素晴らしい朝が来た!日曜日の朝は素晴らしい。
何せ一時間のヒーロータイムに加えてプリティーでキュワキュワな少女を見れるんだ。
これだけで日曜日は早く起きれるね。
「あら?起きてたんだ」
「お袋」
「お母さんと呼びなさい」
「へいへい」
「まぁ、いいわ。近頃いろはちゃんとはどうかしら?」
「まだどうもねえよ。一応お義母さんからゴーサインは出たよ」
「そう。いつ告白するの?」
「夏祭りか文化祭かな」
「そうなのね…………ようやく勝負を決めるのね」
「なにその眼、そんなにようやくか?」
「今までの自分の行動を振り返ってみなさい」
「…………すいませんでした」
「取り敢えず、これ上げるからデートにでも誘ってきなさい」
「ありがとう」
「あ!」
「どした?」
「避妊はしっかりするのよ?」
「しねえよ!」
「あら大胆」
「もう何でもいいよ」
「ま、頑張ってね」
なんで朝からこんなに神経を削れないといけないんだ…………過去の俺を恨みたい。
遊びに行くならどこに誘うか…………そこが問題だ。
遊園地や水族館に行くにはいきなり過ぎる。
ならば…………答えは一つだ!
「いろは、今から映画を見に行かないか?」
お昼ご飯食べた後、そう声を掛けるといろはの顔から表情が抜け落ちる。
なんだ?何か変な事言ったか、俺?
「ま、まさかはーくんからデートに誘われるとは思ってませんでした……」
「行きたくないか?」
「いえいえ、是非とも行きたいです!」
「何か見たい映画でもあるか?」
そういいながら、スマホで今公開中の映画を調べていく。
恋愛モノ、アニメ、ヒーローものに怪獣モノ、結構色々やってるな。
この中だと…………うん、俺なら『復活のコアメダル』に行きたい。
ただ、いろはと一緒ってなるとこの選択ってどうなんだろう?
「悩むところですねぇ……ここはデートらしく、恋愛モノを見たい気もしますし」
「そうだな………となるとこの二つが候補になるな」
「はーくん、私こっちが観たいです!」
「そうするか」
「それじゃあ、この時間に待ち合わせという事で!」
「おう。またな」
そしていくつかの時間が経過して待ち合わせの時間になった。
俺は映画館のある繁華街まで出てきたのだが……流石連休、人が多すぎて帰りたい……
デートという事でなければ寄る事すら無い場所だもの。
にしても俺がここに来てから視線がちらちらとこっちに向かってくる。
そんなに場違いなのか?ワックスで髪整えて伊達メガネかけているけど
「はーくん、お待たせしました!」
「大丈夫だ。待ってないからな」
「そこは今来たところだっていう場面ですよ?」
「俺にそういうのを求め過ぎるなよ?」
「自分から進んで手を握ってくれたので今回は見逃してあげます」
「へいへい」
「なんなら恋人繋ぎでも良いんですよ?」
「んじゃ、そうするか」
「ふぇ?」
「ふぇ?じゃねえよ。可愛いだろ」
「あ、ありがとうございます」
「チケット買いに行くぞ」
「あ、ちょっと引っ張らないでくださいよ!」
「すまん」
「むぅ~」
「むくれるな」
「嫌です」
「いろはは映画って、どのあたりの席で見る?」
「そうですね…………普段なら、ちょっと後ろより真ん中ってあたりです」
「まぁ、そのへんだよな」
「今回もそのあたりの席を狙って行きましょうか」
「待ていろは、今日はそんな普通の席じゃなくてもいいと思わないか?」
「え?」
いろはが操作していたのを中断して、プレミアムシートの方に指を走らせる。
お袋……お母さんからお金を貰ったためにお金に余裕はある。
せっかくのデートなんだから大盤振る舞いでいこう。
「よし、いい席が空いていたな」
「ちなみに、こんな話を知っていますか?」
「何だ?」
「プレミアムシートって、別名カップルシートって呼ばれてるんですよ?」
「知ってるぞ」
「え?」
「知ってて選んだ」
「ふふ、はーくんもやーっとそういう気になってくれたみたいで、私嬉しいです♡」
「ほれ、上映時間までもう少しなんだからジュースなり買いに行くぞ」
「男女が二人で来てプレミアムシート買うなんてそういう関係で間違いないです!
きっと、映画館のスタッフさんは『あー初々しいカップルだなー』って思うんでしょうね!
これはもうデレていると考えてもいいのでは?ようやく私の想いが先輩に届いたんですね!」
「本当によく息続くよな」
「遺伝ですからね」
「遺伝ってすげえ」
「さあさあ!映画まで少しの時間はあります!早く買いに行きましょう!」
「お前を待っていたんだが…………」
「まずはどこに行きましょうかねー!」
* * *
「ところではーくん、ちょっと周りを見てください」
「なんだ?」
怪しい人物でもいるのか?
