タイムパトロール本部
タイムマリン駐機場
スネトによって改造されたタイムマリンの前で玲雄、サヤカ、タケルの3人が待機していた。
今日はいよいよドラえもんが野比のび太の元へと旅立ちを許可された日。
それは同時に玲雄達タイムパトロール特殊任務班が行動を起こす日でもあった。
そして直通のどこでもドアが現れ、スネトの先導でヒデキが姿を見せる。その隣には木手博士が立っていた。
「やぁやぁ待たせてごめん。準備に手間取ってね」
ヒデキは少し困った顔をして木手博士を見る。
「今回、ドラえもん君には大量の実験ひみつ道具を格安で渡しているみたいなんだ。モニターとしてね………」
「僕とペプ………んんっ!ハルトマン博士の旧友が作ったひみつ道具の実験機をドラえもん君に渡しているんだ。ヒデキ君には実験結果を記録して、報告をあげてもらいたい。実用、販売して良いものかどうかを確かめて欲しいんだ」
ハルトマン博士とは木手博士と同様、ひみつ道具の開発者の一人として名を馳せていた人物である。どこでもドアが代表的な道具だろう。
「はぁ………ハッキリと言ったらどうですか?ペプラー博士作だって………地球破壊爆弾って何ですか?お世話ロボットに必要ない代物じゃないですか。ペプラー博士がどこに潜伏しているかは追求しませんが、世界を滅亡させる道具だけは作らないように釘を刺してくださいよ?」
「ヒデキ君は心配しすぎだね。ペプラー君はドジというだけで、悪い人物じゃないし、天才であることは間違いないじゃないか。学会だっていつかはわかってくれるさ」
ヒデキが言った人物、ペプラー博士とは亡きハルトマン博士のライバルだった人物で、とある過失が理由で学会を追放された人物である。※1
木手博士はこう言っているが、いつか本当に世界存亡レベルの大事件を起こしかねないのではないかとヒデキは心配していた。
そのヒデキの予感は遠くない未来で的中する事になるのだが、それは別の話だ。
閑話休題。
「それに、モニターになることで赤貧の野比家に安物の中古品とはいえ、タイムマシンが渡ったんだから、良いじゃないか」
「まぁ、120万円は今の野比家には高級品でしょうが………」※2
ため息をつくヒデキ。
学者の付き合いも大変みたいだ。
「ペプラー博士って………確か………」
「スネト君。聞かなかったことにして。公式にはなってない事情が色々あるんだよ………」
「まぁ、タイムパトロールには無関係だから良いけど………」
難しい表情で話し合うヒデキとスネト。
サヤカも何かを察して渋い表情している。反して全く話についていけていないのが玲雄とタケルだった。
「なぁレオ。スネト達は何の話をしているかわかるか?」
「さぁ………ペプラー博士ってどこかで聞いたことがあるような気がするけど………」
「はぁ………レオさんもタケルさんも、ニュースくらいはキチンとチェックした方が良いわよ?特にタケルさんは」
「「あ、アハハハハ」」
サヤカに注意され、誤魔化し笑いをする脳筋二人。
「さぁ、そろそろ待機場所に向かおう。それでは木手博士。見送りありがとうございます」
「構わないよ。私とヒデキ君の仲ではないか」
木手博士に見送られ、タイムマリンに乗り込む5人。
コクピットに到着すると、操縦席には玲雄が座る。タイムマリンの操縦ライセンスは玲雄とタケルだけが持っている為である。
なお、ライセンスの関係で二人だけがタイムマリンを扱うことが出来るのだが、マシンの操縦技術そのものはスネトとヒデキの方がセンスが良く、更に言えばサヤカも運動神経抜群なので、通常のモータースポーツは得意だったりする。
ここで今回の役割について簡単に説明しよう。
日野玲雄
タイムマリン操縦士、野比のび太の監視及びフォロー、その他突発事態の対処要員
出木杉サヤカ
オペレーター、生活班及びヒデキの補佐(ノンキャリアの中では一番生活力が高いため)
