それは星砕きの追憶   作:驚きの部屋のト・ヘン

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本当は1話で終わらせるつもりでしたが、もう1話書きたくなりました。


戦と祭りの追憶

 

 破砕戦争の終わり。

 ラダーンはマレニアと邂逅した。

 父ラダゴンが母レナラを捨てた後、女王マリカとの間に生まれた双子の片割れ。

 つまりラダーンにとって異母兄弟にあたる。

 

 同じ赤い髪。同じ最強のデミゴッドと呼ばれるもの。

 相手にとって不足はない。

 

 ラダーンは重力を操って剣を抜き、マレニアは義手を装着して駆けだした。

 その結末は誰もが知っての通りである。

 

 顔のすぐ横でマレニアが赤い大輪を咲かせようとしている。

 これが開いた時、朱い腐敗の直撃を受けて自分も無事ではすまないだろう。

 しかしラダーンの心中は勝利を台無しにされた怒りやこれから襲うであろう苦痛に対する恐怖より落胆が強かった。

 

 マレニアではなかった。

 ラダーンは星の運命を封じた者である。

 破砕戦争の勝者ともなれば星の運命を握るに相応しい。だが最強のデミゴッドと呼ばれるマレニアでさえ、それはかなわない。

 

 運命を動かす者はまだいないのだ。

 恐らく未来に現れるのだろう。

 自分はその時、彼ないし彼女の敵対者として相応しい者であり続けられるだろうか。

 あの父ラダゴンのように、ゴッドフレイのように、英雄でいられるだろうか。

 

 もしもラダーンが恐怖するとすれば運命の相手にみっともない姿を見せてしまわないかという点だけだ。

 それもまたジェーレンに押しつけてしまうなと心中で詫びながら朱い腐敗を受けた。

 

 

*  *  *

 

 

 ラダーンが朱い腐敗を、外なる神の呪いを受けて幾星霜。

 遂にラダーン祭りが催され、向かってくる勇者の中に一人の褪せ人を見た。

 

 ──こいつだ。

 

 それは英雄としての直感か、デミゴッドとしての本能か、はたまたカーリア王家の血によるものか。

 自分より弱いはずの褪せ人が何か決定的な相手だと確信するのに根拠も時間も必要なかった。

 

 ついに出会えた歓喜はほんの一瞬だけラダーンを正気へと戻す。

 そしてラダーンは空を飛ぶ。

 

 見下ろすケイリッドは見るも無残に腐り果てていた。

 だが赤獅子城の火はまだ燃えている。

 赤い軍旗はたなびいて、誇れる部下たちは火と鉄をもって腐敗に抗っていた。

 遥か彼方には黄金樹の偉容が見える。あの麓では今も父がエルデンリングを修復しようとしているのだろう。

 

 そして眼下の砂漠には勇者たち。

 その中に見覚えのある奇矯騎士の顔を見つける。

 

 ああ、友よ。

 よくぞ約束を守ってくれた。

 

 願わくば褪せ人と言葉を交わしてみたくもあるが、それも叶わぬ話だ。

 ラダーンが地に墜ちる時、再び狂気に陥るだろう。

 むしろ今、この時に正気に戻れたことを奇蹟と疑わない。

 

 破砕戦争から狂い狂って生き恥を晒し続けて幾星霜。

 全てはこの日、この時のためにあったと確信できる。

 あの褪せ人こそが星の運命を切り開く者──すなわちエルデの王だ。

 

 ──ならばこそ。

 

 あの日、自分は空から来る星を砕いた。ゆえに星の運命は封じられた。

 その星辰をもう一度動かすというのならこれしかあるまい。

 ラダーンは星を砕いた妙技を今度は天から地に向かって繰り出した。

 

 たとえ王の器であろうと加減はしない。

 あのマレニアでさえ自分には敵わなかった。ならばこそ最強のデミゴッド程度を超えられぬ輩に星の世紀は任せられない。

 

 ──砕いてみせろ。この最強(ほし)を。

 

 今度はラダーンが砕かれるべき星となって空より落ちる。

 迎え撃つは地上の星。暗い月が祝福する砂漠で運命を封じる者と動かす者が激突した。

 

 

 

 そしてラダーン祭りが終わった。

 

 

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