未踏領域で果てる   作:真の柿の種(偽)

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最後の地雷はインパクトに欠けるでしょう
でもまぁ、最終回ですので許してくださいな



おしまい

「すみません通してください……っ!」

 

 会場は類を見ない人込みに溢れている。後から聞けば、観客動員数は歴代最高なのだとか。

 人が一人進むだけでも困難だ。その中を車椅子で掻き分けるのは、もっと難しいことだ。

 

「進めば……」

「……」

 

 人口密度も相まってか、焦りはジワリと発汗を促す。

 人の波は目的を持って動いている。昼食などでごった返すのとは違う。明確な見世物を求めた空気を感じて、殊更に焦りは加速する。これだけの人数が今日この場へ求めに来たのは、一つのレースに違いない。

 もう時間が無い。始まる前にここまで来たが、一度始まればもうおしまいで、その猶予は僅かだと察するに容易い。

 

「どうすればっ」

「……歩いて行こうかしら」

「ですが、そんな体では……」

 

 そう、まず無理だ。平時ならともかく、十二年ぶりに動かすには、その全身は固く軋み過ぎている。本来なら年と時間を掛けて、ようやく普段の生活が視野に入るのだ。おしくらまんじゅう以上に隙間もない中に入れば、冗談抜きで圧死しかねない。ジョークのように手折れてしまう、それくらい今の彼女は脆いのだ。

 けれどそんな不安を掻き消すように、彼女は言った。

 

「手をこまねく、そんな暇はないでしょう?」

「……」

 

 気丈を装って強く笑う顔は、本当に彼に似ている。でも順番的には逆で、彼が彼女に似ているのだ。彼は自分の容姿を誇りにしていたが、それも納得する遺伝子を目の前の彼女から感じる。飄々とした不敵な笑みが、死に体だということを忘れさせる。

 彼と同じルビーの輝きが、強く主張している。

 

「さて……手を貸して、アルダンさん」

 ――――す!

「……はい。…………?」

 

 手を差し出して、立ち上がらせようとした時に気付いた。

 ガヤの声に紛れて、遠くから呼び寄せるような声。

 不思議ではない。これだけ人が集まれば、はぐれたりなんかはしょっちゅうだろう。今頃迷子センターなんかは、満員の札が張られているかもしれない。

 

 ――こ――で――――わ!

「?」

「どうかしたの?」

「いえ、……気のせいかしら……?」

 

 聞き覚えがある声が、喧騒に揉まれて歪んでいる。知り合いが近くに居たのかもしれないが、老若男女入り混じる音の中心では、事細かく聞き分けるのは不可能だ。

 

 ――――ダンさん!

「……近い」

「あら? どこかで聞いたような…………」

「――――後ろです!」

「!」

 

 近づいてきた声は、私を目指して近づいて、ついに真後ろまでやってきていた。

 ここまで来れば声の主は分かる。

 

「どうしてここに!?」

「もちろんお二人のお出迎えに……そして、」

「……――あ! マックイーンちゃんね!」

「良かった……気づいてくださったのですね」

「もちろんよ~。少し……うん、すごく大きくなって、すっごく綺麗になったけど、それで見間違えたりなんてしないわ」

()()()()……いえっ、今はそれよりもっ!」

「お義母様――――?」

 

 ――――ちょっと待った。

 こんな時に何だが、こんなタイミングで指摘するのもどうかと思うが、そのニュアンスと言うかイントネーションと言うか、そこに込められた振り仮名的な読み仮名的なのは見過ごせない。私だってそんな呼び方してないのに。これには流石に咎める必要性しか存在しない。そもそも昔はマックイーンも叔母様と呼んでいたのに、いつの間に呼称が変わったのだ。そこの追及は徹底的にしなければならない。ライバルの芽は潰さないと。競争相手は排さないと。ただでさえ無条件で甘やかされるような、変わりたいくらい羨ましすぎる立場だというのに、それ以上を求めていたとはなんて油断がならないのだろう。なるほど敵か。妹的ポジションの域を出ないかと思えば、想像以上に卑しいかもしれない。やはり敵と認識しても相違ないかもしれないですねこれは。

 

「ぁ、と――とにかくっ! お二人ともついてきてくださいまし!!」

「ええ、ほらアルダンさんもいきましょう?」

「…………どこへ向かっているの?」

 

 人込みから離れるようにして、大きく外側を回る軌道。

 この会場には私も何度か足を運んだ覚えがある。その記憶に違いが無ければ、この方向は――――

 

「お兄様に声が必ず届く特等席ですわ」

 

 私達が一番欲していた目的地へ向かっていた。

 

 

「エアグルーヴ」

「スズカか」

 

 バッタリと鉢合わせた、同級生でありライバルであり、此度は共に大きな背中を目指す戦友でもある。

 

「意気込みはどうだ」

「えっと……意気込みって程のものは……」

 

 顔を合わせるや否や突然だ。そんな大層な思いは抱いていない。

 

