賢さはともかく、スピードとパワーはこれでカンストしている感じです
スタミナ根性は言わずもがな
『未踏への挑戦者』
エイヴィヒカイト
二つ名
世代最強
【ステータス】
スピード B+:799
スタミナ SS+:1200
パワー B+:799
根性 SS+:1200
賢さ C :400
【バ場適正】
芝 :B
ダート :C
【距離適性】
短距離 :C
マイル :B
中距離 :C
長距離 :C
【脚質適正】
逃げ :B
先行 :E
差し :F
追込 :A
【スキル】
豌ク蜉ォ縺ェ繧狗?濶イ縺ョ荳也阜縺ク Lv1
先頭の景色は譲らない…! 勝利の鼓動
大逃げ 大追込 ゲート難 冬ウマ娘×
スプリントターボ ハヤテ一文字 一陣の風 先手必勝
先陣の心得 全身全霊 尻尾の滝登り 決死の覚悟
烈風一閃 真打 迫る影 逃亡者
切り開く者 火事場のバ鹿力 鋼の意志
練習上手〇 切れ者 注目株
物珍しさが先行していたのだろう。それに加えて聡明だった両親は、その後に訪れる揺り戻しに備えて、周囲へ
珍しさは金になる。値千金の価値となる。今より古い時代に、身体にハンディを持つ者は見世物として扱われていた。今の時代にそうなっていないのは、人口全体の分母が増えて、それが唯一無二な存在ではなくなったからだ。だからまったくもって新しい、つまり新種が現れれば、寄って集る者は多い。
医学的な価値だけでなく、
しないでいてくれたのは、掛け替えのない思い遣り。数多も与えてくれた気回し、そのうちの一つ。
『どうして、おれっは、おとこのこなの?』
今思い返すなら、相当に困らせる質問だったように思える。
答えが出ない問い掛けという分類なら、世界平和ってなんぞやと問うのとさして変わらない。この時も、この後も、明確な答えは出てこない。
しかしながら聡明であった
『俺にも分からん。母さん分かるか?』
『うーん……どうしてかしらねぇ。わたしにもさっぱりだわ~』
そんな問いを毎日二回は聞いて、その度に面倒臭がる様子も見せず、真摯に向き合ってくれていた。
ただ、聞く度にあっけらかんとして答えてくれたのは、べそをかきながら聞いた身としてちょっとムカついた記憶がある。そんな軽さに何度も救われた側面もあるが、それも含めてが幼い頃の優しい景色。
『……また何か、言われたのか?』
四歳の頃。ドイツに親戚が居ると聞かされて、でもドイツが一体全体何なのか意味不明で首を捻っていた時期。
そしてこれは確か、メジロ家へと住まいを移して一年経った頃。
先の未来で
社会という枠組みに産まれたなら、社会の枠組みでしか生きられない。早いうちからその縮図に慣れさせていれば、これから先も生きやすくなる。谷に突き落とすような強硬策だ。だがそのおかげで、
『こわいって、いわれた……きもち、わるいって』
『……そうか』
『おれが、おんなのこだったら、い、っいわれなかった、のかな』
――もし過去に戻れるなら、このクソガキをぶん殴りたい。
腹を痛めて産んでくれた母親を前にして、そんなことを抜かすなど愚昧極まる。もし女の子で産まれていれば、なんてこと、他でもない
でも、その問いに関しては、母親は何も言わずにいた。父親は、その表情を見せないように顔を背けていた。
『今日は、なにが食べたい?』
寂しそうに笑いながら、頭を撫でてくれて、その度にそんなことを聞いてくれた母親。その笑顔の裏に、どれだけの葛藤と罪悪感があったのか。
気付けたのは中学に上がる頃。直接知る機会を失った
『んっ……ぐすっ……さんま、たべたい……』
『我が息子ながら渋いチョイスね~。任せてねっ!』
腕捲りをして、華奢に見える腕で力こぶを作り出す。幼い自分は、そんな些細で機嫌を取り戻した。
『ぬぬっ……なあ、デザートは何が食べたい?』
『……えっと……すとーん……?』
『スコーンか、任せてなっ!』
そう言ってぐしゃぐしゃにされた、父親と同じ黒髪。
二人のどちらでも『女の子で産んでやれなくてごめんね』と。そう謝ることは、二人の息子を否定することにも繋がっている。それに気付けたのは、中学半ば。だから彼女は、内に秘めて押し込めていた。だから彼は、歯を食い縛る顔を見せることは無かった。
強い人達だった。とても強くて、とても優しい人達だ。
そんな優しさに甘えて、毎日のように聞いて、毎日のように罪悪感を溜め込ませていたその餓鬼を、未だに許せない。
