34.Movie Preview
乾いた空気。
冷たい冷房。
映画館の中は人でごった返しており、ざわざわと人々が会話するその声は期待に満ち溢れている。
後ろの席を陣取り、帽子を深く被って近寄るなとオーラを発する男性とその隣に座る大柄な男性は周りが賑わう中、雑談する。
「いやね、君の紹介だからさ期待はしてるんだが…」
大柄な男性は心配そうに話す。
ニヤリと笑い帽子の男性はこう返す。
「僕のお気に入りだからね。きっと満足いくと思うよ!」
「それに見てもらったほうが手っ取り早いしね!」
帽子の男性は自信満々に話す。
それに安堵したのか大柄な男性は、
「ははは。では楽しみにしてるよ」
これはみのりや周りの運命を大きく変える出来事の始まりのお話。
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俺たちはアメリカに来ている。
でも前とは違うぞ!今回はひろこもアリスも同席している!心強い!
前に撮影した映画の完成試写会にお呼ばれされているのである。
なんたる編集の速さ。。映画撮ったのって半年も立ってないぞ?
と思ったけど元々ほぼ完成済みの映画での追加シーンを演じただけだしそんなもんなのかな?
ここで気を付けなければいけないことがある。
あのアフロディーテの事だからおそらく完成試写会だけでアメリカに行くわけじゃないと俺は睨んでいる。
前は歌わされたりめちゃ大変だったんだよ!
何が起きても良いように俺は空港内を背後に気を付けながら歩く。
「ねぇみのりなんか落ち着きないよ?」
「ひろこも気をつけろ!この旅絶対何か裏があるはず!」
ひろこは苦笑いしているが、岡部とアリスはジト目でこちらを見てくる。
ついには岡部とアリスにお尻を蹴られ俺は緊張状態を解除する。
「いやだって絶対裏あるぞ!」
「そうかもないけど今は目の前の事に専念しなさいよ!」
「わっ分かったって!だから蹴らないで!?」
俺たちはタクシーに乗り込み試写会が行われる会場に直行したいのだが、映画時に着た衣装で試写会に参加が義務との事だったのでまずは会場と隣接しているホテルに向かう。
ホテルのロビーでスタッフさんと話している監督がいた。
「あ、監督さんだ。エレーナと俺ちょっと挨拶してくるわ」
「うん!ここで待ってるね!」
俺とエレーナは駆け足で監督の元に向かう。
「監督ー!」
「おーよく来たね。」
「なんか友達も呼んでもらってありがとうございます。」
「いやいやこちらこそ、僕も一度会いたかったんだよ。彼女たちAKBのメンバーだろ?」
「ひろことアリスの事知ってるんですね。ちょっと呼んできますよ」
俺は手招きでひろこたちを呼び、緊張しながら監督に挨拶している姿を見て俺は癒された。
挨拶もそこそこにスタッフの案内でホテルの一室がドレッシングルームになっておりそこに案内される。
「早速だけどみのりこっちに座りなさい」
俺は言われるがまま椅子に座ると岡部のメイクが始まる。
俺も早く覚えないとだよな。さっしー先輩にコスメセットとか色々貰ったし。
隣で興味津々で見ていた二人も驚きを隠せないようだった。
「ど、どうよ。エレーナぽいだろ?」
「ほんと先輩ですか?」
「二人並ぶとほんと姉妹だね!」
俺も鏡で確認する。うんあの時と全く同じだ。
「これでおしまい!あとは衣装を着てスタッフさんを呼ぶだけね。」
えーっと衣装はっと。あれ?
「お!ひろこたちの分もあるぞ」
To Hiroko Yoshinaga and Lia Alice.
Here's a little something for you.
