未踏領域で果てる   作:真の柿の種(偽)

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オリジナルスキルも一味加えた地雷的ステータス紹介はっじまっるよー
賢さはともかく、スピードとパワーはこれでカンストしている感じです
スタミナ根性は言わずもがな


『未踏への挑戦者』
 エイヴィヒカイト

 二つ名
 世代最強

【ステータス】
 スピード B+:799
 スタミナ SS+:1200
 パワー  B+:799
 根性   SS+:1200
 賢さ   C :400

【バ場適正】
 芝   :B
 ダート :C

【距離適性】
 短距離 :C 
 マイル :B
 中距離 :C
 長距離 :C

【脚質適正】

 逃げ :B
 先行 :E
 差し :F
 追込 :A

【スキル】
 豌ク蜉ォ縺ェ繧狗?濶イ縺ョ荳也阜縺ク Lv1

 先頭の景色は譲らない…! 勝利の鼓動

 大逃げ 大追込 ゲート難 冬ウマ娘×

 スプリントターボ ハヤテ一文字 一陣の風 先手必勝

 先陣の心得 全身全霊 尻尾の滝登り 決死の覚悟

 烈風一閃 真打 迫る影 逃亡者

 切り開く者 火事場のバ鹿力 鋼の意志

 練習上手〇 切れ者 注目株


そのにじゅう

 ()()が生まれた時。有史以来在り得なかった存在が産声を上げて、存外最初の頃は祝福されていたらしい。

 物珍しさが先行していたのだろう。それに加えて聡明だった両親は、その後に訪れる揺り戻しに備えて、周囲へ()()を晒すことを避けていてくれていた。結局は露呈して、第二次性徴を超えるまで迫害の日々を歩む訳だが。しかしその初動が無ければ、そんな可愛らしいモノより、よっぽど強い悪意に貶められていた可能性もあったのだと。

 珍しさは金になる。値千金の価値となる。今より古い時代に、身体にハンディを持つ者は見世物として扱われていた。今の時代にそうなっていないのは、人口全体の分母が増えて、それが唯一無二な存在ではなくなったからだ。だからまったくもって新しい、つまり新種が現れれば、寄って集る者は多い。

 医学的な価値だけでなく、()()()()()嗜好の物好きにもその身を狙われていたとか。そうなっていなかったのは、世間へ大々的に露呈する前に、なるだけ隠し通してくれていた両親の手腕に依るモノ。それと、後ろ盾となってくれたメジロ家。メジロ家へ駆け込むタイミングが遅くても早くても、今には繋がらなかったらしい。一体何があったのかなんて詳細を、子供だった()()に語って聞かせるようなことはしなかった。

 しないでいてくれたのは、掛け替えのない思い遣り。数多も与えてくれた気回し、そのうちの一つ。

 

『どうして、おれっは、おとこのこなの?』

 

 今思い返すなら、相当に困らせる質問だったように思える。

 答えが出ない問い掛けという分類なら、世界平和ってなんぞやと問うのとさして変わらない。この時も、この後も、明確な答えは出てこない。

 しかしながら聡明であった()()の両親は、同時に誠実さを内包していた。そんな二人は、答えが出なくとも言い籠ることはしないでいてくれた。

 

『俺にも分からん。母さん分かるか?』

『うーん……どうしてかしらねぇ。わたしにもさっぱりだわ~』

 

 そんな問いを毎日二回は聞いて、その度に面倒臭がる様子も見せず、真摯に向き合ってくれていた。

 ただ、聞く度にあっけらかんとして答えてくれたのは、べそをかきながら聞いた身としてちょっとムカついた記憶がある。そんな軽さに何度も救われた側面もあるが、それも含めてが幼い頃の優しい景色。

 

『……また何か、言われたのか?』

 

 四歳の頃。ドイツに親戚が居ると聞かされて、でもドイツが一体全体何なのか意味不明で首を捻っていた時期。

 そしてこれは確か、メジロ家へと住まいを移して一年経った頃。

 先の未来で()()を見舞う悪意を見据えて、両親は敢えて幼稚園へと通わせていた。行かせない選択肢も存在する中、それでも鞭を打つような場へ送り込んだのは、耐性を付けさせるための策。