もし事件でも起ころうものなら巻き込まれてしまう、早急にここを離れよう。
万が一でもいろはに怪我をさしてしまったら俺は自分を殺さなくちゃな。
そう思い周りを見回すが、特に危なげな通行人はいないように見える。
「カップルがたくさんですね」
「ああ、そうだな」
「ほとんどの人が手を繋いで歩いてますね」
「俺らもそうだがな」
「どうせなら腕組みませんか?」
「まだ駄目です」
「私とはーくんはもう彼氏彼女みたいなもんですよー!」
「まだ違うと思います」
「はーくんのケチ」
「恋人繋ぎのどこが不満なんだか…………」
「周りの人が自分よりも高いものを食べていると羨ましくなりません?」
「なるが」
「そういうことです」
「だが断る。腕組むのは付き合ってからな」
「ええ~」
「もうしばらく待ってろよ」
「はーくんを信じて待っていることにします」
映画を見終わって近くのお店でスムージーを買って少し話した後俺はトイレに逃げ込んだ。
映画の前に言ったことがどうしても何度も頭の中をリピートしている。
「もうしばらく待ってろよ」って
「俺のキャラじゃなかっただろ。どう考えても……ッ!」
思わず声に出てしまうがトイレの中には誰もいない分、変人だと思う者はいない。
落ち着かない………もういろはと会いたくない。
しかし、泣き言など言ってられない。
せっかく距離を縮めるために自分からいろはを誘ったのだから
幼馴染として長い年月一緒にいるために告白には妥協したくない。
普通に告白しようと思えばいつでもいける。
だが、一生の思い出に残るものにしたいと考える俺は我儘だろうか?
「…………はぁ。コーヒーでも買うか…………」
悶え悶えでいちごのスムージーを買っていることすら忘れている。
俺は尻ポケットから財布を出そうと──
「あれ、財布は…………あ、置いてきたのか。はぁ……」
買いたい時に限って買えない状況にため息を漏らし肩を落とす。
普段は決して飲むことのないブラックを買って気持ちを落ち着けたかった。
このまま戻ってもまた恥ずかしい思いをすることになってしまうだろう。
「戻らないとな…………」
珍しく俺から誘っていたという事もあって今日のいろはは普段よりも可愛い。
普段も可愛いが楽しみにしているというのが雰囲気で伝わってしまうほどだ。
お義母さんのお陰様でいろはがどんな服を持っているかは把握していたので耐えられた。
けれども気を抜きでもしたら直ぐに「可愛い」と口にしてしまうだろう。
どのみち、長々とトイレをしていれば印象良くは映らない。
戻り先にいろは以外の人物がいるなど、予想することもなくいろはの元に向かった。
* * *
「ち、違う…………から」
「ええー?これのどこが違うのかなぁ!男性用の荷物あるしぃ!」
「いろはやるじゃん!」
「だから…………」
2人が座っていた椅子付近に、三人の女の子がいた。
そのうちの一人はもちろんいろは…………そして見知らぬ女の子が二人。
何やらとても盛り上がった様子を見せている。
(いろはの友達なのか?)
なんて疑問を抱きつつ、ゆっくりといろはの元に戻っていく。
一応、ワックスで髪型を整え伊達メガネをかけている同級生だろうと身バレするとは思わない。
これで身バレするような相手は身内以外で存在していない。
「あっ…………」
いろはが小さく声を出し、八幡と視線が絡み合った瞬間に石のように表情が固まる。
その眼は『なんで今のタイミングで来るの……』なんて言いたげだ。
「お!あの人かぁ!!」
「ウッソ…………ふっつうにタイプなんだけど……」
そんな会話がされていることは声量的に聞こえない。
いろはの願いは届かずに八幡は歩くペースを抑えることなく席前に着く。
「ど、どうも初めまして比企谷です。えっと……いろはのお友達ですかね……?」
「ですです、ウチは香織って言います!いろはちゃんのクラスメイトです!」
「あたしは一花でーす!同じくクラスメイト!