剛田タケト(ジャンボ)
玲雄と同様に現場担当。
骨川スネト
出木杉ヒデキの補佐、メカニック担当
出木杉ヒデキ
全般指揮、分析担当
となっている。
実際に現場で動くのは玲雄とタケルがメインとなるのだが、臨機応変の対応が必要になるのは間違いない。
タイムマリンは早速時空間へと入る。
時空間には野比家に寄贈されたタイムマシンが駐機されており、玲雄達のタイムマリンは少し距離を置いてステルス機能をオンにする。
すると、これまでタイムマリンがあるとスピード違反を気にして減速していた一般のタイムマシンが、それ以降は一切気にすることなくビュンビュンと素通りしていく。
「へへっどんなもんだい?僕が強化したステルス機能。同じタイムマリンも気が付いてないみたいだよ」
予定通りの機能性能に、改造を施したスネトが興奮する。
「流石スネトだぜ!同じタイムマリンでも気が付いていないんだから大したものだよな!」
「ふふん。まぁ、僕の改造技術なら当然だよね」
「へっ!何が『僕の改造技術なら〜』だ。全部天才ヘルメットと技術グローブのおかげじゃないか」
「あー!ジャンボ、それ言っちゃう!?もぅ、せっかくいい気分だったのにさ!」
「まぁまぁ。スネト君が気が付いたんだから、このステルスモードが実現できたんだよ。そこは評価しないと」
「そうよタケルさん。こういう細かいところに気が付くのがスネトさんの良いところよ」
「僕らなんか気が付かなかったものね」
タケルがからかい、スネトがヘソを曲げ、ヒデキとサヤカと玲雄がフォローする。そんな光景を見て………
「プッ!あはははは!」
5人は顔を見合わせて爆笑した。
子供の頃に戻ったような、そんな感覚に………。
「何だか懐かしいなぁ。このやり取りって」
「そうだな。ガキの頃は、いつもこんな感じだったな」
「メンバーがこの5人で本当に良かったよ」
「あたしもそう思うわ」
「いつまでも、こうしていたいね。立場とかを忘れてさ」
5人は温かい雰囲気に浸る。しかし、これは幼馴染の同窓会ではない。世界の命運がかかっているかも知れない、重要な任務なのだ。
「それで、例の野比セワシくんとドラえもんは?」
「まだ渡航許可時間前だから、セワシくんの部屋にいるみたいだよ?ちょっと待ってて。スパイ衛星で確かめてみよう」
スネトがタイムマリンのデッキに出て、スパイ衛星を射出する。
スパイ衛星やその上位互換のスパイボールは今回の任務では肝となるアイテムだ。※3
モニターに映し出された映像を見ていると、セワシとドラえもんはタイムテレビで野比のび太の日常を観察しているようだった。
のび太の散々な日常を見ていたドラえもんは、過去に行くのをすごく嫌がっている。
既にのび太の予備知識があった玲雄には、ドラえもんの気持ちがすごく良くわかった。最初は自分もそう思ったからだ。
彼のお世話は一筋縄ではいかないだろう。
「あれが今回のもう一人の監視対象、野比のび太君か」
「うーん………弟から聞いてはいたけど、あれは酷い………目を覆いたくなるよ。ドラえもんが嫌がるのもわかる気がする」
タケルとスネトがドラえもんに対して同情的な視線を送っていると、サヤカは逆に………
「そうかしら?私の場合は何だか母性本能がくすぐられるわ。何だか放っておけないって言うか、そんな気分がするのよね。みんなはそんな感じがしない?」
と、意外な反応を見せ、そしてこの場の4人にそう声をかける。
「言われて見ると………何となくどこかで見たような………」
のび太の容姿は玲雄の子供の頃と良く似ていた。
タケル、スネト、サヤカがのび太に既視感を持ってもおかしい話ではない。
今は自身とのび太の血縁を黙っておきたい玲雄がどうしたものかと悩んでいると………
「セワシ君の先祖だからでしょ?似ていて当然じゃないか。君達はジャンボ君やスネト君の弟を通じてセワシ君と何度も会っているんだから」