あんな表情をさせていたエイヴィヒカイトを、
謝罪の機会を喪失させた自分を、誰よりも自分が許さない。
罵詈雑言を浴びせる民衆よりも、不幸を押し付ける世界よりも。
エイヴィヒカイトは、エイヴィヒカイトが死ぬまで許さない。
「……チッ……」
目覚め一発目に出てくるのは、言葉でも声ですらなく、舌を打っただけの音。
悪くない夢だった。少なくとも、カイトの中では幸せな部類の夢だった。しかし今現在見る代物としては――――
「――悪夢もいいところだ」
「……おはようございます、カイトくん」
「あん……? ……なんでいんの」
機嫌悪げに洗面台へ向かえば、従姉の姿が見える。まだカイトは寝ているのか、はたまたマジで家に存在しているのか。普段なら前者だと即座に断言できるが、最近の親戚事情を鑑みれば、後者である可能性も否定できないのは悲しみ。
確かめるにはどうするか。昔から頬を抓ると相場が決まっている。
「あにひへふんでふか」
「……本物か」
軽く引っ張って見れば、このもち肌は多分本物。それを認識できれば、段々と思い出してきた。
感情面がぐちゃぐちゃになって、歩くこともできなくなったカイトを、連れて帰ってくれた立役者フラッシュさん。
あの後やってきたアルダンとは、ちょっとした言い合いになって、そこで更に精神を疲弊させたカイトは、もはやその場で眠りこけそうなほど疲れ切っていた。
「で、なんだっけ」
「昨日はバタバタしてましたから……今日もカイトくんは忙しいでしょうが」
「きょう……ああ……いや、どうせ退屈な作業だ。大した用事でもないよ」
「……カイトくん?」
相手が誰だろうと関係無い。どうせ勝つし、それ以外に未来はあり得ない。のんびりといこう。
「とりあえず朝飯食べながら――母さんの容態について、話そっか」
「……そうですね」
フラッシュには席を外してもらって、今は病院の屋上。
シーツが干してある晴天の下、吹きすさぶ風を一身に受け止めるアルダンの姿は、絵になるかもしれない。――至極どうでもいいが。
「叔母様のご容態は……?」
「ギリギリ生かされてる。いつ終わっても、おかしくないらしい」
達観した風を装い放った言葉が、すぐさまカイトの内をズタズタに引き裂く。
胃液がせりあがる不快を、無理矢理に飲み干した。
自らの酸が、自らの喉を軽く焼いて、その苦痛で冷静さを取り戻す。
「……そんなっ……」
「もしかしたら、今日中にでも……な」
もしもの話でなく、本当に起きうる事態。こうして話している間に、ポンと、そんな流れで終わってもおかしくはない。そう担当医は述べていた。
「寝てる理由は不明。起きない理由も当然不明。今の医学じゃ、いつ終わるのか分からない現状維持しかできないってさ」
「……カイト」
「それってさ、現状維持って言えるのかな。医者にしては曖昧に言うのが、ちょっと笑えてくるよな」
それが強がりなのか、現実逃避のおどけなのかは自分でも分からない。
言葉と表情が合っているかも分からない。
「……これから、カイトはどうするつもりですか?」
「どうって……どうも?」
「――」
そんなに驚くようなことだろうか。
カイトは変わらない。これまでも、これからも、母親が危篤になったからと言って、進む道を途中で引き返しもしない。
走って勝って、夢を叶えるだけだ。
「そんな……っ、叔母様には、会いましたか!?」
「会ってないよ」
「どうして!」
「会えないから」
そこも崩しはしない。もう既にカイトは母親を裏切ったのだ、今更声を掛けようだなんて虫が良すぎる話。
「……明日のジャパンカップは欠場しましょう」
「いやねーよ。出るに決まってんだろ」
一度出場が決まったのなら、欠場でもすれば逃げたなんて意見も出る。そんなのは夢を阻む最大の障害だ。無用な障害は、生まないように心掛けるのは普通だ。
優先順位は夢の達成が一番であり、どれだけ大切だろうがそれ以外は、それ以下の優先順位でしかないのだ。
「本気ですか……?」
「たりめーだろ」
「叔母様に付いているべきです! 夢よりも、優先すべきことが――」
「無いよ」
その即答は、何故か心臓が痛くなった。
「どうして……そこまでっ!?」
「――お前には、関係ないだろ」
問答が面倒に感じて、少しだけキツめの視線も付属させる。