あの、早速聞いちゃうんですけど比企谷君はいろはちゃんとデート中なんですか!?」
「ッ!?」
タタタッと八幡の前まで接近する一花はニッコニコの笑顔で見つめてきた。
面倒臭いことになっていると察した八幡はバイト先で培った経験を基に平然を装う。
何せ、絶対にボロを出してはいけない事態がやってきたのだから。
「お願いなんだけどみんなには黙っておいてほしいな?」
先ほどからずっと黙って下を向いているいろはの気持ちを汲み取って八幡はお願いをする。
本音を言えば、八幡だってデートをしているところは誰にもバレたくない。
いろは程の美少女とデートしているなんてバレたらいろいろと面倒くさい。
火のない所に煙は立たぬ…………余計な火種は作るべきではない。
もっともいろはのためなら火に油を注ぐ事すら苦に思わないのが八幡なのだが
「ははぁ、なるほどねー。『彼氏がいらない』とか言ってた理由は、
比企谷さんっていう男がいるからだったんだねぇ。いろはちゃーん?」
「……う」
ニヤニヤといろはをいじり倒している香織。
見ているだけでも物凄く楽しんでいる様子が伺える。
ここまでの会話を見てもいろはが心を許している数少ない友達という事は間違いないだろう。
「あの、比企谷君!いろはちゃんとはどこで知り合ったんですか!?」
「ぐ、ぐいぐい来るな…………嫌いなわけじゃないけど」
残りの一人、一花。八幡にとってラスボスである。
この女の子をどうにかしなければ、今日のデートの時間が無駄に消費されてしまう。
絶対に上手く切り抜けなければならない。
「正直、タイプです!」
「え、え……!?お、俺が……?」
「はい!」
「一花。彼女持ちの男になに手を出そうとしてるのよ…………
しかもいろはちゃんの彼氏だし。一花にも彼氏いるでしょ…………」
「この際にWダブル二股なんていかがでしょうか!?」
「バカなこと言ってないで、比企谷さんも何か言ってあげてください」
「ごめんね、俺はいろはと付き合ってるからそんなことはできないな」
当たり障さわりのない言い文句。
これくらいしか返す言葉が思い浮かばなかったわけでもある。
さっきから余計に俯いているいろはは…………耳が真っ赤だが大丈夫だろうか?
「んー、つまり比企谷君はいろはちゃんのこと大好きってこと?」
「それはまあ、付き合ってるからね。
付き合う前から長い付き合いになるし、いろはのことは……だ、大好きだ」
「はーくん!」
『それ以上は言わなくていいです!』
なんていろはの心の声が飛ぶが八幡には届いていてはいなかった。
ボッチとして過ごしてきた八幡にはこういった場面でどう対応するべきなのか。
そういった知識は備わっていないのだから…………
「良かったねぇいろはちゃん。一花のおかげで気持ち聞けたじゃん?」
「っ……」
「もう一回!」
「だ、だから……大好きだって」
「はぁぁ……良い」
「良い?」
「比企谷さん。一花のことは無視していいよ。
それ、タイプの男に『好き』って言われた体験してるだけだから」
「め、滅茶苦茶だな…………」
「香織、一花…………買い物に来たならもう行って。そのまま帰って」
唐突にいろはが声明を出す…………ちょっと怒り気味で。
傍から見たらデートの邪魔されているためにしか見えないだろうが実際は違う。
普段は大好きなんて言ってくれない八幡に耐性が無いため羞恥心が限界なだけである。
「そ、そうだねぇ。デートのお邪魔はできないし。
…………その代わりぃ、デートがどうだったかいろいろと教えてよね?」
「…………うん」
「仕方がないかぁ。いろはちゃん、比企谷君に飽きたらいつでも教えてね!」
「教えないし、飽きませんから…………」
「あはは……」
最後までブレなかった一花は香織と一緒に人混みに消えていった。
「はああ…………なかなかクセのある友達だったな…………」
「ごめんね、はーくん。二人が迷惑かけて」
「大丈夫だ。友達がいて安心したしな」
「そろそろ行きましょうか…………少し疲れました」
「そうだな…………俺も疲れたわ。早く帰りたい」
「すっごく不満ですが、今だけははーくんと同意見です」
「また今度デート行こうな」
「ほんとですか!?言いましたね?言質取りましたからね?
もう取り消しは許しませんし受け付けませんから!」
「お、おう。元気が戻ったようで何よりだ」
手を繋ぎながら二人は家路を辿る。
そんな二人をさっきの二人はじっと見つめていた。
「一花、流石にデートの邪魔は不味かったんじゃないのかな?」
「気を付けたかったよ?気を付けたかったんだけど…………
いろはちゃんの顔を見たらスイッチ入っちゃってさ。香織も見たでしょ?あの顔」
「超幸せそうだったね。ウチらが来た瞬間の表情の変わりようは面白かった」
「ニッコニコ笑顔からから急に真顔になったやつでしょ?
