またーりと、のんびーりとね
「で?」
脈絡も前置きも何く、唐突に切り込んでくるマイトレーナー兼師匠。
「何が」
「アオハル杯」
「出ない……よっと」
両手に持ったドリンクを地面に置いて一呼吸挟めば、割とどうでもよいことだった。
もう走れないし走らない。走る理由は消化済みであり、走る動機は最良の形で喪失した。物事に絶対など無いだろうが、この先で果たしてエイヴィヒカイトが走ることなど、そうそうない。
気取った表現をするならば――――魔王は、もう死んだのだから。
「だったらトレーナーとしてならどうだ?」
「もっと出ない。まだ早すぎんだろ」
雑談混じりに聞いてきたが、まだまだそれが可能なのだと思いあがってなどいない。経験にせよ知識にせよ、身に着けるべき値が大いに存在する。
ましてや自分の担当に限らず、チーム単位で受け持つなど尚早にも程がある。あとは、酷く個人的な理由として面倒くさいのもある。
分かっていて聞いているのだろう。加えるなら、もしもカイトが出るなどと答えたのなら、それは一層面白そうだから聞いてみた。こんなところだろう。
「出ないんですか?」
「出ないんですねぇ」
下からの声に顔を向ければ、柔軟中のキタサン。
意外そうな顔で問いかけてくるキタサンに、オウム返しで言葉を返す。
不思議なことなど無い。手腕以前の基本も覚えていないと思しきが今現在のカイトであり、中途半端な熟練ほど危ないのだから。
「! 経験です! 何事も経験ですよカイトさんっ!」
「俺はここでまったりと経験を得ますねぇ」
キタサンと違い、未だに仮入部のタスキを掛けたままのダイヤが捲し立てても、ラダーを畳みながらその言葉を流す。
「実体験に勝る経験はありません!!」
「む……」
「おっ、こりゃ一本取られたな」
「……そういうトレーナーはどうなんだよ」
この手の催しに彼が出ないのならそれこそ意外だ。
大きなイベントであるなら、彼も相応に昂るタチであるとカイトは知っている。話を逸らすにはやや強引だが、興味も兼ねて聞いてみた。
「俺は出ないさ」
「何で?」
「あの三人を見ててやりたくてな」
「……そっか」
スカーレット、ウオッカ、ゴールドシップ。三つの疾走する背中が、緩いジョグを楽しむスズカの背中を通り過ぎていく。自分らこそが次にスピカを牽引するのだと張り切る姿をみれば、確かにそちらを優先したくもなるだろう。
「選手として出ようってのはウチにはいないのか」
「ああ、スぺもスズカもその気は薄いらしい。他の奴等もそうだ」
「そりゃ珍しい……テイオーとかも?」
「お前の妹もだが、そこまで乗り気ではないな」
「血気盛んなアイツらがね……」
既に所属しているチームでなく、仲良し同士でチームを組めるのは聞く限り面白そうではある。てっきりスぺなんかはスズカと出たり、テイオーは会長と出たいとごねたりしてそうなものだがそれも無いと。
「やっぱり珍しいね」
「もしかしたら誘われ待ちだったりするのかもな……お前が誘えば出てくれると思うぞ?」
「だから出ないってば」
朝からやけにしつこい師匠だった。
ボケっと突っ立って話を聞いていれば、周りが一斉にどよめきだす。
「……ん……んぇ?」
特にあれだ、隣の田舎娘が喧しい。起こそうとしてくる意志は感じられないが、やはりこやつは素で喧し娘なのだろう。元気が良いのは好きよ。寝起きにやられれば腹立つけど。
「あわわわわ……!」
「……うっさいぞスペ」
朝礼を始めとした集会の類は、いつ何時になっても耳に届きづらい。地位が高いほどにその声は届きづらさが増して、尚且つ喋っている者がやよいちゃんでないなら更に届くまい。つまりカイトを一言で露わすなら、立ったまま寝ていたということなのである。
それを叩き起こす騒乱のささやき声。戸惑いの声を上げているのはスぺも例外ではなかった。
「どしたの」
「寝てる場合じゃないよ!」
「……んー?」
背骨を伸ばしつつ周囲を見渡せば、スぺと概ね同じような反応をチラホラと見受ける。
それらの注目が向かう先には、先日会った覚えのある理事長の代理。名を、樫本理子と言うらしい。名前を聞いたところで睡魔に掻っ攫われていたようで、そこから先の記憶は途切れているが、しかめっ面が似合う割に可愛い名前だなと、そんな感想を抱いて寝ていた。
