あの日から   作:tuzimoto

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第一章「8月6日の地獄」

1975年8月6日 広島

 

デモ隊「原爆粉砕!核廃絶!!」

 

機動隊「《警察官の指示通りにデモ行進をしなさい!!》」

 

 

平和記念公園

 

ガイド「今から30年前 太平洋戦争末期

この広島にアメリカ軍のB-29と呼ばれる爆撃機から原子爆弾と言う恐ろしい核兵器が落とされ 一瞬にして大勢の方が亡くなりました…」

 

慰霊碑の前で手を合わす 少女

 

夏子「…………あれ?…ヒロ子おばさんは?」

 

夏子 母「夏子 ヒロ子おばさんどこ行ったの?」

 

夏子「…分からない…気づいたらどっかに…あれ?お父さんは?…お父さんも居ないの?」

 

夏子 母「お父さんもはぐれちゃったのよ……」

 

夏子「…私、ヒロ子おばさんとお父さん探してくる!!」

 

夏子 母「夏子…!」

 

 

 

 

一人の女性が 原爆ドームを眺めていた

 

久我(藤井)ヒロ子「………」

 

夏子「はぁはぁ………ヒロ子おばさん?」

 

夏子がヒロ子に駆け寄る

 

夏子「ヒロ子おばさん!」

 

ヒロ子「…? あっ夏子ちゃん」

 

夏子「探しましたよ」

 

ヒロ子「ごめんなさいね…ここに来たかったから」

 

夏子「…ここに……?原爆ドーム…」

 

ヒロ子「…あたしね…夏子ちゃんと同じぐらいの時に……被爆したの…」

 

 

夏子「…私と同じくらい…16歳の時に…」

 

ヒロ子「ええ …そしてこの右腕に火傷を……」

 

ヒロ子はゆっくりと右手の手袋を外した

手袋を外すと熱線火傷で出来たケロイドが現れた

 

夏子「…………」

 

ヒロ子「 ……あの忌々しい夏からもう30年経つのね…」

 

ヒロ子は雲一つない青空を見つめる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1945年(昭和20年)8月6日 廣島市上空

 

VOOOOOOO……

 

B-29 気象観測機ストレートフラッシュ

 

モールス信号

「……《Y3、Q3、B2、C1」(低い雲は雲量4/10から7/10で小さい、中高度の雲は雲量4/10から7/10で薄い、高い雲は雲量1/10から3/10で薄い、助言:第1目標を爆撃せよ)》」

 

B-29 原爆搭載機 エノラ・ゲイ

「……《ラジャー(了解)》」

 

UUUUUUUUU~(空襲警報)

 

 

藤井家 庭 防空壕

 

祖母「朝から嫌ね……」

 

文子(従姉妹)「ヒロ子ちゃん 早く」

 

廣島中央高等女學校 四年生(16歳)

ヒロ子「勝も早く」

 

廣島中央國民學校 五年生(10歳)

弟 勝「…また、偵察かな?」

 

文子「夜も来よったよね……はぁ…寝不足」

 

 

 

 

 

 

 

7時31分 空襲警報解除

 

《空襲警報~解除!空襲警報~解除!》

 

勝「姉ちゃん 空襲警報解除だって」

 

ヒロ子「よかった」

 

勝「姉ちゃん 出よ」

 

ヒロ子「うん おばあちゃん行こ 」

 

文子「おばあちゃん 気おつけてね」

 

祖母「ありがとうね」

 

 

防空壕から出ると外は朝でもカンカン照りで暑かった

 

ヒロ子「…暑い」

 

弟「あっ姉ちゃん!B公の飛行機雲!」

 

ヒロ子「 あっ本当 今日は晴天だね」

 

文子「ほうじゃねー」

 

勝「ねぇ文子姉ちゃん 知ってるー?

B公が1機の時は偵察なんだってー」

 

文子「へぇー偵察なんだ

勝くん詳しいね

て事は……ここも爆撃されるんじゃろうかねぇー?」

 

ヒロ子「 勝ったらまたその話してるの?‪w」

 

勝「文子姉ちゃんには初めてだよ

 

……うーん どうだろ?

