「君がペーシュの実の群生地帯まで案内してくれるんだって?」
ロングヘアーで目じりが垂れた、一見普通の、優しそうな男。
「は、はいっ。そうですラストさん! 俺、森で群生地帯を見つけて──」
「ホラ吹いたらわかってんだろうな?」
──それが、こちらを覗き込んでくるようにガンを飛ばして、一瞬にして裏の顔に変貌する。
アレンは、あまりいい噂の聞かない先輩冒険者の二人の元へ転がり込んでいた。
この二人は、冒険者として活動する傍らで裏社会と繋がっているだとかで、あまり関わるなと他の先輩冒険者から忠告を受けていた。
だが、腕は確かだ。
人外の域と言われ、数えられるほどしかいないSランク。一握りの天才が行き着くと言われているAランク。常人の限界であり、それでも一流の冒険者と言われるBランク。ビギナーを抜け、ある程度一人前と認められるCランク。素人から抜け出したビギナー、Dランク。お使い程度の仕事しかこなせないEランク。
彼らはBランクの、一流の冒険者だ。ちなみにアレンのランクはDである。
「ほ、ほんとです! しかも亜人のガキと精霊が住む湖があって──」
「黙れ。まァ、お前がペーシュの実を大量に持ってきたのは知ってる。金は入ってんだろ。噓だったら身ぐるみ剝がして奴隷にしてやるよ」
ロングヘアーの男の隣に座る、頬に大きな傷がある男──レイグが言った。
「俺らもそろそろ冒険者やらねえとなァ」
悪意を持った三人が動き出した。
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「キクァーーーーーー!」
甲高い声を上げて襲ってくる猿の魔物。
振り下ろされた爪撃を回避すると、すぐに背後から別の猿が追撃をする。
「ふっ……!」
まるで背中に目が付いているかのように回避したマナは、既に抜き身の漆黒の大太刀を自分を軸に振り回し、近くにいた猿の胴体を切断した。
「クォガアアアアアア!」
遠目で見ていた一際大きな猿の魔物が叫ぶと、こちらを見ていた猿たちが一斉に襲い掛かってくる。
マナは大太刀を手から離すと猿たちの攻撃を回避することに専念した。
猿たちの攻撃は何故か一向に命中しない。
マナは動きが雑になってきた猿の腕を掴み、何匹か固まっている所へ放り投げ、大太刀で纏めて両断する。
「“
種 族:ハイマンキー Lv12
名 前:なし
ランク:D
生命力:90/120
魔 力:30/30
物理攻力:70
物理防力:62
魔法攻力:30
魔法防力:43
速度能力:62
スキル
【連携 Lv3】【恵体 Lv3】
称号
スキルポイント:30
一際大きな猿の魔物は、ホブゴブリンであるマナと同じDランクの魔物。
厚い毛皮に覆われた体と異様に伸びた両腕にある鋭い爪。
「クォゴオオオオオ!」
飛び掛かってくるハイマンキー。あの爪が直撃したら致命傷は免れない。
マナは──
「『
マナとハイマンキーの間に半透明の板のようなものが出現する。
それはハイマンキーの攻撃を完全に防ぎきる──なんてことはなく、少しだけ攻撃の勢いを落としてから砕け散った。
「流石に、ねっ!」
だが、それだけでも充分だ。
突然謎の板が出現したことで意表を突かれたハイマンキーを、マナは一刀両断する。
それを見た猿の魔物──マンキーたちは、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
『よくやったわね、マナ! ほら、水を飲みなさい!』
「うん。ありがとう、ヴェッタ」
湖の水を飲みながら、マナは自分のステータスを確認した。
種 族:ホブゴブリン Lv15
名 前:マナ
ランク:D
生命力:190/200
魔 力:45/50
物理攻力:92
物理防力:83
魔法攻力:47
魔法防力:58
速度能力:70
スキル
【恵体 Lv5】【剛腕 Lv5】【健脚 Lv5】【魔体 Lv2】【剣術 Lv3】【魔力感知 Lv1】【魔力操作 Lv2】【身体強化 Lv1】【防御魔法 Lv1】
称号
【姫種】
スキルポイント:10
「強くなってるぅ~」
成長した自分のステータスににやにやが止まらないマナであった。
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新たに獲得したスキルは、【魔体】【剣術】【魔力感知】【魔力操作】【身体強化】【防御魔法】の六つ。
