あと、オリジナルスタンドのレパートリーが少ないので、ジョジョからスタンドを借用すると思います。
スタンドだけでなく、魔術や天響術、眷獣やフォニックゲインなどを含めたバトルを展開する予定です。
この物語は、ジョジョの四部とペルソナ4の日常的なものと異能力による事件を合わせた感じを目指しています。
主役はマリア・カデンツァヴナ・イヴの息子の遠山鋭次です。
富士山近くの鬱蒼とした深い森。
登山道から大きく逸れた場所へ足を踏み入れている。
生まれてから人より優れた五感と特殊レーダーを使って場所を把握している。
司令部から着信が入る。
俺は低く声変わりしても、女性と勘違いされる自分の声を発して応答する。
「もしもし、こちらベオウルフ。目標の代物を回収に向かっています」
『こちらスイッチ。目標まで俺がナビゲートする。どうぞ』
司令じゃなかった、か。
まぁ、スイッチと話す方が気が楽だな。
「スイッチ。今回の代物は、聖遺物ですよね?」
『そうだな。もっともそういうオカルトなのは俺の専門外だがね』
「ハハハ。確かに。俺もどちらかというと、あなた寄りの思考ですね」
樹々の根っこが所々足を躓かせる。
舗装されていない道だが、特にこけたりするような怪我は負っていない。
すれ違う人などいるはずもない。
「いったい、どんな聖遺物なのか、訊かせてもらってもかまいませんか?」
『それなんだが、俺もよくわからないんだ』
なおさら困ったな。
「司令以外にもいるでしょう? エルフナインとか」
『彼女なら、先ほど零次と一緒に調査に出ているんだ』
やっぱり困った。
兄さんと一緒に行ったのか。
時間が掛かるんだろうな、とエルフナインに哀れむ。
「やれやれだね……」
そんな独り言を言っていると、目の前に川が流れていた。
対岸までとても距離のある大きな川だ。
とても澄んでいるような川に自分の顔を覗き込み、水面に映した。
高校一年生の男子だというのに、母親譲りの美人顔。
短いピンクの髪には、自分が生まれつき直らない犬の耳を思わせる癖毛をしている。
母と妹は猫耳ヘアーをしているが、あれはオシャレであり、ちゃんとストレートにできる。
それに引き換え、俺のこの癖毛はなんだ。
なんで、聴覚に集中したり、感情の起伏で癖毛が動くのだ。
これをあらゆる機関に訊いても、「さぱらん」という答えが返ってくる。
異世界に行った際にも、旅の仲間にしょっちゅう訊かれた上に、からかわれたりしている。
挙句の果てに、兄を器にしてついてきた女からの呼ばれ方がむかつく。
「エボ」はまだ許せる。兄さんも「レボ」と呼ばれているし。
だが、犬扱いどころか犬よりひどい扱いしてくるのは腹が立つ。
見た目が可愛いのが余計に腹立たせる。
兄さんは大丈夫だろうか。
大丈夫じゃなかったら、ドラゴン化されて困ってるか。
まぁ、兄さんに限ってそんな事態に陥ることはないだろう。
兄の心配はしないでおこう。
まずは目の前の川を普通に超えられるか、だな。
周りには、橋や代わりになるようなものはない。
つまりは、この川を超す手段がここにはない。
そうなるな。
だったら、自身で超すしかない。
対岸までは、ザっと10メートル。
いける。
木の根で凸凹しているが、助走はできる。
俺は5メートルほど川から離れて、凸凹の道を走り出す。
そして、川の手前から大きく飛び越す。
余裕だったな。
ただ、帰るときに聖遺物が大きかったらどうしようか。
まぁ、その時は【ベオウルフ】の出番だな。
いつもは警察の手伝いみたいな仕事をしているんだ。
これくらいの使用は許してくれるだろう。
そして、しばらく静かな森の中を歩いていく。
人が踏み入れた形跡が見当たらない。
もはや登山道を逸れた、というより、遭難のレベルの場所にいるな。
ここに来るなんて、自殺志願者か本当の遭難者くらいだろう。
またも着信が入った。
「もしもし、ベオウルフ」
『もしもし、こちら司令よ』
聞き慣れた女性の声――。
「司令ですか。今までどちらに?」
