海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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今回のアブノーマリティは特にレガシー版を参考としております。

あと皆さん、まじで暖かいお言葉ありがとう……。人って暖かいんだなって。





【十三】赤い靴で踊りましょう_1

ダニーさんを、信じるな?

アンジェラさんははっきりそう言った。オブラートに包むことも無く、はっきりと。

その意味がわからなくて、私は混乱してしまう。

信じるな?でも、彼は私の教育係で。ついさっきも一緒に仕事をした人で。これからもたくさん教えてもらう人なのに。

 

「ど、どうして。」

[ 彼はこの会社を恨んでいるんです。]

 

恨む?確かにダニーさんは、会社にいい印象を持っていなかったようだけど。

 

[ ……数年前、彼の友人がアブノーマリティによって殺されました。]

「え……。」

[そのショックが大きかったようで、彼は友人を殺したアブノーマリティと、そのアブノーマリティへの作業を命じたこの会社を恨んでいるんです。」

 

……お友達を、亡くしていたんだ。

 

[……とても悲しい事故でした。彼は今もそれを引きずってるんです。会社を潰すためなら何でもするでしょう。ユリさんを利用することも。 ]

「…………。」

 

アンジェラさんの言葉に、何も返せない。

というより、何とも言えない。アンジェラさんの言葉を信じるには、まだ私はダニーさんのことも会社のことも知らなさすぎる。

 

それに、もしそうだとしたら。

どうしてこの会社はダニーさんを私の教育係にしたの?

どうして今更そんなことを言うの?

 

「……ご忠告、ありがとうございます。アンジェラさん、次の作業指示いただけますか?」

[……。]

 

とりあえずこの件は保留。わからないことだらけで、判断ができない。

それよりも今は仕事、と切り替えて指示を促す。

インカム越しのアンジェラさんは一瞬不穏な間を作ったが気付かないふり。

私にどんな反応を期待していたのかは予想つくが、今ここで答えなんて出せないのだから仕方がないだろう。

そしてタブレットが音を立てる。指示を受け取った通知音。アンジェラさんが言っていた〝お願いしたい作業〟だろう。

 

{対象:赤い靴 作業内容:清掃 }

 

「赤い……靴?」

 

それってアブノーマリティなの?

この会社に限って何の変哲もない靴、というわけは無いだろうけど。

だとしても変な名前。赤い靴をお世話しに行くなんて言葉にすれば奇妙で。もう少し他の名前なかったのだろうか。

どんなアブノーマリティか想像ができない。でもまぁ見ればわかること。さっさと行こうと赤い靴の収容室を調べる。

ダニーさんにおしえてもらった手順どおりにマップを出して。

しかし地図を読むのが苦手な私は、間違えないよう気をつけながらアブノーマリティの元へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ダニーは、自身の担当するアブノーマリティの元にたどり着いていた。

収容室に入るといつも通りにいる〝それ〟。

彼は下品にちっと舌打ちをしていつも通りに〝交信作業〟をはじめる。

 

「俺は絶対に許さねぇよ。」

 

〝それ〟はダニーの言葉に興味深そうな反応をする。もっと聞きたいというかのように体を彼に近付けてくる。

その反応がダニーは本当に嫌だった。いや、何をされても彼はこのアブノーマリティが嫌いなのだ。

〝それ〟は大きな犬のような姿をしている。四つん這いで、だらりと舌を垂らして。はぁ、はぁ。と息のようなものをしている。

 

けれど〝それ〟は犬ではない。

 

〝それ〟の体は他人から奪った臓器であったり体の一部であったりで構成されている。

四角い顔をしていて、そこに四つの目がある。だれから奪ったのか、青と水色をしている綺麗な目。

更には頭に、付け方を間違えた腕がある。腐ってしまったのだろう。水色の腕鋭い爪をしたその指は細いから、案外女性から奪ったのかもしれない。

足はぶにぶにの大腸と、ずるむけの骨。隠す気もなくさらけ出された、誰かの一部。

 

このアブノーマリティが、人を襲って得た身体。

虫酸が走るとダニーは舌打ちをする。本当に嫌いだ。

他のエージェントは、このアブノーマリティを恐ろしいと言うが。

見た目も酷い上、人を襲うようなアブノーマリティを恐ろしくて仕方がないと言うが。

 

ダニーは違う。

 

ダニーは、このアブノーマリティが嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで仕方がない。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねと思っている。

 

一番苦しい方法で

永遠に続くような痛みの中で

死ねばいい。死ねばいいのだ。

 

「この会社も、お前も。全部全部。」

 