「でも、いつもより、その……ね?」

「フッ……ああ、私もだ」

「やっぱり、そうなるわよね」

「ああ、わざわざ呼びつけられて、釣られるように乗ったのは私達だ。期待されている分は暴れなくてはな」

 

 私の一敗とは違ってエアグルーヴは二敗だ。数で語れる話ではないが、リベンジの機会をフイにした分、今日はより強く燃えているのを感じる。

 

「今回ばかりはお前と張り合う余裕もないだろうがな」

「大丈夫よ、私も今日は死に物狂いだろうから」

 

 みんなそうなりそうだ。全員が全員とは限らないが、殆どは彼の背中を追いかけるのを目的として、そして追い越そうと死力を尽くす。

 

「負けたくないのはみんな同じよ…………カイトくんには負けたくない……勝ちたい」

 

 あんなにも価値を求めていた、スぺちゃんの気持ちが分かる気がする。鮮烈な灰の軌道は、絶対を想起させて強く刻みつけられる。直接走った者なら誰しも感じる感覚。それはまるで傷のように、胸の内へ跡を残して囁き続ける。もっともっとと、誘惑を囁く。

 

「お互い、後輩に叱咤されていたか」

「そう言えば……エアグルーヴはグラスちゃんに……」

「ああも気合の入った姿を見せつけられれば、先達として奮い立たないわけにもいくまい」

 

 彼と共に走った者だけが、彼に敗北した者だけに共通する感覚がある。

 あの大きな背中()の先へ征けと。白と黒の混ざる足跡を越えろと。私はもっと先へ進めるのだと、あの背中が証拠として物語っていたのだ。

 

「カイトくんに勝っちゃえば、みんなには勝っていると思うの」

「簡単なことのように語るが、それを望む者が大勢いることを忘れるなよ」

「ええ」

 

 話しながらターフへ向かえば、奥底から熱い衝動が巡り始める。

 今までの私では、距離が適正でないレースだ。しかしそれがどうした。そのぐらいの不利を、不利とさせないくらいでないと、あの魔王に勝つのは夢にすらならない。

 

「得意とする距離ではないだろう」

「もちろんよ。……常に全力を絶やさず駆け抜ける、それくらい出来ないとね」

「恐いな。……ああ、らしくもなく叫びたい気分だ」

「そうかしら、カイトくんにはいつも叫んでたじゃない」

「あれはヤツに責任がある。……それも最近では減ってきたがな」

 

 心なしかテンションが落ちたような顔つきだ。あの追いかけっこが、少しくらいは楽しかった側面もあったのだろうか。

 

「確かに最近は静かね。……寂しいの?」

「カイトのようなことを言うな」

「言われたのね」

「ついさっきだ。起こしてやったら第一声がそれだ。ヤツの先輩を敬おうとしない姿勢は一向に治らんな」

 

 確かにその節はあるが、ああも遠慮が無いのは多分エアグルーヴだけ、とは言わない。火に油を注がない判断力は持ち合わせている。それくらいの空気は読める。

 

「遠慮が無いのは良いことでしょ?」

「無さすぎるのも問題だ……だからこそ、なおさらに舐められた返礼をしたくてな……」

「ほどほどにね」

「無理だな」

 

 そんな世間話をしている間にも、通路の先が見えてくる。それに伴って戦意と呼ぶべき熱は高まりを続けて、限界を知らずに上がり続けるのだろう。

 

「あ、カイトくん?」

 

 そんな話題の彼が、いつの間にやら観客席のすぐそこに居た。

 レースにエントリーしているハズの彼は、何故か車椅子に乗って、誰かを待っているように佇んでいる。

 車椅子を押す位置には、マックイーンと、最近カイトくんと仲が良いと判明したメジロアルダン先輩が控えていた。

 

「どこだ」

「ほらあそこ……あ、ぇ、? でも、女の、人……?」

 

 そんなバカな間違えがあるだろうか。でも線の細さは、今日見たカイトくんとは断然違う。男性には無い女性特有のしなやかさが、私の勘違いだと指摘してくる。

 

「確かに似た帽子だが、性別を間違えるなどと……――――」

 

 呆れたようなエアグルーヴだが、口を開いて呆気に取られる気持ちはしっかり分かる。

 似たデザイン、というか同じと称してもよい、高級感のある白いピクチャーハット。つばの大きなレディースのそれは、彼が殆どの時間を共にしていたそれと酷似している。

 そして――――似ている。髪は薄茶色と、漆黒のような彼とは違う。けれど瞳を満たすルビーの輝き。大きな瞳は力強く、爛漫な印象を見る者に与える。顔立ちは整って、通りの良い鼻や、目元もそっくりだ。

 なによりその帽子を被った姿は、性別の有無関係なく既視感を強制させる。彼を知る者なら、彼の姿を彷彿とさせる。髪の色を合わせれば双子のようにも見えるだろう。

 

