「意外に早く追いついたね」
「十年以上の時間を移動するんだ。旧式の………それも安物の彼らのタイムマシンと、犯罪者を捕まえるために高速移動をすることもあるタイムマリンとじゃ、性能が全然違うよ。もっとも、整備しているのは僕だという事も忘れないで欲しいけどね」
スネトが特徴的な前髪をかき上げてドヤ顔を向けてくる。
その承認欲求の高さ故に周囲から反感を買いやすいスネトであるが、幼なじみ達は慣れているので特に気にならない。
それに、実際にスネトのお陰で各種装備品の物持ちが良い事は純然たる事実だった。
「お前、マジで捜査課よりも技術課とか開発課に転向したほうが向いてるんじゃねぇのか?」
「本当にそうだよね。スネト、そういうのが昔から好きで得意だったし、車や機械の扱いも上手だし」
事実、タイムマリンの操縦センスはこの中の誰よりも高かったりする。
「仕方がないだろ?僕だってそうしたいところだけど、キャリア組は一通り、全ての部署を回ることが義務付けられているんだからさ。それに、開発課はともかく整備課は叩き上げがメインだから、滅多にキャリア組が配属されることはないよ。あっても管理職くらいさ」
キャリア組が整備課に配置されることは少ない。あったとしてもスネトが言うように管理職………それも出世コースから外された幹部が配置される事が多い。
「お固いキャリアなんかになるからだよ。俺達のようにノンキャリの方が気楽で良いんだぜ?」
「僕にだって事情があるんだよ」
家族を見返す事が目的のスネトからすれば素質的には整備課向きではあるものの、出世コースから外されるのは避けたい。
「ほらタケルくん。お喋りに夢中になってないでスピードを落として。追突したら大変だよ」
「おっと。わりぃわりぃ」
ヒデキに指摘され、タイムマリンの速度を落とすタケル。
同時にドラえもん達の二人の声がスパイ衛生から入ってきた。
『場所はプリンスメロンホテル。式当日へ!!』
タイムマシンの目的地を設定するドラえもん。
『………未来が変わってなければね?』
『やな言い方をするなぁ………』
余計な一言を追加するあたり、最近のドラえもんの毒舌は本当に遠慮がない。
『ところでのび太くん。白雪姫の劇で君は何をやるの?』
『森のリス………B………』
(もうやめてあげてぇぇぇ!)
何故かのび太の「B」という声に哀愁漂うエコーがかかっているような気がする玲雄であった。
ー14年後の東練馬ー
『着いたよ』
『すごいホテル………』
自分の結婚式が挙げられる豪華なホテルを前に圧倒されるのび太。
周囲の建造物などものび太が生活している街並みからは信じられないほど発展しいる。
『さぁ、行くよ』
ポカンと立ち尽くすのび太の横をせっかちなドラえもんは走りながら急かす。
「ドラえもんはせっかちだなぁ………」
「本当だよ」
装備品が入っている四次元ポシェット付きベルトを巻き、玲雄とタケルもいつもの配置に着くべく準備を整える。
今度はきちんと『どこでもドア』などのアイテムも装備済みだ。
「行くぞレオ!」
「うん。じゃあ、行ってくるね」
玲雄とタケルが石ころ帽子を被り、タイムマリンから降りようとすると………
「レオさん」
「ん?なに?」
不意にサヤカが玲雄に声をかけてきた。
その瞳はどこか不安そうで………
「気を付けていって来てね?」
「え?う、うん………行ってきます」
キョトンとして曖昧に答える玲雄。
(いつも通り、ただ後ろからタケコプターで飛んでのび太おじいちゃんとドラえもんを見守るだけなのに………どうしたんだろ。サヤカちゃん………)
不思議に思いながら、タイムマリンから飛び立つ玲雄。
いつも通り、のび太の左斜め後方の上空に到着してタケルに声をかける。
「お待たせ。ジャンボ」
「おせぇぞレオ」
「仕方がないだろう?急に呼び止められたんだからさ………」
「まったく………何でレオだけ………。2人を応援するって決めてるから何も言うまいとは思っていても、少しは俺にだって………ブツブツ………」
「え?何か言った?」
「何でもねぇよ」
「???」
二人の仲を応援しているタケルとしては、微笑ましいながらも自分が無視されているようで納得がいかず、ついボヤいてしまう。
(それにしても何だったんだろう?さっきのサヤカちゃん………)
「レオさん………」
サヤカは玲雄が飛び立ったタイムホールの入口で、石ころ帽子を被っていて最初から見えないというのに、玲雄がいるであろう地点をいつまでも見送っていた。
「何だよサヤカちゃん。レオばかりに行ってらっしゃいなんて、ジャンボにも言ってやらないと不公平だよ?」
スネトがからかい半分、たしなめ半分でサヤカに声をかける。
「そんなんじゃ………でも、何かが起こりそうな気がして………」