破壊の限りを尽くしたい。自分の想像ではその苦しみに限界がある事がもどかしい。

世界一苦しい死に方をして欲しい。破滅して欲しい。絶望して欲しい。地獄よりも下に落ちて欲しい。

ダニーの確かな殺意を受け取り、〝それ〟が喜ぶ。〝それ〟は欲しい。何も持っていないから。だから欲しい。新しいもの、新しいものが。欲しい。欲しいのだ。

 

〝それ〟はダニーがほしい。

 

「……触んな。」

 

伸びてきた頭の腕を、ダニーは警棒で叩く。

あぁしまったと思った。こいつはこういう暴力が嫌いなのだ。

その通り、〝それ〟の機嫌が一気に下がる。四角い頭をダニーの目の前まで近付けて、四つの目でダニーを睨む。

ダニーはため息をついた。そして仕方がなく口角を上げて、目を細めて。〝それ〟に笑いかける。

 

「俺はお前を怖がらない。」

 

〝それ〟はやはりダニーを見ている。

 

「一生俺はお前に、〝殺意〟と〝怒り〟をやるよ。」

 

ダニーの言葉に、〝それ〟の機嫌が良くなる。体を引いて、お利口な犬のように待機をしている。

〝それ〟はダニーが好きだ。なぜなら〝それ〟は何も持っていないから、他人から何かが欲しい。何かを奪いたい。

 

けれど皆、〝それ〟に〝恐怖〟しかくれない。

 

最初はそれで良かったが、もう飽きたと言わんばかりに〝それ 〟は満足しなくなった。

だからダニーがすき。だって彼は、〝恐怖〟以外の感情を向けてくれるから。

 

〝それ〟には実態がない。だから奪うしかない。

奪って奪って、いつか〝それ〟は〝何か〟になりたかった。

 

「アブノーマリティが可愛いとか優しいとか、やっぱりユリさんおかしいよなぁ。」

 

ダニーの言葉が〝それ〟は理解できなかった。

 

〝可愛い〟〝優しい〟 ってなんだろう。聞いたことがない言葉。

 

〝それ〟は考える。誰かから貰った脳みそで。いつかその〝可愛い〟に〝優しい〟に会えるかなぁと。そして、奪えるかなぁと。

〝それ〟は何も持っていないくせに、欲望だけはあった。あぁ、あと一応、名前も持っている。

 

〝それ〟の名前は〝何もない〟。何もないから〝何もない〟。

 

何もないは今日も求めている。感情を、臓器を、身体を、心を。〝何か〟になりたくて、求めている。

 

「ユ、ュュリ、さ、ん」

「……?、今なにか……。」

 

何もないが誰かから奪った声帯で、何か言った。それはダニーの真似だった。

その声が小さかったから、ダニーは聞きとる事が出来なくて。けれど確かに何か言ったことだけはわかって。

でも彼は興味もあまりなく、どうでもいいから報告書には書かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか迷わず収容室にたどりついて、私は指示通り〝赤い靴〟の作業に取り掛かることにした。

それはいいのだけれど。

 

「本当に靴そのまま……。」

 

収容室にいた……というより、あったのは名前の通り〝赤い靴〟。

部屋の中心に丸テーブルがあって、その上に丁重にディスプレイされている赤い靴。

それ以外は何も無い。持ち主らしきアブノーマリティもいない。つまりこの靴自体がアブノーマリティということになる。

思わず観察してしまう。アブノーマリティということは、なにか特別な力を持っているということだと思うのだけれど。

見ただけではただの綺麗な靴だ。とても綺麗な靴。

エナメルレザーの赤い靴。ハイヒールのそれはきっと女性の足を綺麗に見せてくれる。

「綺麗……、」

 

綺麗で、綺麗な赤い靴。

 

履きたい。

 

履きたい。この靴を履きたい。

この靴を履いて歩くの。ヒールは軽やかに音を立てて、歩く度に皆が私を見るの。

これを履けば私は特別になれる。そう思えてならない。

きっとどこにでも行ける。皆が褒めてくれる。綺麗って言ってくれる。

考えながら手は既に伸びている。びりりと爪先にすら感じるこの感覚は。

 

「あっつい!!」

 

と、そこで私に衝撃が走った。

熱い。何。

手は靴に触れず、代わりに首を抑える。一瞬すごく項が熱くなった。何か熱いものが押し付けられたような。

 

「?……??」

 

しかし何もなっていない。熱は既に引いていて、余韻も残っていない。ただ一瞬だけしかそれはなかった。

一体何が。そう言えば先程も同じようなことがあった。大鳥さんの時。

不思議に思いながらも答えは出ない。当たり前だ。何が起こったのか私がよくわかっていないのだから。

改めて前を見る。私の前には変わらず赤い靴。

綺麗な姿のまま。しかしつい今まで思っていた『履きたい』という欲求はすっかり無くなっていた。

というより、何故そんなに履きたかったのだろう。たしかに綺麗だし素敵だけど。どうして急にあんな。

 

────履いて。

 

「え?」

 

履いて。

履いて、履いて。

履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて履いて

 

「っ……!!」

 

ねぇ履いて!履いてよ!!ねぇ、ねぇ履いて!!

