「Hei! Elena have a good night!」
仕事仲間である男性と分かれ私は車に乗り込む。
いつもならホテルに向かうところだが今日は有名なレストランでディナーの予定である。
もちろん一人で食事をするわけではないし、ましてや誠噂に囁かれているボーイフレンドでもない。
まぁその噂も嘘であるのだが。
車の中でも仕事をしながらの移動となる程、最近は本当に忙しいのだが今日は特別だ。それ程までに今日は大事な日である。
ふんふん♪と上機嫌で鼻歌を歌っているのは最近世界的に話題性No.1である私エレーナこと、岡部愛だ。
グラミー賞を取った辺りから本当に忙しくコスメブランドの立ち上げやら楽しい毎日を過ごしている。
レストランに到着し案内された豪華な個室には個性的な服を着ている女性が既に座っていた。
「お待たせ」
私は日本語でその女性に声を掛ける。
「私も今さっき来たところだわ愛」
スラッとして奇抜な服装を着ているこの女性の名前はアフロディーテ。
本名は岡部蘭、つまり私の母親だ。
今では普通に接し、会話もしているが、昔なら考えられなかっただろう。
他に色々と理由はあると思うけど、【浦川みのりの存在】がきっかけなのだと思う。
オーディションで勝ち取った主演で公開予定の映画は急遽キャンセルとなり驚いたが、みのりの事だしね。
と自分で納得したけど。
オーディションで主演を争った私としては何故キャンセルしたのか本人から理由を聞きたい所だ。
でもそのみのりは引退後全く消息がつかめない程レアな存在となる。
私が知ってる連絡先も全て繋がらないし、…まったく、あの子生きてるんでしょうね!
そんな事を想いながら椅子に座る。
「ママ久しぶりね」
あれほどまでにメディアに出ていたママだけど、この1年程はすごくおとなしい印象を受ける。
「そうね、今面白い仕事を計画中で大忙しよ」
へぇだからメディアに出てなかったんだ、どんな仕事をやろうとしてるんだろ?
何か手伝えたらうれしいなぁと考えていると
「早速だけど、仕事をお願いしたいの」
「いいわよ。どんな仕事なの?」
私は間髪入れず応える。
きた!わざわざ呼ぶぐらいだ、さっき話していた仕事の事で違いない。
「愛、まだ確定ではないけど」
うん?
いつもなら前置きなんてないんだけど、よっぽど重要な仕事なのかしら?
と少しだけ身構えるがママが次に発した言葉に私は動揺する。
「日本で仕事してみないかしら?」
…日本
直ぐに切り替え、私は手に顎を乗せ考える。
日本かー。久しぶりに皆と会いたいな。
でも岡部愛としての日本での印象は最悪なんだよね。
まぁそれに関しては別に後悔もないけど。
でも近々日本に帰りたいと思っていたところだ。
それに…
日本に戻ってしたい事の一つ!
ママなら知ってるでしょ?みのりの居場所。
「ふぅ」
と一呼吸置き何かを決めたかの様に。
「条件があるの、みのりに会わせて」
さてどんな反応が返ってくるかな?
意外な条件付きな回答だし持ち帰りなっちゃうかなと考えていたがママは予想していたかのように即答する。
「わかったわ。ただし彼女次第よ?」
意外だ。やっぱり知ってた!でもこれで!
「OK。あまり期待はしないわ。で、どんな仕事なの?」
正直どんな仕事でも受けるつもりである。
皆にも会いたいし、みのりにも会いたいけど。
一番会いたいのは…
「それは日本に着いてからのお楽しみ!」
秘密らしい。
「ふっ。上等じゃない!」
なんだってやってやるわよ!と心の中で誓うのであった。
次話で前日談は終わる予定です。