冷たく突き放して、その言葉を投げかけても、不思議と心臓が痛む。でもいたくてくるしいことは、むかしみたいにのみこんだ。
「っ! ……カイ、ト?」
「……――――ま、とにかくジャパンカップは出るから。応援よろしく」
伝えるべきことは伝えた。バツの悪くなったカイトは、この場を立ち去ろうと背を向けた。これから担当医との話し合いもある。あまり話している時間も無いのに、これ以上押し問答を続ける意味も無い。
そんな背中へ、叫ぶような声が届く。
「――っ! 私は!」
「……まだ何かあんのか?」
「カイトが負けるように、祈っていますから」
「……はあ?」
それで、だから――それが、――――どうした。
その程度でエイヴィヒカイトが揺らぐと思っているのなら、それは自分を買い被りすぎである。
エイヴィヒカイトに勝つ以外の未来が存在しない以上は、応援の有無など些事だ。頑張れの一言二言、有ろうが無かろうが意味を成さない。あればちょっとのやる気に繋がる、その程度の差でしか無い。
「カイトは、負ければもう走らないのでしょう?」
「――――」
この発言には、些か驚いた。
本心が明け透けに読まれていた。トレーナーからは、それを話したとは聞いていない。ならこれは、アルダン自身が自ら探り当てたのだ。カイトが密かに定めていた己への戒めを、彼女はこうも当てて見せた。長い付き合いも考え物だ。
「そう、だな。負けたらそれまでって決めてある。その後どうするかも……決めてある。それを機に、もう二度と走らないのも確かだ」
「ならやっぱり、私は貴方が負けるよう祈っています」
「……秋華賞は応援してくれてた癖に」
「あの時は、カイトが心の底から勝利を望んでいましたから。でも……今は……」
なんだその言い草は。まるで今はそうでは無いかのような、そんな言い方を妙にする。
「楽しくもないのに叔母様を放って、それも怪我をしながら走るなんてバカげています!」
「……そんなつまんなそう?」
「見れば分かります! ……何で走るのか、ずっと不思議なくらいです」
他の人達は言及しなかったが、言わないだけなのだろうか。
どんな風に見えるかはこの際どうでもいい。結局行き着く結果が同じなのなら、走ることへの感情の有無は、エイヴィヒカイトとっては誤差の範疇でしかない。
やっぱりそんな言葉は、エイヴィヒカイトに響かない。
「カイトが目指す夢とは、一体何なのですか? 何のために、貴方はそこまで出来るの……?」
「…………歴史に、名を残すことだけど?」
「……いいえ、違いますよね。カイトの言うそれは過程であって、結果である夢はまた別の物、でしょう?」
「分かってんじゃん」
そこまでエイヴィヒカイトを理解しているのなら、肝心の夢の内容も理解してそうな気もするが。
「教えてください」
「……何だって、知りたがる?」
「貴方のことなら、なんでも知りたいんです」
「なんでもって…………――――ハッ――」
自分の中の致命的な部分は悲鳴を上げて、心境と相反する表情は、厭に口角を釣り上げた。
出逢わないようにしていた努力を無為に変えられたり、その結果逃れようとしていた
この瞬間まで十年来溜まり、淀み続けたモノが噴き出す感覚に抗いがたい。
おかしくなりそうなくらい、何もかもがどうでも良くなってきた。
アルダンの思い遣りも例外なく、邪魔でしかない。どうでもいい路傍に口を挟まれるのは、どうにも仄暗い感情が生み出される。
止める自分が何処にもいなくなって、周りにも止められる者は誰もいない。
手の届く範囲まで近づくのは、あまりに簡単すぎた。
「カイ……っ!? きゃっ!」
「――知って、どうする」
細く脆そうな首を掴もうとして――――襟元を軽く掴む。
きっと、決してアルダンが悪い訳じゃない。でもターフを走るごとに、日々を過ごす毎に蓄積されていく、自らへの鬱屈した感情がどうしてかここで漏出していく。
身を案じてくれているのに、そんな優しさに対する答えがこれか。つくづく自分はどうしようもない欠陥品だ。昔受けた数々の罵詈雑言が、今では自分へ向ける自己否定の材料として有効活用されていく。
それでも止めようとしない己には、呆れて失笑しか浮かばない。
「オレの中身を全部知って、それでどうなる! それで夢が叶うのか!? メジロ家と完全に縁を切れるのか!?」
「カイ、ト?」