にしても変だよねーここは爆撃されないって」

 

祖母「ほうじゃね…呉は爆撃されとるのにね きっとここは軍神様に護られとるんじゃよ」

 

 

8時前

 

播磨灘 上空

エノラ・ゲイ

 

副機長・ルイス「……大佐 そろそろ良いのでは?」

 

機長・ティベッツ「 …そうだな ヒロシマに針路へ進路を変えろ」

 

ルイス「サー!」

 

 

廣島 世羅町 甲山防空監視哨

 

監視員 寺地文人

「ん? ! B(B-29)!!!…ここを攻撃するんじゃろうか」

 

3機のB-29は監視哨 手前で急反転をし廣島市内へ向かい始めた

 

「……?! …は…反転しよった

どういう事じゃ?……とりあえず連絡せんと!」

 

 

8時12分

 

ヒロ子「勝~行くよー遅れちゃうよ」

 

勝「待って~姉ちゃん」

 

ヒロ子「今日は朝から暑いな…」

 

勝「お待たせ~姉ちゃん!」

 

ヒロ子「文ちゃんー」

 

文子「さっき行っとって~」

 

ヒロ子「わかったー 勝行こっか」

 

祖母「きーつけるんよ~」

 

勝「あいよ ばあちゃん!

行ってきますー」

 

 

VOOOOOOO……

 

エノラ・ゲイは再び廣島上空に侵入した

 

ルイス大尉「街が見えたぞ」

 

爆撃手・フィヤビー 「…IP(投下目標)まであと3分」

 

ティベッツ「全員、ゴーグルつけろ」

 

《サー》

 

8時13分

 

中國軍管区司令部 廣島城 地下通信室

 

女學生「また、B来たんじゃって」

 

女學生 岡ヨシエ「えっまた…?」

 

指令員「 廣島と山口に警戒警報を発令!」

 

ヨシエ「はい!…」

 

 

8時14分 0.6秒

 

ヒロ子 勝「今日も学校へ行けるのは兵隊さんのおかげです~♪」

 

VOOOOOOO……

 

勝「…うん? 姉ちゃん また、B公飛んでるよ!」

 

ヒロ子「えっ また…?…本当だ

変ね …警報鳴らないなんて」

 

勝「偵察機のF-13かな?」

 

ヒロ子「よく来るね…」

 

VOOOOOOO……

 

フィヤビー「目標 目視!」

 

ティベッツ「……頼むぞ フィヤビー」

 

フィヤビー「サー…」

 

VOOOOOOO……

 

 

 

原子爆弾「リトルボーイ」が投下目標の相生橋に向け投下された

 

 

 

フィヤビー「……投下した!」

 

ルイス「離脱する!!」

 

VOOOOOOO!!!!

 

エノラ・ゲイは急旋回をし離脱

 

B-29 観測機グレートアーティストはラジオゾンデ(観測器)3個を落下後離脱した

 

 

文子「急いで行かんと……」

 

 

勝「…姉ちゃん…なんかが光って落ちて来るよ…それと落下傘?」

 

ヒロ子「えっ……?」

 

 

 

 

8時15分

 

原子爆弾 が炸裂

閃光と爆風が一瞬にして廣島の街を覆い隠し廃墟と化した…

 

 

 

 

ティベッツ「……っ!なんて力だ!ルイス!操縦桿から絶対に離すなよ!」

 

ルイス「サー!…まるで殴られてるみたいだ!」

 

爆風によりエノラ・ゲイは激しく揺れた

 

ティベッツ「……っ!」

 

Vooo……!!

 

航法士・カーク「…すごい揺れだ…」

 

写真撮影係・キャロン「……あっ…あれが…原子爆弾…」

 

数十分後 廣島上空には巨大なキノコ雲が現れた

 

ティベッツ「…ミ…ミッションクリア! テニアンに戻るぞ」

 

エノラ・ゲイの1団は廣島から離脱した

 

 

 

 

ヒロ子「…… つ……うぅ……うぅ…ん?…………な……何が起きたの……?」

 

ヒロ子は起き上がり 瓦礫の隙間から身を出し 立ち上がった

周りを見渡すと

そこはさっきまでの景色とは一変し人は居なく街は瓦礫の街になってた

 

 

 

ヒロ子「……街が………な……なんで……ん……?…っ!」

 

 

