未踏領域で果てる   作:真の柿の種(偽)

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次回予告は次回へ持ち越しになった


其ノ四

 それはやよいちゃん―もとい――理事長への用事を済ませに、書類の束を持って理事長室へ向かっていた際のことだった。

 

「ダイヤと部室行ってても良かったんだぞ」

「いえいえっ! あたしが手伝いたかったからいいんですっ!」

「ふーん……変わってんな」

「そうでしょうか?」

「ああ、この学園によくいる変わり者だよ」

 

 そう言いつつ、持たせていた書類を半分奪い取る。

 

「あっ!」

「ここまで運んでくれただけでも助かってるからな」

「むむぅ~……」

 

 むくれられても苦笑しか返ってこないぞキタちゃんサン。

 いくら筋力が衰えてきたとはいえ、紙っぺらくらいなら何枚でも運べるのだ。本当なら一枚も運ばせずに賑やかし要因として付いて来てもらいたかったくらいなのだから。

 

「学園には慣れてきたか?」

「はい! 先輩は皆さん優しい人達ばかりで、クラスメイトも良い人達ばかりで……うん、すっごく充実してます!」

「好調なスタート、大いに結構だ。先輩としても嬉しいよ」

 

 忌憚の収まる気配の無い意見を述べた。カイトが学園へ属してから後輩は何世代か入ってきてはいるが、関係性は薄く、しっかりと『後輩』と言った印象を抱ける存在はいなかった。ウオッカやスカーレットは年齢的に後輩だが、チームとしては先輩なのが微妙な立場。ヒエラルキーは割と同位置にあるのだ。

 名実ともに後輩と呼べるのは、ダイヤとキタサンだけと言える。慕われるような先輩であれるように心掛けたいものだ。

 

「そんじゃ入学から順調なスタートを切れている後輩に向けて、なにか先輩がプレゼントでもしてあげましょうかね」

「ええっ? いいですよそんな!」

「まあまあそう言わずに。スピカに居続けていてくれるよう、買収工作の一つや二つは……あん?」

 

 見慣れた廊下に、見慣れない後ろ姿。

 尻尾は無い。服の中に仕舞っているのかもしれないが、黒髪の上に耳は無い。後ろから見れば髪に隠れているが、ウマとは違う人の耳があるのだろう。

 ここへ来て数年は経って、目上の存在をある程度は把握していたつもりだ。

 見覚えが一切無いのなら新顔であると、そう判断するのは自然だろう。

 

「お知合いですか?」

「いや、新人のトレーナー……?」

 

 にしては言葉にしがたい貫禄をその背中に背負っている。今日付けで中央移りになったトレーナーだろうか。

 

「……」

「……む」

 

 呟きを聞き取られたのか、こちらへ振り向くその女性。キツそうな鋭い眼差しは、こちらの内へ抉り込まんとする。

 年の頃はおハナさんと変わらない頃合いと見受けるが、女性の年齢を不躾に探るのは良くないこと。なんにせよ、確実にカイトより年上なことは見て取れる。おハナさんとは別タイプな、いわゆるデキる風なキャリアウーマンな第一印象。

 

「エイヴィヒカイト」

「え゛……何故バレた」

「……貴方ほどに界隈で有名な存在を、私は他に知りません」

 

 先週再開したキタサトコンビは元々顔見知りだったからともかく、初対面の人にも安定と信頼な即バレである。おい誰だこの眼鏡は変装も兼ねられるとか八百を吹き込んだドイツ娘は。帽子の色も変えればもっと変装になりますねとか、ウキウキで言いやがりましたのはどこのお嬢だあんにゃろう。薄々気づいてはいたが、彼奴等は結局カイトを着せ替え人形にしたいだけなのかもしれない。今更気付いても抗うつもりが無いのは、もうしょうがないことなのだ。だって拒否ったら見るからに消沈し始めるのだもの。

 もういっそのことグラサンにしてマスクでも装着してやろうかしら。とか与太を考えていれば、目の前のお姉さんは懇々と語り始める。

 

「出自だけでなくその実力……トリプルティアラやグランプリ連覇に数々のG1タイトル、それらを常勝無敗で走り抜け未踏の(いただき)に座した魔王――――」

「あ゛っ(恥死用意)」

 

 アカン。むず痒くなってきた。お願いします何でもしますから魔王ってのはやめてくれ。そう呼ばれると蕁麻疹が全身でメガトン級に大爆発するのです。マジで誰が広めた問題については、ブロワイエに責が存在すると睨んでいるがどうか。今度アイツの家に着払いで()()()でも送り込んでやろうかしら。こないだ送られてきた手紙で住所は把握しているからテロし放題なのだが、いいのか良心は止めるどころか応援し始めるぞ。

 

「次の世代が回ろうと貴方の記録は未だに破られることはない。URAを動かしたこともあり、私達の間では一番の注目を浴びていますよ」

「口に出したらやっぱり凄すぎる……! 流石ですねカイトさんっっ!!」

「ちょっ、マジでやめっ……私()?」

「――――いえ、この場ではやめておきましょう」

 