『国会に参加してたわ。特にこれからの活動に変化はないわ』
「歌姫であるあなたが、国会に……」
「変な感じだな」とは心の奥にしまっておこう。
『それを言うなら、あなただって歌姫・マリアの息子じゃない、鋭次』
はぁ、母さんの名前まで持ち出すか……。
「母さんが「翼はちゃんと結婚できるかしら」と嘆いていましたが?」
『……今は任務に集中しなさい。ベオウルフ』
痛いところを突いたかな。
急に真剣になり出したぞ。元防人。
「ところで、今回の聖遺物なんですが、いったいどういう代物なんです?」
『そうね。そろそろ話した方がいいでしょう』
ってか、どんなものなのか知らされてねぇんだよな。
俺じゃなかったら遭難になるような道を行ってますし。
『その聖遺物は、【矢】」
「【矢】?」
「名称はないんですか?」と訊き返した。
『ええ、それは【矢】ということよ』
「いったい、なんでそんなものが?」
司令が『長くなるわよ』と前以って言ってきた。
『関ケ原の戦い、石田三成と徳川家康の戦のことはわかるわね?』
「ええ。確か、石田三成率いる西軍が優勢の時に小早川秀秋による謀反によって、他の大名も家康の東軍に寝返ったと」
『話が早いわね』
「馬鹿ではありませんよ。それが今回の【矢】が関わっているんですか?」
『その謀反をした小早川秀秋が関係しているのよ』
「まさかと思いますが、痺れを切らした東軍が秀秋に放った【矢】を探し出せ、って言いませんよね?」
『話を最後まで聞きなさい』と怒られた。
正直、そんな話だったら、愚痴の一つを返そうかと思った。
『秀秋は最後まで西軍に就くつもりだった前提で聞いてほしいの』
「わかりました。続きをお願いします」
俺の鼻になんだか異臭、というべきか、死臭というべきか、しかし血生臭いものではない、なにかを感じ取った。
気のせい、ではないよな。
多分、司令の話に関わることなのだろう。
『小早川秀秋は西軍と東軍から誘いを受けていたの。それを東軍の話を蹴るつもりでいたのよ。戦になっても西軍には被害がなかったらしいわ』
異臭に近づいていく。
なんでだろうか、なにかに憑りつかれそうな感覚に陥った。
『しかし、秀秋の臣下たちは東軍に就く気だったの。だから、秀秋が西軍に攻撃しなかったのを邪魔に思ってしまったのよ』
異臭に近づく。
そして、揺れる葉っぱの音が次第に大きくなっていくのを聞こえる。
普通じゃない。
『だから、臣下たちは東軍から受け取った【矢】で秀秋の暗殺を考えたの。だが、【矢】に貫かれたのに生きていた。恐ろしい力を得てね』
司令の話がホラ話だとは思えなかった。
鳴りやまない木の葉の音、漂う異臭、近づくにつれて魂を冷やすかのような冷気。
『恐ろしい力を制御できなかった秀秋は西軍を攻撃し始めた。その光景を見ていた中立を保ってきた武将たちは続けて西軍に攻撃した。おぞましい姿に恐れてね……』
それから数秒、話の続きを待ったが、反応がない。
「司令、聞こえますかッ!? 本部ッ!?」
鋭次は段々周りの状況に呑み込まれそうになる。
そうなる前に、俺は左腕の蒼銀の腕輪を掲げた。
「ベオウルフッ!」
すると、服装が粒子となり、蒼銀の武装が取り付けられる。
蒼のインナーに、蒼銀の装甲が取り付けられる。
両腕には蒼銀の籠手が取り付けられている。
両足に仕込み剣の銀の靴が取り付けられる。
両腰に拳銃、後ろに小太刀が一振りが外付けされる。
頭には狼の耳を模したマイク付きのヘッドフォンが付いている。
力が溢れてくる。
だが、周りの気味悪さが振り払えたわけじゃない。
「本部ッ! 聞こえてないのかッ!?」
本部からの反応がない。
俺がベオウルフを纏ったことは、確認できているはずだ。
とにかく、異臭の元凶をどうにかするしかない。
俺は匂いを辿って、足を進める。
ベオウルフに纏ったことで、速くなった。
それでも、謎の冷気は振り切れない。
なにか、なにかあるはずだ……。
こういうのは、兄さんの役目なんだが……。
匂いが強くなっている。
この、土か?