「……(生き別れの姉弟……とか?)」

「……(否定しきれんが、母親などでないのは確かだ。若すぎる)」

「……(お母さんと言うには、そうよね……)」

「……(姉か、はたまた従姉か。叔母と呼ぶには憚られる外見だ)」

 

 言葉を発さない対話の中で、納得の意を示す。

 あまり健康には見えない瘦せた印象が前に出ているが、見た目はそれ以上に若さを示す。私より二つか三つほど年上のような、そんな外見年齢。

 

「あ、スズカさん! お兄様はまだでしょうか!?」

 

 待ってほしい。混乱しているのだから、まだ質問をぶつけないで欲しい。むしろ質問したいのはこっちの方だ。

 

「…………え?」

「……あと少しでやってくる。それよりも、そちらの方は……」

「――――あの子の、先輩さん?」

 

 その人が言う「あの子」が誰の事を指すのか、察するにはあまりに過多な判断材料が目の前には居た。

 

 

「グラスちゃん」

「ああ……スぺちゃん、ですか」

 

 壁に暗くもたれ掛かった姿へ声を掛ける。

 

「……そろそろ来るよ」

「ええ……待ってますから」

 

 誰を待っていたのかなんて、愚問だろう。

 

「ねぇ、スぺちゃん」

「……どうしたの?」

「私、怒ってるんです」

 

 だろうなあ、と思った。

 切っ掛けは何だったのか、細かい部分はあやふやだが口火を切ったのは、会長達が中山の舞台へ出場すると決まってから、グラスちゃんの機嫌は頗る悪い。

 強者が揃うこの舞台は彼が拵えたモノ。不足を補うための追加要員。

 

「でもそれは、私達とじゃもう、走る意味が無いって……!」

「……」

「――――言われてるのと、どう違うのでしょう」

 

 思い違いとは違う。言葉にするつもりが無くても、意図しない言動であっても関係が無い。彼のその行動はこれでもかと、私達へ役不足だと伝えているのだ。もちろん私だって思うところはある。

 けれど今更なんだ。そんなことはグラスちゃんだって承知してこの場に立っているのだろうに。

 

「それで、どうしたの」

「一言くらいは言ってあげたかったんです」

「……」

「スぺちゃんは、何もないんですか?」

 

 言いたいことなんていくつもある。

 言って止まるなら、もう止まっている。

 

「私は……言葉よりも、行動で示すつもりだから」

「……そう、ですね。それはもちろん――――」

「カイトくんはもう、言っても聞いてくれないよ」

 

 言葉以上に伝わる結果でないと、聞く耳を持たない。

 私達の言葉では、届く事なく伝わらない。

 

「…………もう、地で膝を汚しはしません」

「必ず先へ……届かせる」

 

 決意は充分にして、戦意は最高潮に昇る。会話を交わすほどに、その自覚はより深まっていく。

 負けられないし勝ちたいと、そんな我欲だけでは済まされない事情を、私達は知ってしまった。知ったからには、前のようには過ごせない。

 負けてはならないし勝たなければならないと、自身に課した責任。無知のままあの背中を目指しても、きっと届きはしない。あの大きな背に負った、自罰と自責の重り。相応の結果を叩き出し続けたあの鮮烈には、相応の覚悟と決意が相応に込められている。

 気持ち一つでも負けたら、その時点で勝敗は決まる。

 負けないだけの情熱を、私達も持っているのだろうか。

 

「ありゃ、二人とも何してんの」

「……」

「……」

 

 待ち人はようやくやってくる。

 私達が此処に立つ意味。その結末が、これから始まろうとしていた。

 

 

「暇なのかお前ら」

「――――はい?」

「……なんでもないです」

 

 ガンを飛ばされた。グラスがメタクソに怖いです。今日は会ってからずっと怒ってます。エイヴィヒカイトは、知らずの内にいったい何をしでかしやがった。

 

「……なあ、スぺは理由知ってるか?」

「…………」

「こっちは無視、とな」

 

 冷たいが止まらない。辛辣に扱われるのには異論無しだが、一時間前くらいには普通に話しかけてくれたのにこの落差。たった六十分の間に何が起こったのだろうか。

 

「……」

「……」

「……」

 

 空気ってこんなに不味くなるのか。並んで歩く姿は仲良し同級生って感じだが、約二名の表情は強張りを極めて、周辺の空間に亀裂が生じかねない。

 気にすることなく感慨に耽る。

 

「……ここまで、来られた」

「……」

「……楽しそうですね」

「そりゃもう最っ高の気分だね」

「そんな顔は、初めて見ました……――――っ」

 

 しつこいくらいに、同じ感想ばかりが思い浮かんでは口を突く。

 今日は喜怒哀楽を隠す必要がこれっぽちも無い。感情を出し尽くしても、罪悪感は突き刺さらない。

 こんなにも心が軽い。こんなにも身体は軽い。

 

「……その歩き方は、どうかされたのですか」

 

