東方闇月城   作:スマート

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はい、お早う御座いますスマートです。
UAがお陰様で900を超えました、後少しで1000になる勢いです。
この調子で頑張っていけたらなと思っています。


No.014「程度な能力」

「霊力、それはごく限られた一部の人間が使うことのできる体力とは違うエネルギーのようなものよ。

 

生命力と置き換えてもいいけれど、坊や達の言葉では第六感とでもいうのかしら?」

 

気絶から再び僕が目を覚ました時には、どういう訳か赤い眼を持つ緑色の髪を持つ彼女の膝に寝かされているという、何とも奇妙な状況が出来上がっていた。

 

出会って直ぐの幽香さんに膝枕されているという状況に、一瞬頭が真っ白になってしまったが、羞恥心がぶりかえし慌てて起き上がろうとすると、その細く白い腕にどこにそんな力があるのかというほどの圧力で額を押さえつけられてしまっていた。

 

頭の下に女性の花の香りのする太ももの柔らかい感触と、頭に万力の様な締め付けられる痛みを感じながら、僕は静かに彼女の話す霊力というものについて講義を受けていたのだった。

 

一言でいうなら、まだ信じられないというのが本音ではある。

 

だが、あんな少年漫画の如く、言葉では言い表せない超常的な圧力を実際に受けてしまうと、頭ごなしに否定するのも出来なくなってしまう。

 

「理解しろとまでは言わないわ、今まで知らなかった事に対する理解が遅いのは人間という種族が持つ個性でしょうからね。

 

頭のなかでただぼんやりとそういうモノがあるんだと思ってくれるだけで今は十分よ」

 

わざとそういう口調をしているのかと思えるほど、嫌にトゲトゲしい言い方をしながら彼女は、そっと僕の頭から手を放し、優しく髪の毛を撫でてくれた。

 

手を器用に動かし、櫛で乱れた髪を直すような撫で方はとても心地がよく瞼が自然と重くなってきてしまう。

 

しかし、心地よい雰囲気に身を任せてしまうわけにはいかない。

 

此処で寝てしまっては折角、こんなにも貴重な話をしてくれている彼女に失礼だし、第一膝の上でまた眠りこけてしまうのは、流石にプライドが許さなかったからだ。

 

「あら、もう少しこうしてればよかったのに、どうだった私の膝枕は?」

 

ゆっくりと彼女の膝から起き上がり、その場で正座して微笑みを浮かべる彼女に向き直ると、緑のメッシュの入った髪を揺らしながら心底愉快そうに肩を震わせていた。

 

この女性は出会った当初は服装や上品そうな雰囲気の所為で気が付かなかったが、実際唇を吊り上げて、人の悪い笑みを浮かべる彼女の性格はどう考えても魔性や妖艶といった言葉が似合うだろうものだ。

 

…僕をからかって遊んでいるのではないか?

 

ふと頭をかすめた物凄く真実であってほしくないが、真実に近そうな疑問を振り払い、僕はわざとらしく咳払いをして頬にさす赤みを誤魔化したのだった。

 

「まあ簡単に説明すれば、坊やにはとても大きな力を小さな風船に込めている状態なのよ、だから空気を入れ過ぎた風船が弾けるように、坊やの身体もどこからか綻び始めているといったところね」

 

「そ、それじゃあ、この体が弱い体質は治るんですか?」

 

実際問題、それが今までの幽香さんとの会話で一番聞きたいことだった。

 

霊力がどうのと言われてもそれは、「はあそうですか」

 

と受け答えるだけで、それが如何いうモノで何をすれば良いのか皆目見当もつかないからだ。

 

この虚弱体質ともいえるものが、治るのか…それだけが知りたい。

 

だが結果は無残というか無情なものだった。

 

女性は一度だけ僕を見ると目をそらしため息をついた。

 

僕は知っていた、その仕草は今から僕にとって聞きたくないことを言うときのものだと。今までの医者が、何もできなかった医者たちがしてきた反応だと。

 

「無理ね」

 

「そう…ですよね」

 

予想できた返答に、存外ショックを受けてしまった僕は、想像以上に彼女の言葉を…

 

「治る」と言ってくれると心の中で期待し、切に願っていたのかもしれない。

 