 意味深なことを言っているが、ちょっとシリアスな雰囲気を感じてきたカイトは身構えりゃいいのか。もう今更シリアス世界で真面目に生きるなんて不可能だが。

 

「近いうちに改めて私の紹介を行いますので、その時に」

「は、はぁ……そっすか」

「では、失礼します」

 

 そう言って、姿勢よく踵を返して去っていくキャリアウーマン(仮)。

 残されたキタサンと、少し口を開けて顔を見合わせる。

 

「なんだったんだ?」

「新しい先生でしょうか?」

「……ま、その時に話せば分かるか」

 

 向けられていた視線の質も意味が分からなかったが、近いうちに職員が追加されたりするのだろうか。紹介されるようなイベントでもあるのか。全校朝礼的な。

 その――――鋭利な視線が、脚を注視していたこと。それも折れたことのある部位を見ていたのは、ただの偶然だったのか――それとも何か、思うところがあるのか。

 また今度、聞いてみれば分かる。

 実はその時になれば、そんな事態ではなくなってたりすることなんて知り得ない。

 アオイハルは再びやってくる。友と切磋琢磨し合ったあの空気を、間近で感じた季節が再びやって来る。

 もうすぐそこまでやってきている。

 

 

「クールダウンのお時間でーす。速やかにクールダウンへ移行して……」

 

 言うが早いか、言った傍からカイトから逃げるように、むしろ加速したように見えるのは気のせいか。先頭民族も大概にしとけよ。

 トレーナーがいないからって好き勝手出来ると思ったか。

 

「こらーっ、先輩! ちゃんと休憩しなきゃイチゴ大福あげませんよー!!」

「もうっ……スぺちゃんじゃないんだから」

「え、私ってそんなイメージ?」

 

 今更ショックを受けてるポーズをされても、スぺがその手のギャグ位置に居るのはさもありなんである。財布を枯らした恨みは忘れん。

 トレーナーが恒常的な金欠だったことを思えば、もしやこの職業って食事代に殆ど消えていくのだろうか。少々末恐ろしい想像が生まれつつあるが、真偽のほどは未だに確認できてはいない。貯金できないとかこの職、実はブラックだったりする可能性。

 

「先輩、ちょっと脚を見せて」

「触りたいにしても明け透けだー」

「カイトくん、さ、触りたいの……?」

「うっさいやかましいぞ」

 

 アブナイ発言をしている小娘共(先輩含)は無視です。お願いしますやめて、捻じれて伝わって彼女の耳に触れればどうなると思ってやがる。つかどこに出しても立派で恥ずかしくない医療行為だぞ。そうでなくては、なんだって女性の脚を率先して触らにゃならんのだ。

 消化不良気味な先輩を座らせて、差し出された脚へゆっくりと触れれば、芯からほのかに伝わる炎症の熱。軽度ではあるが筋肉痛と見える。

 

「痛みは……無いんですか?」

「ええ……っ、んっ」

「……疲れ溜まってますよ。最近ちょっと走り過ぎです」

 

 朝早くや夕方からのランニングを欠かしていないと、スぺからもタレコミは入っているのだ。

 柔とまでは言わないが、先輩の脚は強靭と言い切れるほどの頼り甲斐は無い。消耗品ではないのだから、この脚は大事に使ってほしい。

 

「そうかしら」

「いや走るなとは言ってないんです。ただ同じくらいの休息をしっかりと取ってくださいねと」

 

 彼女もそうだが、中央トレセンにやって来るような娘達は、示し合わせているかのようにオーバートレーニング大好きな人種の気が拭えない。自らを高めるのに積極的なのは良いが、度を過ぎれば身体を壊して、それは翻って精神にだってよくない。特にスズカのような『走る=人生最大の娯楽』、そんな方程式が出来上がっている存在は致命的な怪我へ突き進もうとしていても、往々にして無自覚だったりする。

 その辺の尺度を見極め、彼女らにとっての生き甲斐を奪うのでなく、それに応じた量の休息を与えるのもこの仕事の一つ。

 

「先輩の脚はそこまで丈夫じゃない。しっかり休まないとまた折れますよ」

「え、ええ、それは分かっているのだけど……」

 

 納得してくれたようだが、噛み合わせが悪いようなリアクション。訝しむようなことを抜かしただろうか。

 

「先輩がそれ言うんすか?」

「聞こえない」

「二回だったかしら、カイト先輩の数は」

「もっと聞こえない」

「もっとです。もっと言ってあげてくださいまし!」

「あー、あー、あー、聞こえなーい」

 

 棚上げも時には必要なこと。時として人のことを言えないカスヤロウに徹するのもまた、この仕事の一つなのです。

 