 社会という枠組みに産まれたなら、社会の枠組みでしか生きられない。早いうちからその縮図に慣れさせていれば、これから先も生きやすくなる。谷に突き落とすような強硬策だ。だがそのおかげで、()()は現在も生きて()()()()()()

 

『こわいって、いわれた……きもち、わるいって』

『……そうか』

『おれが、おんなのこだったら、い、っいわれなかった、のかな』

 ――もし過去に戻れるなら、このクソガキをぶん殴りたい。

 

 腹を痛めて産んでくれた母親を前にして、そんなことを抜かすなど愚昧極まる。もし女の子で産まれていれば、なんてこと、他でもない()()の母親が常日頃感じていることだ。

 でも、その問いに関しては、母親は何も言わずにいた。父親は、その表情を見せないように顔を背けていた。

 

『今日は、なにが食べたい?』

 

 寂しそうに笑いながら、頭を撫でてくれて、その度にそんなことを聞いてくれた母親。その笑顔の裏に、どれだけの葛藤と罪悪感があったのか。

 気付けたのは中学に上がる頃。直接知る機会を失った()()は、無機質な紙っぺら(日記)を通して知ってしまった。

 

『んっ……ぐすっ……さんま、たべたい……』

『我が息子ながら渋いチョイスね~。任せてねっ!』

 

 腕捲りをして、華奢に見える腕で力こぶを作り出す。幼い自分は、そんな些細で機嫌を取り戻した。

 

『ぬぬっ……なあ、デザートは何が食べたい?』

『……えっと……すとーん……?』

『スコーンか、任せてなっ!』

 

 そう言ってぐしゃぐしゃにされた、父親と同じ黒髪。

 二人のどちらでも『女の子で産んでやれなくてごめんね』と。そう謝ることは、二人の息子を否定することにも繋がっている。それに気付けたのは、中学半ば。だから彼女は、内に秘めて押し込めていた。だから彼は、歯を食い縛る顔を見せることは無かった。

 強い人達だった。とても強くて、とても優しい人達だ。

 そんな優しさに甘えて、毎日のように聞いて、毎日のように罪悪感を溜め込ませていたその餓鬼を、未だに許せない。

 あんな表情をさせていたエイヴィヒカイトを、(カイト)は永劫許さない。

 謝罪の機会を喪失させた自分を、誰よりも自分が許さない。

 罵詈雑言を浴びせる民衆よりも、不幸を押し付ける世界よりも。

 エイヴィヒカイトは、エイヴィヒカイトが死ぬまで許さない。

 

 

「……チッ……」

 

 目覚め一発目に出てくるのは、言葉でも声ですらなく、舌を打っただけの音。

 悪くない夢だった。少なくとも、カイトの中では幸せな部類の夢だった。しかし今現在見る代物としては――――

 

「――悪夢もいいところだ」

「……おはようございます、カイトくん」

「あん……? ……なんでいんの」

 

 機嫌悪げに洗面台へ向かえば、従姉の姿が見える。まだカイトは寝ているのか、はたまたマジで家に存在しているのか。普段なら前者だと即座に断言できるが、最近の親戚事情を鑑みれば、後者である可能性も否定できないのは悲しみ。

 確かめるにはどうするか。昔から頬を抓ると相場が決まっている。

 

「あにひへふんでふか」

「……本物か」

 

 軽く引っ張って見れば、このもち肌は多分本物。それを認識できれば、段々と思い出してきた。

 感情面がぐちゃぐちゃになって、歩くこともできなくなったカイトを、連れて帰ってくれた立役者フラッシュさん。

 あの後やってきたアルダンとは、ちょっとした言い合いになって、そこで更に精神を疲弊させたカイトは、もはやその場で眠りこけそうなほど疲れ切っていた。

 

「で、なんだっけ」

「昨日はバタバタしてましたから……今日もカイトくんは忙しいでしょうが」

「きょう……ああ……いや、どうせ退屈な作業だ。大した用事でもないよ」

「……カイトくん?」

 

 相手が誰だろうと関係無い。どうせ勝つし、それ以外に未来はあり得ない。のんびりといこう。

 

「とりあえず朝飯食べながら――母さんの容態について、話そっか」

「……そうですね」

 

 

 フラッシュには席を外してもらって、今は病院の屋上。

 シーツが干してある晴天の下、吹きすさぶ風を一身に受け止めるアルダンの姿は、絵になるかもしれない。――至極どうでもいいが。

 