履いて!!履いて!はははいて、はいててててはいてはいはいててはいてはいいてはいてはいいけはけはけはけ履いて!!

 

頭に、流れてくるこれは。

 

距離をとる。やっぱりこれ、アブノーマリティなんだ。

頭を埋め尽くす〝履いて〟の声。あまりに強い懇願の声。頭痛がしてくる。

 

思い出す。陰陽師の実家にも、色んな〝いわく付き〟のものがあった。

一般人では手に負えない、私の家族に助けを求めて持ち込まれたようなもの達。

それを見る度に家族達は嫌そうな顔をして。力のない私はそれらを何となく怖いな位にしか思わなかったけど。

兄は言っていた。『それぞれに込められた感情が流れてきて気持ち悪い』と。

 

『いわくの物は、大抵がただの器なんだよ。勿論中には魂と混じったヤバいのがあるけど……。大抵は、誰かの念・感情の器。それが器に入ることで外界からの影響を受けず、中で成長していく。膨張していく。それが人に影響を与える。』

 

私は兄に聞いた。『魂と混ざるっていうのは?』

 

『もうそれは、一つの生き物だ。そこまでいったら生き物は進化したいと思い始める。もっといい体になりたいって思い始める。使いやすい、動きやすい、自由な体。人が地形に合わせて進化していったように、いわくも進化する。でもそれは……俺も一体しか見たことないし、普通はない。』

 

これは、どっち?この、赤い靴は。

 

「……出た、い……。」

 

ダメだ。出たい。頭に流れてくる声がしんどくて直ぐにでも離れたくなる。

でもまだ掃除していない。一度出て落ち着いてからでもいいだろうか。いや、出来ればもうこの部屋に入りたくもないけれど。

 

[ユリさん、聞こえますか?]

「あ……アンジェラ、さん。」

[作業の手が止まってますが、どうされたんですか?]

「す、すみません……。ちょっと具合が悪くなっちゃって……。」

[大丈夫ですか?]

「は、はい……。多分……この靴のせいなんですけど……。」

多分、というか絶対だ。今も頭で履いて履いてと煩い。

 

[靴……ユリさんはそれを履きたいと思いますか?]

「いや……履きたくないです。」

[女性エージェントは皆履きたがるのですが……。]

 

それこの靴のせいだと思う。履きたがる、というよりこの靴が履かれたがっているのだ。

やはり一度部屋を出たい。煩くて上手く頭が回らないし、アンジェラさんへの返事も遅れてしまう。

振り返って、出ようとした。すぐ後ろに扉はある。この部屋から出ることは容易い。

 

履いて、履いてよ。

履いて、履いて。履いて履いて履いてっ!!

 

無視。こういうのは相手にしてはいけないと家で教わった。返事はしてはいけない。あくまで知らんぷりが一番。

 

[履いてください、ユリさん。]

 

なのに、インカム越しにそんなことを言われて。

私は耳を疑う。履いてと言った?アンジェラさんが?

 

「い、嫌ですよ!!何が起こるかわからないしっ……!!」

[しかしそうしないとデータがとれません。]

「それは……、っ!?」

 

扉があかない!?

 

「ア、アンジェラさん……!!扉が開かないんです!!なにかしましたか……っ!?」

[…………してませんよ?もしかしたら赤い靴の力でしょうか。]

「そんな……っ、」

声が頭に響く。履いて。

 

「……っ、」

 

履いて、履いて。履いてよ。履いて、はいて。履いて。

 

赤い靴はやはりそこにある。濁りのない赤を誇らしげに艶めかせて。

扉は開かない。この靴に閉じ込められたの?それなら履けば出してくれるのだろうか。いや……履かないと、出してくれないのか。

 

「…………あ、あんまり怖いこととか痛いこととかしないでね……?」

 

気休めとわかっても、それだけは言っておいた。

意を決して私はテーブルから靴を手に取る。

その途端頭に流れていた声はぴたっと止まり。大人しくなって。まるで、喜んでいるような。

私は床に赤い靴を置く。自分の靴を脱いで、ゆっくりと靴に足を入れる。

息を呑む。何が起こる?嫌な想像しかできない。このまま足を食べられてしまったら?靴に体を乗っ取られてしまったら?どうすればいいのだろう。

 

「…………?」

 

……何も、起こらない。

 

不自然な程になにも起こらなかった。強いて言うならそれなりのヒールなのにすごく履きやすいことくらいだ。

試しに足踏みをしてみる。慣れない靴は靴擦れする事もあるのに赤い靴は全くその様子がない。

 

[ユリさん、履けましたか?なにか異変はありますか?]