「とにかく休むこと。入浴時間中は湯船で脚を揉んで、自分でもマッサージすること。湯上り後もストレッチはしているでしょうが……これまで以上に念入りに」

「ええ、わかったわ」

「睡眠時間とかの休息を削らない限りは、走る時間等はこれまで通りで構いません。……もしこれで悪化するようなら」

 

 どうしてくれようか。お仕置きとなるなら本人へ最大限効き目のあるなにかが良い。

 一週間走ることを禁ずる、これは実行しようものなら悪化しかねないから悪手の極み。下手に抑圧しようものなら、発散させる際に極端な負荷をかけかねない。

 もっと恐怖を煽って、かつ確実に確約させられる強制力を持った手段とは。

 

「……ああ、レースの予定を全部空白にでもしましょうか」

「え」

「エアグルパイセンと走るって話も果たせなくなるけど、しかたないよね」

「……意地悪なのね」

「なら意地悪にさせないでくださいよ」

 

 そんな権限はカイトには無いが、あのトレーナーならそうしてもおかしくはない。情に弱いのは玉に瑕だが、その辺はカイトからの猛プッシュで押せると願いたい。

 言いながらふくらはぎを流すように、ゆっくりとさすってほぐしていく。

 

「っ! ……ぁ……っ」

 

 抑えきれない様子で、小さな声で鳴いた。

 

「? ……痛みは無いんですよね?」

「その……っ、くすぐったくて……」

「…………我慢してください」

 

 思ったよりもどうでもよかった。諸々の最悪が駆け巡ったのがバカみたいではないか。

 

「ぁっ、んぁっ…………もっと、やさしく……」

「え、これ以上のソフトタッチは無理ですけど」

「……ぁぅ、っ、、~~っ」

「おいやめろ危険な声をあげんな」

 

 人差し指を軽く噛んで、こさばゆさに耐えようとする表情が殊更に危ない。

 如何せん近い距離で聞こえてくるために、徐々にバイノーラル染みた感覚に襲われ始める。フワフワとしてくるこの感じは、ちょっとした酩酊感にも似ている。この人良い声し過ぎである。

 

「す、すごいねサトちゃん……なんか、見ちゃいけない気分……」

「…………いいなぁ」

「お兄様! 次は私もお願いします!」

「先輩以外は休憩おしまいでーす。速やかにとっとと走り始めてくださーい」

 

 見世物じゃねえんだぞ治療行為だ。速やかなる散開を願いまする。今日はマックイーンが晩飯を食べに来るそうだし、トレーニングが終われば家でケアをしてやろう。

 他のメンツを走らせて、そうして始まる無心タイム。近くにだれもいない状況が、不可思議な緊張感を掻き立てる。いかがわしいことはしていないんですよ本当なんですよこれが。

 

「ふぁっ、……ぁっ、んんっ…………あっ、くっぅ…………」

「…………」

「……はぅ…………あっ」

「なに先ぱ……あっ」

『――――』

 

 遠く、スピカの練習風景を眺めている――――ことなくその視線は真っすぐに一直線にこちらへ向いていた。

 レンズを通して矯正された視界には、にこやかな笑顔が映し出されていた。割とと言うか、相当と申しましょうか、それなり以上に大好きな笑顔です。だがしかし、笑顔とは本来威嚇としても有用なのは、今もああして満面を浮かべるのが代表的な例であります。

 でもちょっと待ってほしい。事務的な業務なのだこれは。心を無にして淡々と行って、至極義務感に身を任せていた訳なのだ。決して、そう決して邪なる感情など抱いてはいない。精々が良い声しているなとか、この清涼感に富んだ美声は心の栄養になるなとか、その程度だけなのです。先輩をリスペクトしているだけで、そんな監視されるようなことはまさかそんな。

 ただそれを汲み取って頂けるか、そもそもそれだけの信用があるかどうか。

 

「……」

「……」

 

 威圧に震えた静寂だけが、ボクと先輩との絆だった。しかし早めに済ませることが出来ないのは悩みどころ。

 後悔後先立たずではあるが、手は止めませんのでやり切らねばならぬ。丁寧さを欠くのはもっとあり得ず、結局マッサージが終わる瞬間までジッと見つめられた拷問時間でした。ちばしっためがこわかったです。

 

 

 カタカタカタリと、無心でキーボードを叩けば二文字十文字と追加されていく。

 叩いて文字を入力し、今日得た記録をリズミカルに記録していく。パワーポイントとやらも最近使い始めて久しいが、これが中々どうして慣れてくれば便利な代物だ。より見やすく扱いやすく最適化していくのが、いっそ楽しくさえもある。わー、ぼくめっちゃおしごとしてるぅー。

 

「お疲れさん……ぅえっ?」

 

 開けてビックリと言ったところか。おハナさんも大体同じリアクションであった。仲良しで微笑ましいですねはよくっつけや。

 

「あら、お疲れ様です」

「あ、ああ……うん?」

「まぁ、驚くよな」

 

 お前が返事するんかい。てかなんでトレーナーが労われてんだよぶっ飛ばすぞ羨ましい。

 そんな激情をスッと沈めて、しかして助っ人候補をゲットだぜ。助力を求める対象を見っけたなら全力で助けて欲しい。頼むよ頼れる大人サン!