「叔母様のご容態は……?」

「ギリギリ生かされてる。いつ終わっても、おかしくないらしい」

 

 達観した風を装い放った言葉が、すぐさまカイトの内をズタズタに引き裂く。

 胃液がせりあがる不快を、無理矢理に飲み干した。

 自らの酸が、自らの喉を軽く焼いて、その苦痛で冷静さを取り戻す。

 

「……そんなっ……」

「もしかしたら、今日中にでも……な」

 

 もしもの話でなく、本当に起きうる事態。こうして話している間に、ポンと、そんな流れで終わってもおかしくはない。そう担当医は述べていた。

 

「寝てる理由は不明。起きない理由も当然不明。今の医学じゃ、いつ終わるのか分からない現状維持しかできないってさ」

「……カイト」

「それってさ、現状維持って言えるのかな。医者にしては曖昧に言うのが、ちょっと笑えてくるよな」

 

 それが強がりなのか、現実逃避のおどけなのかは自分でも分からない。

 言葉と表情が合っているかも分からない。

 

「……これから、カイトはどうするつもりですか?」

「どうって……どうも?」

「――」

 

 そんなに驚くようなことだろうか。

 カイトは変わらない。これまでも、これからも、母親が危篤になったからと言って、進む道を途中で引き返しもしない。

 走って勝って、夢を叶えるだけだ。

 

「そんな……っ、叔母様には、会いましたか!?」

「会ってないよ」

「どうして!」

「会えないから」

 

 そこも崩しはしない。もう既にカイトは母親を裏切ったのだ、今更声を掛けようだなんて虫が良すぎる話。

 

「……明日のジャパンカップは欠場しましょう」

「いやねーよ。出るに決まってんだろ」

 

 一度出場が決まったのなら、欠場でもすれば逃げたなんて意見も出る。そんなのは夢を阻む最大の障害だ。無用な障害は、生まないように心掛けるのは普通だ。

 優先順位は夢の達成が一番であり、どれだけ大切だろうがそれ以外は、それ以下の優先順位でしかないのだ。

 

「本気ですか……?」

「たりめーだろ」

「叔母様に付いているべきです! 夢よりも、優先すべきことが――」

「無いよ」

 

 その即答は、何故か心臓が痛くなった。

 

「どうして……そこまでっ!?」

「――お前には、関係ないだろ」

 

 問答が面倒に感じて、少しだけキツめの視線も付属させる。

 冷たく突き放して、その言葉を投げかけても、不思議と心臓が痛む。でもいたくてくるしいことは、むかしみたいにのみこんだ。

 

「っ! ……カイ、ト?」

「……――――ま、とにかくジャパンカップは出るから。応援よろしく」

 

 伝えるべきことは伝えた。バツの悪くなったカイトは、この場を立ち去ろうと背を向けた。これから担当医との話し合いもある。あまり話している時間も無いのに、これ以上押し問答を続ける意味も無い。

 そんな背中へ、叫ぶような声が届く。

 

「――っ! 私は!」

「……まだ何かあんのか?」

「カイトが負けるように、祈っていますから」

「……はあ?」

 

 それで、だから――それが、――――どうした。

 その程度でエイヴィヒカイトが揺らぐと思っているのなら、それは自分を買い被りすぎである。

 エイヴィヒカイトに勝つ以外の未来が存在しない以上は、応援の有無など些事だ。頑張れの一言二言、有ろうが無かろうが意味を成さない。あればちょっとのやる気に繋がる、その程度の差でしか無い。

 

「カイトは、負ければもう走らないのでしょう?」

「――――」

 

 この発言には、些か驚いた。

 本心が明け透けに読まれていた。トレーナーからは、それを話したとは聞いていない。ならこれは、アルダン自身が自ら探り当てたのだ。カイトが密かに定めていた己への戒めを、彼女はこうも当てて見せた。長い付き合いも考え物だ。

 

「そう、だな。負けたらそれまでって決めてある。その後どうするかも……決めてある。それを機に、もう二度と走らないのも確かだ」

「ならやっぱり、私は貴方が負けるよう祈っています」

「……秋華賞は応援してくれてた癖に」

「あの時は、カイトが心の底から勝利を望んでいましたから。でも……今は……」

 