不安気にしているサヤカとスネトのやり取りを、ヒデキは遠巻きに見つめていた。
(まさかとは思うけど………サヤカちゃん………もしかしてレオ君とのび太君の関係に………)
勘の鋭さに関してはヒデキ以上に鋭いサヤカ。
もしかしたら玲雄がのび太の子孫であると気が付いているのかも知れない。
そして、のび太と静香の間に産まれてくる子供は長男の野比ノビスケのみで、後の日野玲緒の曾祖父となる旧姓・野比ノビハルが誕生しない事も判明している。
それが意味することは………。
(でも、これはレオ君が僕達2人だけの秘密にすると誓ったことなんだ………僕が喋る訳には………)
ヒデキは頭を振って思考を切り替えてから表情を作って手を叩く。
「さぁさぁ、レオ君達だけじゃなくて君達二人も配置について。いつもの司令所じゃなくてタイムマリンのブリッジだけれど、やることはいつもと変わらないんだから」
「いけね。ほらサヤカちゃん。配置に付くよ」
「え、ええ………」
慌ててコマンドサポーター席に付くスネトと、後ろ髪を引かれる思いで時々後ろを振り返りながら、サヤカもオペレーターの席に座る。
(レオ君………君が消えることが無いと………僕は願っているよ。僕達は………また22世紀で楽しく過ごすんだ………その為ならば………)
ヒデキは未来への通信をする為にタイム電話を手に取り、どこかへとコールした。
一方でのび太とドラえもんはと言えば………
玲緒とタケルが配置に付いた頃、せっかちに式場へとせかすドラえもん。
しかし先程の決心はどこへやら………。ドラえもんに待ったをかけてから胸を押さえ、「ドキドキするなぁ………」とまたも尻込みしてしまう。
そんな時、キキキキーッ!っとけたたましい車の急ブレーキ音がロータリーの方から聞こえてくる。
その音に反応してのび太達も玲緒達も目を向ける。
タイムパトロールの2人に至ってはそれぞれが対処する為に行動していた。玲緒が四次元ポシェットからひらりマントを出して音の方向とのび太達の間に入り、タケルが腰のホルスターからショックガンを抜いて照準していた。
人命救助優先が主任務の機動3課所属の玲緒と、組織犯罪対処が主な任務の機動1課所属のタケルの違いが出ている。単に二人の性格の違いとも言えるかも知れないが。
しかし、二人の心配は杞憂に終わる。
聞こえてきたのは急ブレーキをかけた1台のタクシーが急停止をした音だった。
「何だ。タクシーか………」
安堵したタケルはホルスターにショックガンをしまう。
「でも、危ないなぁ………あんなスピードでホテルのロビーに滑り込んで来るなんて………。事故でも起きたら大変だったよ」
玲緒も四次元ポシェットにひらりマントを突っ込んでタケルの横へと戻る。
いったい誰がタクシーを急がせたのかと見ていると、そこからタキシードを着た一人の男が慌てて客席から飛び出してきた。
「あれって………まさか………」
「ん?」
玲緒は気が付かなかったが、その後ろ姿にタケルは妙な既視感を感じ、やっと絞り出したという感じの震える声を発した。
普段から見ている後ろ姿によく似ているからだ。
「お客さん!お金!」
「後で!」
「!!」
タキシードの男が叫びながら振り向くと、玲緒も驚く。
その見た目は眼鏡と髪型以外は普段から鏡でよく見る自分の顔によく似ていたからだ。
しかし、玲緒以上に驚いていたのはタケルだった。
「あれはのび太?おい………レオ。何でのび太の顔がお前によく似ているんだ?まさかお前って………」
「………………」
同時刻のタイムマリン内でも動揺が走っていた。
「やっぱりレオさんは………のび太さんの………」
「嘘だろ………言われてみれば確かにのび太は昔のレオによく似ている………って事はまさか!」
(ついにみんなにバレたか………)
隠していた事が皆にバレてしまった。
子供時代の玲緒がのび太に似ていたのは何とか誤魔化せた。
ジャイ子との結婚式の写真に写る青年ののび太の姿は少し痩せており、今の玲緒とはあまり似ていなかった。
大学生時代ののび太も少し玲緒とは印象が違う。
しかし、成人し、そして社会人となったのび太の姿は………
(これまで見てきたのび太君は、レオ君とは雰囲気の違いもあってあまり似ていなかったから安心していたのに………ここでバレるなんてね………)
普段はポーカーフェイスを崩さないヒデキ。
しかし、自分でもそれが崩れ、苦々しい表情が浮き出ている事をヒデキは自覚していた。
続く
ついに玲緒がのび太の子孫であることがバレてしまった!
どうなる?タイムパトロールチーム!
のび太の結婚前夜編についてのベースは?
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