と書かれたメッセージ付きでドレスが用意されていた。
「え!私も!?」
「監督が用意してくれたのかしら。」
「せっかくだから着よっか莉空っ!」
俺のほうをちらちらとアリスは見てくる。
はいはい分かってるって。
「じゃぁ俺はこっちの部屋で着替えてくるから」
「絶対見ないでくださいよ!」
「へいへい。」
ちなみにだがひろこも岡部は俺がいても堂々と着替える。
研究生からの付き合いだし早着替えとか色々配慮する時間がなかったからだろうな。
AKB時代の名残か。
衣装つってもパジャマだし、なんなら早着替え並みに着替え終わってしまった。
おかしいところがないかだけ鏡でチェックして5分ぐらい適当に時間をつぶす。
そろそろいいかな。
「もういいか?」
と俺は隣にいる彼女たちに声を掛ける。
「ちょっと待ってください!」「みのりちょっとまって!!」
どうやら苦戦しているみたいだ。既に着替え終わってる岡部も手伝っているようだ。そのような声が聞こえる。
それから10分後。
「みのりーもう大丈夫だよ」
結局スタッフさんを呼んで手伝ってもらったらしい。
「おー!女優みたいだわ!」
「えへへへ!みのりもかわいいよっ!」
ひろことアリスは赤いドレス姿、一方うちらはパジャマってなんてアンバランス。。
パジャマも色違いなだけだし俺と岡部が並ぶと本当に姉妹のようだった。
「なぁ本当に俺たちこの格好で会場向かうの?」
いうなればパジャマで人前に出て挨拶するハメになるわけだが。
「しょうがないでしょ!出演者はみんな衣装で出席なんだから」
コンコン
「失礼します。そろそろお時間ですので会場までご案内いたします。」
ええい!もう恥ずかしいとか言ってらんない!いこう!もういこう!
俺は覚悟を決めて部屋を出る。
「吉永さんと有栖さんはこのフロア内にある別のエレベーターでフロントに戻ってもらってもよろしいでしょうか?別スタッフより案内させますので」
既にフロントにはファンが押しかけている様なので別エレベーターで降りたほうがいいとの事だった。
「エレーナとみのりは中央エレベーターで下に降りてファンに応えてあげてください」
「わかりました。それじゃひろこにアリスまた後で!」
「先輩頑張ってくださいね!」
「みのりファイト!」
エレベーターで降りる最中、色々と今日の流れを聞いた
まずは試写会前に演者全員でメディア向けに写真撮影。
そのあと一緒に映画を見て最後に挨拶する。
まぁ一般的な試写会の流れと同じかな?
「あっあと~~」
スタッフさんが最後に放った言葉に俺たちは反応をする前にエレベーターがついてしまったためリアクションが取れなかった。
エレベーターを降りフロントに着くとそこには沢山のファンが待っていた。
「エレーナー!みのりー!」
おお!俺の声援もある!なんかうれしい。
「(エレーナにみのり、手を繋いでもらってもいいですか?)」
「え!」
「(姉妹役ですからね。)」
俺と岡部はわけもわからずとりあえず手をつなぎファンに手を振りつつ会場に移動する。
もうこの頃には恥ずかしい気持ちはなくなっていた。慣れってこえー。
無事に会場までつき、映画の看板前で演者全員と記念撮影をする。
ファンの群れの一番後ろにはひろことアリスが俺に手を振りながら見ていた。
慣れない場に知ってる人がいるだけで心強いわまじで。
とはいえ俺たちの出番は5分ほどだったし、ほとんどの演者に会うのも今日が初めてで居づらい環境ではあった。
それでもフランクな演者ばかりで記念撮影が終わり試写会場である映画館に移動する際中話しかけてくれたりした。
「エレーナとみのりってほんと姉妹みたいだね!」
「いや、これはメイクでそれっぽくしてるだけで。。」
「ていうか私の事知ってるんですね。」
俺はエレーナのおまけ程度って思ってるんだけど。
「The Fashionの雑誌とかでも見た事あるよ!なんたってあのアフロディーテの妹分なんでしょ!」
1年間アフロディーテと共にしたおかげかな?俺は意識してなかったけど今でも海外では有名人ぽい。
だから俺への声援もあったのかと再認識した。
「おーでけぇ」
試写会場となっている映画館はかなり大きい箱で優に400人は入れるんじゃないか?ぐらい大きかった
実はこの試写会は座席自由である。とはいえ演者とその関係者、抽選で選ばれた一般層の人たちとの境はある。
しかもおしゃべり自由。日本とまったく違うスタイルなんだな。
なので俺はひろこ達と合流して4人で映画を見ることにした。
映画はもちろん全編英語であるのだが事前に確認した所ひろこもアリスも問題ないってことだった。
ひろこは大丈夫だとしてアリスは強がってんじゃないか?と思ったけど
「私もアイドルの端くれですよ?将来の為に英語は勉強しました!」