まず、【剣術】のスキルは大太刀の使っていたら自然と獲得していた。
数週間前にここにやってきた冒険者の少女、サシャが言っていたように技能がスキルとして認められたのだろう。
【魔力感知】、【魔力操作】のスキルはサシャに魔力を知覚させてもらった時に獲得し、【身体強化】、【防御魔法】のスキルはその時近くにいたジスに教わったものだ。
【身体強化】のスキルは、文字通り身体を強化するもの。
普通に殴るよりも筋肉に力を入れて殴る方が破壊力が出るのと同様に、魔力を使って身体に力を入れる。
その行為自体に魔力の消費は伴わないが、身体強化している分の魔力は他に使うことが出来ないし、酷使しすぎた筋肉が筋肉痛を起こすのと同様に、魔力が“固まって”使えなくなるそうだ。
強化に使う魔力の塩梅を誤ると体が動かせなくなったり、最悪体を壊してしまうから魔力の扱いに慣れてきたら使うように教わった。
【防御魔法】のスキルは先ほど使った『魔盾』のようなものを作ることが出来る守りに特化した魔法だ。
魔力に形を、硬度を持たせ、盾のようにして攻撃を防ぐという、【無属性魔法】に連なる魔法だと教わった。
火や水と言った【属性魔法】は、魔術式というものを覚えないと使えないらしく、マナは魔力を操作するだけで扱える【防御魔法】を教わり使っている。ただ、まだ実用的ではない。
そして最後のスキル、【魔体】。
その効果はこうだ。
『スキル 【魔体】
魔の素質を秘めた体。
レベルアップ時の魔力と魔法攻力と魔法防力の成長に上昇補正。』
【恵体】【剛腕】【健脚 】に続く、魔力系ステータスの成長率補正スキル。
これを『取得可能なスキル一覧』で発見した時は迷わず取得した。
成長補正系のスキルは早めに取っておいた方がいいというのがマナの考えだ。
成長補正スキルで伸びている物理系ステータスと大太刀、そして“覚”を生かした近距離戦闘。
この湖で確立されかけたその戦闘スタイルに、【身体強化】【防御魔法】という手札が追加された。
魔法系ステータスが伸びてきたら他の魔法も使ってみたいと思うが、今は【身体強化】と【防御魔法】に魔力を割いて近距離戦闘をする方が良いだろう。
「強くなってるぅ~~~~~~」
ハイマンキーの肉を嚙み千切りながらご満悦なマナであった。
湖の付近に群生している桃のような甘い果実も好きだが、やはり肉だとマナはご機嫌である。
『そろそろ解体用に我を使うのはやめてくれんか……』
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「ハハハ! おいおい、宝の山じゃねえか!」
頬に傷がある冒険者、レイグは目の前に広がるその光景に笑うしかなかった。
そこかしこに生える、ペーシュの実。甘く瑞々しい、貴族御用達の高級品。
「おいラスト! ここまで集めてきたもの全部これに入れ替えんぞォ!」
「もうやってるよ、レイグ」
ロングヘアーの冒険者、ラストは頬に傷のある相棒のレイグの声が掛かる前にここに来るまでに集めてきた魔物や植物の素材をその場に捨てていた。
こんなどこにでも転がってる素材よりもペーシュの実の方が何百倍も金になるからだ。
「よくやったァ、アレン」
ガシガシ、とここまでの道を案内した後輩冒険者アレンの頭を撫でると、照れるように笑ったアレンは口を開いた。
「それで、もう少し先に行ったところに精霊と亜人のガキが居る湖があるんすよ!」
その言葉にレイグとラストは顔を見合わせる。
「……信じてやる」
レイグは目を細めながらそう言った。
「精霊を殺すのは、この国じゃご法度だ。神の使いだとか言ってなァ。でもよォ、精霊の素材は金になる」
「僕たちにはそのツテがある。精霊みたいな存在を殺す“とっておき”もね」
「ある程度のリスクが無けりゃ、リターンは入ってこねェ。
精霊と、お前が言ってる亜人のガキ共々美味しくいただいてやるよ。
そしたらお前も、俺たちのバックに紹介してやる。よく働いたからなァ」
「えへへ、ほんとですか! ありがとうございます!」
「まずは精霊と亜人のガキからだ。
ラスト、お前は亜人のガキを殺れ」
「はいはい」
悪意は、すぐそこまで迫っていた。