あと改正前の連載、わかる限りの方で前作見てくださってた方は通過申請しました!!こんな便利機能あるの知らなかった、すみません。
初めて杖を握った日なんて、とっくに忘れちゃった。
もしかしたら生まれた時から握ってたのかも。なんてね。
昔のことはあまり覚えてないの。不思議ね。私どれくらい生きているのかしら。
気がついたら、いつもどこかにいる。私はきっと、悪がいる所に呼ばれるの。
色んな人がありがとうって言ったわ。笑ってくれた。その度に私は正しいんだって嬉しくなった。でも、ごめんなさい。私人の顔覚えるの苦手なのよ。
『貴女のこと、もっと知りたいの。』
…………あぁ、でもね。
でも、ちゃんと覚えてるわ。ユリ。貴女のことは。
なんでかしらね?ううん、わかってる。
『昔の自分に、魔法少女って本当にいるんだよって。……すっごく可愛くて、明るくて、優しいんだよって。教えたいな……。』
私も、教えたいわ。忘れっぽい私に。
本当に大切にしたいものは、ちゃんと覚えられるから。
「…………心配、しなくても、いいのよね。」
ここは、平和で。私を呼ぶ人は、いなくて。
でも大丈夫。忘れない。
私の正義はちゃんとここにある。
…………自分を。
たまに見失いそうになるの。
この込み上げてくる感覚は、何なのかしら。
私の中に何かがいるような感覚。それはとても恐ろしくて残酷で汚い何か。
でもね、そんなのあるわけない。だって私は正しく、綺麗な力を持っているの。この魔女の力は素晴らしいもので。
本当に?
ならなんでたまに記憶が無いのかしら?
声が、聞こえる。
何か、酷い悲鳴が。
『あぁぁぁぁあ来るなバケモノ!怪物!!』
『助けて!ヤダヤダ殺さないで!!』
『騙されてた!騙されてたんだ!!』
『ああっぐっ、ごほっ、ぐっ、』
『許すな……許すな……、魔女を許すな!!』
『……アイ、とかどう?』
『アイってね、私の国の言葉でLoveの意味があるんだよ!』
「…………ユリ。」
…………大丈夫。たまたまよ。 大切なことは、忘れないから。
…………会いたいなぁ、ユリ。
呼んで欲しいな……。
ここ最近。
アブノーマリティO-01-04の、様子がおかしい。
〝魔法少女〟。
そのアブノーマリティの噂は、ダニーの耳にも入っていた。
何でも〝とても可愛い〟だの、〝優しい〟だの。なんて能天気で危機感のない。それを聞く度にダニーはうんざりしていた。
アブノーマリティに〝良い物〟があるはずなどないだろう。
それが彼の考えだった。だからそれらの噂をダニーは一切信じていなかったし、出来ることなら関わらずにこのまま過ごしたいと思っていたのだが。
その時は来てしまったのである。しかもそれは、彼が当社のチートアイテムだと判断している〝エージェント・ユリ〟の休みの時に。
{対象:O-01-04 作業内容:交信}
その通知が来た時、ダニーは分かりやすく『げっ』という顔をしてしまう。顔どころか声にも出していた。
が、その時ダニーはそれがまだそれが噂の〝可愛い女の子のアブノーマリティ〟だと気が付かなかった。
というのも、送られてきたのは〝O-01-04〟という数字の羅列。
数字の羅列。それが意味することは名無し。〝名前〟がまだ無いアブノーマリティ。
つまり、情報が十分に得られていない新しいアブノーマリティということで。それを察したダニーは大きくため息をついた。
名前すら決められていない、危険も能力も未知数のアブノーマリティ。
ため息が自然に漏れる。そんなのの相手をするなんてと彼は頭を痛めた。
「……?」
しかしその作業指示の下、続く文章にダニーは眉を顰める。
そこには普通では見た事のない、特別なことが書いてあった。数度瞬きをして間違いを確認するが、何度みても内容は同じである。その内容は。
