対し、木手英一がドラえもんのポジションと出木杉英才のポジションを兼ねている事も共感性が持てる一因なのかもしれない。

時折英一がのび太のようなトラブルを引き起こす事も少なくないのだが、そこからは目を逸らしているようだが………。

 

「へぇ………似ているけど少し違うというのも面白いね」

「それよりも丸くなった武おじいちゃんって………じゃあ武おじいちゃんにそっくりな俺って、まるで傍若無人みてぇじゃねえかよ………」

『子供時代のジャンボはまさしくジャイアンみたいだったよ』

「………後で覚えてろよ?スネト………」

 

身に覚えがあるのか、少し間を空けてから言うタケル。

そうしている間にのび太がいつもの空き地の前へと差し掛かる。

鼻歌を歌いながら空き地を素通りしようとするのび太。しかし

 

「その開かれた瞳、美しい輝き…!そして雪のような白く白く透き通った美しい肌!」

 

しかし、聞こえてきた左側方から聞こえてきた男の声に気が付き、ピタリと笑顔のまま歩を止める。

 

「ん!?」

 

男の声に…いや、聞き覚えのある級友の詩的な声が気になったのび太は顔だけ覗かせて空き地の中を見る。

そこには………

 

「ああっ!やっと見つけた!」

 

声の主である出木杉英才が大げさに両手を広げて詩的な言葉を紡いでおり、その対面には頬を赤く染めて満更でもない様子の源静香の姿があった。

2人はそのまま瞳を合わせ、のび太が見ていることなど知らずに更に言葉を紡ぐ。

 

「ボクが長い間探し求めていた相手は、あなたです!」

「私の夢に出てきた王子様、今ここに!」

 

英才の衝撃の告白とそれを受け入れる静香。

それを見守る心中穏やかではないのが………

 

(((な、なにぃぃいい!)))

 

静香に想いを寄せるのび太は当然として、そののび太を護衛・監視している玲雄とタケルであった。

そして2人は顔を赤らめてギュッと両手を合わせ、距離を詰めて…

 

「やーーー!」

 

そこで我慢が出来なくなったのび太が空き地へと乱入する。

 

「ん?」「え?」

 

のび太の乱入により空気は壊され、呆けた顔を向ける静香と英才の2人。

 

「やらしい、やらしい、やらしい、やらしい!」

「「え?」」

「やらしいやらしい!」

 

涙と鼻水を流して2人を指差す。よほど慌てているのか涙と鼻水を垂らして不格好の姿で必死に二人の邪魔をのび太。

 

「やらしくってぐやじぃ~!」

 

ついには本音ダダ漏れで号泣する始末だ。

 

「まぁ、そうなるよな?好きな女の子が他の男の告白を受け入れている姿をみちゃったら。なぁ?レオ?」

 

突然の出来事で最初こそ驚いたタケルであったが、一度冷静になると今度はニタニタした声で玲雄に声をかける。

 

「モタモタしているとお前もこうなるぞ?レオ」

 

とタケルは言外に言っているのだが………

 

「う、うん………」

 

当の玲雄の方はといえば、普段ならば「うるさいなぁ…」と軽くムッとして答えるところではあるが、相手は自分の想い人であるサヤカにそっくりな静香とヒデキにそっくりな英才。

その告白シーンを自分達に変換しながら間近で見ていて気が気でない様子だ。

ましてや自分達は静香と英才の2人が結ばれた未来からやってきているのでなおさらだろう。

 

「のび太さん!?」

 

一方で静香が驚いて声をかけるものび太の邪魔は止まらない。

崩れ落ちて両膝をつきながらもなおものび太は見苦しくわめきたてる。

 

「僕達はまだ小学生なんだよ!?それなのに手なんか握って、愛の告白なんかしちゃって!」

 

そこで静香と英才は顔を見合わせてのび太が何故がなり立てて来ているのかを理解する。

 

「やだぁ、のび太さん!これ、劇のお稽古よ!」

 

状況を理解した静香はあまりのおかしさにクスッと笑い、のび太に言い聞かせる。

 

「ゲキ?」

 

その一言にキョトンとしたのび太は、次の瞬間に顔を赤らめる。早合点して乱入した自分の余りの恥ずかしい行動に。

 