「履きましたけど、今のところ何も無いです。……あれ!?」

 

一度脱いで本体を確認しようとしたら、脱げない。

なんで?足を大きく振ってみる。脱げない。手で引っ張ってみる。脱げない。おかしい。

 

「脱げない!!脱げないですアンジェラさん!!っ!?いったぁ!?」

 

軽くパニックになって、力任せに強く引っ張った。ら、足に痛みが。

刺さるような痛み。鋭い傷みだ。なんだろうと見ると、血が。

 

「な、何……。」

 

いや本当に何。靴のふちのところ、足の甲に当たる部分から血が垂れている。

何か鋭いものが靴についていた?確認したくとも赤い靴はピッタリと私の足にくっついて離れてくれない。

泣きそう。何この靴。綺麗で履きやすいと思ったらこれである。一度履いたら脱げないなんて聞いてない。

 

[ユリさん、履いたまま廊下を歩いてみましょう。]

「えええ……?」

 

このまま?すごく嫌だ。

赤い靴を見つめる。綺麗な赤から流れ出る私の血。このまま歩いたら廊下に血の道が出来てしまわないか。

 

「扉開かないし、無理ですよ。」

[もう開いてますよ。]

「え?」

 

嘘?試しに扉を確認する。確かに、開く。さっきまでビクともしなかったのに。

それに不思議なことが一つある。足が痛くない。血が出ているのに何故か痛みがないのだ。むしろ歩きやすいまである。

 

「……。」

[業務が終了すれば靴はどちらにせよ脱げるでしょう。今はデータを取る事に集中してください。]

 

そんな事言われても。脱げないのも血が出ているのも現場の私なのである。

しかしこれも仕事。嫌なことも仕事。出来ればこの部屋の中で業務が終了するまで大人しくしていたいけど。

諦めて私は外に出る決意をした。その時、脱いだ靴を持っていこうとしたのだが。

 

「ちょっと!?」

 

足が勝手に動いて私の靴を蹴った。えぇ……。

部屋の隅に飛ばされた靴を呆然と見ていると、足先がなんだかむずむずする。

早く行け、ということか。このアブノーマリティもだいぶ散歩に乗り気なようで。私は苦笑いする。

 

「……行こうか。」

 

足から伝わってくる喜びの感情。やはりアブノーマリティ。靴といえど感情があるのか。

……どうか何事も起きませんように。

お願いします……っ!!

 

 

 

※※※

 

 

 

最近コントロールチームに配属されたばかりの彼女は、なんとか無事に作業を終え一息ついた所だった。

異型とコミュニケーションをとるこの仕事は、やはり今までしていた他の仕事とは比べ物にならないほど危険で。

毎日ビクビクしながら作業をするも、今日まで無事に働くことが出来ている。

入社したばかりの頃を思い出して、ここまでよく続いたなぁと自画自賛。何度やめようと思ったことだろう。

 

そう言えば、先日入社してきたユリさんはどうなったのかな。

 

ユリさんとは、先日彼女の所属するコントロールチームに配属された日本人女性であった。……たった一日、しかも11分だけだけれど。

そう、彼女は入社初日、たった一言で目標エネルギーを集めるという快挙を遂げたのである。

その日コントロールチームの興奮は最高潮に達した。こんなの聞いたことも見たこともない。すごいことだと思った。

 

しかし、他のチームは違ったのだ。

 

彼女の存在を〝異質〟と判断し、警戒と期待の間で揺らぎ、一定の距離を保つようにしたようだった。

まだ新人と呼ばれる彼女は会社のことを深く知らない。それでも、あんな態度とらなくてもいいのに。

 

更衣室で皆に遠巻きに見られていたユリさんは、とても悲しそうだった。

……ユリさん、大丈夫かな。

 

