俺と岡部は今、飛行機で移動中である。
旅行?いやそんなんじゃないれっきとした仕事でアメリカに向かっている。
なぜ仕事でアメリカに向かってるかというと。
それはアメリカで公開予定の映画にちょい役として撮影があるからだ。
仕事を受ける前に岡部はアフロディーテに質問していた。
「ママ私たちでいいの?」
「ええ、あなた達、最終審査までいったのにあんな事があって中止になったじゃない。それの埋め合わせよ。」
岡部は既にラウルによりデビューしてるが俺は初めての映画出演となる。
今回の話はアフロディーテが俺への謝罪意味を込めてのプレゼントらしい。
「あの時あなた達を審査したスタッフもこの映画に関わってるし、配役についても問題ないと言われたから安心なさい」
「それに出番は5分もないと聞いてるからあまり緊張せずにね!」
「ひゃいぃ!」
それでも緊張はするわい!
アメリカに着陸し岡部にお手洗いの中を確認してもらい誰もいない事を確認し、俺はみのりに、岡部はエレーナになる。
ホテルに行く前にスタッフさんに挨拶するためだ。
無事にみのりになった俺は一足早くお手洗いからでて岡部を待つ。
「
ここはアメリカだし、もうエレーナでいないとダメなんだもんな。
俺は小声で
「(お前もこっちじゃ俺と同じ立場だな!)」
「(全くよもう。)」
岡部は事務所の都合で海外ではエレーナとして活動している。
「さぁスタジオに行って監督さんとスタッフさんに挨拶するわよ」
今回俺たちが出演する映画は"マインドリーム"という映画名で某有名女優が主演のホラーサスペンスである。
で、
俺たちの役は序盤に何者かに襲われる【姉妹役】だ。
俺と岡部ってそこまで似てない気がするんだが大丈夫なんだろうか?
岡部いわく「私がメイクバッチリやってあげるから安心なさい!」だとさ。
「初めまして浦川みのりです。よろしくお願いします。」
「エレーナ・ノイジーです。よろしくお願いします。」
「お、来たね。こちらこそよろしくね。撮影は明日からだけど今日中にフィッティングだけは済ませておいてね」
「あっはい!」
この役を受けた時に岡部とどちらが姉なのか妹なのかで話し合いがあった。
「俺が姉でいいよな岡部」
「なにいってんのよ!私が姉役よ!」
「いいや!俺だ!」
「いいえ!私よ!」
岡部は台本を俺に見せる。
「ほら見なさいよ!姉のほうがセリフ多いのよ?あなた1年以上英語話してないでしょ!?ちゃんと発音できるの?」
う!痛い所ついてきやがった。
「そっそれは。。少し練習すれば大丈夫だって!」
「それに俺のほうが背が高いんだから俺が演じるべきだって!」
「確かに背で見ればあなたが適任かもしれないけど」
「だろ?俺がやるべきなんだって!」
「あなた分かってないわね。」
「問題は英語を練習する時間がないのよ?」
「すぐ撮影始まるんだから!」
・・・背の高さで押し切れるかと思ったが、言い返せる手駒がもう残ってない。
「わかったわかった。岡部が姉役でいいよ。。」
「わかればよろしい!」
ちくしょー!今度こうならないように英語勉強しておこう。俺はそう思った。
「衣装っつってもパジャマだなこりゃ。」
「パジャマにしてはずいぶんかわいいわね」
「いうなって。恥ずかしくなるだろ!」
「あら?お似合いですよ?みのりちゃん?」
ふと目の前にあった鏡を見てしまった。
はず!
フィッティングも終わり、かるーくスタジオを見学して俺たちはホテルに向かった。
いやね。いつも思うんだよ俺。
なんで同室なんだよ!
絶対わざとだろ。
ルームサービスで食事を取りながら撮影の事や雑談を交えて岡部と話す。
「なぁ岡部」
「ん?なに?」
「いやさーちょっと聞きたかったことがあるんだけど」
「何よ今更」
「・・お前はエレーナなのか?岡部なのか?どっちが本物なんだ?」
聞きたかった事を聞いてみる。
「本物?ああ、どっちの人物でありたいかってことね」
「もちろんエレーナよ」
「今も?」
俺はお前の本心を含め全て知りたい。
「・・・それを聞いてくるってことはわかっちゃてるのね。」
「本心は岡部愛よ」
「でもエレーナは私の目標だった人」
「私はそれになれて嬉しく思うわ」
「目標のためにお前はいろんな物を犠牲にしてまで頑張ったもんな」
「ふん!」
「でも、いつからか私の心はエレーナから離れて岡部愛に戻っていった」
「・・それもこれもあなたが原因よ」
「え!俺?」
「私はあなたに会いたかった。会いたくて仕方がなかった。でもエレーナとして仕事をしている以上日本に戻ることは困難だったの」
「でも、運良く岡部愛として日本に戻れた。そしてキミにも再会できた」
岡部。
「私はそろそろ"実君"の言葉を聞きたい。」
しばしの沈黙の上、
俺は言葉を選びながら答えた。
「ごめん。今は答えられないし、ひろこへの思いも変わってない。」
「だけど!俺はお前の事も!」
「ははは、最低だよな俺。」
「・・・まったく。。みのりらしいわねほんと。全員救おうと思ってる」
「でも、私の事も本気で思ってくれてありがとう。」
「明日から忙しくなるから私先にお風呂いただくわね!」
「あっああ。」
岡部は満足そうな顔でお風呂に向かってしまった。
はぁぁ。答えを先延ばしてる俺への罰だよな。
俺は答えを出すのが怖いんだと思う。