「学芸会でやる白雪姫のラストシーンだよ」

 

英才もそんなのび太を笑うことなく普通に説明する。

これが武やスネ夫だったのなら小馬鹿にした物言いをするのだろうが、そこは完璧超人の出木杉。そういう悪意などは微塵も見せずに自然と説明をする。

 

「ああ、あったなぁ………そんな話が。レオ、完全に忘れてていただろう?」

「ちぇっ。ジャンボだって本当は誤解していたクセによく言うよ」

「さぁって?何の事だか?」

 

すっとぼけるタケルに軽くイラッとするレオ。

そうしている間にも眼下では話が進んでいく。

 

「のび太さん、練習している?」

「のび太くん、何の役だっけ?」

 

静香と英才に訊ねられると、のび太は更に恥ずかしそうに立ち上がりながら「森のリスB」と返答した。

モブ中のモブ。

木の役とかよりはマシとはいえ、必要かと問われれば正直必要のない、とりあえず何か適当に配役しちゃいましょうという感じの役。それがのび太に与えられた役だった。

Bというところも哀愁に拍車をかけるところがのび太らしい。

 

「ねぇ、一緒に練習しない?」

「そうしよう!」

((やめてあげてやって!))

 

玲雄とタケルが声なき悲痛な叫びをあげる。

2人はそんなのび太に悪意なく、本当に気軽に友達を誘うつもりで声をかけるのだが、当人や第三者………つまり玲雄達から見てみればある意味で残酷な追い討ちである。

悪意がないのがかえってたちが悪い。

セリフがある重要な役どころならともかく、森のリスBなどに何の練習が必要になるというのだろうか?

 

「いや、いいよ………ボクは………さよなら」

「のび太さん………」

 

残念そうな静香の声を背にしながら、打ちひしがれたのび太はトボトボとその場を立ち去………ったように見せかけてもう一度空き地の壁から練習を再開する2人を覗く。

2人は何事も無かったかのように、先程と同じシーンの練習をしていた。

 

「はぁ……」

 

ガックリと項垂れてため息をつくのび太。

これが先程まで機嫌よく、鼻歌交じりに浮かれていた人間と同一人物とは思えなかった。

 

「あ~………天国から地獄とはこういう事だな。なぁレオ?」

「わりといつもの事だと思うけどね。のび太君の場合は」

 

そう。

大小様々な事があれど、これがいつもの野比のび太の日常であった。

 

「ところでよ………女の子の手を握るのって、そんなにやらしいことか?レオ」

「し、知らないよ!少なくとも僕はそういうのに縁が無いんだから分かるわけ無いだろ!」

 

現在進行系で初恋(更に言えば両片想いを長年拗らせている)真っ最中のレオからしてみれば、女性の手を握るなんてイベントなど大事件だ。

 

『タケルさん?』

 

不意にサヤカが無線でタケルを呼ぶと、タケルがすくみ上がる。

サヤカの声の調子は特に怒っているという感じでは無く、むしろ優しげな声だったのだが、言いようのない圧をタケルは感じ取っていた。

 

「は、はい?」

『普通にセクハラよ。レオさんに変な事を聞くのは良くないわよ?」

「お、おぅ………」

『それにレオさんも勝手に(・・・)女性の手を握ったら、私達の時代では普通にセクハラになるからやっちゃだめよ?勝手に(・・・)手を握ったり、他の女の人(・・・・・)繋いだりしたら承知しないんだからね!』

「わ、分かってるよ………」

 

サヤカの圧にタジタジになって答えるタケルとレオ。

 

(分かってないんだろうな………レオの場合。ほとんど本音がダダ漏れなのに、何で気が付かないんだろう。見ている方がヤキモキするよ………この2人)

 

完全に蚊帳の外であるヒデキとスネトは、余りのじれったさに本当に深くため息をついた。

 

続く。




長らく更新を停止してしまい、申し訳ありません。
またボチボチと書いていこうとおもいます。
のび太の結婚前夜編、次回もまたよろしくお願いします。

のび太の結婚前夜編についてのベースは?

  • STAND BY MEドラえもんルート
  • 旧のぶドラ映画版ルート
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