とあるタイムパトロール隊員の特殊任務   作:本城淳

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徐々に変わっていく未来。
それは、のび太とジャイ子が結婚することで野比家の血が交じるはずだった日野家の未来も変化するという事に………
このまま玲雄は、鉄人兵団のリルルのように存在が無かった事になってしまうのか!?
それとも、セワシのように最終的に野比家と剛田、日野家の血が交じるのか!?
どうなる!?「STAND BY ME ドラえもん編!」


のび太を止めろ!刷り込みたまごの巻

のび太の学校

登校時間

 

おはよう!

小学生達の元気いっぱいの挨拶が校庭のあちこちからひびいている。

その光景を玲雄とタケルは『いしころ帽子』を被り、タケコプターで浮いて空から眺めていた。

ドラえもんが22世紀からやってきて数日が経ち、のび太達の生活にスッカリ馴染んでいた。

それは同時に、玲雄達が20世紀の世界に馴れて来たということでもあった。

 

「今日はアイツ、寝坊しなかったな」

「毎日こうなら良いんだけどね。まったく、毎日毎日時間にルーズで困るよ。追跡する身にもなって欲しい」

「それに慣れきってる俺達も大概だよな」

「時々、『どこでもドア』で登校するのは勘弁願いたいよ。目標をロストするから」

 

のび太の後方数メートルの上空。そこが直接のび太を監視する二人のポジションだ。

石ころ帽子を被っている為、最初の頃はお互いがどこにいるのか分からなくなる事も多かったが、慣れと言うものは恐ろしいもので、定位が決まれば放っておいても互いの位置が分かってしまう。

玲雄達の密かな苦労を知らないで当ののび太はご機嫌で登校していた。

ドラえもんのお陰で良いことが続いているお陰で調子が良いようで、ルンルン気分で静香に声をかけていた。

 

「しーずっかちゃん!おっはよう!」

 

のび太に話しかけられると、静香は柔らかい笑顔を向けて応える。

 

「おはよう、のび太さん。最近調子がいいわね。ドラちゃんのおかげかしら?」

「そうなんだよね!何だかなーんでも出来ちゃう気がするよ!」

 

はしゃぐのび太。ランドセルの蓋が開いているのはご愛嬌だと思うべきなのか?と悩む玲雄。

静香はそれに気付いて「ウフフフ」と笑うが、バカにした笑いというよりは、慈愛に満ちた感じの笑いだ。

 

(源静香さんの反応を見る限りでは、ご愛嬌と見るべきなんだろうなぁ………それにしても、見れば見るほど源静香さんはサヤカちゃんの小さな頃に似ているなぁ………)

『レオさん?目線が静香さんに釘付けになってるけど?』

(うーん………サヤカちゃん、源静香さんの事が嫌いなのかなぁ。サヤカちゃんのご先祖様なのに………)

 

鈍感野郎である。

閑話休題。

登校中に静香と会い、合流して会話する。そんなのび太の幸せの時間は、すぐに終わりを迎える。

 

「しずかくーん!ちょっと良いかなー!」

「はーい!」

 

ヒデキに似た声が廊下に響くと、静香は元気よく走っていった。

そして、その先にいるのは………

 

(出木杉英才君………ヒデキやサヤカちゃんの先祖で、後々の静香さんの結婚相手。天才出木杉一族の始祖と言われている人物か。源静香さんかサヤカちゃんにそっくりならば、出木杉英才君はヒデキにそっくりだな………)

 

仲良く話し始めた英才と静香を見て、お似合いだなぁ………と思う玲雄。そして、いつの間にか彼らとヒデキ達を重ねて見てしまう。

ズキリ………と痛む胸。

 

(当然だよね。彼らはいずれ結婚するんだ………お似合いで当たり前なんだから!ヒデキとサヤカちゃんだってそうだ………日本の法律では、従兄弟同士は結婚できるんだ………)

 

勝手に納得して勝手に落ち込む玲雄。

 

「そうだった!うちのクラスにはあいつがいたんだ!成績優秀!スポーツ万能!そして、とっても良い人!出木杉が!」

 

のび太のライバル………というのもおこがましい程、完璧超人を絵に書いたような存在、伝説の出木杉英才。

そんな完璧超人が相手なら、誰もが尻込みしてしまう。

事実、のび太も尻込みし、ドラえもんに出木杉の事を話す。

 

「つまり………未来の道具をいくら使ったとしても、クラスメイトの出来杉君には敵わない………と。ふーん………」

 

普段はのび太が座っている勉強机の事務用椅子に座り、足をブラブラさせて不機嫌そうにしているドラえもんが、畳の上で項垂れているのび太を睨んでいたが、突然顔を真っ赤にして立ち上がり、机の上に飛び乗る。

 

「バカにするな!22世紀から来たネコ型ロボットだぞ!出来ないことはない!」

(いや、そこまで豪語できるほど、ひみつ道具は万能じゃない!感情に任せて無責任な事を言うな!)