ヒロ子は自分の右手を見ると 焼きただれ

ガラスや材木片が突き刺さってた

 

ヒロ子「……えっ……あ……あたしの手が…………あっ…そうだ勝……勝?…勝ー!」

 

ヒロ子は呼び続けるが 返事は無い

少し見渡しながら歩くと 勝の鞄が落ちていた

 

ヒロ子「…ま…勝?!」

 

慌てて瓦礫を退かし 瓦礫の隙間に顔を覗かせると 顔らしきが見え 微かに呻き声が聞こえた

 

ヒロ子「勝?! 勝なの?!」

 

勝「…ね……ね……姉…ちゃん…」

 

ヒロ子「勝!!」

 

勝「ね…姉ちゃん…痛いよ…痛いよぉ……」

 

ヒロ子「勝! 今助けるから!!」

 

勝「痛いよぉ…痛いよぉ…姉ちゃん」

 

ヒロ子は瓦礫を退かし始めた

 

ヒロ子「勝!勝!勝!」

 

勝「姉ちゃん……姉ちゃん …痛いよぉ……痛いよぉ…」

 

ヒロ子「勝!もうちょっと我慢して!」

 

ヒロ子は傍にあった電柱柱を持って来て

てこの原理で瓦礫を持ち上げようとしたが

女の子の力ではビクともしなかった

 

ヒロ子「……駄目 …あたしだけじゃ………!すみません!手伝ってください 弟が……」

 

気配を感じ背後を振り向き助けを求めたが

そこには全身焼きただれガラス片が突き刺さり 腸管が垂れ 人間とは思えない姿 男性が立っていた

 

 

 

ヒロ子「…!!ひぃぃ!!お化けぇぇぇ!!」

 

男性「あっ……あっ……あっ……」

 

周りを見渡すといつの間にか 似たような人達が 呻き声を出しながら無数に歩き回ってた

 

ヒロ子「……なにこれ……みんなお化けみたい……酷い…あたしも…まさか…」

 

勝「ね……ね…ねえちゃ……ん」

 

ヒロ子「…待ってて勝!!」

 

次にヒロ子は大きなコンクリ片を持ち上げ

それを電柱柱に落とし落下の重みで瓦礫を退かそうとしたが柱は耐えきれず 折れてしまった

 

ヒロ子「 あっ折れた!… 勝!絶対に助けるから!!」

 

勝「姉ちゃん……」

 

ヒロ子は瓦礫の隙間に入り 左手で勝の手を掴み

引きずり出そうとしたら

 

ヒロ子「勝! 手を掴んで!!」

 

勝「姉ちゃん…」

 

ヒロ子「引っ張るよ!……せーっ…痛っ…!!」

 

ヒロ子の背中にはガラス片が何枚か突ききっていた 瓦礫の隙間に入り込むほどガラス片はヒロ子の背中に深く突き刺さる

 

ヒロ子「…い……い!!!……ま…勝

今助けるから……」

 

勝「痛いよぉ… 痛いよぉ 痛いよぉ」

 

ヒロ子は痛みに必死に耐え 勝を瓦礫の隙間から引きずり出そうとするが 引っ張り出すことは出来なかった

 

ヒロ子「……お願い!! 動いて!! 勝!!」

 

勝「姉ちゃんぁぁぁ 痛いよぉぉ!!」

 

ヒロ子「勝ぅぅぅぅ!!…あっ……駄目……勝…!勝!

 

……勝!! 姉ちゃん 助け呼んでくるからもう少し我慢して!!絶対に助けるから!!!!」

 

ヒロ子は助けを呼びに行った

 

ヒロ子「すみません!!弟を助けてください」

 

走って向かってくる男性に助けを求めた

 

男性「邪魔じゃ!退け!!」

 

ヒロ子「きゃっ…誰か弟を助けてください!!すみません!!お願いします!」

 

女性「離しんさい!」

 

ヒロ子「……弟を…弟を助けてください……うっうう…」

 

女の子「……お姉ちゃん……」

 

ヒロ子「…?」

 

振り返ると 瓦礫の間に全身に火傷を負い真っ黒の女の子が身を乗り出しヒロ子を呼んでいた

 

女の子「痛いよぅ……助けてぇ……」

 