 

「お帰りなさい助け」

「口より手を――――ですよね?」

 

 同意の矛先はおハナさんとトレーナーへ向かっている。端からカイトへ意見は求められてはいないのである。日々の信用が損なわれているのは悲しいね、バ〇ージ。

 憎しみの螺旋かのような無情感が果てしないですが、分かりやすい折檻が無いのがやり辛さの拍車をかけている。彼女も必要なことだと分かってくれているのだが、それはそれとして納得できていない部分があるのだろう。

 

「え、ええ……そうね」

「またなんかやったのかお前」

「これが咎められることは特には何にも」

「それでこれか? ……尻に引かれ過ぎて笑えるな」

 

 仕事場にまで出張ってきたのは、なんでもカイトの仕事を早く終わらせたいそうだ。

 

「ああ、可愛いよな」

「は?」

「や、今回は俺、なんも悪いことしてないから、罪悪感無しで嫉妬してくれるのは悪い気分じゃないなって」

 

 早く終わらせて欲しがっている理由を推測すれば、ぶっちゃけ口角の急上昇が止まらない。ウチのGF(ガチ)が可愛すぎる件について。何となくで選択した食い扶持だったが、その実、最高の天職であるのは間違いない。

 ああ――――嫉妬心と独占欲をこれでもかと煽れるこの仕事は、確かに最高だった。それでいて『あくまでも仕事だから』の体があるから、思い切り怒ったりは出来ないジレンマ。じれったそうに早い帰宅を望むことしかできない、そんないじらしさを安全圏内から高みの見物をするのが、最高で至高で最高なのだ(語彙力消失)。睨まれてた時は恐怖の一言に尽きるが、喉元過ぎ去れば熱さは遠く彼方へ。これからも懲りずに煽れるように、それでいて事務的なトレーナー的接し方を続けようと思います。

 

「カイト……?」

「あれれ、違った? 全然妬いてくれてなかった?」

「……知りませんっ」

 

 嫉妬なんてしていないとは言わないのが、殊更に愛らしく愛おしい。

 思わず抱き締めたくなるこの可愛すぎる生命体が、願わくばもっとカイトに焼餅を妬いてくれますように。

 

「……お前も大概良い性格してるよな」

「そうかな」

 

 好いた存在が出来れば誰だってこうなるのだ。大なり小なり虐めたくもなるだろう。

 

「んで、やよいちゃっ……いかんいかん……えっと、理事長はなんて?」

「おハナさんは聞いたか?」

「ええ、私も同じ内容だと思うわ」

 

 噂ではトレーナーだけでなく、教職員全体にも何かしらの連絡事項が回っていたと聞く。

 生徒達も何事かの気配を察して、浮足立っているようにも見受けられる。何か大きめなイベントの予感を誰しもが感じている。

 

「それってやよ……理事長が海外出張するって話?」

「知っていたのね」

「ええ、俺もこないだ本人から聞きまして」

「……カイトと理事長の、二人っきりで?」

「いや、たづなさんとキタサンもいたけど」

 

 やよいちゃんに警戒心を抱くのは、少々気を張りつめすぎではないかね。そうさせたのは誰だまったくソイツは恥を知れ――――閑話休題。

 今思えば運んでいた書類は、その手の書類だったのかもしれない。

 

「……きたさん……初めて聞く名前ですね」

「あれ、言ってなかったっけ。スピカの後輩」

「まさか……敢えて隠してたなんてこと――――」

「ナイナイナイナイ」

 

 脱線の予感、ムービー・ザ・ファイナリティ。その件が気になるなら、後で気が晴れるまで話すこととしよう。

 

「その間は理事長不在? かなりの仕事が溜まったままだったと思うけど、消化しないで大丈夫なの?」

「あら、よく知っているのね」

「そりゃまあ、よく手伝ってるんで」

「……初耳よ?」

 

 そりゃ言ってないもの。あれ、言ってなかったっけ。うっそだろ言ってないよカイトくん。

 

「え、あっ、言ってなかったっけ」

「最近お昼に一緒に居れなかったのは、そうなのね」

「あー……、すまん、や……理事長に頼まれたらちょっと、な」

「…………しかたない、ことだもの……っ、ぅ」

 

 エラー音多発。待て待てこの展開は天丼染みてきているが、しかし依然として効果は覿面で抜群なのだ。

 キーボードを打ち据える手を止めて、アルダンの近くへ短い距離を猛烈爆裂ダッシュ。

 

「伝え――――! ――るの忘れてたのは、悪かったよ」

「……一緒にいたかった」

「休み時間は教室まで行く、これでどう?」

「……少しの間も?」

「です」

「…………二人きり?」

「ですです」

 