 そんな目敏い指摘にも、隠し事は一切なく答えられるのだ。

 

「ちょろっと折れた」

『は……?』

 

 なんて見事なハモリだろうか。仲良しかよ。

 

「……冗談冗談。ほら、この通り」

 

 下半身を満遍なく叩いて、痛みが無いことを示す。

 軍服を纏った一枚奥には、包帯の固く絞められた感触。しかし周りから見ても違和感など無いだろう。グラスが指摘したのも歩き方だけだ。それだって、気にすることが無いくらいに感情が昂れば無問題。喜幸を増幅させるアドレナリンは良い仕事をする。きっとレースが始まる頃には、突っ張ったような違和感も消えているだろう。

 なんちゃらも方便とは言うし、これくらいは許されろ。

 

「な? ほんとに折れてたらこんなことできないだろ?」

「冗談に聞こえません」

「折れたまま走るなんて無理に決まってんだろ」

「そのまま走った人を知ってますけどね」

「……だっ、れのことやらよ」

 

 目線は斜めへ動いて、天井の染みを勝手に数え始める。

 歴史の深い建築物なだけに、修繕を繰り返した跡が散見される。きっとこの通路も、数多の夢見る者を見守っていたのだろう。決意の表情を携えて、不安と昂揚に胸を躍らせて踏み出す者達を、いったい何度導いてきたのだろう。幾人の背中を押して来たのだろう。

 今日でそれが終止符を打たれるように願う。

 

「全力で、手加減無しで頼む」

「――――」

「…………」

 

 無言の返答だけが木霊するが、飾りだけの言葉は要らないと態度が示している。

 望んで求めて欲して掴みたくて願った、幼稚な嫌がらせ。

 

「まぁ、俺に気にせず走ってくれな」

 

 無理だろうなと確信して、二人よりも一歩先に通路を抜けだした。電灯の光と太陽の明かり、その境目を踏み切って、二人へ向き合うのもこれでおしまい。

 あとに考えるのは、如何にして劇的な演出を醸し出せるのか。それただ一つのみだ。

 

「ああ――――今日はこんなにも、いい天気だ」

 

 輝ける空が活力の祝福を授ける。光を浴びた五体はこれからに期待をしている。

 ――――俺はこんなにも、この瞬間を生きている。

 

「大きな舞台にはもってこいだよな」

「地を舐めるのは――――」

「…………」

 

 三人の姿が露わになって、会場中が歓声で沸き立っている。今回の主役たるスぺとグラス、そしてその二人の挑戦するエイヴィヒカイト。

 目玉となる見世物を見に来た、有象無象共が勝手な期待を浴びせかける。

 

「スぺ、スピカいるけど」

「……うん、カイトくんは?」

「俺も行く」

 

 ゴールドシップという遠目にも分かりやすい目印へ、スぺを促す。

 となりにはトレーナーと、ダイワスカーレットにウオッカ、トウカイテイオーにマックイーン。

 

「あれは……マックイーン怒ってんな」

「……当たり前だよ」

「…………あら?」

 

 後ろで待つつもりなグラスを置いて、軽い挨拶だけを交わしに行こうとする。これ最期になるのだろうし、数分後に引き起こすトラブルを思えば、トレーナーには挨拶をしておいた方がいいだろう。

 

「あれって……」

「どした」

「…………ところでカイトくん、今日は帽子をどうされましたか」

「へ? 置いてきたっつーか、捨ててきたっつーか。……それが?」

「そうですか……スぺちゃん」

「! ……うん」

 

 容量の得ない会話を繰り返す。目の前でこれ見よがしにされても、周りへ与えるのは疎外感だけだと知っておいてほしい。

 

「ほら、行こうカイトくん」

「ちょっ、おい?」

 

 手を強く掴まれて、無理矢理に連れていかれる。もとより挨拶くらいは行こうとしていたのだが、そんなにも逃げられると思われていたのだろうか。後ろからは静々と付いて来るグラスもいて、仮に逃げ出そうとしても羽交い絞めにされかねない。信用無さ過ぎかもわかりませんね。

 

「よっすみんな」

「ナイスっすスぺ先輩!」

「そのまま逃がさないでくださいね!」

「お前らからの認識が納得出来ねぇなぁ……?」

「当然でしょう! これが終わったらお説教ですわよ!?」

「みんなしてひでぇや」

 

 好感度調整ミスったか。

 

「これが総スカンってやつか」

「とにかくっ! お兄様に一言物申したい方がいますから!!」

「はぁ……そうかそれじゃ俺はこれで」

 

 嫌な予感がする。エイヴィヒカイトの根底を揺らがすような、厭な予感。掴まれた手をほどこうと揺すれば圧力は逆に増す。

 

「逃がすなスぺ!!」

「はい!!」

 

 ゴールドシップの掛け声とともに、ギリリと締め付けられる手首。逃亡阻止の意志が固すぎてめっさ痛すぎる。

 