顔を茶色い木々が張り付けられた床に向けて、目頭が熱くなり泣きそうになるのを必死に抑えていると、細く白い腕が僕の頬を掴み、彼女の顔へと強引に向けさせられたのだ。

 

「な、なにを」

 

まさか彼女は、涙を流す僕の顔を見て、気も弱い僕の事を嘲り笑いたいのだろうか。

 

「まあ、話は最後まで聞きなさい。

 

坊やのそれは病気ではなく才能、一種の個性でしかないわ。病気でないものを取り除くことは出来ない…けれどね」      

 

したり顔で立ち上がって、何処からかひまわりの種を取り出した幽香さんは、僕の前まで近づいてきて、種をじっと見るようにと言った。    

 

マジックでも見せてくれるのかと思ったが、さっき話していた事と全く脈略が無さ過ぎる。

 

滲んできた涙を手に巻きつけられた包帯で強引にふき取り、彼女に視線を向ける。 

 

「あの、その種……え ? 」    

 

突きつけられたひまわりの種と、僕の身体とどう関係があるのか訪ねようとした時に、変化は起こったのだ。

 

いや、異常と言い換えても良い。    彼女の手のひらに乗せられていた薄黄色の黒い縦縞が付いたひまわりの種は、軽く左右に揺れると、先端が2つに別れ、中から若緑色の芽が這い出してきたのだ。    

 

目を丸くしてその現象を見つめていると、芽はすくすくと成長を始め、二葉が現れ、茎が太くなりふた葉が出来た元からそれよりも一回り、二回り大きい葉が次々と出てくる。  

 

彼女がその、最早種とは呼べない物を床に優しく置くと、今度は薄茶色の根が勢いよく、葉とは逆の位置から飛び出し、伸びた根は床の溝に絡みつきしっかりとその身体を固定していった 頑丈なちょっとやそっとでは倒れることのない足場を作った植物は、上へ上へと茎を伸ばし、それに合わせて茎もどんどんふとくなり、やがて僕と同じくらいの背丈まで来ると、人の顔くらいはある大きな蕾を広げ、黄色い花を咲かせたのだった。  

 

どう考えても有り得ない現象だった、こんなに早く植物が成長するなんて聞いたことがない。

 

成長の早い竹でさえ、1日かけてやっとの事で太い茎を作り出す。  

 

だが僕の目の前で起きた現象は、1週間以上も成長に時間がかかる、ひまわりだ。  

 

以前、母が家でも育てていたので、その成長スピードはあるていど知っている。

 

とてもではないが、例えどういう品種であろうともひまわりがこんな成長を見せるという話は聞いたことがなかった。まるで録画の早送りを見ているようで、何度も目をこすってしまった。

 

「どう、手品じゃないわよ種も仕掛けもない…いえ、種はあったわね」

 

「あなたは、いったい…」  

 

何者なのか、と言いかけた時ふと祖母の姿が脳裏に浮かび、今朝方言っていた奇跡、不思議なモノという言葉が頭に浮かんだ。  

 

僕が今見たモノは、普通は起こり得ないもの、つまりは奇跡というかオカルトなモノだったのではないか。    

 

それを何の戸惑いもなく起こしてしまったこの女性は、もしかするとだ が、祖母が出会ったという「あの人」なる人物なのかもしない。  

 

「そう言えば、まだ名乗りはしても正体については何も言ってはいなかったわね。 私は結構有名だったから、忘れていたわ。

 

見たことはあるとは思うけれど、私はこの先にあるひまわり畑の主で、四季のフラワーマスター・・・

 

沢山の花を育てたり季節に合わせて色々な場所を旅したりしているわ」  

 

ひまわり畑とは、電車に乗っていたときに見たあのとても多く広大などこまでも続いていそうだった黄金の畑の事だろう。  

 

あの時に見た気がした人影は、気のせいなどではなく、この人だったのだ。    

 

育った大輪のひまわりを愛おしそうに見て、幽香と名乗った彼女は、驚きで固まってしまった僕の頬へと流れ落ちた涙を指で掬い取る。

 

 

「あ、あの」  

 

「私はあなたと同じ、不思議な力を持っているの。  

 

見たでしょうひまわりを一から花を咲かせる…花を操る程度の能力、それが私の力」  

 

僕の言葉を遮って幽香さんは、あの現象を見ていなければ、妄想ともとれるような言葉を言う。

 