 柔らかい手を武骨な手で包み込んで、安心させるように優しく握る。

 かれこれ数年と繋ぎ合ってきているが、これといってこの温度には飽きがくる気配が無い。

 ずっと欲しかった暖かさは、もう二度と手放したくない。誰にも渡したくない。どこにも行かせない。アルダンの体温を得る程に、渇望はより強くより濃く、欲して切望して熱望する。

 一度握れば、暫くは離れ難い。気恥ずかしさなど気にならないほどに、一日が終わるまでこの手は離れないんじゃないかと確信する。

 

「おいおい、頼むからここでイチャイチャすんなよ」

「手ぐらい許してくれ。おハナさんも見逃してくださいよ」

「……まさかこれからずっと()()()()とか言わないわよね」

「……個室があれば気兼ねすることなく、二人きりを邪魔する者は――――いない? …………ねぇ、カイト」

「流石にそれは職権乱用だと思うのですよ」

 

 そんな権限はぺーぺーの極みなカイトには無いのですが、そこまでとっとと出世しろと遠回しに言ってんのか。

 昼飯も休み時間も誰に憚らられることなく、人目も一切気にすることなく、アルダンの体温へと触れられる空間が家の他にもう一つ増える――――よーっし、自宅とは別のプライベート空間確保のために、カイトくんバリバリ頑張っちゃおうかな。幸いと言うか、都合よく最高権力者が席を外す日は近い。たづなさんが立ち塞がろうと所詮は事務員でしかなく、色々な手続きをちょろまかすなら今の内である。

 

「…………つってもやっぱり…………一番の壁はたづなさんに変わりないか…………」

「……話を戻すけどな、なんでも理事長代理なる人物が来るらしいぞ」

「理事長、代理ぃ? ……チッ」

「なんでだよ」

 

 やよいちゃんやその立場が邪魔と言う話ではないが、半年くらいはその席不在でも困りはしなかった。そもつくづく思っていたのだが、あの子はマスコットに徹していればいいのだ。あの小さな両肩に、中央トレセンの命運を乗せるなど正気ではないと思っていたのだ。もっと子供らしく、健やかに年上へ甘える年相応らしさを出すには、やはり理事長という肩書は邪魔なのかもしれない。

 それはもう世話になった手前、いつかはその重荷を取っ払ってやりたいとは思うのだが、如何せんいつになる事やら。

 もしも、もしもカイトの執着が少しでも彼女への恩義へ向いていたら、関係の相関図は今とまったく違ったものになっていたのだろうか――――。

 

「んで、その代理さんとやらはいつ就任すんの?」

「来週だな」

「ふーん……その人ってどんな人?」

「知らねーよ。まだ来てないんじゃないのか?」

 

 人相も掴めないのでは媚も売れない。平伏祭りの媚の大特価セールならずである。気に居られれば夢のマイルーム獲得もなったかもわからんのに。

 

「……もしかしてあの人かな」

「あの人って――どの人?」

「こないだ会った見かけない人。方向性はおハナさんをもっとキツくした美人系」

「美人……? ――――懲りないのね、カイト」

「……貴方は言葉の重みを知りなさい」

「え?」

 

 またなんか言っちゃいましたか。

 

「彼女の前で軽率なことは言わない方がいいわよ」

「はぁ、そっすか」

「……メジロアルダンも苦労しているのね」

「はぁ? アルダンに劣るのは当然ですよ何言ってんですかキレますよ」

「逆切れしないでちょうだい」

「やだ……カイトってば、人前でそんな……」

 

 ポッ、と照らされる頬を繋いだままとは反対側の手で優しく撫ぜて、ついでにトレーナーの視界から遮る。

 

「……面倒なのね、あなた達は」

「だろ? その分見てて面白いんだ」

「見せもんじゃねぇぞこっち見んな目ぇ潰すぞゴラ」

「はいはい、おっかないおっかない」

 

 威嚇も散々ッぱら使っていれば効力は薄まる。カイトの威圧だけでは脅迫には繋がらないらしいです。もう実力行使しか、この魔王と不本意にも謳われた、伝説的幻の右脚を使うしかないのか。

 

「海外出張の他には……あとはアレね」

「ああ、アレだな」

「アレって?」

「お前は知らないよな……そうだな、ちょうどお前のお袋さんなら知ってるかもな」

 

 母親なら知っていて、カイトは知らないのならそれは世代で区別される事柄だ。

 アレとやらが何かは知らないが、それが今話題として出てくるのなら、再度の始動を意味しているのだろう。

 

「アオハル杯、気になるなら聞いてみろよ」

 

 トレーナー業に携わって半年ばかり。

 エイヴィヒカイトとしてでなく、トレーナーとして最初の、されど大きな一歩目を踏み出さんとしていた。

 

 

「聞いたことありませんわ~」

「うん、だと思った。お前が知ってたら逆に驚くぞ」

「カイトくんは知っているのかしら?」

「知らないから聞いてみたんですけど」

 