本部からの返事を待ちたいが、通信ができない様では仕方がない。
俺は独断でその場所を掘り起こす。
「ウララララッ!」
俺は土を勢いよく掘り起こす。
すると、白く固い石のようなものを手に触れた。
俺は拾い上げて、ベオウルフの鑑定機能を起動する。
『人骨の指と断定。遺伝子情報を取得中……』
「ひぃッ!」
俺は思わず人骨の指の骨を捨てた。
こんなものを掘り起こすなんて、罰当たりもいいところだぞ……。
まさかと思うけど、ここら辺の土の中はそうなのか……?
唾を呑み込む。
冷や汗をかいた。
だけど、ここで俺がやらないと、この危険な雰囲気、死人に魂を持ってかれそうな感覚は拭えない。
「恨んでくれんなよッ!」
俺は人骨があった方を掘り起こしてみる。
その瞬間、土からなにかが俺の左手を突き刺してきた。
「ッ!? なんだッ!?」
痛みよりも、左手に刺さったものを確認した。
それは【矢】の形をしていた。
「もしかして、司令が言ってたものって……ッ!?」
俺は左手からその【矢】を抜こうと考えた。
そう右手を動かそうとした時、異変に気付く。
俺の右手から半透明な腕が出てきた。
【それ】は俺の左腕から【矢】を抜き取った。
俺は怖くなって、土に尻もちをついた。
そして、【それ】の後ろ姿を見上げた。
【それ】の姿は、蒼い狼の毛皮のフードのパーカーを被った銀色の人だ。
腰の背中に、小太刀が備えられていた。
俺と同じくらいの背丈、だろうか。
【それ】はゆっくりと俺に顔を振り返ってくれた。
鼻までフードに覆われているが、蒼い瞳と開いた口から見えた鋭い犬歯が見えた。
【それ】は矢を握って、俺にゆっくりと近づいてくる。
自然と【それ】がしようとすることが理解できた。
いや、わかっていた。
【それ】は俺の敵ではない。
俺は【それ】と向き合って立ち上がった。
「お前は、誰、なんだ……?」
俺は思わず訊いた。
【それ】は俺の顔、の右すれすれを殴った。
俺は後ろへ振り返ると、亡霊、と呼んでもいいなにかが霧状になって消えかかっていた。
俺の震えが止まった。
異臭も、冷えも、周囲の異変が治まった。
やがて、亡霊が消えると、【それ】は口を開いた。
「俺はお前だ」
突拍子のない言葉だった。
だが、素直に受け入れられた。
腰の拳銃や小太刀を抜くつもりはなかった。
むしろ、手足を自在に動かせられる。
「俺はお前の傍にいる。お前の傍に……」
そう言うと、【それ】は消えていた。
俺の中に入るように。
俺はさっきまでの恐怖感が嘘のように消えていった。
でも、通信は回復していない。
ここから立ち去ろう。
だが、その前に。
掘り起こした骨を土に埋め直した。
成仏してくれよ……。
俺は来た道を戻っていった。
ベオウルフは川を越えてから解除しよう。
そう思っていると、足音が聞こえた。
俺以外の誰かだ。
こんな森の奥に、誰が来ているんだ?
途端に、その匂いは消えていった。
匂いが消えた?
まさか……。
俺は急いで川まで走った。
ベオウルフを纏ったから早く着いた。
微かな匂いを辿って視線を送る。
そこには、靴とスーツと雑多なものが置かれていた。
やっぱりか。
ここで投身自殺していったんだ。
匂いが消えてから一分も経ってない。
川へ飛び込めば、まだ助けられるぞ。
ベオウルフは高機動だが、陸地用のものだ。
水中だと、生身よりは動けても、急激な川の流れには逆らえない。
幸い、この川の流れは穏やかだ。
とにかく、助けに行かなければ。
「はッ!」
俺は大胆に川の中へ飛び込んだ。
さっき水面に覗き込んだが、思った以上に深い。
とにかく、最悪な事態にならないうちに捜し出さないと。
ベオウルフが水中稼働限界時間を表示してくれた。
30分か。
充分すぎる時間だ。
俺は下流へ泳いでいく。
やっと、黒い物体が目の前に沈みかかっているのを見つける。
おそらく、川に身を投げた人だ。
身動き一つしていない。
意識を失っているのか?