 なんだその言い草は。まるで今はそうでは無いかのような、そんな言い方を妙にする。

 

「楽しくもないのに叔母様を放って、それも怪我をしながら走るなんてバカげています!」

「……そんなつまんなそう?」

「見れば分かります! ……何で走るのか、ずっと不思議なくらいです」

 

 他の人達は言及しなかったが、言わないだけなのだろうか。

 どんな風に見えるかはこの際どうでもいい。結局行き着く結果が同じなのなら、走ることへの感情の有無は、エイヴィヒカイトとっては誤差の範疇でしかない。

 やっぱりそんな言葉は、エイヴィヒカイトに響かない。

 

「カイトが目指す夢とは、一体何なのですか? 何のために、貴方はそこまで出来るの……?」

「…………歴史に、名を残すことだけど?」

「……いいえ、違いますよね。カイトの言うそれは過程であって、結果である夢はまた別の物、でしょう?」

「分かってんじゃん」

 

 そこまでエイヴィヒカイトを理解しているのなら、肝心の夢の内容も理解してそうな気もするが。

 

「教えてください」

「……何だって、知りたがる?」

「貴方のことなら、なんでも知りたいんです」

「なんでもって…………――――ハッ――」

 

 自分の中の致命的な部分は悲鳴を上げて、心境と相反する表情は、厭に口角を釣り上げた。

 出逢わないようにしていた努力を無為に変えられたり、その結果逃れようとしていた(しがらみ)が、また再び絡みつこうとしている事への鬱憤。自分の熟す努力を、一番応援されたいヒトに歓迎されていない事実。最愛の母親が目を覚ますことの無い日々に積みかさなる、どうしようもない無情感。――――そして今日受け取った、絶望への足音。

 この瞬間まで十年来溜まり、淀み続けたモノが噴き出す感覚に抗いがたい。

 おかしくなりそうなくらい、何もかもがどうでも良くなってきた。

 アルダンの思い遣りも例外なく、邪魔でしかない。どうでもいい路傍に口を挟まれるのは、どうにも仄暗い感情が生み出される。

 止める自分が何処にもいなくなって、周りにも止められる者は誰もいない。

 手の届く範囲まで近づくのは、あまりに簡単すぎた。

 

「カイ……っ!? きゃっ!」

「――知って、どうする」

 

 細く脆そうな首を掴もうとして――――襟元を軽く掴む。()()と述べているが、人間基準の力加減でないと考えれば、その意味は通じるだろうか。

 きっと、決してアルダンが悪い訳じゃない。でもターフを走るごとに、日々を過ごす毎に蓄積されていく、自らへの鬱屈した感情がどうしてかここで漏出していく。

 身を案じてくれているのに、そんな優しさに対する答えがこれか。つくづく自分はどうしようもない欠陥品だ。昔受けた数々の罵詈雑言が、今では自分へ向ける自己否定の材料として有効活用されていく。

 それでも止めようとしない己には、呆れて失笑しか浮かばない。

 

「オレの中身を全部知って、それでどうなる! それで夢が叶うのか!? メジロ家と完全に縁を切れるのか!?」

「カイ、ト?」

「それともなにか? お前になんもかんもを話せば――母さんが、目を覚ましたりすんのかよ……!!」

 

 一度外れたタガは、そう容易くは治りそうもない。流れ出す吐露は、止め時を知らずに垂れ流される。

 見せたくなかった中身を、彼女が望んだように垣間見せてしまっている。

 

「だったら喜んで曝け出してやるよ! 隠し事もせず、望むままになんだって話してやるよ! ……でも、不可能だ……!!」

「……」

「お前が何を知ったところで、ちっとも状況は好転しないんだよ……! 夢はオレが自分で叶えないといけない! メジロ家のお前は常に縁を結び続ける! 母さんだって変わらず寝たきりで! それどころかいつ、その時が来るか……!!」

「でも……それ、でも……」

「分かれよ!! ……お前がオレを知ったところで、何にも変わらない……! ……変えられない。止めようとするお前の声をっ、オレが聞く訳ないだろうが!!」

 

 個人的な感情はさておき、エイヴィヒカイトの望みを突き詰めれば、どうしたって理解者なんて不要だ。道を塞いで遠のかそうとするなら、言い切ってしまえば邪魔でしかない。煩わしい干渉を、どうやれば拭えるのか考え続けている。