ヒロ子「い…今助けるね!!」

 

女の子「お姉ちゃん…水…水を」

 

ヒロ子「水? わかったちょっと待ってて!」

 

ヒロ子は見渡し傍に落ちてたお椀を持ち近くの防火水槽から水を持って来ようとした

 

すると横から警防団の団員が現れ ヒロ子の持ってた水入りお茶碗を叩き落とした

 

警防団「水を飲ませたらいけん!」

 

ヒロ子「?!…えっ……?どうしてですか?!」

 

警防団「大火傷負った人らに水を飲ませると飲んだことに安心して死によるんじゃ!」

 

 

ヒロ子「……」

 

女の子「お姉ちゃん……水……水をちょうだい……お願い…」

 

警防団「…辛いが…見とらんふりをするんじゃ…あの傷じゃどの道助からん……」

 

女の子「…水…水 お姉ちゃん……」

 

ヒロ子「…… ごめんね…ごめんね」

 

女の子「……水……水………」

 

 

少女は力尽きた

 

警防団「…クソ!」

 

ヒロ子「…あっあの! 弟が瓦礫の下敷きに 助けてください!」

 

警防団「…わかった 助けを呼んでくる

ちいと待ってろ」

 

ピチャっ……

 

ヒロ子「……?」

 

ヒロ子の顔に何かが水滴のようなものが落ちてきた

 

ヒロ子「…雨?……」

 

空を見上げると 雨が降り始めた

しかし、その雨は普段の雨とは違い 黒く

油っぽく 変な雨だった

 

 

ヒロ子「…えっ…黒い雨?」

 

辺りをさまよってた人々はその雨を嬉しそうに浴び始めた

大口を開け必死に雨を飲もうとした者もいた

 

「あ…あ…雨…雨!」

 

 

「雨じゃ!」

 

この黒い雨は

原子爆弾炸裂時の泥やほこり、すすや放射能などを含んだ重油のような粘り気のあるような大粒の雨で

後に多くの者を死に至らしめる死の雨だったが この時は誰も知らない

 

ヒロ子「……変な雨…」

 

ズズズ……ガシャ!

 

ヒロ子「……?!」

 

ヒロ子が横を見ると雨で滑りやすくなった瓦礫が一直線にヒロ子に向かって落ちてきた

 

ヒロ子「!!……きゃっあぁぁ!!!!」

 

ドゴォオン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロ子「……………うん…んっ………」

 

黛ミチコ 赤十字社看護婦

「……ん?…あっ えかった」

 

ヒロ子「…えっ……ここは?」

 

ミチコ「臨時の病院の國民學校よ」

 

ヒロ子「……病院…?…なんで病院に…?」

 

ミチコ「覚えとらんの?」

 

ヒロ子「……!…あっ勝!!勝!!!」

 

ミチコ「?! ど……どうしたん?!」

 

ヒロ子「勝が!!勝が!!助けに行かないと!…痛っ!!」

 

ミチコ「いけんよ!安静にしとらにゃあいけん!!!」

 

 

ヒロ子「で でも勝 弟を助けないと!!

勝!!勝!!」

 

ミチコ「 いけんよ!ふ…藤井さん!!!」

 

ヒロ子「勝!!勝! あ あの國民學校五年生ぐらいの男の子運ばれてきてませんか!?」

 

ミチコ「…五年生ぐらいのみとらんね…」

 

ヒロ子「…勝…勝!痛っ!…今、助けに行くから…あぁぁ痛っ!!」

 

ミチコ「あっ!先生!!」

 

 

軍医「どうしたんじゃ?!」

 

布マスクをし海軍三種軍装の上から白衣をした海軍軍医中尉がヒロ子の方に向かって来た(この軍医は呉鎮守府からの応援)

 

ミチコ「先生!藤井さんが!弟さんを探しに行く言うて…」

 

軍医「藤井さん いけん!安静にしとらにゃあ!!」

 

ヒロ子「でも!勝が!!」

 

軍医「いけん!気持ちは分かるけぇ

じゃが今は安静にしとらにゃあ!」

 

ミチコ「ほうよ さっきまで藤井さん

背中にガラス片突き刺さって治療したばかりなんよ

火傷じゃって……背中もまた、傷口開いたら

それにもう夜になるけえ 危ないよ

藤井さん」

 

