難産だった…
奈落を降りること体感一ヶ月。
霊呉たちは既に五十階層程は降りていた。奈落の魔物は明らかに地上付近のそれとは別次元レベルに強いというのになぜこんなRTAみたいな速度で降りることが出来ているかというと、下に行けば行くほど強くなる魔物を次々と食べることで階層を降りれば降りるほど強くなるハジメと香織。さらに香織にはドンナーという異世界にあるまじき近代兵器を用いて治癒師故に不足している攻撃力を補えたこと。
そして何より霊呉の存在。単純に強すぎるのもそうだが、彼の加護の恩恵が大きいのだ。
具体的には常軌を逸した回復能力と再生能力、そして適応力。そのせいか、魔物肉を喰った直後は白髪で赤目だったのにもかかわらず、今は黒髪黒目と奈落に落ちる前の見た目に戻っていた。
とは言いつつもハジメは身長が伸び、体つきががっちりとしているし、香織は程よく筋肉が付いた上で
さて、なぜ彼らは既に下へ進む階段も見つけているにも関わらず五十階層に留まっているのか。その理由は現在彼らの目の前にある明らかに人工的に作られた石造りの扉である。
「…絶対中に何かいるよね」
「まぁ、テンプレだとそうなるだろうねぇ。ついでに開けようとしたら両脇の番人が目覚めるのも含めて」
「だからってそれに付き合ってやる義理もないが…なっ!!」
言いながら扉を蹴破る霊呉。ついでに両脇の番人像を破壊することも忘れない。
果たして、扉をくぐった先にあったのはまるで神殿にあるような巨大な石柱が二列に並んでおり、そして、その最奥に正八面体の様な物体から生えているナニかがあった。
「…誰?」
―――訂正、いた。この状況と少女の有様から何らかの事情で封印されているのだろうと推測した霊呉は奥にいる少女にその事情を聞こうとして…。
「「すみません、間違えました」」
「おい待て帰るな」
立ち去ろうとするハジメと香織を引き留めるのであった。
三人は破壊された扉の近くで数分ほど話し合った後、少女を封印から解放する方向で合意した。一応封印されるほどヤバい奴かもしれないという意見も出たが霊呉がそのときはそのときで殺すと言ったのでそれならいいかとなった。
さて、いざ封印を解くとなるとどうするのかということになるのだがこれは霊呉が正八面体の物体を殴り壊したことで解決した。これでいいのか、という思いがなかったわけではないが…。そしてもう少し探索したいと言ってあの部屋に残った霊呉以外は仮拠点として錬成で作った空洞に連れて行き、事情を聞くことになった(なお上に潜んでいたらしいサソリ型の魔物は天井から降ってくる途中で霊呉が
ハジメたちが自己紹介を済ませた後、ハジメはサソリモドキから回収したシュタル鉱石で香織のドンナーを改修するための作業に取り掛かり、香織がここに来るまでの過程を話し、少女の名前を聞こうとすると、
「名前、つけて」
一瞬意味を理解できなかった香織は思わず「前の名前はどうしたの」と聞き返したが、少女曰く、前の名前はいらないらしい。
変な名前を付けるわけにはいかないので香織は作業中のハジメと相談しようとしたところで、戻ってきた霊呉が事も無げに少女を本名で呼んだ。
「アレーティア、お前を封印した理由がこれにある」
そういって霊呉はソフトボールほどの大きさの宝石のような球を放り投げ、すぐに外に出て行った。魔力を流せば起動すると言っていたが少女――アレーティアは、呆然とした様子で霊呉が去ったあとを見つめていた。
「……で、どうするんだ?」
拠点を出た僕らに対し拠点の入り口に立っていた兄はそう問うた。その質問の意図に気づかない程僕らはバカじゃない。
真の敵を知った上で、どうするかを聞いているのだと。だが、敵が誰であろうとやることは変わらない。
「故郷に帰る。それを阻む者は誰であろうと、たとえ神だろうと倒す」
「私も、ハジメ君と一緒に行く。例え地獄の底だろうと着いていく」
「なるほど、二人の覚悟はよくわかった。…アレーティア、お前はどうするんだ?」
兄がアレーティアに目を向けると彼女は俯いて、まずは自分の気持ちを整理してから考えるとだけ答えた。
―おまけ―
「よし、それじゃ非常食。運搬よろしく」
「グルゥ・・・(´・ω・)」
「兄さん、確かに非常食だけどちゃんと名前で呼んであげなよ…そういや名前つけてないな」
「じゃあチハでよくないかな?」
「OK香織の採用ね。そんなわけでお前は今からチハだ」
「なぜに九七式中戦車やねん…もっと他にあったやろ…パンターとかティーガーとか…」
(きゅうな…なに?)
サソリモドキとの戦闘もちゃんと書こうと思ったけどめんどいのでやめた。どうせすぐ終わるし。