 でもそれは、言葉にする必要が無いことだ。幼い頃からの縁を手繰って、混じりけ無しな優しさで見守ってくれていたアルダンには、何があっても伝える必要の無い言葉だ。

 述べる選択肢がある時点で、どこまでもエイヴィヒカイトはろくでなしだ。

 

「……秋華賞での約束も嘘だ。これからもオレは、多分怪我だってしていく。そうして絶対に、夢を叶える」

「やっぱり……貴方は、まだ……」

「アルダンはオレを……俺を止めたいらしいけど、無駄だからやめといたほうがいいよ」

 

 叫んだからか、行き場のない感情は一時的に穴が開いて、寒風は隙間を埋めるように頭を冷やしていく。そこまできて、ようやくその手を離せた。怪我をさせなかったのは幸いか――――嗚呼、至極どうでもいい。

 この場にいる必要は無くなった。アルダンが去らないのなら、こちらから出るだけだ。今日はこれ以上同じ空間に居れば、お互いに良くない結果に終わる。

 今更遅いかもしれないが。

 

「それでも……っ、私は、カイトに…………」

「そう、ご自由に」

 ああ――クソ、吐き気がしてくる。

 

 嫌悪を昔みたく飲み込んで、尚も沸き立つ自己を貶める感情の数々。

 それも全部飲みこんで、エイヴィヒカイトは控室を後にする。

 悪感情に塗れながらも、でもエイヴィヒカイトの在り方は揺らぐことがない。

 そんな自分が好きになれなくて、嫌悪はますます加速していく。

 

 

 そうしてジャパンカップも終わり、オークス後に謳ったような布告を民衆に叩きつけて半月。

 雪がたまに降るような、本格的な冬となってきた厭な季節。

 

「グラスと走るのは有で初、だな」

「ええ、お手柔らかにお願いします」

「ああ、よろしく」

 

 次の有のメンツは濃い。

 グラスだけでなく、メイウンムカイにリングテイオーの同期が三名。副会長とは三度目の再戦であり、ベルちゃんブライトと、宝塚のメンツも入り混じる。そこに追加でワチカベルクミハル先輩と、サイレンススズカ先輩の同期も多人数。振り返ればやはり濃い。ファンなら大喚起の阿鼻叫喚なメンバーだ。

 

「てかあれか、グラスだけじゃなくてレイウンスハイとミングデイノーも初か」

「キングヘイローっ! 半年以上クラスメイトなんだから、いい加減に覚えなさい!!」

 

 そればっかりはどうにも。ほとんど無意識な話なので、どうか許してほしい。

 

「グラスちゃんだけあだ名呼びってのは、なーんか怪しいよねー?」

「名前覚えるのが苦手なだけだぞ」

「え~? スぺちゃんもフルネームで呼んでるし、カイトくんが他に気安く読んでる人って、セイちゃん見たことないなー?」

「気のせいってことにしとけ」

 

 意外と見ているものだ。この観察力こそ、二冠の実力でもあるのだろうか。

 

「いいこと!? 世代最強だなんて呼ばれているらしいけど、いい気になるのには早いわ! 貴方を倒すのはこの私、キングヘイローなんだから!!」

「おう頑張れ。雨上がりで泥んこになってた努力の結果、期待してるぞ」

「なんで知っているの!??」

 

 そりゃ見ていたからである。顔に付いた汚れを拭う暇も惜しんで、只管な努力を重ねているヴィンズヴェキオー。その一端を勝手ながら拝ませてもらったことがあるが、込められていた気迫は半端ではない。パッとしない結果が続いているだの言われているらしいが、相手が悪かっただけだと思う。それも()()()()()()と言われているレースには、大体が上位入着だ。『レースに絶対は無い』、この言葉をこれでもかと体現した走者だ。

 

「カッコよかったぞー」

「そ、そうかしら? まあ一流のウマ娘なら、努力する姿も一流ですものね!」

「ちょろ」

「何か言ったかしら?」

「いや、何も?」

 

 ただここまで声を掛け合って、とうとう出場できませんでした、なんて結末になればいたたまれないだろう。可能性とはゼロにはならない。そうなれば彼女らの戦意に水を差してしまう。

 