ヒロ子「…ま…勝……」

 

ミチコ「…先生 五年生ぐらいの男の子て見てません?」

 

軍医「…見とらんな…ご覧の通り

ここは患者さんでごった返しとる

わからんわ……」

 

ヒロ子「……勝…」

 

看護婦「先生 こっちに来てつかあさい!!」

 

ミチコ「……」

 

ヒロ子「…あっ…あの誰があたしを…」

 

ミチコ「お巡りさんが連れてきたんよ」

 

ヒロ子「お巡りさんが?」

 

ミチコ「ほうよ 」

 

ヒロ子「お巡りさんが……そのお巡りさんは?」

 

ミチコ「…また、助けに行ったみたいねぇ」

 

ヒロ子「……!……痛…痛っ…」

 

ミチコ「どうしたん ?!藤井さん」

 

ヒロ子「…す…すみません…お便所に…」

 

ミチコ「こっちよ 大丈夫?藤井さん」

 

ヒロ子「…急にお腹の調子が…」

 

 

 

 

 

ヒロ子「…痛っ!!…痛…えっ?

なんで 血が…月のもの? でもこれは……」

 

ヒロ子がもようしたものは赤痢だった

 

ヒロ子「な……なんで…」

 

それ以降ヒロ子は何回も赤痢をもようすにようになった

 

 

ヒロ子「…ううっ……」

 

ミチコ「大丈夫?藤井さん…?」

 

ヒロ子「看護婦さん…血の下痢が止まらなくて……それに寒いくて……夏なのに…」

 

ミチコ「…藤井さんも…さっきからそういう患者さんばかりなんよ」

 

 

ヒロ子「なんで……今朝のが原因なのかな…」

 

男「看護婦さん!隣の人が赤いクソ漏らした!早う来てくれ!臭くてたまらんわ!」

 

ヒロ子「……他の人も」

 

女「先生…うちの身体からガラス早う取って…」

 

ミチコ「あっ はい!」

 

 

 

8月7日 翌朝

 

ヒロ子「……血の下痢と寒さで寝れなかった……痒っ!あっシラミ」

 

男「のう、カ…お姉ちゃん…うちの身体からウジ虫取ってくれんか…頼むけぇ…」

 

ヒロ子「……わかったわ おじさん 」

 

男「…すまんのう 姉ちゃん… ううっ……うう…」

 

ヒロ子「おじさん?痛いの?」

 

男「娘を思い出したんじゃ……ううっ……」

 

ヒロ子「……」

 

男「昨日 娘の運転する路面電車乗っとってのう…ほいじゃが……気づいたら娘は 傍で黒焦げになって死んどったんじゃ………ううっ……カヨ……」

 

ヒロ子「おじさん……」

 

男「ありがとう 姉ちゃん……」

 

 

ヒロ子「いいえ……(そういや気づかなかったけど……昨日は右腕があんなに焼きただれてけど…裏側だけ 酷いだけみたい?…でも、動かすのは辛いかも……)」

 

看護婦「佐々木さん おはようございます

包帯変えますね」

 

 

 

ヒロ子は立ち上がり窓から景色を見た

廣島の街はかつて見てきた景色とは違い一面の瓦礫の街だった

 

 

ヒロ子「…夢じゃなかったんだ」

 

 

ミチコ「おはよう 藤井さん」

 

ヒロ子「あっ看護婦さん」

 

ミチコ「痛みはどう?」

 

ヒロ子「……昨日よりはいいですよ…

右腕ではあんまり動きませんが…」

 

ミチコ「えっ…まぁ……えかったわ

確か 藤井さんのは右腕での裏側が酷い火傷を負ってたかね……

表はガラス片の切り傷だけで 水で傷口を綺麗にしたら 傷は浅くてね

しばらくしたら傷はそんとな目立たないかもね…

ほいでも、あまり動いちゃいけんよ

弟さん探しに行くん?」

 

ヒロ子「ええ…」

 

ミチコ「…気おつけるんよ」

 

ヒロ子「はい……」

 

 

ミチコ「……あの子…怪我しとるのによく動けるね……弟か……」

 

 

 