「ダニー、どうしたんだ?」
「っ!?お、驚かすなレナード……。」
困惑している所に、一人の男が話しかけてきた。
彼の名前は〝レナード〟。ダニーと同じチーム所属のエージェントである。
急に声をかけられて驚いたダニーは咄嗟にタブレットを胸で隠した。それは反射的にやってしまった、特に意味の無い動作だったのだがレナードにはそう見えなかったらしい。
ダニーの動きにレナードは眉をひそめ、むっと口をへの字に曲げる。
「……俺は盗み見る趣味なんてない。」
「あっ、いや。悪い。」
分かりやすく不機嫌なレナードの言葉に、ダニーも素直に謝る。確かに今のは感じが悪かったかもしれないと頬をポリポリとかいた。
しかしそんな謝罪ではレナードは納得いかないのか表情は変わらず。そのまま隠したダニーのタブレットを指さして口を開いた。
「そんなに大変な指示があったのか?」
「……いや。」
ダニーは首を振る。
「わからない。とりあえず、様子見だ。」
「……何か、俺にも出来ることが、」
「大丈夫だ。」
レナードの言葉にダニーの声が被る。最後まで聞くことなく、彼の申し出を断る。
ダニーはとりあえず、送られてきた指示のことを今は誰にも言うつもりはなかった。
この指示に、なんの意味があるかなどわからない。
誰かを巻き込むには、あまりにも判断が早いだろうと。
「お前はお前の仕事をすればいい。」
「でも、」
「俺はもうお前の上司じゃないんだよ。」
「……っ!」
その言葉にレナードは大きく目を見開く。ダニーはしまったと思った。言わなくていいことを言った。
この言葉の意味は、二人の前職が関係している。単純な話、〝ダニーとレナードは前職も同じ会社だった〟のである。
その時ダニーは一応、レナードの上司であった。一応と言うのは、その関係はたったの1ヶ月しか続かなかったのである。
「悪い、今のに深い意味はなくて……。俺のことはあんまり気にするなってことを言いたかったんだ。」
「……。」
ダニーは思う。レナードは真面目な人間だから、俺の事を気にかけているのだろうが。
ほかより長い付き合いだ。互いにそこまで相性のいい性格ではないとわかっているだろうに。
そんな昔の情とか、正義感だとか。そういったものでレナードは自分の心配をする必要は無い。特にこの会社では。
「ここでは余計なことに首を突っ込まない方がいい。」
「そんなの、」
「きっと後悔するから。」
ダニーは笑った。穏やかではない、素敵でもない、自嘲の念が篭もる笑みだった。
ダニーはあまり自分の話を他人にしない。
それは彼の元々の性格と、今までの経験からきている一種の癖だ。
ダニーが今まで関わってきた人や、置かれてきた状況から。彼にとって、会話とは〝誰かの話に反応する〟というのが主になったと言うだけの話である。
だからダニーが、相手の話を途中で切るというのもある意味では癖で。勿論とても悪い癖なのだけれど。
「もう無駄話はやめよう。」
「無駄って……!」
「仕事中だぞ。レナード。」
ダニーが〝話を聞かない〟のは、〝話を聞いても自分の意見は変わらない〟という意味である。
そして当たり前に、レナードはダニーのそんな態度が気に入らなかった。言うだけ言って、話を切られて。答えもしない相手をよく思う人の方が稀であろう。
レナードの落ちていく機嫌をダニーは察して、しかし気が付かないふりで背中を向ける。
背中からなにか声が聞こえたが、ダニーは無視をした。どうせ自分への文句だろうと思った為である。
そしてレナードはダニーの背中を睨んでいた。
彼には彼の仕事があるのに、ダニーが見えなくなるまでずっとそこにいたのだった。
※※※
ダニーは収容室に入る前、必ず指示された作業を再度確認するようにしている。
それはどのアブノーマリティでもそうだが、今回はより念入りにするつもりだった。
