閑話フラワーマスター視点、三部作…2作目です。
ひまわり畑から少し歩いた草原が広がっている土地に、私の家がある。
家と言っても、以前住んでいた家とは違い、外観も内装も小屋と言 うべきボロさ加減だったが。
辛うじて残された腕力で木をへし折って作った小屋は、私に残された時が残りわずかだという事を表していた。
昔は、昔なら…あれが出来た、これが出来たと頭に浮かび、どうし ようもなく自分が弱くなったと実感させられるのだ。
小屋…家もそうだ、昔なら…昔なら私は能力も使って豪華な装飾を凝らした家を作った、作れた。 そうそう豪邸のような館を乗っ取ったこともあった。
「う…ああ、いやだ、いやだ…まだ私は消えたくない…消えたくない」
家の冷たい床に突っ伏して、一人いる孤独から時折襲ってくる消滅への恐怖に必死に抵抗しながら、また次の日の朝を迎えるのだ。
そんな心でさえも壊れかけてしまいそうになった時だった、彼に出会ったのは。
「あら、こんな所に人間なんて珍しいわね」
焦げ臭い匂いが漂ってきたので、火事でも起こったのかと思い、大切な花にその被害が行っていないかと急いで見に行ってみれば、そこには少年が一人顔を川に突っ込む形で倒れていたのだ。
それも全身を雷に打たれたように黒く焦がして、だ。
明らかに異常だった、空は雲一つ無い晴天だったし、雷がこの少年だけに落ちるというのは考えにくい。
私はとっさに臨戦態勢をとって、辺りに注意を走らせた。
能力、誰か能力を持つ奴がこの少年を焼き殺したと思ったからだ。
その場に居合わせた私を次に襲ってくると感じて、草原の向こうや背後に気を配ったが、まるで気配が感じられない。
久しぶりに骨のありそうな奴と戦えるかもしれないと若干期待していた私は、いささか拍子抜けしてため息をついてしまった。
「はぁ…逃げたのね、でも姿だけは現して欲しかったわね」
でなければ、追撃が出来ない。
必死に逃げる愚か者に、二度と私の目の前で粗相をしなくなるような絶望とトラウマを植え付けられない。
「それにしてもまあ、酷い有り様ねもう人間がどうかも分からないじゃない…
え、これって、うそでしょ」
少年を焼き殺した犯人は、逃げたわけではなかった。
いや、少年自身が自分を焼いてしまっていたのだ。
能力の暴走、私の友人にも経験のある者がいて、自身の能力が自分に牙をむいてくるとても恐ろしいものだったと聞く。
制御出来なければ、能力の多様性の有無で最悪死ぬ可能性まで出てきかねない暴走、それが此処で起こったのだろう。
「……ふふっ」
自然と口元があがっていくのが分かる、私は何十年ぶりに笑っていた。
これは面白いものを見つけてしまった、消滅するまでの暇つぶし程度にはなるだろう。
黒く焼けただれていた少年の身体が、まるで逆再生するかのように、肌色を取り戻し始めたのだ。
黒い死んだ皮膚は剥がれ落ち、中から新しい皮膚が少年を形作っていく。
能力が少年を生かそうとしている、暴走するほど危うい能力が、焼き切った身体をまた完全に再生させる。
あの「亡霊」の持っていた能力とは反対の死を回避させる能力なのか、それとも「鬼」や「仙人」のように高速で肉体を回復させる肉体を作る能力なのか。
それにしてもこういう形で人間の身体が回復していくのを見ていると、私たちのような人外を目にしているような懐かしくも悲しい思い出を連想してしまう。
何の能力なのかは理解できなかったが、この能力が人間には、ましてこんな小さな少年が持つ力ではないことは理解出来た。
似ている。
そう、あの紅白の衣装を身にまとった巫女のような、圧倒的な才能をこの少年から感じたのだ。
人間というもろく弱い存在でありながら、私達に負けない力を誇った彼らと同じ雰囲気をわずかながら、匂わせていた。
では引き続き1時間後に投稿される最終部もお読みください。