「……あん人が、なんて?」
「管理教育プログラムが始まっちゃうんだよ!」
「俺寝てたから知らないってば」
伝えたいなら詳細を語れ道産子。
仕方なしに後ろの武士娘とマスク娘の方へ振り向けば、こちらはこちらで二人とも眉が八の字に顰まっている。特に鎌倉生まれっぽい方はかなり険しい。おっとりとした擬態笑顔はどこへやら、鋭く険しい表情が隠れていないのだ。
「管理うんちゃらって何さ?」
「……セイちゃんとカイトくんには後で説明しますね」
「やっぱあいつも寝てんのか」
「アッチでキングに怒られてます」
「ウケる」
得意技のどこ吹く風で、小言を言い含められる姿を遠目に眺める。キングの怒り様、というか焦り様から察すれば、管理なんたらがそれなりに揺るがす内容なのだろう。
「只事じゃなさそうだな」
「……少なくとも、今までのようにのびのびとは出来なさそうデス」
「ココって、自主性がウリなんじゃなかった??」
「『ぬるい』って、言ってたよ」
「ほーん……おハナさんを超絶過激にした感じだったか」
口を大きく開いて、欠伸をかましながらそう答える。
聞いていないからこんなリアクションを取れるのだが、そんなあまりに他人事な態度を見兼ねてか、グラスは一つだけ補足を付け足した。
「……プライベートも管理されるそうですよ」
「ほーん」
生返事なのは事態を飲み込めきれていないから。
危機感を感じないのはてんで話を聞いていなかったのもあるが、二足の草鞋な学園生活だからでもある。現在の比重は学生側からトレーナー側へと移りつつある今、学生としてのカイトはぶっちゃけ困らないのだ。
「ま、でもそれで怪我とか減るならいいんじゃね?」
「『多い頻度の外泊など論外』だそうです」
「ほーん……」
誰かしら個人へ向けたよう気がするが気のせい。そんなので滅茶苦茶に困る人がいるのだろうか。寮住まいを板に付かせるのなら、外へポンポンと泊まりに行くなど確かに論の外だ。その意見には同意である。
カイトとてたまさかベルちゃんやマックイーンが泊りに来たりはするが、それとて頻度は少ない。正直外泊禁止となったとして、以前のように疎遠な訳でも無いのだ。学園で会えるしそのまま遊びに行くことも十二分可能だ。
少し考えたとてやっぱり――少なくともカイトは困らないのだった。
「あれ……カイトくんの家って、メジロアルダン先輩が泊まり込んでるんだよね……?」
「泊まるっつーか、住んでるな」
「扱いとしては外泊扱いなのでは?」
「あー……そういやそんなこと言ってたな」
住居を完全に移し切らないままなのは、なんでも学園側の計らいだとかで部屋を残してもらっているらしい。故にほぼ、どころか完全に同居している状況でも、アルダンの扱いはあくまでも外泊の判定なのだという。
「……――――ん? あれれ?」
「……カイト、ヤバくないデスか?」
「んん?」
疑問の渦が思考の中心で高速起動を描いて、倍プッシュで注ぎ込まれる怒涛の追加情報が、噂の樫本理事代理から解き放たれた。
『――――ましてや異性との交際など以ての外』
「? ……んんんんん――――――――????」
疑問の嵐に噛み砕かれたカイトは、その後どうしていたのかあまり覚えていない。とにかく放たれた単語の意味を理解しようと、珍しく脳細胞がフルスペックで加速していた、気がする。
首を回したまま無意識に廊下を歩き、とりあえず無意識でスペの背中について行けば、そこは見慣れたマイクラスの色並み。
「あ、そっか。とどのつまりあれか」
したり顔で頷く回数は優に百を超えた頃。
教室へ戻り、黄金世代で固まって先の出来事を話していれば、一つの結論が出た。
「理事長代理殿……いや――――アイツは、俺に死ねって言ってんだな」
なら、戦う他にあるまいよ。徹底抗戦こそ知性体の根の性が試される瞬間なのだ。
殴り込み上等。とりあえず扉は蹴破る。やよいちゃんにも後で謝る。その程度は序の口であり、腕力人脈力とある物全てを注ぎ込んで、何が何でも撤回させねばなるまい。
「どうしてそうなるの!?」
「俺がアルダンと引き離されて生きてける訳ないだろう!? もう俺、ご飯の作り方も忘れちゃったよ!!」