{対象:O-01-04 作業内容:交信}
{対象の状態は非常に不安定であり、決して警戒を緩めてはいけない。}
{今回の交信の目標は、O-01-04の望んでいるものを理解することである。}
{このアブノーマリティの様子は極端に良い・悪いを繰り返している。}
{もしもアブノーマリティの様子が最悪であると判断した場合、以下の行動を指示する。道具はオフィサーに用意させているため、受け取りを忘れないように………………、}
「……。」
ダニーは額に手を当てて考える。何だ、これは。と。
普通なら有り得ない指示だ。アブノーマリティによって特殊な条件の提示をされることはこれまでも数度あったが、これもそのうちの一つだろう。
となると。今から扱うアブノーマリティはかなり繊細な作業が求められるということで。
ダニーはより憂鬱になる。彼はそれなりに色んなアブノーマリティを対応したことがあるし、経験は積んでいる方だけれど。
そんなものがあったとして。時に人は簡単に死ぬ。特にこの職場では、容易く命は叩き落とされていく。
それをダニーはよくわかっていた。そして彼は当たり前に死にたくないわけで。
それでも仕事はしなければいけないから。
「…………。」
深く、呼吸をして。
姿勢を正す。
怖気付いてはいけない。堂々とするのだ。
変に感情の揺れをアブノーマリティに見せてはいけない。こちらが反応すれば相手も反応してくる。
だから可能な限り、ダニーは冷静で淡々とした態度を示さなければならない。
「……よし。 」
意を決して、収容室の扉を開ける。
頭の中に浮かぶ作業指示。{決して警戒を緩めてはいけない。}。その通りであり、当たり前である。
警戒を解くな。真剣に、隙を見せず、間違えないよう。警戒しろ、警戒しろ。決して警戒を「あら!こんにちは!」
「…………は?」
「まぁ、初めて見るお顔ね。」
「え、あ、いや。」
そこにいた、アブノーマリティは。
「はじめまして!私は正義の魔女。皆を救うためにここに来たのよ!」
そう笑うアブノーマリティは。……青い髪の、少女の姿をしている。
ダニーは困惑する。このアブノーマリティはなんだ、と。いいや、これはアブノーマリティなのか?と。
思わずアブノーマリティの姿を、上から下に舐めるように見る。そのじろじろとした視線は彼女も気がついたようで、居心地悪そうに肩を竦めた。
「そんなに見られると……、困るわ。私何かおかしいかしら?」
「えっと、」
おかしいところだらけだとダニーは答えたくなる。なんだその反応は、表情は、姿は声は。
まるで自分と同じ感情を、体を持った人間のような。
そこでハッとする。もしかして、とダニーは気がつく。
記憶の引き出しを開けてダニーは思い出す。あの噂を。
『とても可愛い女の子だ。』
『しかも優しいよ!』
『担当になりたいな。』
『あんなアブノーマリティばかりならいいのに。』
「……こいつが、」
「?」
こいつが、噂の〝可愛い女の子〟のアブノーマリティか。
エージェント達がこぞって気に入っていたアブノーマリティ。
成程とダニーは思う。青い髪に白い肌、美しい少女のアブノーマリティ。これは人に好かれる見た目をしている。
しかし気がついたと同時にダニーは不思議に思った。作業指示にあったのは、〝O-01-04〟という名無しのアブノーマリティ。
情報が少ないアブノーマリティは、名前がまだ付けられない。しかしこのアブノーマリティは噂が広がるくらいの期間、色んなエージェントが作業をしている訳で。
「なんで名前が……。」
「名前? …… やだ、ごめんなさい!私名乗ってなかったわね!」
「は……、名前があるのか!?」
驚く声を出すダニーに、アブノーマリティはにっこりと綺麗に笑った。
