東方闇月城   作:スマート

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はい、八話となりました。
ここまで来ましたがどうでしょう、面白かったでしょうか?



No.008「ひまわり畑」

結局、引っ越しに納得した僕が田舎に行くことになったのは、色々な手続きをしなければならなかい事もあって、時間は否が応にも伸びてしまい、7月の中旬頃になってしまった。

 

御近所への挨拶、市役所への区民登録変更届け、医者のカルテの引き継ぎ、最後に荷物の引っ越し先へと配送。

 

それら全てをお金のない篠山家が行おうと言うのだから、約4ヶ月はかかってしまう。

 

やっとこさで僕は父の用意したキップを持ち、駅のホームへと並んでいると黒い鉄の塊が轟音とともに何かが駅に向かってくるのだ。

 

黒煙が青い空を灰色に染め上げ、巨体が放つ振動が駅全体にまで振動し、僕の体を揺らす。

 

「な、なに?」

 

円柱を横に倒して煙突を付けた様な、全身真っ黒な奇妙なデザイン。その後ろには何両もの長方形の箱が繋げられている。

 

黒煙をもうもうと吐き出しながら、重い体を強引に引きずって来た黒い何かは、引き裂くような高い金属音を上げながらホームへと入りゆっくりと速度を落としていき、停車した。

 

「汽車…?」

 

その見るものを威圧する重量感と黒光りする車体の光沢に圧倒されてしまった。

 

確か、現代日本の鉄道は汽車ではなく電気で動く、電車ではなかったか。

 

汽車など本やテレビの知識でしか知らなかった僕は、この走る巨体が本当に汽車なのか疑わしかった。

 

だが、そんな僕の疑心も続く母の言葉に軽く解消されてしまう。

 

「そういえば、直人は汽車を見たことがなかったわね。

 

そうよ、あの大きな奴が汽車…詳しい話は言えないけれど、もともと汽車は廃線だったのよ」

 

「衰退した現代日本の象徴だ」

 

母のか細くなってしまった言葉に、父が悔しそうな声で言葉を繋げた。

 

日本人口の凡そ3分の1を奪った最悪の戦争、その対価として今の日本は電気を上手く作り出すことが出来なくなっているらしい。

 

後に父の口からきいたことだが、引き分けに終わった戦争は、その実敗北することよりも辛い現状を今の日本に与えていたらしく。

 

日本は仕方なく電気の代用品として、幸い日本近海で大量にとれるメタンハイドレートを使用し、発火発熱する性質を利用して水蒸気機関に応用しているということだった。

 

だが、このメタンハイドレートも石炭や石油と同じで数限られた資源のために、電気のように多様なエネルギーから作り出すことはできなかった。

 

現在、都市の移転や街の復興などと重要な建築は、そちらに注がれているため電力発電所の建設は未だ再建のめどが立っていないというのが現状のようだった。

 

メタンハイドレートが切れるまで、使い潰すというのが今の政府の方針らしかった。           

 

「まさか汽車に乗る日が来るなんてね、ほんの10年前までは考えられなかったわ」  

 

「ああ、そうだな」    

 

汽車の本数も節約のため、1時間一本というように決まっていたため、少し込み始めた汽車の奥の方の席に腰掛けて、母は流れる景色を楽しそうに眺めていた。

 

父もそんな様子の母を慈しんだ目で見て、僕を膝の上に乗せてくれた。線路を跨ぐたびに大きく揺れる車体の振動が心地よかった。

 

汽車の内装は、これといって両親の言う電車のものと変わらないらしく、長方形の箱のような車内の側面に並べられた、赤い椅子。

 

そしてそれほど高くない天井に吊り下げられた、丸い輪が先端に付いた釣り革があり、変わったことと言えば汽車の出す速度が遅いので窓を開けることが出来ると言うモノだという。

 

「重くなったな」    

 

それだけ言って、父は大きく僕の肩を叩く。

 

心なしか父の顔は嬉しそうで、僕の成長をまるで自分のことのように思ってくれているようだった。 

 

「うん、いつか父さんみたいな筋肉をつけて、母さんを支えてあげるんだ」

 

「そうか、成長したな」    

 