死ぬだのなんだのと言わないようには心がけていたが、それもあくまで冗談の範疇ではの話。つまり自分がこう言い放ったのは、本気でそう感じたという証拠でもある。
カイトの胃袋の所在は、相当に前から彼女の手の平の中にあるのだ。今更自炊などしても、一定周期で彼女の料理を食せないのなら、アルダニウム栄養素が失調してぽっくりと逝きかねない。ついでに、これはオマケ程度ではあるが、週一度にとある
「逆ギレやめなさいよ」
「やーだー! 絶対に離れたくなーい!!」
「駄々こねる前に歳を考えなさいよ……!」
「すっごい情けないデス」
「相変わらずベタ惚れだね」
とかなんとか言ってる場合ではない。地団駄を踏んでる場合でもない。今すぐにでも直談判へ赴くのだ。脅してでも何をしてでも、言い放った言の葉を無かったことにしなければならないのだから。
「宣戦布告と受け取ったぞあのクソアマがァ……!!」
「……情緒不安定なカイトくんはどうあれ、反対意見は確かに多いように見受けられます」
「ぶん殴れば……………………」
チラリと、いつの間にか硬く握り締められて準備を終えていた、頼もしい相棒に目を落とす。
「ちょっと行ってくる」
「落ち着いてぇー!」
試すだけならタダと聞く。タダより高い物も無いらしいが、それで目的が正されるなら実質的にもタダだ。無料だ。オールフリーだ。それはつまり拳こそが自由であることの、なによりの証だった。ビバ、進撃の心意気万歳。
スぺからガッチリと羽交い絞めにされてしまえば、衰えたカイトでは一歩たりとて動けない。しかしその程度の些事は取るに足らず、意思は一向に衰える事なく唸りを続ける。全てはスぺの妨害を凌駕する
「アオハル杯も中止になったけれど、不満の半分はそっち側ね」
「ええ、私も出るつもりでしたから……その意見には賛同できますね」
「もう半分は管理体制への不満、かぁ」
「やっぱりやよいちゃん以外に理事の席は相応しくなかったんだな……不要物は排斥されるのが世の理だろうが……! 離せよスぺェ……!!」
「みんなも止めてよ!!?」
沸点を通過すれば、バイオレンスな自分に大変身することを拒みはしません。むしろ積極的に、暴力的言動を率先しようと頑張る所存だ。革命の狼煙は今ここに在りて。
「過ごし辛くなるのもヤダし、直談判行ってみる?」
「……行かないよりはマシかしらね」
「ストライキデース!!」
「革命騒乱編開幕――――戦乱の火蓋をぶっ放す
「物騒っ!!」
そんなこんなでみんなに窘められつつ抑え込まれつつも、理事長室へ殴り込みに向かうのだった。
「暴力は駄目ですよー?」
「できない約束はしないぞ」
「本気でやめてね……」
討ち入り攻め入り、いざ征かん。
ところで一つだけ、スぺに聞きたいことがあるのだが。
「胸当たってるけどワザとだったりする?」
「…………っ!?」
意識せずだったらしいです。距離近いのは友人として嬉しいが、こうも無防備だとスぺの将来に危機感を抱いたりもするのでした。
「今度は貴女方ですか」
「その言い草では他の方々もいらっしゃっていたようですね」
「ま、俺たちが求めるのも変わりません。ただ一つ……そう、たった一つの願い――――」
目上年上関係なく、敵愾心を露にして人差し指を突き立てる。
六人の総意を代表して、正々堂々と言い放つ言葉はただ一つ。
「自由な外泊んヴぉぁ」
「はいはい黙ってようねー、話拗れるからねー」
ハンカチで後ろから口を塞がれれば、ぼくらの決意表明がまさかの味方内から阻止されてしまった。何をするだスカイ。
「……管理教育プログラムの撤回、それに伴うアオハル杯中止の撤回を求めています」
「っ! ぶはっ、せめて交際禁止だけっ! それさえ消えれば俺は満ぞぐぇっ」
「ややこしくなるから黙ってなさい」
ウマな筋力で襟元を引っこ抜かれんばかりに引き寄せられる。喉仏を見事に締め付けるその威力は、確かにカイトを黙らせることに成功した。鞭打ちになるかと思いました。
「ひっきりなしにこれでは……埒があきませんね」
「それが私たちの総意と言うことです」
「――――真面目な話、今更ガチガチに縛ってもなぁ……此処に所属する大半の連中はのびのびとやんのが性に合ってますから、突然方針を180度変えられても戸惑うだけなのでは?」