うふふ、と鈴のような声を出した後、ゆっくりと形のいい唇を動かす。まるでとっておきの特別を話すように。
「アイ、っていうのよ。」
「アイ……?」
「そう、アイ。私は、アイ。」
「……アイ??」
言われた言葉が思ったようなものではなくダニーは戸惑う。
それはなんだか、とても普通だ。それこそダニーの知人に、〝アイ〟というニックネームを持つ人がいる。
アブノーマリティの名前というのだから、もっと特別なものを想像していたのだが。
「お友達がね、付けてくれたの。」
「友達……?」
「そう。とっても可愛くてね、綺麗で、優しい子なの。」
うっとりと、蕩けた目をするアイにダニーは瞬きを繰り返す。
その友達がどんなものかダニーは想像ができない。しかしアイの様子は友人のことを話しているような態度では無いのだ。
「また早く、会いたいわ。」
「……。」
まるで、恋する乙女のようだ。そんなことをダニーは思う。
小学生の女の子が、好きな男の子の話をしているような。楽しくて嬉しくて、仕方ないというような様子。
「……ん?また会いたい?」
「えぇ、早く会いたいの!」
「それはつまり……ここの施設で会える?」
「そうよ?最近お友達になったんだもの。」
「……名前は?」
「その子の?ユリっていうのよ!名前も可愛いでしょう?」
やっぱりあんたかよ!!
予想通りの答えにダニーは頭を抑える。
ユリさん、あんたアブノーマリティに名前をつけたのか。
あぁそういえば、そんな報告書の確認をしたなと思い出してダニーは深くため息をつく。
彼女の報告書は他と違いすぎて参考にならない。気になる部分以外は流し読みしていたせいで忘れていた。
「…………その方の他に友人はいるんですか? 」
「いないわよ?ユリだけ。」
「ええと、ここには他の職員も来ましたよね?その職員は友人ではない?」
「そうね。みんな優しい人達だけれど……お友達ではないかしら。」
「それは……何故ですか?」
「何故って……。」
ダニーの言葉にアイはこてん、と首を傾げる。「何故かしらね?」と。自分でもわかっていないようだった。
聞く噂はいいものばかりなのだから、他のエージェントも悪い反応はしてないのだろう。それなら何故、〝ユリ〟と〝他の職員〟と区別するのか。
このアブノーマリティだけじゃあない。他のアブノーマリティもそうだ。
「ユリは特別なの。」
「特別……。」
「他とは違う。他とは、違うのよ。」
特別?…………なにが、だろうか。ダニーは考えても心当たりがなくて。
素直に問いかけた。「特別とは何ですか。」その問いに、アイは先程とは違いすんなりと答える。
「ユリは優しいもの。」
「え?でも他のやつも、」
優しいって、そう言ったろうとダニーは思ったが。
何も言えなくなった。アイの視線があまりに強くて。
アイは真っ直ぐとダニーを見る。その視線は何故か責められているような気分になるもので。
「他の人たちとは、違うわ。」
ハッキリとした口調に、ダニーはぐっと言葉に詰まった。言葉相まって、まるで自分とユリを比べられているような気分になった。
優しい。優しい、か。確かに。
ダニーはそれなら、わかるような気がした。
「……そう、ですね。わかります。」
「え?知ってるの?ユリのこと。」
「知ってます。全てでは無いけど。」
記憶の中のユリの姿を思い出し、ダニーはため息をついた。
「お人好しで、無防備で。たまに心苦しくなる。」
毎日思う。この女、馬鹿なのではないかと。
出す前ならまだしも、出したあとの報告書を見せるようにした指示も。
周りに一人も同期のいないこの部署にいることも。
無理矢理ここに連れてきたようなヤツが、『会社を信じるな』なんて言うのを聞いても。
『貴女はもっと怒っていい。』
『えっと……私、怒るの苦手で……。』