今朝上司に聞いた話では、彼女は他のチームに配属されたらしい。

初日の笑顔を思い出して胸が痛くなる。可哀想に。ベテランの中に一人、しかも距離を置かれて不安だろう。

だから彼女は決意した。自分はそんな態度とらない。今度会ったら、また声をかけてみようと。

 

……そんなことを考えていたからだろうか。

 

廊下の向こう側からユリが歩いてくる。

ユリは彼女に気がついて、嬉しそうに手を振った。だから彼女もまた笑顔で手を挙げた。────が、直ぐにその表情は崩れる。

 

────その靴は。

 

どうして、ユリさんがその靴を履いてるの。

その靴は、女性が作業してはいけないのだ。そうしないと、そうしないと大変なことになる。下手したら死人が出てしまう。

 

吹き出た汗。混乱する頭。しかしそれは一瞬だけ。

彼女の視線はユリの足元の真っ赤な靴に集まる。

 

赤い靴。赤い靴。

ユリさんが、なんで履いてるの?なんで?

 

彼女は思った。なんて素敵な赤い靴。

何故、履いているのが私でないのだろう?

 

「ほしい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





【おまけ】※完全フィクションです。

教えて!黒井お兄ちゃん!

髪が伸びる人形は魂と混ざってるタイプのいわくなの?

『場合によると思う。でも大抵はただの器。
その場合実はそこまで悪くないいわくの場合が多い。
というのも髪が伸びるのは、

持ち主の〝もっと遊びたい〟〝ずっと遊びたい〟〝楽しい〟という感情が入った場合、

又は、その人形の送り主、親族とか知人だね。が、
〝相手の子が無事元気に成長しますように〟という想いで送った念。

それらが強くなりすぎた結果の場合が多いから。あと単純に埋め込まれてた髪が出てきた場合もある。』

『あと知らないだけで何らかの力を持つ物質はあるよ。
人って割と強い……というか、生きている人の感情がやっぱ一番強いからね。だからその強さが勝って気が付かない人、影響を受けないのが殆どだと思う。』

もっと教えて!黒井お兄ちゃん!!
ヤバいのに襲われた時どうしたらいいの??

『んな事なかなかなくない?興味本位で肝試しとか術やるのはマジでやめろよ。それは自業自得だから。』

つまり放置!?それは冷たくない!?

『いや本当に……。なんて言うのかな、それって一種の許しを相手に与えてるから向こうが強くなるんだよ。契約書にサインしてるのと一緒。
俺達が〝 やめろ!〟って言っても、〝でもこの人が了承の上で関わってきたんです〜、これ証拠ね〟って突きつけられてる感じ。
泣きつかれたらそりゃ出来ることはするけどさ……。んな逆転裁判みたいなこと簡単に出来ないから、大抵は後遺症残るね。』

通り魔の時はどうするの!?

『んー、そういう時は〝大切な人の顔〟を思い出すことが一番かな。家族だったり友達だったり。いい思い出を思い出すこと。』

地味……。お経とかないの?

『お経でもいいけど、一番は自分が生きたい、帰りたい、って思う気持ちだからね。それが恐怖に負けると相手の隙になる。家族への感謝の気持ち言葉にするのもいいよ。
何かをすれば大丈夫、みたいなのネットであるけど。それも一番大切なのは、〝これで相手に勝てる〟っていう気持ち。』

ふーん。スゴイネー

『貴方聞いておいて失礼だね……。』

ちなみにひとりかくれんぼの人形は?

『あれは全く別物。術式だしね。やるなよ。器をこっちから用意して戦うみたいな、昔、ほんとーに昔、自主練でやってたって聞いたことはある。知らないけど。
簡単に言うとあれはゴキブリホイホイのベタベタシート無い上餌も普通の餌みたいな感じ。集めはするから自分で倒してねって。手順踏むのは足りない力をカバーするため。やるなよ。絶対ね。やるなよ。知らないからね俺。』

じゃあ他にいい術とか教えてよ!

『無理。嫌。教えるのにも対価は必要なの。教えること自体一種の呪いだからね。怖い話ガムでも食ってろ。あれ美味しいよね。』

『あと補足。今回はあくまで、元々普通に物があって、そこに何らかの影響が加わって〝いわく付き〟になった例。
そうじゃないものなんて五万といる。むしろその方が多い。実態を持たないやつは沢山いるから、見えないから大丈夫って馬鹿なことするのは絶対やめな。』


はーい。


次回!教えて黒井お兄ちゃん!

異世界って本当にあるの??
愛って歪んだ呪いなの??
ぶっちゃけ稼いでるの?

の三本です。お楽しみに!(嘘)




※何度も言いますがフィクションです。こういうの考えるの大好き。
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