 相変わらず会話の接続が綿毛みたく上下している。なのに疲れるようで実はむしろ癒されるのは、話していてとても不思議だ。やっぱ声か。耳障り良好で浮遊感のある良い声だからか。

 

「お兄様! 私には聞いてくださらないんですかっ!?」

「マックちゃーん、アオハル杯ってなーにー?」

「まったく知りませんわっ! フンスッ!」

「かわいーねー、マックちゃーん」

 

 小動物を愛でる感覚で、マックイーンの芦毛をすいて撫でる。

 無い胸を張ってドヤ顔で無知を披露する姿は、とてつもなく可愛すぎ。ディアマイシスターは世界の宝である。三女神とかいうゴミじゃなくてマックちゃんを崇めよう。あまりの可愛さに、億年長寿に一攫千金、無病息災や国士無双、滅亡への厄災からも遠ざかる御利益があるのは間違い無しだ。ちなみにアルダンは個人の占有物です。その他大勢の崇拝対象なんぞにさせてたまるか。その理論だとやっぱりマックちゃんも崇めたらだめだ。有象無象がマイシスターへ近づくんじゃない。

 

「……ぁ……ん、ぅぁ……――」

「マックイーンはそのままでいてくれ……はちょっと哀れだな……」

 

 せめてもう少しくらいは成長期であってくれ。

 

「――お兄様?」

「せめてまな板以上は……まぁスズカ先輩よりかは余裕ありそうだな」

「お兄様??」

「なんのお話かしら」

「……ブライトには無縁の話」

「お兄様???」

「むぅ~~……わたくし、仲間外れはさびしいですわっ!」

 

 むむむんっ、とどこぞの誰かのお株を奪うようなリアクションに、ああやはり癒しの権化なのだと確信した。

 静と動の腕前が飛び交うキッチンから、背中へバチバチと荒れた気配を感じながらも、同時進行でマックイーンとブライトから癒しを供給していく。愛玩的フワフワな癒しと、おひさま的ぽかぽかな癒しの相乗効果で、癒しがスパイラルして過剰に癒される。行き過ぎた回復呪文が人体を破壊するように、過剰過ぎる癒し空間はカイトを殺すかもわからんね。

 

「イジメ?」

「人聞き悪いぞ、俺はこんなにも聖人君子なのに」

「……たまにケダモノになるくせに」

「おいこらばかだまっとれい」

 

 負けじのケダモノがなんか言ってる。

 聖職者こそがもっとも恐ろしいうんたらかんたらな法則に当てはまるのならば、やはりカイトは間違いなく文句なしの聖人君子その人なのでありました。命危うしな発言お疲れ様です、ですが圧倒的癒し枠な二人の前では慎みましょうぜアルダンさんよ。

 

「……けだもの、ですの?」

「ほぇ~、カイトくんは怪獣さんだったのね~」

 

 訝しげにこちらを見やるメジロの誇りと、キラキラした目で見つめてくるメジロのふわふわ。これでどの程度までそういった話が出来るのか、察して感じ取れるリアクションである。マックイーンは危険でブライトはちょろいと覚えておこう。

 

「……怪獣……夜の、怪獣……激しい、肉食の……ケダモノ…………~~~ッッ!!」

「勝手に暴走しないでねベルちゃーん?」

 

 そしてキッチンから舞い戻って独りでに身悶えるベルちゃん。さあさあ、状況はカオスが目立ってまいりました。こうなった彼女へ声を掛けてもどうせ逆効果なのだ。カイト知ってるよ。

 

「ライアンは、常識人枠はまだかっ?」

「そんなことより手伝ってくださいね」

「いや最初のフリはお前……」

 

 言いつつも人数分の皿等を並べていく。混沌の切っ掛けである自覚を知らんぷりしたお嬢に、手足の如くこき使われる姿は平常運転でございました。

 

「ライアンはもう少しで着くそうですわ」

「ん、了解。ほらブライト、ちょっと横にズレな」

「は~いっ、わたくしも何か手伝いますわ~」

「や、すぐ終わるから座ってなさいよ」

 

 立ち上がろうとしたブライトを、片手で軽く押し返せば雲でも押したかのような手応えの無さ。「あらあら~?」とか言ってんのはいいと思います。掴みどころのない強引さに怯えてた時もあったが、あしらう方法を見出してからはむしろトップクラスの精神回復存在でしかないのだ。

 

「んで、献立はなんですか」

「アタシはグラタン、作ってみたんだけど……」

「香ばしいチーズが香って来たのはそれか」

 

 味見をしようとちょっかいをかけに行けば、ぶつかり合う激しい熱気に消し飛ばされる未来しか見えず、竜虎相搏の現場から静かに立ち去ったのでした。作り途中のを横から食べるのも楽しいのだが、なんなら毎度の如く行っていたが、そうはいかない事情が現場では起きているんだ。

 