なんで、怒らないんだ。
なんで、俺の言うことを、そんな素直に聞くんだ。
ダメだ、とダニーは首を振る。あまりにも余計なことを考えている自覚があったから。
今は仕事中。目の前にいるのはアブノーマリティ。自己嫌悪にひたっている場合では無い。
ダニーの言葉に、アイは明るい表情になる。共感してくれて嬉しいと満面の笑みを浮かべる。
それは自分よりもずっとずっと、綺麗で純粋な笑顔。
「そうね、ユリは無防備で……。でも大丈夫!私がユリを護るもの!」
「護る……。」
「そう!ここの平和は、私が護るの!」
ユリの報告書にはアブノーマリティを仲間のように書くものが多かった。それを見る度にダニーは『また馬鹿を書いている』なんて思っていたけれど。
今、ダニーはどこか納得も出来た。自嘲する。あぁ、確かにと。
確かにこれでは。
…………彼女にとって、誰が仲間で、敵かなんて、
「でもここは、少し平和すぎるわね。」
「…………え?」
「どうしてこんなにも平和なの?」
「……?でも平和を護るんだろ?それなら平和が保たれてることはいいことじゃあないのか。」
「そうね。平和はとっても素敵。悪人がいないってことだもんね。」
でも、
「それだと、私はどうすればいいの?」
「は……、」
「あたしがいるのは邪悪な悪者を倒すためなのに。これじゃあたしが、あたしが。世界に必要とされてないみたいじゃない?
あぁあたしが魔女って言ったかしら? あたしは世界に平和をもたらすために選ばれたの。それなのに今日も世界は穏やかで…………」
ダニーは急な魔法少女の変化に困惑した。今の一瞬で彼女に何があったのかと考えるが、わからない。
ぶつぶつと何か呟く彼女の様子を伺わなければいけない。しかしダニーはこのアブノーマリティに近づくことは避けたかった。何が起こるかわからないこの今、彼の判断は正しいだろう。
だからそのまま、少し大きな、はっきりとした声で話しかける。「どうしたんですか、」。その声にバッと勢いよく彼女は顔を上げた。
「世界は善と悪にわかれている。」
そして、「私は正義よ。」と彼女は続ける。
「なら悪がいなければ、私は存在できない。」
「何を言って……」
「だったら誰が世界を護るの?」
彼女はゆらり、立ち上がる。そしてダニーに近づいてくる。
ゆらり、ゆらり。青い髪に隠れて表情は見えない。しかしその様子はあまりに不審であり、ダニーは反射的に距離を取ろうと入口に向かう。
「ねぇ!!教えてよ!!」
「!?」
しかし外に出ることは叶わない。その前に彼女がダニーの首を掴み、そちらに引き寄せた。
後ろに思い切り引っ張られ、ダニーは転んでしまう。しかし体を打つことはなく、彼の上半身は仰け反り、宙に浮いていた。
彼女が、アブノーマリティが。ダニーの首を掴んだまま。自分の胸にそのまま引き寄せ見下ろしているのだ。とてもとても、強い力で。
可愛らしい姿をした、女の子のアブノーマリティ。そんな彼女の胸に引き寄せられ、至近距離で覗かれる。
それだけ聞けば、羨ましいシュチュエーションだろう。しかしダニーの体温は一気に下がり、ダラダラと冷たい汗が吹き出た。
人じゃない。
顔が。
青く長い髪が、ダニーの頭を包み幕のようになっているせいなのか。
そんな理由で、こんなことになるのか。
目がない、目がないのだ。全てを吸い込むような、真っ黒な空洞がそこにある。
更に「おしえて、」そう動く口の中。ずらりと並ぶ白いトゲ。
違う。棘じゃない。これは、牙だ。まるで肉食獣のような。
「っ、くっそ!!」
「ぁっ!?」
ダニーは咄嗟に手を動かし、自分を掴む彼女の腕にそれを突き刺す。
指示によって用意されていたそれ───麻酔は。細い彼女の腕に抵抗を感じながらもスムーズに突き刺さった。