「花を操る」それが本当だとすれば、いや、僕はもう本当だと言わざるを得ない。 そして幽香さんは、僕にも同じ力があると言っているのだ、茶化し た雰囲気ではなく、真剣な顔でじっと僕の眼を見つめて。  

 

「目を閉じなさい、そして頭の中で考えるのよ。  

 

坊やの持つ力が何なのか、そうすれば自然と浮かんでくるはずよ」  

 

 僕は幽香さんの言葉に従うままにまぶたを閉じて、僕が持っている という不思議な力。  

 

もし、僕にそんな力があるのなら、奇跡が起こせる力を持っている のなら、そういう期待を込めて、考えた。    

 

身体を自由に動かすことが出来ない、友達や趣味もない、ただ自然 に心動かされ気絶する貧弱な僕に、力を……          

 

光を遮ったまぶた、真っ暗な世界に僕が一人で立っている。  

 

 右も左も、後ろも前も真っ暗で先が見えない、だが僕自身の姿だけはっきりと見えていた。  

 

自分が目を開けているのか、開けていないのかさえも分からないよ うな世界は、僕に何かを訴えかけるように、小さく鼓動している。    

 

トクンと小さく世界が揺れる度に、誰かがどこかで話すような声 が、耳に響くのだ。  

 

「おま……で…き…つる…いど」    

 

声は強くなったり、小さくなったりとランダムに変化し、余計に聞 き取りづらい。    

 

幽香さんが言っていた、頭の中に浮かんでくる力とは、この事だっ たのかと納得して、もっと良く声を聞くためにじっと耳を済ませた。    

 

すると、フィルターがかかったようにノイズが入っていた声が透き通り、断片的にだが聞き取ることが出来た。

 

  「君の能力は」  

 

 「で・・ン・・・い・・・を」  

 

「操る」  

 

「程度の」  

 

「能力」

 

「電気を操る程度の能力、それが坊やの力なのね」  

 

目を開けて、頭の中にしっかりと浮かんだ力の名前を伝えると、幽香さんは、納得したように深くうなずいたのだった。

 

「電気、それが直人の身体を虚弱体質たらしめていた原因よ。    

 

これも詳しいことは、アイツじゃないから知らないけれど、能力の暴走で身体に負担がかかるなんて良くあることだしね」

 

「そう、なんですか ? 」    

 

僕の力が虚弱体質の原因だとするならば、幽香さんの言う「暴走」さえ何とかすれば僕の身体は普通の人と同じになれるのではないか。    

 

少しだけ期待を込めて幽香さんの顔を見ると、幽香さんは、僕の考 えを聞かないでも分かったというように笑顔になった。  

 

「ええ、多分だけれど、能力をコントロールする事が出来れば、坊やの身体に堪っている沢山の霊力もそれに還元されて消えるから、身体関係の弱さは直るかもしれないわね」  

 

「じゃ、じゃあ !? 」    

 

自分の中から溢れ出る興奮を抑えきれなくなってきている。    

 

無理もない、一生直るはずもないと思い込んでいた自身にはまった 枷を、今更外せると言われたのだから。    

 

このままでは、また「暴走」で倒れてしまうと、幽香さんに若干呆れ気味に諭され、僕はひとまず差し出されたまた種類の違う液体を受け取った。    

 

布団の上に座り、湯気が立ち上るお茶をすすると、どうやら薬湯の一種だったようで、色々な薬品の匂いが鼻を刺激してくる。  

 

「どうかしら、その薬湯茶、私が育てたのよ、ハーブが入っているから 気分を落ち着かせられるわ」    

 

幽香さんは、植物を育てることが趣味らしい、ひまわりやハーブの 他にも色々なものを育てているのだろう。  

 

もしかすると、彼女の能力もその役に立っているのかもしれない。    

 

本当に、彼女という個人に見合った力を持っているなと、心底羨ましく思ってしまう。    

 

それに比べて、僕の力は役に立つよりも前に、生きていく為の障害 になっているではないか。 

 

確かに「電気を操る」という一点に限るならば、失礼だが幽香さんの能力よりも応用が利く汎用性に富んだ能力だろう。  

 

だが、人間には……いや僕にはそれは過ぎた力だったのだ。

 

人にはそれぞれ、それに見合った才能がある。  

 