マジかよ。俺だけか英語全くできなかったやつって。
会場が暗転し映画が始まる。
早速であるが俺と岡部の姉妹が登場する。
「ねぇ起きて!」
「ねぇ起きてってば!」
「…うん?」
「どうしたのサリー」
正直逃げ出したい。
「ぷぷぷ!先輩可愛いですよ!」
やめてくれ///
それぞれの思いが交錯する中俺たちの出番は終えOPに移る。
ああ・・、あの辛かったレコーディングが脳内に再生される。
「この声ってエレーナとみのり!?」
よくわかったな。俺は頷く。
「素敵。」
ひろこもアリスも聞き入っていた。まぁ歌うとも報告してないしな。
OPも終わり本編に入る中
「演技も素敵だし曲も素敵!CDとか出ないのかなぁ?」
「どうなんだろう。あの時必死すぎて何も聞いてないんだよな」
「おか、ゴホン。エレーナ何か知ってる?」
前に座っている岡部に聞いてみた。
「詳しくは知らないわ。ただ、私とあなたのWヴォーカルだし、この話題性を利用しない手はないと思うわ。」
「との事だ。」
「楽しみにしてるね!」
CDは間違いなく出るなこりゃ。
映画もクライマックスとなりエンドロールが流れる中、裏ではエレーナと俺のEDが流れる。
「え!EDもなんですか!先輩!先輩!」
「気づいたらそうなってたんだよ。俺だって当日まで何も知らなかったんだからな!」
エンドロールも終わり映画が終了したと同時に拍手が送られスタンディングオベーションとなった。
俺含めた演者たちは笑顔で手を振りそれに応えながらステージに上がる。
簡単にだがみんな軽く挨拶し最後に監督から一言あるらしい。
ついに来たか。。
「えーどうでしたでしょうか?正直映像を撮るよりこのメンバーを集める方が大変だったですね!」
「最後になりますがステキなOPとEDを歌ってくれたエレーナとみのりによるライブを聞いて頂きましょう!」
「うぉぉぉ!」
映画を見に来てくれたお客さんはビックリするのはいいのだが演者たちもビックリしてるのは何故だ。。何故知らせぬ。
ちなみに歌うって聞いたのはあのエレベーターの中でだぞ。
エレベーターの中で俺たちも絶句したよもちろん。
「みのりにエレーナにはサプライズとしてOPを歌っていただきますのでそのつもりでお願いいたします。」
無茶ぶりにもほどがある。。
イントロが流れる中スタッフさんよりマイクを頂き、スタッフさんに促される様にステージ中央に俺とエレーナは移動する。
この曲は振りはない。
ていうか歌うとも思っていないから準備もしてないわけだが。
せめてもと姉妹らしく手を繋ぎながらと会場に向かう途中に打ち合わせした。
映画の最中俺は歌詞を思い出す事に専念した為、全く映画の内容は入っていない。岡部も同じ思いなのかなぁ。
♪ ♪
痛い!
少しでも音程が外れると岡部がかなり強い握力で握ってくる。
ごめんて!
でも楽しんでもらったようで何よりだわ!
ひろこはAKBのメンバーにまだなっていなかったあの頃、公演に通っていた時の顔をしながら俺たちを応援してる。
アリスもはっちゃけていた。
♪ ♪
曲が終わるとまたもやスタンディングオベーションて迎えられた。
「ありがとうエレーナにみのり!素晴らしい映画の完成会になったよ!」
「是非ともご友人やご家族にも勧めてみてください!」
大歓声の拍手で無事試写会は終わり幕が閉じられる。
「ふー。なんとか乗り切った。」
すると
パン!
と肩を叩かれる
「本当素晴らしかったわよ!」
「歴史に残る完成会だったよ!」
他の演者からもかなり好評だったようだ。
「あっありがとうございます!」
終わったぁぁ。
散り散りに解散していく中、幕をチラッと開けるとひろことアリスが待っていてくれた。
ひろこは周りに人気があまりいないことを確認して
「おつかれ!みのり!それにエレーナさん!」
「お疲れ様です先輩!」
「・・・で、いつまで手を握ってるんですかー?」
その言葉でハッと手を離す。
少し岡部は未練たらしく手を見つめていた。
「先輩歌うなら教えてくださいよ!」
「まさかOPを歌わされるなんて思ってなくてさ。」
「さっきエレベーターなら中で知ったんだよ俺たち。。」
即興にしてはかなり出来は良かった気がするぞ!
「めちゃめちゃ良かったですよ先輩!」
「うんうん!」
お前たちぃぃぃ!あのつらい時が報われた気がするよ!
急にどっと疲れが。。
「ホテルに戻ってごはんでも食べようぜ。なんか疲れたわ。」
「さんせいー!ドレスきつくて」
「私も早く着替えたいわ。」
「じゃぁもどろうぜ」
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「なるほどあなたが目をつけるだけはある。」
「では彼女たちで決定かな?」
「ああ、すぐにエージェントに連絡してみるよ」