悲鳴の後に彼女はよろけ、ダニーは開放される。慌てて距離をとると、ダニーはそのまま一目散に収容室を飛び出た。
廊下に出た時、ちらりと振り返った時。見えたのは。
腕を押えながら倒れる彼女の、アブノーマリティの姿。その床に落ちたのは先程ダニーが使った注射器。
その光景は一瞬だったがダニーの頭に焼き付く。そして思い出す、送られてきた〝作業指示〟。
{もしもアブノーマリティの様子が最悪であると判断した場合、以下の行動を指示する。道具はオフィサーに用意させているため、受け取りを忘れないように。}
{強力な麻酔を用意した。使い方に気をつけ、いざとなった時O-01-04への使用を許可する。}
ここに入る前、この〝麻酔〟をすぐ取り出せるようにダニーは用意をしていた。
ケースから取りだし、針をむき出しに制服のポケットにいれるのは危なかったし躊躇った。なにかの衝撃で注射器が割れて中の薬剤が出る可能性だってある。
それでも念の為と。作業をする間だけだと思い直し用意したのだが。
雑に突き刺し、針の先に血の着いた注射器を見る。〝念の為〟は正解だったという事だ。
「……。」
あれはなんなのだとダニーは考える。
人の形をしており、しかも麻酔が効くなどアブノーマリティで聞いたことがない。
麻酔が他のアブノーマリティにも通じるようなものなら、もうとっくに全職員に支給されているだろうに、そうでないのはあれだけが特別ということか。
そんなのはまるでただの人間だけれど、先程見たあれは確実に化け物で 。
となるとそれだけ弱いアブノーマリティなのかと思うには、ダニーの味わった感覚は重すぎる。
あの一瞬、ダニーは本当に恐いと思った。
姿だけならもっとすごいものを見たことがあるのに、それ以上の何かを感じた気がした。
鋭く、痛みを感じる何かを向けられたような。
これは一体なんなのか。ダニーにはわからなかった。
「…………。」
ダニーはタブレットを取りだし、その場で報告書の入力を始める。それは仕事だからすると言うよりも、今すぐこれを伝えなければいけないという、焦りの感情からだった。
体が
自分のものに思えない時がある
なんでかわからない
なんで?
私のなのに
私のじゃあないの
「ユリ、」
私の大切な友達。
貴女だけが、私の中ではっきりとしている。
【補足】
Q「アブノーマリティって麻酔効くの!?」
A「これは本家(初期・レガシー版)の設定です。効きます。」
【お知らせ】
ちゃんと海外移住アカつくりました。
ユリちゃんたちが質問答えたり、小ネタ投稿してます。もし良かったらのぞいてみてね。良くなかったら全然覗かなくていい。
海外移住以外のことは他アカでしてるから安心してね。たまにちいかわをイイネしてしまっても慌てて別アカに切り替えてます。
アカウント間違えて通知いったらごめん…ってコト?!
@yuri_T_01_31
【頂き物!!】
みかん狂信者さんよりかわいいユリちゃんいただきました♡♡
みてーーーみてみてみてみて!
【挿絵表示】
【挿絵表示】
ギフトもりもりで「あはは……」ってなってるユリちゃん。くそわいいんだが。
多分肩こり元々あるタイプのヒロインなので肩ゴキゴキになる。愛の副作用だね!
メッセージもめちゃくちゃ優しい天使さんです。みんなお見かけしたら「ほほーんこの方が天使かぁ」って拝もう。私は拝んだ。
【味谷さんが天才グラフィッカーなのだが】
以前ゲームの作成してくださった味谷さんから新しい供給。私が罰鳥ちゃん好き好きいったら罰鳥ちゃん作ってくれた。
最高かよ。ちなみに私のSimejiの画面です今。
【挿絵表示】
控えめに言って天才だから皆で今後味谷さんのこと天才って呼ぼ。てか絵もかけるし、ぬいぐるみ作れたりもするめちゃくちゃハイスペックな方なんだが。神って万物与えますわ。出会わせてくれてありがとう……。