「それともなにか? お前になんもかんもを話せば――母さんが、目を覚ましたりすんのかよ……!!」
一度外れたタガは、そう容易くは治りそうもない。流れ出す吐露は、止め時を知らずに垂れ流される。
見せたくなかった中身を、彼女が望んだように垣間見せてしまっている。
「だったら喜んで曝け出してやるよ! 隠し事もせず、望むままになんだって話してやるよ! ……でも、不可能だ……!!」
「……」
「お前が何を知ったところで、ちっとも状況は好転しないんだよ……! 夢はオレが自分で叶えないといけない! メジロ家のお前は常に縁を結び続ける! 母さんだって変わらず寝たきりで! それどころかいつ、その時が来るか……!!」
「でも……それ、でも……」
「分かれよ!! ……お前がオレを知ったところで、何にも変わらない……! ……変えられない。止めようとするお前の声をっ、オレが聞く訳ないだろうが!!」
個人的な感情はさておき、エイヴィヒカイトの望みを突き詰めれば、どうしたって理解者なんて不要だ。道を塞いで遠のかそうとするなら、言い切ってしまえば邪魔でしかない。煩わしい干渉を、どうやれば拭えるのか考え続けている。
でもそれは、言葉にする必要が無いことだ。幼い頃からの縁を手繰って、混じりけ無しな優しさで見守ってくれていたアルダンには、何があっても伝える必要の無い言葉だ。
述べる選択肢がある時点で、どこまでもエイヴィヒカイトはろくでなしだ。
「……秋華賞での約束も嘘だ。これからもオレは、多分怪我だってしていく。そうして絶対に、夢を叶える」
「やっぱり……貴方は、まだ……」
「アルダンはオレを……俺を止めたいらしいけど、無駄だからやめといたほうがいいよ」
叫んだからか、行き場のない感情は一時的に穴が開いて、寒風は隙間を埋めるように頭を冷やしていく。そこまできて、ようやくその手を離せた。怪我をさせなかったのは幸いか――――嗚呼、至極どうでもいい。
この場にいる必要は無くなった。アルダンが去らないのなら、こちらから出るだけだ。今日はこれ以上同じ空間に居れば、お互いに良くない結果に終わる。
今更遅いかもしれないが。
「それでも……っ、私は、カイトに…………」
「そう、ご自由に」
ああ――クソ、吐き気がしてくる。
嫌悪を昔みたく飲み込んで、尚も沸き立つ自己を貶める感情の数々。
それも全部飲みこんで、エイヴィヒカイトは控室を後にする。
悪感情に塗れながらも、でもエイヴィヒカイトの在り方は揺らぐことがない。
そんな自分が好きになれなくて、嫌悪はますます加速していく。
そうしてジャパンカップも終わり、オークス後に謳ったような布告を民衆に叩きつけて半月。
雪がたまに降るような、本格的な冬となってきた厭な季節。
「グラスと走るのは有馬で初、だな」
「ええ、お手柔らかにお願いします」
「ああ、よろしく」
次の有馬のメンツは濃い。
グラスだけでなく、メイウンムカイにリングテイオーの同期が三名。副会長とは三度目の再戦であり、ベルちゃんブライトと、宝塚のメンツも入り混じる。そこに追加でワチカベルクミハル先輩と、サイレンススズカ先輩の同期も多人数。振り返ればやはり濃い。ファンなら大喚起の阿鼻叫喚なメンバーだ。
「てかあれか、グラスだけじゃなくてレイウンスハイとミングデイノーも初か」
「キングヘイローっ! 半年以上クラスメイトなんだから、いい加減に覚えなさい!!」
そればっかりはどうにも。ほとんど無意識な話なので、どうか許してほしい。
「グラスちゃんだけあだ名呼びってのは、なーんか怪しいよねー?」
「名前覚えるのが苦手なだけだぞ」
「え~? スぺちゃんもフルネームで呼んでるし、カイトくんが他に気安く読んでる人って、セイちゃん見たことないなー?」
「気のせいってことにしとけ」
意外と見ているものだ。この観察力こそ、二冠の実力でもあるのだろうか。
「いいこと!? 世代最強だなんて呼ばれているらしいけど、いい気になるのには早いわ! 貴方を倒すのはこの私、キングヘイローなんだから!!」
「おう頑張れ。雨上がりで泥んこになってた努力の結果、期待してるぞ」
「なんで知っているの!??」
そりゃ見ていたからである。顔に付いた汚れを拭う暇も惜しんで、只管な努力を重ねているヴィンズヴェキオー。その一端を勝手ながら拝ませてもらったことがあるが、込められていた気迫は半端ではない。パッとしない結果が続いているだの言われているらしいが、相手が悪かっただけだと思う。それも