「出られっかな、俺」

「宝塚も出られましたし、きっと大丈夫ですよ!」

「そうだな、世の中スペシャルウィークみたいな良いヤツばっかりだったらな」

 

 これほどの善良さは、生涯で一人出逢えるかどうかな希少性だ。天然記念物に認定しよう。

 

「……なるようにしかならねぇか」

「? カイトくん、どうかしましたか?」

「はい? なにがさ」

 

 グラスからジッと見られる、というか見詰められる。群青の瞳には闘争心が――――ではなく、慮るような感情が見え隠れしている。

 

「……」

「助けろフィングジェイロー」

「キングヘイロー!!」

 

 それは失敬。でも助けて欲しいのは本当でして、ガンを飛ばされる覚えが何処にも無い。一流なら手立てをくれると思ったが、そんなこと無かった。

 茶を濁すように、ブリの煮付けを咀嚼する。

 

「え、なに、ブリ食う?」

「いりません。……いえ、やっぱりなんでもありませんでした」

「おお~、目と目で通じ合ってんね~?」

「その手の視線じゃないって分かってんだろ」

 

 相方がいないから通訳がいない。帰って来いよ怪鳥、君の仕事は此処に在る。

 

「……フゥ」

 

 そんな日常が、息苦しく感じる。

 

「? カイトさん、どうしましたか?」

「んあ? なにがさ」

「今度はスぺちゃんまでとは……ははぁ、さてはカイトくんってばプレイボーイだねぇ~?」

「……助けろギンクベイロー」

「惜しいけどキングヘイロー!!」

 

 デジャヴを感じた昼食会。脂の乗ったブリを味わいながら、騙し騙しに日々を過ごしていく。

 秘めた焦燥に圧迫されて、喉が詰まるような日々。

 ()()()から家に来ることはなくなった彼女には、もう悩むことはない。距離を置くなら邪魔はされない。阻まないなら、それが一番良い。今の距離が、最高の距離感。

 そんな空洞を作られた日々は、やっぱり息苦しくて、物足りない毎日――――なんて、至極どうでもいい。

 

 

 有記念をあるものと見据えて、トレーニングに勤しむ日々。

 そうして理事長室に呼び出されたのは、有記念当日からの三日前。

 

「重大ッ! よく来てくれたカイトよ!」

「入学振りだねやよいちゃん」

 

 要件は何なのか、本題に入らずとも察することが出来る。

 

「んで? 俺はなんで呼ばれたの」

「……それについてだが…………ッ!」

 

 申し訳なさそうに眉を顰めるたずなさん。悲しそうに言い淀むやよいちゃん。これから言い出すことを、予言でもして見せようか。

 言い出し辛そうなやよいちゃんに代わって、たずなさんから切り出された。

 

「カイトさんは有記念に出走希望をされていましたね……?」

「はい。あ、もしかして票数足らなかったですか」

 

 予想通りの理由に納得顔。有で呼び出されるなど、それくらいだろう。

 

「いえ、票数は既定の数を集められていました」

「んん? そんならなんで呼ばれたんですか」

「……その」

 

 この後に予想を超えた言葉を聞いて、エイヴィヒカイトは動揺する。

 夢を追うために、ここ最近は色々と捨てた。だから重荷は無いと高を括っていれば――――

 

「有記念を、出走停止となってしまいました」

「……停止?」

 

 ――――まさかの障害が湧き出てくる。

 なにかしでかしたかと首を傾げたが、思い当たる節などどこにも見当たらない。

 

「え……っと、……?」

「それだけじゃなくて……カイトさんは、今後のレースに出走できない可能性があります」

 

 そんなことを言われても、意味の理解を拒む。

 己の出自が、どこまでも絡みつく。

 厄病神である自分は、辺りへ厄を撒き散らす。そう昔言われた。

 でもまさか、自分にすら厄が付くなんて、どこまでもエイヴィヒカイトは救えない。




BADルートで母親オダブツになったら


全部のステータスがSS+になって、全距離全脚質バ場適正オールSになって、金スキルと緑スキルを全て会得する

ただし常に絶不調で、片頭痛、練習下手、ガラスの脚が永続発動し続ける

体力は常にゼロ固定になる

パドックではいつも真っ青な顔色が見れる

レース後に毎回救急車を呼ぶイベント発生

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