「痛い! いてぇよ!」

「行っちゃダメ!」

「なんで!?」

()()()から、よりにもよってカイトくんが逃げちゃダメ!!」

 

 白状してしまえば、()()()が誰を指すのかなんて分かり切ったことで。

 いつもの並びの中に隠れていたその存在を見て、一目散に逃げの一手だけが思い浮かんだのも、周りの睨んだ通りに間違いではない。度肝を抜かれたと同時に爪先は後ろを向こうとしていたのも事実だ。

 痣になりかけないほどに掴まれては、どうしたって逃げようが無い。隣だけでなく後ろにも監視者は要るのだ。つまりこれ詰みです。

 観念して向き合うしかないのだろうか。

 

「…………さっき振り」

「はい。数時間振り、ね」

 

 信じられないようなものを見る目をしているのだろう。何故ここに居るのかと、どうしてここに居るのかと、目が口以上に物を言っている自覚がある。

 他の何者でもない、アグネスタキオン印の眠剤だ。聞いた話では丸一日眠りこけると聞いていたのに、どうしてこの場に立っているのだろう。

 

「……なんで、ここに」

「必要なことだと思った結末のため、ここに」

 

 アルダンにとって必要な結末がどんなものかは知らないが、その意見はいつだって一貫している。

 走らせたくない。走って欲しくない。そんなことを態度でも言葉でも、ずっと示されてきていた。だから、アルダンも求めた結末になるよう、エイヴィヒカイトも終わりを求めていた。それ以上は走らないで済む結果を求めていたのだ。

 求めた終わりはもうすぐで、よりにもよってこの最期を止めようとしているのなら、だとすればもう遅い。

 

「レースはすぐに始まる。お前が言い聞かせるには、時間なんて足りる訳ない。お前じゃ何もできないから帰れよ」

 

 お前は無力なのだと、そう言い放って突き放そうとする。

 そうして帰ってくれたのなら――――せめて、恨んでくれたのなら、エイヴィヒカイトはどれほど救われただろうか。

 

「そう。私には――私では、間に合わない」

「分かってんなら帰れよ、何のために置いてったと思ってんだ。俺の()()の気遣いを――」

「だからっ! ……言い切かせられる人を、連れてきました」

 

 一歩半のスペース分、横へ逸れる。そうしてアルダンに隠れた彼女が、エイヴィヒカイトの視界に入った。

 白磁のような高級感のあるピクチャーハット。それを身に着けた彼女の姿が、脳髄の奥の記憶を抉り出す。思い出そうとすれば否定が塞がり、知らないと払いのけようとすれば根底(カイト)がそれを咎める。穏やかな記憶の残骸が、照会情報を()()なのだと判定する。もうその時点で全てが混沌として、認識できる情報全てがぐちゃぐちゃだった。

 車椅子の女性は意を得たように、少しエイヴィヒカイトの方へ近づいて――――

 

「――は、」

 

 ――――反射的に下がった。

 俯いた帽子のつばは表情を隠して、感情を見えなくする。顔の輪郭も分からなくなる。人相だって探り当てるのは難しい。

 でも。

 

「…………う そ  」

 

 何も言わずに、車椅子の奴は、女は、女性は、彼女は、この人は、静かに立ち上がろうとする。

 小突けばへし折れそうな、細く脆そうな二の脚で、堂々と立ち上がろうとする。表情はまだ見えない。

 でも、でも。

 でも。

 

「  う そ   だ」

 

 頭が痛くて、警告音が耳鳴りを呼び込んだ。胸中を肋骨ごとねじ曲げたような、痛みと不快がミックスされて、急かされた肺は呼吸を荒くした。

 現実味がない。だって現実は、いつだって苦しくて痛くて辛くて寒くて不快で、心底から喜ばしい出来事なんて、それこそ三本の指でも余ってしまうような数しか訪れなかった。徹底しているのだこの世界は。エイヴィヒカイトに苦しんで欲しいと、そうやって反吐を撒き散らしながら生きて欲しいと顔も知らないカミサマから望まれているのだから、そして他でもないエイヴィヒカイト本人でさえ望んでいるのだから、こんな事象が起こるなんてありえない。

 見開いたままの瞳から、熱い雫は()()()()

 

「噓かどうか、分かってるはずでしょう?」

「だって、、こんな……」

 

 どうすればいいのかわからない。悪意への対処ならどうとでも。でも、どうしても、こういった事態には、子供のように慌てふためくだけ。

 否定したい、ではなく否定せざるを得ない。こんなゆめまぼろしに縋るくらい、エイヴィヒカイトが追い詰められているのなら、否定を尽くしてもっと強くならなくちゃダメだ。

 咄嗟に出てきたのは、こんな言葉なのがエイヴィヒカイトの本質なのだろうか。

 

「――なんで、いまさらになって――――っ?!」

 

 もうおそいんだよ。手遅れになってから何故現れたのか。どうしてもっとはやくきてくれなかったの。どうしてひとりにしたの。

 なんでずっと、しかってくれなかったの。

 