ヒロ子は仮設病院の國民學校 校門から出ると振り返り立ち止まった

 

 

ヒロ子「……ここって 勝の通ってる

學校だったの

……勝 痛……痛ァ……はぁ…はぁ……

我慢するのよ……あたし……」

 

ヒロ子はひたすら勝の居る場所へ向かった

周りは異臭に遺体があり酷い光景だった

遺体にはハエやウジ虫 蟻が集ってた

特にハエは大量発生し 視界を遮る程だった

 

ヒロ子「……嘘…あれがハエ なんて量なの……」

 

VOOOOOOO……

 

ヒロ子「…? えっなに?」

 

ヒロ子が鈍い音に気づき上を見上げると

空高くギラギラ銀翼を光らせ悠々と飛行するB-29の姿があった

 

ヒロ子「B29?!」

 

市民「Bじゃ!早う隠れるんじゃ!」

 

 

ヒロ子は慌てて瓦礫の影にしゃがみ隠れた

 

VOOOOOOO……

 

ヒロ子「……?……偵察機?」

 

VOOOOOOO……

 

市民「なんじゃ 偵察機かー」

 

市民「ほいでも……昨日も1機来たじゃろ

ほいで あの新型爆弾を落としたけぇ

今朝の新聞に出てたじゃろ」

 

市民「皆実のガスタンクが爆発した言うウワサもあったが…

やっぱりアメ公の新型爆弾かいのう…まあほいじゃが、こんとな焼け野原じゃ、こんとな焼け野原にまた落とさんじゃろ…」

 

市民「ほいじゃ 偵察か…ほうじゃな」

 

 

ヒロ子は再び立ち上がり歩き始める

 

橋に差し掛かると物凄い異臭がした

 

ヒロ子「…うぇっ……なにこの臭い……?」

 

橋下を見ると

無数の遺体が浮かんでた

 

ヒロ子「…!!」

 

ボスっ ボスっと

水死体の腐敗ガスが破裂 腹を突き破り外に出た

 

ヒロ子「……」

 

警防団「……惨いのう」

 

警防団「……のう」

 

 

ヒロ子「…うっ!」

 

ヒロ子はその凄惨な光景に耐えきれず吐いてしまった

 

 

 

 

ヒロ子「はぁ……はぁ……」

 

軍人 陸軍伍長「のう 姉ちゃん大丈夫か?」

 

ヒロ子「えっ……はい」

 

軍人 陸軍伍長「これ、飲みい」

 

若い陸軍伍長はヒロ子に水筒を渡した

 

ヒロ子「…あ…ありがとうございます」

 

軍人 陸軍伍長「…酷いのう、あの廣島の街が…こんとな姿になるとはのう…アメ公のヤツめ、惨いことしやがるのう」

 

ヒロ子「……兵隊さん アメ公を早くやっつけてください!」

 

軍人 陸軍伍長「……おう!一人残らずやっつけたる!」

 

 

軍人 陸軍軍曹「おい 手伝ってくれ!」

 

軍人 陸軍伍長「はい!」

 

ヒロ子「あっ水筒」

 

軍人 陸軍伍長「水筒はええ、姉ちゃんにやるけえ」

 

ヒロ子「…ありがとうございます」

 

 

 

 

 

ヒロ子「……あっこの辺て家の近く…」

 

ヒロ子は家の方に走って向かった

が家は焼失してた

 

ヒロ子「家が……」

 

 

 

 

ヒロ子が玄関前の焼けた材木をどかし始めると煤だらけの頭蓋骨が見つかった

 

ヒロ子「…おばあちゃん…文子姉ちゃん…?!」

 

更に辺りを材木を退かすと 炭化したお弁当箱が見つかった

裏を見ると 藤井文子 と書かれていた

 

 

ヒロ子「……!!……ふ…文子姉ちゃん……あぁぁ……文子姉ちゃん……!!