頭を撫でる父の手のひらと、心地よい揺れについ眠気を催してしまい、僕はいつの間にか父に背中を預けて寝てしまった。    

 

ふと騒がしくなってきた雰囲気に目が覚めて顔を上げると、母が僕を揺すって仕切りに窓の外を指さしている。

 

「どうしたの ? 」  

 

「直人、ほら見てみなさい、凄いよ ! 」    

 

母に言われて後ろを向くと、そこには流れる景色の中に終わりがないほど奥深い、地平線まで埋め尽くされた黄金の畑が広がっていたのだ。

 

「うわああっ……」    

 

思わず声を出してしまう、これは本当に凄い。    

 

一面がひまわりで覆い尽くされた光景は、とても圧巻で感動的だった、まるで何百もの太陽に照らされているような、明るいき持ちになる。    

 

晴天に輝く太陽と黄金の地面、二つの輝きが合わさり、黄金の宮殿にも引けを取らない、絵にも描けない美しさと言った感じだった。  

 

「あれ、あそこに誰か立ってるような…」    

 

ひまわり畑の奥の方、意識を集中してじっくりと見なければ分からない程遠くに、どこか不思議な人影を見た気がしたのだ。そう、いつも風呂場で出会うような人影と似通った独特の雰囲気。

 

もっとも、こちらの人影の方が強く、そして鮮明にその存在を感じられた。

 

しかし、もっとよく姿を見ようと身を乗り出したところで、汽車は僕の事に構わず走りつづけ、やがてひまわり畑は見えなくなってしまった。

 

「大丈夫よ、あのひまわり畑の近くだと思うから、お婆ちゃんの家は」

 

「え ? 」

 

「思い出したのよ、昔、私がここへ来たときにも見たことがあったのよ。

 

あの一面を覆う黄金の景色、その時はいくら探しても見つからなかったけれど、多分家の近くなのよね…」

 

ここで言うお婆ちゃんは、父にとっての母なので、結婚してからあそこの家に住み始めた僕の母は、親への挨拶などを含め、田舎には数えるほどしか来たことがないらしい。

 

ならば父なら、あの広大なひまわり畑について何か知っているのかと思い、乗っている膝の主の方を振り向くと、父はガラスに頭を当て静に熟睡していた。

 

「父さん……」

 

「疲れてたのね、引っ越しの準備の力仕事は全部お父さんがやってくれたから」

 

引っ越しの荷物配送も、専門業者に頼めば、それだけお金がかかってしまう。

 

少しでも経費削減と、父は配送のみの荷物配送を選択し、荷物の梱包や家具の積み込みは全て自身の手で行っていたのだった。

 

父の手には、なれない荷物を持った所為で付いてしまった擦り傷や、打撲、切り傷が所々についている。

 

この人は一体どれだけ家族を愛してくれているのだろう。

 

普通の人間なら、いくらお金がないとはいえ、家族の為に自身を此処まですり潰してまで頑張ろうとは思わないだろう。

 

江戸時代、明治時代の厳格な家長としての父の時代はもう古く、今では優柔不断ななよなよした父親が一般化してきている。

 

草食系と上手く言うが、物事を女性一人に決めさせている彼らはだらしがなく威厳とはかけ離れていた。

 

そんな他人の父達とは違い、精一杯家族に尽くす父の姿は何時思い返してもまだ、追いつけない存在だと痛感する。

 

あれが本当の自己犠牲だと、自暴自棄ではない家族を思うが故に行動に示す愛なのだと思う。  

 

「ありがとう、父さん」  

 

呟くと、その言葉が聞こえていたのか、父の腕がそっと肩にまわされたのだった。 温かく、何時までも包み込まれていたいと感じ、此処のそこから安心できる父。 この温もりは何年と経った今でも覚えている。




毎日読んでくれている方は、ありがとうございます。
今日初めて読んだという方は始めまして、スマートです。
今回の話からやっとリメイク色が強くなってきたのではないのでしょうか。

過去の作品から読んでくれている方々には本当にご迷惑をおかけしました。

矢張り最近、チルノやルーミアなどのちっちゃい子が可愛くなってきました。
ですが大丈夫です…これは父性のようなもので決してロリ○ンではありませんっ…たぶん。

些細なことでも良いので、ご意見ご感想をお待ちしております。
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