硬ければ息が詰まるのは、確かにそれもある。怪我等の不祥事も今より減る可能性は高い。そんな環境に耐えられる者も居れば、器用に以前とは違うやり方に合わせられる者も居るだろう。そもそもの気質としてその方が合致する者だって存在するだろう。
しかし息が詰まる以上に苦痛と感じる者も、大なり小なり出てくるようにも思える。身近で例えるのならばスズカだ。ああいった天然の手合いは往々にして不器用であり、環境に応じて自分を変えられることが困難だ。だからこそ放任主義とも捉えられる、各々の個性を伸ばす今のチームの水が合っている訳で。
目の前の理事代理の言を実行すれば、そういった存在は一体どうなってしまうのか。
「のびのびとストレス無く、彼女たちの目指したい方針に寄り沿って見守る。その道中で躓こうものならトレーナーが手を貸す。そんなやり方が多分、一番丸い」
「……」
「俺やアンタが何て言っても、結局走るのは彼女達だ。俺達じゃない。生徒達の判断を尊重せずの
「本当に真面目な意見デス……」
「味方がうるせぇなぁ」
ちょっとだけお黙りしてましょうね。
「……その果てに、貴方のような存在が生まれてもですか」
「ああ、そうだ。……そうです」
視線がカイトの右脚へ向けられても、一も二も無く言い切る。理事代理がその事情を知っていることに不思議はない。大方やよいちゃんらへんから聞いたのだろう。
確かにカイトは間違えた。まごうこと無き正解を引き当てていると思い込んで、どこまでも的外れな不正解へと、他ならぬカイトの判断で突き進んでいった。その全てが間違いだらけではあったが、なら一部の狂いも無く全部が間違いだったなんて、そんなことは絶対にあり得ない。
間違えようが間違えなかろうが、その道程で得られた絆がある。むしろ夢を果たせずとも、それ以上のモノを得られたのは
「?」
「どうかしたの?」
「や、なんでも」
少なくとも彼女らとは間違った道でぶつかり合わなければ、ここまで仲が深まることは無かった。
得られた絆、その筆頭である二人を流し見るが、言葉になんてしてやるものか恥ずかしい。
「ここで夢志してる連中はアスリートだ。だったら多少の怪我程度は覚悟してしかるべきだし、選手生命を絶たれることだって――ままあることだろう……でしょう」
「……」
「もちろん怪我なんてしない方がいいですが……その程度のリスクを背負わずに絶対的な安全地帯から夢を追いかける方が、俺からすれば不健全だ。…………だと思います」
「…………」
当然ながらこんなものは若造の戯言にしかならない。カイトよりも明らかに年季の入った彼女に、カイトの言葉はそう届かない。
それでも落としどころを提示することは出来る。先の視線から、憐みを抱かれていることも理解できた。勝手に憐れまれるのはムカつきはするが、それならそれで
「なにより、やっと見つけた居場所なんです。この場所を奪わないでください」
「……」
「カイトくん……」
痛ましい目を露に出来る血の通った人間だと分かった今、この情は十中八九で通じる。
だから次の提案が通るのも、当然の話だった。
「――つっても、アンタにも譲れない信念やらがあるんでしょう。……あるのでしょう」
「……無理をして敬語でなくとも構いませんが」
どこか締りが悪いような気がするが気のせいだ。
キリリとキメ顔で、ハードボイルドに提案を一つ。
「……賭けを、しませんか?」
「だ、ダサい……」
「言っちゃ駄目デスよキング……っ!」
「シャラップ姦しガールズ」
眼鏡を光らせ、背後へと一睨み。
――――閑話休題。
「そうだな……アンタが中止にしようとしていたアオハル杯が丁度いい……のではないかと」
「……そういうことですか」
「アンタの信条が正しいなら、アンタが温いと一蹴していた此処の連中のやり方に負ける道理は無いだ……でしょう」
尚、当たり前のようにカイトには参加する気が一切無い。他者任せの極みでもある。
「――いいでしょう、逐一対応していくのも骨ではありました」
「渡りに船、でしたかね」
どうせカイトの提案を飲むことくらいは知れていた。