「そう、ね」

 

 棚上げも含めて全部を詰めたこの一言は、余すところなく伝わった。伝わってしまった。

 歯を食い縛る口元を見てしまった。咄嗟に見上げれば、自分の生まれた元である紅玉を見てしまった。潤んだ紅と、目が合ってしまった。

 傷つけたことを、確信してしまった。

 ――――たいせつなひとを、()()きずつけたのは、だれだ。

 

「、ちがっ、」

「――ごめんなさい、カイト」

 

 謝ってほしくなんかなかった。最初に聞く声がそんなのはキツイ。吐き気がするほどキツ過ぎる。

 ここにいてはならない。そうさせた自分は今すぐに死にたい。

 

「ぅ、ぁっ!? ――ぁあああああっ!!???!」

 

 こんなんじゃなかった。

 夢にだって見たさ。焦がれた日はいくつもあったさ。

 でも、こんなのが欲しかった訳じゃない。

 謝らせたくなんて、微塵も無かったのに。

 逃げないと。

 そう決意をすれば途端に竦む脚は、後退って、この場からいなくなろうと走り出した。

 

「ぁっ――――」

 

 やめてくれ。悲しそうな顔を見せないで。こんなクズに優しさを与えないで。

 もっと憎んで欲しかった。もっと恨み言ばかりを吐いて欲しかった。お前のせいだと責め立てて、その通りだとエイヴィヒカイトが認めればそれでおしまいなのに。そうしてエイヴィヒカイトが勝手に居なくなれば、大団円だというのに。

 視界の端に映っただけの顔を、全神経が捉えて離さない。

 それを捨て去るように、身体は後ろへ向く。

 

「逃がしませんからね」

「っ!? おいっ、離せよ……っ」

 

 後ろに居たのはこれを察してか。帽子の行方を聞いていた時には、この展開を予想していたのだろう。

 腕ごと若干に極められた左腕は、無理に外そうとすれば折れそうな予感がある。

 

「頼む……はなして、くれ」

「ちゃんと話さなきゃ!!」

「…………むりだよ」

 

 右手を握ったままのスぺまでも、そんなことを抜かしている。

 

「こんっ……、……()()()、ことよりも……」

 

 早く走りたい(逃げ出したい)。一刻も早く、この世界からいなくなりたい。

 

「早く、レースが始まる、から」

「カイト」

「…………だから、はやく」

「脚は大丈夫? 怪我でもしているの?」

「――――――――」

 

 グラスに言われて治したはずだ。歩き方は普段通りで、一歩一歩に違和感など感じさせないハズなのに。そういったフリを続けてきた十二年間だったんだ。痛くないと言い聞かせて生きてきて、本当にそう感じるようになっていたこれまでだったのに。

 こんなにも簡単に見破られた。

 何よりも度し難いのは、洞察力への驚愕以上に、心配してくれたことに対する嬉色の感情。

 不相応であると自覚しても、手放しがたい暖かさ。

 

「………………ほら、いかないと、ふたりとも」

「その前にやることがあるハズです」

「ああ、そうだ、いますぐに、はしらないと(にげないと)

 

 今にも崩れ落ちそうな身体を、絶対に見ないよう努める。

 立ち上がるだけで切れる息も、絶対に聞こえないように頑張る。

 

「そんな身体で、走って大丈夫なの?」

「あ――」

 

 ――――貴女がそれを言うのかと、言い返しそうになって思わず振り向く。

 

「……やっと、ちゃんと顔を見れた」

「…………ぁ……さ、ん」

 

 直視して、本当に何故ここまで来たのか問いたくなる。

 十二年。十二年だ。十二年もの間ずっと眠りこけていて、その間ずっと身体を動かすことなどない。使わなければ錆びるのは、肉体だって例外でない。冗談などを抜きにしても、ちょっとの衝撃で容易く折れてしまうだろう。少し転んだだけで、今後へ残る致命となり得るような脆弱さ。弱り切った老人のように、今の彼女はそれほどに弱い。

 立ち上がろうだなんて、実行することすら考えてはいけない。そんなことはさせてはならないと、素人であるエイヴィヒカイトにも分かる。

 手摺へ身体を預けて、身を乗り出す姿は危なっかしい。

 

「あらっ」

「――っ!」

 

 上手く力の入らない手は手摺を滑らして、ターフの側へ転がらせる。

 ――――言うまでもなく、そのままでは大怪我に直結する。骨も脆い。人体も薄い。筋肉も細い。全部が脆弱へ繋がる今なら、生命の危機だって近くに在る。呼吸も荒くて一定していないのは、普通ではないことが分かる。操縦を忘れて久しい全身は、臓器だってうまく動かせていないだろう。そんな状態がどれほど綱渡りで――――そんな小難しい理屈を蹴り捨てろ。

 スぺとグラスの拘束をすり抜けて、これまで積み重ねた努力を振り絞った。

 