能力もその一種と考えるなら、僕の才能に肉体が耐えきれないという状態なのだ。

 

VHSのハードにDVDのディスクが合わないように、高スペック 過ぎる能力が逆に僕を圧迫してしまっている。    

 

コントロール出来ればと息巻いていた僕だったが、そんなことを考 えてしまうと、高望みしすぎたのかもしれないとも考えもする。  

 

せめて、せめてだ。  

 

能力だけを消してもらう方法もあるのではないか、そうすれば僕は 普通の身体を取り戻せる。    

 

高スペック過ぎて使えないディスクに何の未練もない。    

 

一口、二口薬湯茶を飲んで、気分を落ち着かせてから、僕はその旨 を伝える為に改めて口を開いた。  

 

「僕の能力を消してもらう、そんな事は出来ないんですか ? 」  

 

「へぇ、謙虚と言うか、その年代にしては礼儀正しい子とは思っていたけど、ただの弱虫だったのね。  

 

能力の制御もしていないうちから、初めから出来ないなんて諦めるなんて馬鹿じゃないの」  

 

目をすっと細めて僕を見下ろしてきた幽香さんは、蔑むような軽蔑の籠もった顔で言う。

 

「で、でも、僕にはそんな力はあつかえ・・・」  

 

「分からないじゃない、やってみる前に挫けちゃ、出来るものも出来ないのよ? それにそんな弱気の坊やを見ていると、余計にそう思うわ。

 

きっと、坊やはその能力が必要になる時がくる、そしてその時私に感謝するの」

 

「そんなこと・・・」

 

「あるわ、そればっかりは私が保証してあげる。

 

坊やは似ているのよ性格はまったく違うけれど、あのクソ生意気な魔法使いにね。

 

その人間の癖に高スペックな能力とそれに比例した膨大な力、しかも私を見て怯えるならまだしも、逃げもせず普通に接してくれる所なんかもうそっくりよ。

 

 でも…アイツは絶対に諦めたりしなかった!」  

 

小屋を震わせるほどの大きな声で怒鳴った幽香さんは、荒くなった息を吐いて天井を見つめる。

 

「どんなに私が倒しても、ゴキブリみたいに何度も何度も私の前に立ちふさがって来たのよ…」  

 

キッと僕を睨みつけた幽香さんの赤い瞳は、輝く滴が流れ落ち床へ 落ちて小さなシミを作る。  

 

幽香さんの言うその人は、僕のような能力…高スペックな力を持ってもそれに飲まれることなく使いこなしていたのだという。    

 

だがしかし、彼女の言葉を涙を見ても、僕の心には不安しか宿ってはいなかった。    

 

幽香さんの訴えかけるような目を見ることが辛く、うつむいてしまう。

 

  「……ふふっ」    

 

と、何か黒い嫌な予感がする気配を頭上から感じたのだ。    

 

幽香さんは、人ではない…そのことはさっきの会話で漠然とだが感じていた。    

 

そのことを踏まえて考えるに、あの訴えを俯いて、蹴ってしまった僕は、彼女の逆鱗に触れてしまったのかもしれなかった。    

 

第一印象が活発そうなお嬢様、それか太陽のようだった人だ。  

 

だが、その性質は絶対に怒らせてはいけない野獣が隠れているような、恐ろしいものだ。

 

おかしな方程式が成り立ってしまい、ゆっくりと視線をあげていく と、目の前にいた幽香さんと目があった。

 

涙を流していた儚そうな眼ではなく、好戦的な、赤い目がより燃えているように感じられた。  

 

「……いいわ、私が教えてあげる、力のコントロール方法を」

         

 

この時、僕の運命は彼女に出会ったことによって180 ° 変わった と言っても過言ではないだろう。    

 

普通なら、このまま体が弱いまま一生をそれとなく終えるはずだっ た僕を救ってくれる彼女には、感謝の言葉が今でも底をつかない。

 

 

 

 

 

 

 

「そうそう最期に坊やの名前を聞いておこうかしら」

 

改めて、僕は自分の名前を言っていないことに気が付いて、慌てて自己紹介をした。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回は能力ばかりを追っていて、説明的だったと思いますが、ご了承ください。

さて、ついに過去編にての原作キャラとの出会い。
これがどういう事に繋がっていくのは、また今度本編で……
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