あぁぁ……!!」

 

ヒロ子は文子の頭蓋骨を抱きしめ 大泣きした

 

ヒロ子は泣きながら周りの材木を退かすと

 

もう1つ頭蓋骨が見つかった

 

ヒロ子「おばあちゃん!!……」

 

ヒロ子「……お……おばあちゃん……おばあちゃん……うっ……うわぁぁぁん…」

 

 

ヒロ子は涙を拭い 2人の頭蓋骨を 綺麗にし 自分の手提げカバンに入れた

 

 

 

ヒロ子「……ひっく…ひっく…あぁ……あぁ……あっ…ま…勝…探しに行かないと…勝…勝」

 

 

 

 

軍人「惨いのう……げに(本当に)惨いのう」

 

警防団「……軍曹殿まだ、この下に何名か埋まっとりますけぇ……」

 

軍人「早う 助けんと!」

 

 

ヒロ子「…確か……この辺り…勝ー!勝ー!」

 

瓦礫下を覗き込むとそこには勝の姿はなかった

 

ヒロ子「勝?!…勝!!……まさか瓦礫につぶ……勝!!」

 

ヒロ子は瓦礫をどかし始める

 

ヒロ子「勝!!勝!!」

 

警防団「のう!姉ちゃん!!」

 

ヒロ子「勝!!嫌よ!死んでたら!! お姉ちゃん嫌なんだから!!1人にしないでよ!!

勝ぅ 勝ぅ!」

 

警防団「姉ちゃん!どうしたんじゃ?」

 

ヒロ子「まさ…弟が…瓦礫下に!」

 

警防団「なんじゃと!おーいこっちに来てくれ!」

 

五六人で瓦礫をどかし始めたが……

勝の姿はなかった

 

警防団「…いけん 見つからん」

 

ヒロ子「……勝…」

 

軍人「姉ちゃん 確かにここなんか?」

 

 

ヒロ子「はい」

 

軍人「うーん……」

 

警防団「誰に助けられたか……亡くなった後に見つかったか……」

 

軍人「じゃったら、救護所か遺体置き場に弟さんが居ってかも知れん…」

 

警防団「近くの病院や救護所には行ったんか?」

 

ヒロ子「いいえ…」

 

軍人「もしかしたら 生きとるかも知れんし、 病院に行った方がええ…」

 

軍人「ですが軍曹殿 病院に行っても生きとるか」

 

軍人「バカタレ!そういう事言うな!」

 

警防団「…遺体置き場ならあそこじゃが

もう、火葬やっとるけえのう……」

 

 

遺体置き場

 

警防団「おーい 男の子の遺体ないか?」

 

ヒロ子「五年生ぐらいの男の子です」

 

警防団「五年生ぐらいのか……

おーい 五年生ぐらいの男の子居ったか? 」

 

警防団「うーん…どうじゃったか、さっき見たような気もするが」

 

ヒロ子「……勝…」

 

警防団「まー確認するにも黒焦げじゃけえのう…身許票も無うなっとるじゃろ…」

 

ヒロ子「……病院の方に行ってみます」

 

警防団「…きーつけるんよ」

 

 

軍人「姉ちゃん、お気の毒にのう…弟さんに会えるとええが」

 

警防団「ほうじゃのう」

 

 

 

 

ヒロ子「……勝……勝……勝…あぁぁ……勝ぅぅ……」

 

ヒロ子はしゃがみ込み 泣き始めた

 

 

ヒロ子「勝ぅぅ…あぁぁ…ん……」

 

 

恵「…ネ!あんた大丈夫?」

 

ヒロ子「…え?」

 

ヒロ子が振り返ると同い歳ぐらいの女の子が居た

 

 

 

恵「大丈夫?」

 

ヒロ子「……えっ……うん」

 

恵「あっ、ほうじゃ…はい!」

 

ヒロ子「…?」

 

恵「ドロップあげる!これ舐めて元気出しんさい」

 

ヒロ子「……あ……ありがとう/////」

 

恵「どうしたんね?こがいな所で泣いて…お腹でも痛いん?」

 

ヒロ子「……弟が見つからなくて」

 

恵「…ほうね…そりゃ辛いね…あ!ほいじゃあウチも一緒に探すけえ!」

 

ヒロ子「えっ……」

 

恵「ウチも姉ちゃんを探しとるけえ…ほいじゃけえ一緒に探さん?」

 

 

ヒロ子「……ありがとう/////」

 

恵「…と…早うドロップ舐めんさい、早う舐めんと溶けるよ」

 

ヒロ子「……うん/////」

 

 

 

第二章に続く

 

 

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