とにかく、近づかなければ。
しかし、川の流れが強くなっていく。
その勢いに乗って、なんとかその人を掴んだ。
腹の部分を抱えると、柔らかな胸が腕に乗っかかる。
この人、女だったのか。
まずい。
鼻血が出てきた。
川の中で良かった。
いや、よくない。
川の流れが強い理由がわかったからだ。
滝になっているんだ。
なんとか、浮上しないと。
俺は水面に浮上した。
「ぷはッ!」
抱えている女性が息を吐いた。
意識はないのだろうが、生きている。
だが、どうする?
ここから滝まで、もう目と鼻だ。
落ちる寸前なのが目に見える。
なんとか、陸地まで。
駄目だ。
岸が高すぎて登り切れない。
滝から離れようと泳いでいるが、吸い込まれていくように落ちていく。
このままだと、落ちるのが目に見える。
こうなったら、水中で蹴り上げるものはないか?
そこから跳んでいけば、空中でまた跳んで岸まで上がれる。
足に、なにか。
なにかつっかえてくれ。
そう願った。
このままだと、滝から落ちる。
そうなれば、俺は無事だろうが、この人は助からないだろう。
頼む。
願った瞬間、俺の足を両手に乗せられた感覚があった。
誰だ?
こんな水中に、滝の近くにいるのは?
「お前は俺が押し上げる。あとは言う必要はないだろ?」
俺はその言葉を信じた。
俺自身と名乗った【それ】だ。
タイミングは図れた。
そして、一気に水面から押し上げられて跳び出す。
そこから、空中で空気を蹴って岸まで降下する。
俺は女性を寝かして、水中にいる【それ】を捜そうとした。
だが、すぐに無駄と悟った。
【それ】に背中を叩かれたか、俺の中から囁かれたかはわからない。
だが、【それ】が無事だということはわかっていた。
俺は女性の呼吸音を聞きながら、本部との通信を試みた。
本部との通信は繋がった。
繋がった後は、すぐに救急車の配備を依頼した。
そして、俺は女性を抱えて、森から抜けた。
救急車はすぐに来てくれた。
俺は安堵の息を漏らすと、救急隊に女性を任せた。
司令からは、「明日、報告に来なさい」とだけ言われた。
司令の話のことは、身に染みてわかったのだから報告したかったのだが。
家に帰ってから報告書としてまとめることにしよう。
俺はバイクの白龍(パイロン)に乗って、高速道路を移動していた。
こいつは自律AI以上の意思を持っているオートスコアラーと呼ばれるものだ。
だから、馬と同じ、と言うとこいつは怒るが、こいつも生きているものなのだ。
「お前にも、心配かけたな」
なにしろ、スピードを速度違反ギリギリで走っているからな。
大丈夫かな。
怒らせないようにしないと。
「白龍、今度の休み一緒に走ろうな」
速度は落ちない。
なぜだ。
……まさか。
「白龍、あお先輩も乗せるっていうじゃないだろうな?」
速度は落ちた。
どこからか、ピンポンと鳴った。
「無茶を言うなよ……。俺がどういう体質か知ってるだろ?」
白龍は速度を上げず、クラクラと車体が揺れた。
「奥手とか思ってんだろッ! そうだよッ! 経験ねぇよッ!」
俺はなんで高速でバイクと口論してんだろう……。
俺は白龍を車庫に入れて、シャッターを閉める。
「今日はおやすみ、白龍」
クラッチライトで返事してくれた。
シャッターを閉めると、家のドアに手をかける。
「ただいま」
兄さんは帰っているのだろうか、と思いながら開けた。
返ってきたのは、あの人だった。
「おかえりなさい、鋭次君」
源内あお。
俺の家で保護している、兄さんのクラスメイトで、俺の一個上の先輩だ。
あお先輩が俺の頭を撫でてきた。
この人は、俺を弟のように扱ってくる。
でも、そんな風にされるのは複雑だけど、嫌いじゃない。
俺はこの人のことを……。
「えッ?」
「なッ!?」
あお先輩は不意を突かれ、俺も驚く。
あお先輩の手を俺がしまい込んだ矢が突き刺していた。
「いたぁッ!」
「あお先輩ッ!」
とりあえず、スタンドと矢を登場させました。
鋭次がスタンドを知るのは、後になってからなので、まだ全容は知りません。
指摘や感想などを頂けると幸いです。