「――あっ」

 

 手に触れて再度の認識を得る。

 骨張った皮膚。脂肪を削ぎ落された身体は、不健康さを余人へ与えている。こけた頬は、骨格を顕著に映し出す。幼い頃とは違って、優しさを感じた安心できるような柔らかさは無い。強く感情のままに掴めば、砕けるようなビジョンが止まらない。そんな不健康さは、これでもかと不安を掻き立てる。

 

「………………」

「ええ、大丈夫。カイトのお陰で怪我はないわよ」

 

 何も喋ってないのに、胸の内を曝け出されるのは流石だなと思わされた。

 

「ありがとうね」

「――――」

 

 泣きたくなる。なのに仮面が感情を堰き止めて、代わりに嗤いたくなる。ほら、どうかしている。客観的に見れば感動的な場面だ。泣いて然るべき状況だ。だというのに、エイヴィヒカイトはこんなにもこの光景が可笑しくてたまらない。嘲笑い飛ばしたくてたまらない。

 そんな優しさを受け取る権利など、はたしてどこにあるのですか。

 

「…………ゃ……」

「大きくなったわね。たくましい背中なんかはお父さん似ね」

 

 成長確かめるように、嬉しがるように抱き締めて振りほどけない。

 やめてくれ。

 

「……ゃ…………て」

「顔立ちは私に似てくれて……すっごく嬉しいわ~」

 

 口に出して、腕に抱いて、その嬉しさを全てで表す。羽毛のように軽いその腕が、どうしても振りほどけない。

 やさしくしないで。

 

「……おれ…………そ……な…………し、かく」

「ずっと、わたし()の事を背負わせてしまって……。本当なら、カイトのことはわたし()が背負うべきなのに、まるっきり逆にさせてしまって……」

 

 勝手に誓って勝手に裏切って、そんな無様な存在は嫌ってほしかった。

 ――――たすけて。

 

「ち、がう……わるいのは、ぜんぶおれで…………だから、やめて…………!」

()()()()()()

「あやまらないでよぉ……!!」

 

 折れていた脚が、本来感じるべきだった痛みを取り戻していく。

 嘲笑うような弧月は、鳴りを潜めていく。

 感情を堰き止めるペルソナは、その暖かさに溶かされていく。

 取り繕っていたモノが全て消えて、奥に圧しとどめていた全貌が出てくるのを感じる。

 見て見ぬフリはもうできない。感じないフリはもうできない。笑うフリは、する必要がもうない。

 どれだけ自分を許せなくても、どれだけ自分を忌んでいても。

 

「よかった……生きててくれて、ほんとうにっ、、!」

 

 この幸運を、喜ばないフリはもうできない。

 そんな仮面は、何処にも無いのだから。

 

「かぁっ、さん……! ()()()っ!!」

 

 他者にはどうでもいい事柄だろう。余人には関係のない話だ。観客にとっては、レースを阻害する邪魔な出来事。

 それこそどうでもいい。見世物にされようがなんだって構わない。

 夢幻のような時間が、本物だと認識させてくれるのなら、どんな煩わしさも心地よい。

 この後の結果は、あまりに面白みに欠ける。

 

「ねぇ、バカな考えはもう止しなさい、ね?」

「でも……もう、キツいんだ。生きてるのが苦しいよ……」

 

『エイヴィヒカイトは実は怪我をしていて、それが発覚したからレースは欠場』。そんな事実が朝刊にでも乗るのだろうか。

 正真正銘、以前からの前言通りにエイヴィヒカイトの挑戦はそこで終わった。

 

「……今度は、わたしが取り残されちゃうの?」

「でも……だって……」

「でももなにもないわっ! カイトがいなくなればわたしも勿論のこと、アルダンさんだって後を追っちゃうかもしれないのよっ!」

「お、叔母様?」

 

 未踏領域で『果てず』、彼の挑戦は終わり、彼のこれからは続いていく。

 エイヴィヒカイトが望んだ希望には届かず、いなくなることもないこの始末。

 見苦しく生き残った彼は、これからも生きていく。これまで通りの苦痛を受け止めながら生きていくのかもしれない。

 でもこれからは、それ以上の幸福を受け取れる。拒絶していたその権利を、これからはたらふく受け止められるのだ。

 

「だから、ほら」

「…………うん」

 

 そんなつまらなくて、どこにでもあるような未来が、挑戦の果てに待つ末路(希望)だった。

 

「生きてくれないと怒っちゃうわよ!」

「……怒るの下手かよ」

 