 

玲雄の焦りなど姿が見えていないドラえもんが知るはずもなく、ドラえもんは机から飛び降りる。

 

「待ってろ!しずかちゃんの気持ちが間違いなくのび太君の方に向かう道具を今、出してやる」

 

ドラえもんは少し取り出すのが苦労するような大きな道具を取り出す。

 

「刷り込みたまご!」

(『刷り込みたまご』?なんだあの道具は………見たことがないぞ?それに、とてもイヤな感じがする………)

 

ドラえもんが取り出したひみつ道具を玲雄は知らない。前後の会話の流れや道具の名前からして、碌な物では無い予感がしてならない。

 

「ジャンボ………あんな道具、君は知ってる?」

「いや………俺もそんなにひみつ道具を知ってるわけじゃねぇけど、あんなのを見るのは初めてだぜ」

「サヤカちゃん!あのひみつ道具を知っているのか、ヒデキに聞いて!」

『わかったわ!って………キャッ!』

 

 

セーフハウス

壁掛け秘密基地内

指揮所

 

玲雄がサヤカを通じてヒデキに問いかけると同時に、スネトがサヤカを押し退けてマイクに向けて怒鳴りだす。

 

「スネトさん!何を………」

「あのひみつ道具は実験ひみつ道具だ!あんな物、絶対にこんな事には使わせないぞ!のび太とドラえもんを止めるんだ!レオ!ジャンボ!」

『待って!どういうひみつ道具なんだ!』

「それは………そのひみつ道具は………」

 

スネトが説明を始める。その内容は、正に今、ドラえもんがのび太に対して説明している内容そのものだった。

その卵型の機械の中に入り、15分後に出ると、最初に見た人を好きで好きでまたらなくなる。鳥類の刷り込み現象と同じ………。

のび太は今一つ理解していないようたが、成人しているタイムパトロールの5人はその恐ろしさが理解できた。

 

『おいおい!それは流石に洒落にならないぜ!』

 

更に悪いことに、その効果を聞いたのび太は………

 

『じゃあ、そこに僕がいたら?』

『のび太君の事が好きで好きでたまらなくなる』

『なんだよぉ!初めからそう言ってくれれば良いのに!』

 

のび太は「へぇ、こんな道具があったんだぁ」と道具に抱きつき頬擦りまでする。

 

『しずかちゃんよ。これで君は僕のものだ………』

 

たまごに抱き付いたのび太は、それを抱えてどこかへ向かう。

 

『ま、まさか………あいつ!』

「静香おばあちゃんにあれをつかうつもり!?」

 

『フフフ………自慢じゃないけど、この『刷り込みたまご』の強制力はすごいんだ。どんな人でも逆らえないんだよ。まぁ、僕ならこんな卑怯な道具は使わないけどね。フフフフ』

 

『『「「「ならそんな危険なひみつ道具を出すな!」」」』』

 

聞こえないことはわかっていても、ツッコミを入れずにはいられない5人。

自分が持っている道具の説明に得意げになって酔いしれているドラえもんは、どこかに行こうとしているのび太に気がついていない。

 

「止めるんだ!レオ君!タケル君!航時局からは、極力彼らの行動に干渉しないように言われているけど、こんな事は到底認められることじゃない!」

 

のび太と静香が結ばれることにより、影響が出るのは玲雄だけではない。ヒデキやサヤカにも影響が出てしまう可能性もある。それでも、のび太が努力によって未来を変えたのならば、どんな結果になっても受け入れるつもりでいたヒデキであったが、ひみつ道具によって強制的に人の好意を捻じ曲げてしまうのは看過できなかった。

 

『もちろんだ!』

『行くぞレオ!』

 

町中

 

「しずかちゃんはどこかなぁ?」

 

のび太はたまごを背負って静香を探していた。

まずは静香が機械に入ってもらわなければ始まらないからだ。

 

「よいしょ………と」

 

疲れたのか、下り坂の手前でたまごを一旦下ろすのび太。

 

「今だ!」

 

レオはその隙を突いてたまごを蹴る。たまごはその丸みでゴロゴロと下り坂を転がっていく。

 

「あっ!待ってよ!」

 

慌ててのび太はたまごを追うが、のび太の足では追い付かない。

その勢いのまま、坂を下り切ったたまごがコンクリートの塀にでも激突すれば、機械が壊れる可能性もあるだろう。

そう装って完全に壊してしまうのも有りだ。

しかし………

 