これで万時は良し。理事代理のトレーナーとしての手腕がどれほどかは知らないが、カイトのトレーナーを始めとする中央に集められた彼ら彼女らはとて見劣りはしない。こんな事態になればトレーナーとて重くは無い腰を上げるだろうし、彼が出るのであればメンバーはスピカの面々であることは確定的だ。特にスズカのような超絶ジョーカー的存在に勝てるような者など、ポンポンと現れてたまるものか。
二次案としておハナさんの擁するリギルもいる。それを考えればどこまでも完璧な策であった。
「ふっふっふっ……(スズカさんに勝てる奴なんざスぺとか以外に想像できん笑いが止まらん)」
「ですが……こちらからも一つ条件があります」
「? なんです?」
「アオハル杯、トレーナーとしてか走者としてか――――どちらにせよ、貴方にも参加してもらいます」
完璧無欠な策が、崩れ去っていく音がした。
『え、嫌でふごっ』
ポカリッ、と。
可愛らしくもウマ基準から繰り出されるオノマトペは鉄槌のごとし。
『バカなの!? 要求を飲んでおきなさいよっ!!』
『このバカには言い聞かせておきます! デスのでその条件でお願いしまーす!!』
『ちょっ、あのぐふぇっっ』
ずむっ、と。
柔らかい突きのような気もするがやはりウマ基準では致命となりかねないオノマトペ。
『纏まりかけてたんだから黙ってようね~』
『……それでは失礼致します』
頭をはたかれて脇腹を小突かれて、何を言おうにも阻止されてしまう。こんなのってないやいひどいやい。仲良くしてくれるのは嬉しいが、遠慮の
そんなこんなでグラスに引き摺られて、廊下の汚れをズボンへと一手に受け止めているカイトだった。
「えー……俺どっちも嫌なんですけど」
「カイトの我儘を抑えれば上手くいくんだからさぁ……」
「……我儘……わがまま、か……」
確かに――――どう拒んでも、先送りにしようと、どんな因果かこの職を選んだ時点で、必ずその時はやって来る。
もう観念する時なのかもしれないと、そう言われれば確かにと頷けるタイミングでもあるのだから。
「お前らは……組むチーム決まってんの?」
「私とエルは共に出ようかと」
「セイちゃんはこれといってね~。……誘われたら出ようかな……でも面倒っぽいよね……」
「私は一流からの誘いであれば、吝かではないわ」
なるほど、大体分かった。
「……スぺは?」
「聞いて、どうするの?」
「……どうしよっかな」
胸の内は決まっている。それを条件として出されたのなら、今後のより良い学園生活を獲得するべく奔放する。獲れる手段は余すことなく行使して、利用できる立場や交友もどこまでも使う。目的を据えたのなら状況全てを用いるのが、エイヴィヒカイトなのだから。
それにあれだ、事前的なお試しとして、このメンツなら不足は無く、変に遠慮することもまた無い。
そんな彼女らだからこそ、最初に誘うのなら一番良い。
「私は……トレーナーさんが出るなら、出ようかな……カイトくんはどう?」
「や、俺は……うん、そうだな、そうしよう」
トレーナーとは、担当の娘と運命を共にして、心中する覚悟で駆け抜ける補助装置。少なくともカイトはそう定義している。
だからこそ、トレーナーは選ばれるだけでなく、選ばなければならない。共に死する覚悟すら持ち得て、彼女とならそれでも構わないと、後悔しないほどに信頼できる相手でないと悲惨な末路に陥りかねない。
「……俺らでチームを、組もう」
「――――今、なんと……?」
信じられない事象を見る目で、グラスはカイトへ聞き直す。周りの四人も心は同じなのは、これからを思えば都合が良い。
一致団結して、暴君の暴走を止めてやるのだ。
「チーム名は……
どうせこんな催しに出るのなら、テッペンくらいはついでに搔っ攫ってしまおう。
このメンツで目指すことを踏まえれば、行き着く結末はどう見積もってもささやかな成果でしかない、が。
学生時代の思い出の一つにはなるだろう。
「あ、名前ダサいか?」
『そっちじゃない(デス)!』
太陽の如く轟々と、燦然と、煌々と強く照り付ける頂点に成る。
その座は天上の実力者にこそ相応しく、であれば可能の範疇でしかない。
新たなる挑戦の始まりだ。
キタサトタグ、一時的に消そうと思った