 叱り慣れてなくても、その説教は何よりも響く。

 多分、人生で初めて親から叱られた。聞き分けが良い()()()は、当然言うことを聞くのだ。

 家族のいるどこにでもあるような、他愛のないしあわせが、きっと彼を待っているのだろう。

 自棄を前提とした稚拙な夢を捨てて、カイトはようやく未来を手に出来たのだった。




幸せってのは山あり谷ありよりも、じんわりとくるほうが良き、そんな感じの認識
とりま本編終わり。あとはヒロインとの関係性に蹴り付けておしまいですな


バカ:両親をたっぷりと不幸にした→そんな奴が泣く権利いるかこれ?→じゃあ親の言葉に従って泣かないようにしよう→なら苦痛に関する感情は押し殺そう!→(時は経て)あれ?コイツ(とあるお嬢)といると仮面剥がれそうになるな……?ちょっと邪険にしとこ(極大罪悪感)→なんかこの学園に居ると色んな奴が剥がそうとしてくる!?(主にスぺやら)→剥がされる前に急いで消えないと!!→いやいやいやいや、オカン来たらもう無理やん……→諦めて幸せになるしか……!? 以上がペルソナの推移。
 色んな事へ鈍感にさせていた原因が取り除かれたので、骨折すりゃ痛いし顔に出る。嫌悪感を感じれば他人に読み取られる。嘘を吐けばもろ目が泳ぐ。嘘を吐くときに毎度の如く目を細めていたのは、瞳から感情を読み取らせないよう本能がそうさせた。瞼の裏ではグリングリンと大水泳大会してました。
 正直もう通う理由も無いし、元々辞めるつもりだったし、走ることは依然として好きじゃないし、学生辞めれば母親との時間も増えるし、やっぱり学園辞めよっかなーとかなんとか考えている。その件でもうひと騒動起きろ。
 ちなみにアルダンが目を真っ赤に腫らして、しがみついて泣き叫べば流石に夢への挑戦は止まった。ただその場合は完全に思考停止となった結末である。学園を辞めて母親もほったらかしになって、メジロ家の奥深くで人形みたいな日々を過ごす。健気にアルダンに世話をされて、気力を無くして生かされ続ける、排他的で背徳的なメリーバッドエンドの始まりであった。
 夢破れて願い叶わず。けれど本当に欲しかった幸せは此処に在るのかもしれない。

スぺ:涙腺がぶっ壊れてやべーことに。自分も母親を喪った身であり、他人事とは思えなくて猶更涙腺がヤバい。
 勝ち逃げされたのは悔しいけど、本人が走ることを嫌っているのなら、無理してまでの再戦は望んでいない。それはそれとして何かしらの勝負事では譲る気が無い。

グラス:後方から静かに眺めて、目尻の涙を誰にも気づかれぬように払ったとかなんとか。これで彼にも憂いなく、ようやく心からの全力で競い合え――――は? 学園を辞める? なんで? 理由が無い? 私との再戦は理由にならないと? へぇ――――そうですか。

トレーナー:危なっかしい雰囲気も取り除かれてとりあえず一安心。それはそれとして、仮に夢を押し通した際の結果を聞かされてブチ切れる。散った後の責任がトレーナーへ向かう事を考えれば、十発ほどぶん殴っても許されると思う。

スピカの面々:有象無象を押し除けて、オカンを最前列まで連れて来れたのは彼女らの功績。それがなかったらおしくらまんじゅうに押しつぶされて、間に合わなかったとか余裕であり得た。とりあえずオリ主の奢りで高級飯が確定した。

マックイーン:落ち着けばガン泣き。むしろギャン泣き。泣きながらオリ主に抱きついて、とあるお方に睨まれたりもしたけど気にせず泣きまくって鼻水も着けまくる。自分の知らんかった事情が一気に詰め込まれてパンクしてます。

アグネスタキオン:アルダンが想像よりも早く目を覚ました原因。嫌がらせ大成功。しかも嫌がらせ行為が回り回って借りになるっていう。これでいっぱい実験できるね!

先輩ズ:なんかドラえもんズみたいな語感
 よく分からんけど良かったね!! が大半。一部犬歯をギラつかせていた者達は消化不良気味だが、それはそれとして良かったね!! な意見に異論はない。家族と仲良くね!! でも煽った責任は取れよな!? 具体的には再戦求む!! は? 辞める? アルダン! 奴を縫い留めろ!!





オカン:息子が自分の背を追って果たした成果に大喜び。めっちゃ嬉しい。体が問題無ければ飛び上がって喜んでた。もちろん果たした結果も嬉しいが、それ以上に自分の背を追ってくれた嬉しさが圧倒的に勝る。母親としてもう大勝利なのでは?
 失った家族としての十二年を取り戻す為に、日々リハビリに励む。遠出できるようになったらまずはドイツにでもいきましょうか。お父さんに会いたいわ。
 辞めるとか言い出している息子だが、その意思は尊重する。ただし学園を辞める理由を上回るであろう、学園へ通う理由が生まれる余地があると、彼女はじっとお嬢を見つめるのであった。






アルダン:安堵。それに尽きる。
 ――――――――それはそれとしてマックイーン? ちょっと話が…………









ハッピー(当社比)後の怪文書とか作りて~

バッドエンドIFいるかいらんか

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