「あっ!武おじいちゃんがひかれちまう!」

 

転がっている先に、偶然武が通りかかる。

 

「ジャイアン!止めて!」

 

のび太に声をかけられた武は反応して振り向き、咄嗟に巨大なたまごにパンチを見舞う。

しかし、不運な事にそれは起動ボタンで、たまごが開いて武を飲み込み、蓋が閉まってしまった。

そしてそのまま武を収めたままたまごは転がり、電柱に激突。

やっとたまごは停止した。

 

「ジャイアン!大丈夫?」

 

武を心配してたまごを叩いて確かめるが………

 

「あ、ジャイアンがこの中に入ったって事は………」

 

のび太の脳裏に目をハートマークにした武に迫られる光景が浮かぶ。

 

「うわぁぁぁ!」

 

のび太は慌ててその場から逃げ出した。

 

「さすがはジャンボの先祖だ………普通なら避けるか逃げるかするだろうに、まさか殴り返そうとするとは………」

「いやっ!それよりもどうするんだよ!」

「このまま壊すわけにもいかなくなったよなぁ………」

「当たり前だ!万が一、武おじいちゃんの身に何かあったら、俺が生まれなくなっちまうだろ!」

「それは僕としても困る………ううむ………」

 

こんな時に咄嗟に使えるひみつ道具は残念ながら持ち合わせていない二人は困り果てる。

そこに………

 

「いいぞ!ゴーゴースネ夫号!」

 

スネ夫が通りかかり、操縦していた赤いラジコンカーが刷り込みたまごに衝突する。

 

「あ?何だこれ?」

 

そのタイミングでたまごが開き、武はスネ夫をバッチリ見る。

何も知らないスネ夫は「ジャイアン、こんなところで何してるの?」と気軽に声をかける。

武はピヨッと声をあげてフラフラとたまごから出る。その際、足元のラジコンカーを踏み潰してしまった。

 

「あーっ!高かったんだぞ!それっ!」

 

泣き喚くスネ夫にお構いなく、武はピヨピヨ言いながらスネ夫に近づく。

 

「カワイイな、お前」

「え?僕?そんな事はわかってるよ!それよりどうするんだよ!買ったばかりなのに直らないよ!」

 

ラジコンに駆け寄り、武に講義するスネ夫。

そのスネ夫の背後から、武は抱きつく。

 

「スネ夫!もう、お前を離さないぞ!良いだろ?」

 

あまりのおぞましさに、スネ夫本人はもちろんのこと、彼らの子孫であるタケルとスネトも悲鳴をあげる。

 

「「『ギャアァァァ!』」」

「助けてぇ!ママァァァ!」

 

ラジコンの事などすっかり忘れて一目散に逃げ出すスネ夫。

 

「何で逃げるんだよぉぉぉ!」

 

武を振り切り必死に逃げ出すスネ夫を透明マントを羽織って見ていたのび太と彼に追いついたドラえもん。

その上では石ころ帽子を被り、タケコプターで浮いていた玲雄とタケルも全員が啞然としていた。

 

「「すごい効き目だ………」」

 

思わずのび太と玲雄が声をハモらせたが、誰も気にしていなかった。まさか性別を超えてまで効果があるとは………。

 

「ねぇ、のび太くん。この道具を使うの、やっぱり止めない?」

「え?何でだよぉ?」

「さっきの見たろ?よくないってば」

 

そう言ってドラえもんはのび太の透明マントを解除する。

すると、のび太は駄々をこね始めた。

 

「僕だって持てたいんだよぉ!」

「ウ~ン………」

 

押しに弱いドラえもん。

 

「アイツ………まだ。ここで止めるのがお世話ロボットの役目だろう………こうなったらトコトンまで………」

 

玲雄はアレを見てもなお、やめようとしないのび太を懲らしめてやろうと動き出そうとするが………

 

「待てよレオ!そんな事よりアレをどうするんだよ!このままじゃ武おじいちゃんとスネトの先祖が大変な事になっちまうぞ!」

『そうだぞ!スネ夫おじいちゃんがジャンボの先祖をどうにか出来るとは思えないし!』

「あー………えっと………うん。まぁ、後でどうにかなるよ。心配しなくても、いざとなったらスネ夫君をスネ子ちゃんにするか、または武美ちゃんにするとか?君達も親戚同士になれて良かった………?」

「『ふざけるなぁ!早く何とかしろぉ!』」

 

続く




本日4月7日、藤子不二雄A先生の訃報が流れ、悲しい気持ちで一杯です。
A先生のご冥福をお祈りします。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

のび太の結婚前夜編についてのベースは?

  • STAND BY MEドラえもんルート
  • 旧のぶドラ映画版ルート
  • その折半ルート
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