と、事情を知っているヒデキが上手く3人の思考を誘導する。
ヒデキが言うように、何度かタケルやスネトの弟の友人としてセワシやドラえもんと会っている。
「そっかそっか。セワシの先祖なんだから似ていて当然だよな」
タケルが誤魔化され、スネトとサヤカも納得した表情だった。
いや、サヤカは少し、「そうかしら?何か違うようなきがするんだけど……」と違和感を感じているようだが。
(ありがとう、ヒデキ)
と、ヒデキだけにしか見えない角度で玲雄がサムズアップする。
(良いって事さ)
ヒデキも目線だけで玲雄に返し、モニターのセワシ達の様子を観察する。
『やっぱ止めようよ。行っても無駄だよ』
だらし無い場面、運動音痴、勉強も苦手な場面を見て心底行きたくなさそうなドラえもん。
『ほっとけないだろ?誰かが面倒を見ないと』
『ムリムリムリムリ!ムリだよー!』
誰もがしんどい思いをするであろう、その『面倒を見る誰かになりたくない』だろう。
(でもな、ドラえもん。それだけじゃないんだ………良いところなんてまるでなさそうな野比のび太………ちょっと関わっただけじゃわからない、彼の本当の良いところを見れば………君もきっと野比のび太君の事を………)
『とにかく!ひいひいおじいちゃんと話してみよう!』
(そうだ。まずはコンタクトを取ってみないことには話にならない!)
『さもないと、鼻のスイッチを………』
指差してドラえもんに脅しをかけるセワシ。
「うわっ!猫型ロボットの鼻のスイッチって………」
「矯正プログラムスイッチだな………」
「それで脅すって………さすがは少しだけだけど、ジャンボの遠い親戚って事はあるよね」
「どういう意味だよスネト!」
「子供の頃を思い返してみろ!セワシの方が可愛いくらいだ!」
(それ、僕もなんだよなぁ………)
セワシの性格は、又従兄弟の玲雄と比べると、どちらかと言えば剛田の血の方が強いかもしれない。
思い返してみれば、のびのびした性格の方が多い野比家の中で、セワシだけがその名の通り、少しせっかちな性格をしているように感じる。
身体的な素質は玲雄の方が剛田の血を引いているようだが。
『わかったよ………仕方ないなぁ………じゃあ………』
ドラえもんはタイムマシンのスイッチを操り、レバーを前に倒す。
『行くよ〜』
ドラえもんのタイムマシンか発進。
「よし、出発したぞ!玲雄!チンタラしてるからってうっかり追突するんじゃないぞ!」
「そんなヘマはしないよ。タイムマリン!発進!」
玲雄達を乗せたタイムマリンが、ドラえもん達の追跡をゆっくりと始める。
これからいくつもの事件を解決していく英雄達と、それを観測する者達の長い長い日々が………幕を開けた。
続く
※1
ハルトマン博士とペプラー博士
わさドラ映画、「ひみつ道具博物館」のキャラクター。
なお、モニター設定はオリジナル。地球破壊爆弾、無敵砲台、刷り込みタマゴ等、どう考えても世に出してはヤバい機械を普通に売っているワケが無いだろうと………と考えた設定。
※2
ドラえもんのタイムマシン
120万円の魔法のじゅうたん型タイムマシン。
この値段はカタクラ設定と呼ばれる設定を引用。
なお、ドラミちゃんのチューリップ型はドラえもんのタイムマシンの2倍の速度で居住性あり。カタクラ設定では5倍の600万円だったが、最近では10倍設定に変更された。
※3
スパイボール?
正式名称は忘れた。
『のび太の恐竜』に登場した白いボール型の監視カメラ。FFに登場したアーリマンに似てなくもないスパイ衛星の上位互換アイテム。
ドルマンスタインの組織が持っている同型の黒い物もある。
もしかして………
それでは今回はここまでです。次回は玲雄達の20世紀の生活を見ていこうと思います。
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