「カッコよかったぞー」
「そ、そうかしら? まあ一流のウマ娘なら、努力する姿も一流ですものね!」
「ちょろ」
「何か言ったかしら?」
「いや、何も?」
ただここまで声を掛け合って、とうとう出場できませんでした、なんて結末になればいたたまれないだろう。可能性とはゼロにはならない。そうなれば彼女らの戦意に水を差してしまう。
「出られっかな、俺」
「宝塚も出られましたし、きっと大丈夫ですよ!」
「そうだな、世の中スペシャルウィークみたいな良いヤツばっかりだったらな」
これほどの善良さは、生涯で一人出逢えるかどうかな希少性だ。天然記念物に認定しよう。
「……なるようにしかならねぇか」
「? カイトくん、どうかしましたか?」
「はい? なにがさ」
グラスからジッと見られる、というか見詰められる。群青の瞳には闘争心が――――ではなく、慮るような感情が見え隠れしている。
「……」
「助けろフィングジェイロー」
「キングヘイロー!!」
それは失敬。でも助けて欲しいのは本当でして、ガンを飛ばされる覚えが何処にも無い。一流なら手立てをくれると思ったが、そんなこと無かった。
茶を濁すように、ブリの煮付けを咀嚼する。
「え、なに、ブリ食う?」
「いりません。……いえ、やっぱりなんでもありませんでした」
「おお~、目と目で通じ合ってんね~?」
「その手の視線じゃないって分かってんだろ」
相方がいないから通訳がいない。帰って来いよ怪鳥、君の仕事は此処に在る。
「……フゥ」
そんな日常が、息苦しく感じる。
「? カイトさん、どうしましたか?」
「んあ? なにがさ」
「今度はスぺちゃんまでとは……ははぁ、さてはカイトくんってばプレイボーイだねぇ~?」
「……助けろギンクベイロー」
「惜しいけどキングヘイロー!!」
デジャヴを感じた昼食会。脂の乗ったブリを味わいながら、騙し騙しに日々を過ごしていく。
秘めた焦燥に圧迫されて、喉が詰まるような日々。
そんな空洞を作られた日々は、やっぱり息苦しくて、物足りない毎日――――なんて、至極どうでもいい。
有馬記念をあるものと見据えて、トレーニングに勤しむ日々。
そうして理事長室に呼び出されたのは、有馬記念当日からの三日前。
「重大ッ! よく来てくれたカイトよ!」
「入学振りだねやよいちゃん」
要件は何なのか、本題に入らずとも察することが出来る。
「んで? 俺はなんで呼ばれたの」
「……それについてだが…………ッ!」
申し訳なさそうに眉を顰めるたずなさん。悲しそうに言い淀むやよいちゃん。これから言い出すことを、予言でもして見せようか。
言い出し辛そうなやよいちゃんに代わって、たずなさんから切り出された。
「カイトさんは有馬記念に出走希望をされていましたね……?」
「はい。あ、もしかして票数足らなかったですか」
予想通りの理由に納得顔。有馬で呼び出されるなど、それくらいだろう。
「いえ、票数は既定の数を集められていました」
「んん? そんならなんで呼ばれたんですか」
「……その」
この後に予想を超えた言葉を聞いて、エイヴィヒカイトは動揺する。
夢を追うために、ここ最近は色々と捨てた。だから重荷は無いと高を括っていれば――――
「有馬記念を、出走停止となってしまいました」
「……停止?」
――――まさかの障害が湧き出てくる。
なにかしでかしたかと首を傾げたが、思い当たる節などどこにも見当たらない。
「え……っと、……?」
「それだけじゃなくて……カイトさんは、今後のレースに出走できない可能性があります」
そんなことを言われても、意味の理解を拒む。
己の出自が、どこまでも絡みつく。
厄病神である自分は、辺りへ厄を撒き散らす。そう昔言われた。
でもまさか、自分にすら厄が付くなんて、どこまでもエイヴィヒカイトは救えない。
BADルートで母親オダブツになったら
全部のステータスがSS+になって、全距離全脚質バ場適正オールSになって、金スキルと緑スキルを全て会得する
ただし常に絶不調で、片頭痛、練習下手、ガラスの脚が永続発動し続ける
体力は常にゼロ固定になる
パドックではいつも真っ青な顔色が見れる
レース後に毎回救急車を呼ぶイベント発生