破壊神は世界最強にして最凶   作:小説七つ球

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普通に奈落へ行くっていうだけだったのに勇者がごねるから哲学の話になっちゃったじゃないか!
それにしても…

うわっ、オレの頭、悪すぎ…?


奈落冒険記0日目 しばしの別れ

「な、なんで…なんで仲間である檜山を殺したんだ!」

 

数分後か、或いは数十分後か、殆どの者が我に返ったところで、天之河が問い詰める。何故仲間を殺めたのかと。

 

「は?ハジメに攻撃をした時点であいつは仲間じゃない。お前らだっていやだろ?味方を感情一つで何の躊躇もなく殺そうとする奴に背中を、命を預けることなんざ御免だろ?少なくともオレは嫌だな」

 

「な…?!」

 

「感謝しろよ?味方の不穏分子を一つ始末したんだからな。そもそも戦場において私情を優先させることなどあってはならない。物語みたいに私情を優先させた結果事態が好転するなんてことは殆ど起こらない。ま、檜山をあそこまで嬲った理由の二割がハジメを虐めてた檜山に対する私怨だったオレが言えた口じゃないが」

 

「い、イジメ…?そんなのなかったじゃないか!嘘を言うな!」

 

しかし、霊呉は檜山は既に仲間ではないという。それどころか不穏分子呼ばわりし、戦場に私情を優先させるなと説く始末。そして檜山がハジメをイジメていたと言い出す。しかし勇者にとっては仲間がそんなことをするなんてありえない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)のだから認められるはずがない。よって霊呉が嘘をついているという結論付けた。

 

「ウソじゃない。ハジメは優しいから誰にも言わずにため込んでいたみたいだが精神をすり減らしているあいつを見て我慢ならなかったから……召喚の一週間くらい前だったかな、あの四人の腕を折った」

 

 

「は…?」

 

「その時に言ったんだがな。次は殺すって。そしてあいつはまたやった。だから殺した」

 

その告白にほとんどの者は衝撃を受ける。ましてクラスメイトの腕を容赦なく折るだけでなく殺すだなんて、と。

 

「ま、そんなことはどうでもいいんだ。天之河。さっき、お前なんでハジメがすでに死んでいるだなんて言ったんだ?」

 

「そ、そんなことどうでもいいだろ!論点をずらすな!!」

 

「そんなこと?弟を勝手に死んだことにされて黙ってられるかよ」

 

「だ、だがこんなところから落ちたら生きてるわけないだろう!」

 

「じゃあなんでハジメよりステータスが低い香織は生きているんだ?」

 

「そ、それは…」

 

しかし今度は逆に霊呉がハジメが死んだことになっているのになぜ香織が生きていることになっているのかを問いただす。天之河は最初は言い返していたがすぐに言葉に詰まる。

 

「何でもかんでもお前の思い通りになると思うなよ。香織や雫はお前のものじゃないし、お前の正義が絶対じゃない。むしろこれから戦争するんだったらそんなそんな正義…いや、子供じみた妄想なんて捨てちまえ」

 

「なっ…!」

 

「それに…勇者や英雄って何をしたらそう呼ばれるようになると思う?」

 

「そんなの…誰よりも多くを守ったからだろう!」

 

「残念、不正解。正解はだれよりも多く敵を殺したからだ。お前にはあるか?魔人族という()を誰よりも多く殺す覚悟が」

 

「くっ…俺は誰も死なせない!皆を守る!」

 

「言うは易く、行うは難し。人間一人じゃ限界がある。完璧、完全、まして全知全能なんてものは存在しない。人は常に不完全だが、不完全なりに試行錯誤しながら生きてきた。その過程で多くの過ちを犯し、争いは絶えず発生した。理由はいろいろあるが…それでも先人たちが流した血を、それを糧に学び、活かしてきた。お前はそれらから何も学んでいない。学校の授業で習うようなことすらな」

 

「…っ!結局何を言いたいんだ!」

 

「お前じゃ何も守れない。少なくとも今のままじゃ、な」

 

それっきり、天之河は何も言うことはなく、うつむいてしまった。

 

(…不味いな、檜山以上にデカい爆弾に火をつけたかもしれん)

 

なにか嫌な予感を感じながらも霊呉は奈落へ歩みを進める。そんな彼を呼び止める存在がいた。雫だ。

 

「…霊呉君、本当に、行っちゃうの?」

 

「ああ、あの二人だけだと心配だからな。少なくとも…タキシードか黒紋付羽織袴(くろもんつきはおりはかま)かは知らないが、弟の祝言を見届けるまで死ぬつもりもないし死なせもしないからな」

 

「そう…」

 

「…そう張りつめてると身が持たねぇぞ。昨夜も言ったがオレは…オレ達は必ず帰ってくるし、護国たちもいる。何も心配することはない」

 

そう言ながら、霊呉は雫の頭を撫でる。その手つきの気持ちよさに思わずふにゃ、と顔をほころばせる雫。それを見て慈しむような表情を浮かべる霊呉。

しかしすぐに真剣な表情で雫にしばしの別れを告げる。

 

「それじゃ、雫。またな」

 

「…うん」

 

「大地、海蛾、龍魏!…頼んだぞ」

 

「うん」

「えぇ」

「ん、行ってこい」

 

多くは言えないが、しかし、四人は数千年もの付き合いだ。言葉は足らずとも伝わっている。そんな何かを霊呉に頼まれた大地、海蛾、龍魏に見送られながら、霊呉は奈落へ身を投じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで…俺は勇者だ…俺が正義なんだ…アイツは悪なんだ…俺に歯向かう…悪だ…」

 

深夜、王宮の一室で一人の男が静かに、しかしその眼は確かに黒く濁っていた。その男は眠りにつくまで怨嗟の声をつぶやいていた。




因みに霊呉があそこまでやった訳は、
意図的に味方を殺そうとしたため。
前述に関しては放っておくと天之河が余計なことを言い、更に教会がなんやかんやで有耶無耶にするだろうから今のうちにやった。
檜山は後々更にとんでもないことをやらかすだろうと推測したため。
今後このようなことがないよう見せしめにした。
今のうちにこうしておくことでFFやったら死刑という前例を作るため。
こんな奴と一緒にいたら気が気でないだろうからというある種の慈悲。
そして弟を虐め、あまつさえ殺そうとしたために爆発した私怨。

なお最初の2つと最後以外は(作者が)適当に考えた奴の模様。
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