「広いキッチンで良かった」

「え、広い?」

「うん、アルダンさんと並んでも余裕あったし」

「……そっか」

「システムキッチンって使いやすいんだね」

「? ……しすてむ? きっちん? ???」

 

 二人同時進行で料理できるほどキッチンの間取りは無かったように思えるが、配管等が剥き出しな昔ながらのキッチンだったと思うが、そこは家主への相談が一切存在せずにサイレントに近代改修が余念なく行われている我が家であります。無駄な疑問は挟まない方が心の健康を保てる。カイトは気にしないことにした。

 心なしか部屋自体も入居した頃より大きく広く、家具のサイズも徐々に増加しているような気がする。加えて何故か、そう何故だかは知らないが部屋数が増えまくっているのだ。気付けばアルダンの私室が作られていたのには唖然としていました。

 元々安っぽい造りで相当に年季の入ったボロアパートだったのが、いつ頃からか――――現役退いた頃か、壁やら扉やら窓やらはリニューアルされているような輝きを見せているのだ。

 

「……ベルちゃんって、今日泊まってくの?」

「うん……ダメ、だったかな……?」

「いいけど……そういえば手荷物無しだったけど、着替えは?」

「アタシの部屋にあるから大丈夫」

 

 おやおやおやおやっ? おっかしいなマイホームは1LKだったと思うのですが、ベルちゃんの私室なんてあったかしら。

 

「あれれ……? やっぱりオカシイ…………?」

「あら、そういえば私達着替えるの忘れていましたわね」

「お姉さまが来る前に、部屋で着替えてまいりますわ~」

「? っ?? ? ……やっぱおかしいよな……そうだよな……疑問を抱くべきだよなエイヴィヒカイト…………」

「……………………ほら、カイトは席に着いてなさいね」

「ぇ、……おう」

 

 釈然としないながらも、一緒に住んでいるアルダンがそう言うのならさしたる問題では無いのだろう。自分よりも聡明な彼女が疑問符を挟み込む余地もないほど自然体ならそれが一番正しいのだ。

 触れても意味の無い些事を思考の外へ放り投げつつ、他のことに頭脳を巡らせた。

 

「……ベルちゃん、アオハル杯って知ってる?」

「あお、ハル……もしかしてタイキが言ってたやつかな。アタシも詳しくは知らないけど……」

「それなら叔母様から返信がありましたよ」

「お、そうか………………俺より先にアルダンに……?」

 

 マイマザーが息子以上にアルダンと仲が良い件について。実家に帰る際は真っ先にアルダンも来るか否かを聞かれるし、逆にコッチへやって来る際はまず初めにアルダンへ連絡行くしで、実の息子以上に気に入られている節がある。ちょっとボクは悲しくなったりして、それをアルダンに慰められるまでがデフォルトである。

 しかし今膝枕を要求するのは難易度インフェルノ。故に泣き寝入りしかできない世知辛さよ。

 

「返信内容はそのまま送っておくから、後で目を通しておいてね」

「そっか、そっかぁ……………………グスッ」

「……もうっ、大丈」

「大丈夫だよカイトっ、叔母さんと仲良しなのはみんな知ってるから」

 

 なんて優しきお言葉を貰いながら、ぐずり始めた少年ハートカイトの肩をさすってくれる。敬ってもいいですかドーベル女神。

 

「ベルチャンッ……!!」

「ふふっ、かわいいなぁ……」

 

 あ、すっごく姉っぽい。頬をふんわりと撫でられれば感じる年上感。やっぱりマイシスター(姉)はベルちゃんしかありえないのだ。

 

「……ギリッ――――…………もうお夕飯なのだから、それぐらいに」

「よかったら今日は食べさせてあげようか?」

「ベルちゃん……優しすぎ……やっぱ女神……アカンダメになるぅ……」

「……………………あら、もうそろそろライアンが来る頃ね」

 

 言った瞬間に呼び鈴が鳴れば、壁に掛けられたインターホンのカメラにはライアンの姿が映し出されている。やはりおかしい。我が家のインターホンにはカメラなんぞ存在していただろうか。しかしながら鍵はオートロックで、合鍵はカードキーと近代改修が進んでいる我が家では些事かもしれない。

 ――――あれちょっと待て、カイトはカードキーなんて持ってないぞ。普通の鍵しかないぞ。そういえば最近は鍵を使った記憶が無いが、従来の鍵が使えないなら懐にあるコレは無用の長物なのでは疑惑。

 

「お姉さま~」

 

 首を傾げながら鍵を空けに行こうと立ち上がれば、横をすり抜けてトテトテ小走りのぽわ嬢。

 

「パーマーは……ああ、連絡来てたわ」

「なんて?」

「パリピ友達と鍋パだってさ」

 

 ヘリオスの発する陽射し溢れるノリが旋風となって巻き起こるあの空間は、一度経験したことがあるが中々に面白い。

 だがこの集まりこそいつでも集まれる。今回は残念だったが次の機会もあるのだ。

 