それであたし達に『なに』ってメッチャ不満そうに」
「そうそうそれそれ」
「教室じゃあ絶対に見れない姿だよね。正確に言うなら比企谷君がいる時にしか」
「正直、いろはちゃんがあんな顔するなんて思わなかったなぁ。
もしあれくらい表情豊かになればもっとモテるはずなのにねぇ。一花もそう思うでしょ?」
「でもいろはちゃんは可愛いが男子には塩対応ってところが男からウケてない?」
「確かにそうだけどウチは断然ニコニコ派。さっきのアレを見て変わったよ」
「ぶっちゃけ同意見」
「一花も同意見かい!」
「しかも……普通にイケてたし、びっくりしたなぁ」
「ねぇ、比企谷君男友達紹介してくれないかな?」
「多分だけどあれ、かなりのやり手だよ、やり手。なかなかお目にかかれないくらいの」
「やり手っていうと?」
「悪く言えば女をはべらせた経験があって、その経験を全部いろはちゃんに当ててる感じ」
「なにそれ」
「なんというか…………無意識のうちに女の子が喜びそうなことを理解してそう。
例えるならば、ライトノベルの主人公みたいな」
「ああ、でもなんかイメージできる」
「良く言えばいろはちゃんしか見てなくて、いろはちゃんのためにしか動いてないって感じ」
「あー、そっちはもっと納得」
「まー、結局のところ比企谷さんは、いろはちゃんにベタ惚れってことでしょ?
いい彼氏だよホント…………はぁぁ、ウチに内緒で彼氏作ってたなんて……恨めしい」
「これを言うのはなんだけどさ、あたしのカレシよりイケてるよね。
比企谷君。めっちゃオシャレだったし」
「それ、彼氏にバレたら泣かれるぞー」
「じ、じょーだんだよ、冗談!」
「今のトーンは本気だった」
「バ、バレたか!でもイケてるだけが全てじゃないしね!」
「てかさ、少し違和感なかった?『大好き』ってセリフを言った時の比企谷君」
「ちょ、疑いすぎでしょ。彼女の前でならぎこちなくなるって」
「でもやり手の男だよ?比企谷君。そんなウブ的反応は卒業してるでしょ」
「だぁいすきな彼女だったらウブさは見せるって。
全部が全部慣れてたらもうロボットじゃん。付き合ってても楽しくないと思うし」
「それを言われたらそうだけどぉ……」
「嫉妬は醜いですぜぇ。香織ちゃん」
「一花には言われたくないって!いやマジで!」
「ははっ、違いないなぁー!」
「そう言えばさ、いろはちゃんに幼馴染がいるって話無かったっけ?」
「あれ?そう言えばあったね」
「てことはさ比企谷君ってその幼馴染なんじゃない?」
「だったら違和感がないね。一花が言ってた後者の意見が的中してそう」
「これは今度の学校が楽しみですな~」
* * *
「はぁ~疲れた~」
家に帰ってきて直ぐにソファに倒れこむ。
なんとか表情を変えることなく相手出来ていただろうか?
大好きなんて日頃から言う事じゃないから顔が緩むのを抑えるので必死だった。
次のデートの約束も出来たし次は何処に行こうかな?
「はーくん、本当に二人がすいません」
「気にしてないから大丈夫だって」
「ならいいんですけど………」
「明日の学校で問い詰められるだろうから頑張れよ?」
「うっ、明日学校休もうかな………」
「いや、行かないと駄目だろ」
「はーくんが真面なこと言ってる!?」
「そんなに驚くことか?」
「そうなんじゃないですか~」
そう言いながらソファで寝転んでいる俺の上に乗ってきた。
今日は少し暑かったために汗をかいているがいい匂いしかしないのはどうなっているんだか
「はぁ~はーくんの匂いだぁ~」
「言っていることは変態だぞ?」
「好きな人の匂いを嗅ぎたくなるという事は何ら可笑しくないです。
大人しく私の抱き枕になって下さい」
「へいへい」
その後しばらく俺はいろはの抱き枕となっていた。
俺も疲れていたために引き剝がすなんて事はしなかった。
慎ましくも柔らかいものが当たっているから動こうとしなかった訳じゃないからね?
「はーくん、さっき『大好き』って言ってくれましたよね?」
「そうだな」
「もう一度言ってくれませんか?」
「いいぞ。耳寄せろ」
耳を寄せてきたいろはの耳に囁くようにして声を掛ける。
「愛してる」
「えへへ」
余程嬉しかったのかいろはは顔をスリスリと擦り付けてくる。
いろいろと当たっていて理性がヤバいけどかわゆい。
その後しばらくはいろはの頭を撫でて過ごした。
そして、時計の針が6時を回りそろそろ動かねばなどと考えているとドアが開く。
「ただいま~今日のデートどうだった…………」
ドアを開けた張本人である小町の動きが止まる。
今俺たちはソファの上で身体を密着させている状態だ。
勘違いされてしまっても仕方がないと思う。
「…………ごゆっくりどうぞ」
「誤解されたかな?」
「多分な。実害はないと思うから大丈夫だ…………」
『お母さん大変だよ!!お兄ちゃんといろはちゃんがベットの上で!!』
『何ですって!!?』
「「待って、ただのマッサージだから!!」
このままいってしまうと告白する前にすることしてしまいそうで怖い。
…………いろはに告白するタイミングについて誰か教えて欲しい。