「またアイツらとも絡みたいな」

「……絡みつきたい? 他の娘と??」

「あとで耳かきしてやるからな。風呂上がりにな」

 

 難聴が酷過ぎる。主治医でも呼ぼうか悩むくらいだが、どうせ杞憂からくる突発性難聴だ。

 イチャつきたい――――もありますが、イチャつけば機嫌も治るだろう。ベルちゃんがシャワーを浴びている間にでも、久しぶりの耳孔マッサージタイム開始だ。トレーナーに仕込まれたケアの腕前でもって、とっくりと喘がせてやろう。悶え苦しめ。こんなこともあろうかと撮影機材の準備は万端じゃい。

 

「おっすー、らっしゃいライアン」

「うん、お邪魔します……わっ、すっごい豪勢だね」

「たくさん作ったから、遠慮せずに食べてくださいね」

 

 美味しい夕飯をつついて、近況を伝えあっていれば自然と笑顔がこぼれる。

 不穏なんて微塵も感じない、穏やかな一日の終わりだった。

 

「ベルちゃん、コレ美味い。グラタンメッチャ美味いよ。ホワイトソースが味わい深くてナイス」

「ほ、本当に? ……よかったぁ……」

「……カイト、こっちのパッツァはどう?」

「ムグ、ング……いつも通り美味いよ」

「ええ……いつも通り、普段と変わらない、ね」

「……ぐぬぬ」

 

 挑発的な流し目が、挑戦者然とした強い眼光とぶつかる。副反応としてカイトの胃からはキリリと音がする。

 

「…………ら、ライアン」

「あ、あはは……まあまあ二人とも」

 

 ホント穏やかで、平和なお夕飯でした。




・バカ
ここ最近ずっと疑問がとめどない。合鍵が合わなくなっていた。コレがまず意味わからん。
締め出されたら終わりの立場へといつの間にか追いやられていたことに怯えている。まさかそんなことしないだろうと信じているが、ヒエラルキーがやはり低すぎて内心ビクついている。
住んでいたアパートの住人は少しずつ減って、そのぶん一室の大きさは拡張されていく。そういえば最近は別れの挨拶によく来るなぁ。何故だろう不思議だなぁ。
日本語を聞くと西ヨーロッパのとある言語に変換されて、再度日本語に変換される怪現象に襲われている。原因は不明だが、何故かワーグナーやバッハやベートーヴェンの奏でる音楽が手放せない。どうしてだろうか。
真なる合鍵を持たざる者。なんでさ。

・アルダン
締め出しはしないけれど逆を行う準備は、道具や心構え諸々いつでも万端。
私室には着替え等があれども、寝具は一つもない。なら寝床はどこなのかしらと問われたのなら、まあ、答えはそういうことですよね。おかげで夏場は暑いのなんのってハナシ(幸福
真なる合鍵の持ち主、その一。

・ドーベル
締め出しはしないけれど逆を行いたい心はある。
私室はあるけど『まだ』住み込んではいない。精々が着替えと寝具と漫画本とetc...
真なる合鍵の持ち主、その二。

・マックイーン
締め出すとかその逆とか全然思いつきもしない。とりあえず入り浸れればそれで満足。
甘やかし尽くして徐々にアホの子へと変貌させられそうになっている。
真なる合鍵を欲しいけれどまだ貰えてない。

・ブライト
締め出すとかその逆とか意識したこと無いけれど、一緒にいるとほわほわするから時間を忘れた結果そうなりそうな、ほわほわとしてぽわぽわとしたふんわりお嬢様。
バカが接し方を覚えたとか勘違いしているが、根本にあるしつこさを理解していない青年は痛い目を見るに違いない。
真なる合鍵の存在を知らない。

・ライアン
綱渡りな相関図を生きる青年は色々とアドバイスを欲しているけれど、如何せん天秤がベルちゃんへと比重が寄っているからか、結果的に修羅場を引き寄せる遠回しのトリガーだったりする。
真なる合鍵の存在は知ってるけど、持ってなくても困らない。

・スズカ
なんやかんやで凄腕なトレーナー直伝のケアテクに嬌声が零れてしまった。
「その……テクが、すごいのね……」
その甲斐あってかは不明だが、筋肉痛は消えていた。

・オカン
真なる合鍵の番人であり、その片割れ。もう片方はメジロな年寄りのトップ。
最近では独逸っぽいオーラの持ち主に受け渡していたらしい。
いいぞもっと拗れてくれ! 息子の焦る様子がたーのしー!! 涙声で相談してくるのかーわいー!!
愉悦に見学エンジョイ勢。

・閃光のおウマさま
言語準備良し。地理の把握良し。近所への紹介も済。両親からも歓迎ムード。義母にも好きにやってよしと許可は貰った。
勝負は次の渡航の瞬間であるが、敵を抱え込んでいるんだ。色々とな。
――――そろそろ狩るか…♠



・なぞのくーるびゅーてぃーうーまん
運動神経クソザコな気配を感じる……
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