8月14日 廣島市内
恵とタツは勝を探し続けてた
…2人の表情は暗かった
恵「……」
タツ「……恵」
恵「…ヒロ子ちゃん……死んでしまうかね…」
タツ「……うーん」
恵「…嫌じゃ……ヒロ子ちゃんが死ぬのは嫌じゃ!」
タツ「わしもじゃ!…ほいでも……わしらにはどうにも出来んのじゃ…姉ちゃんやキヨコ先生を助けてたいのに……あぁ!くそったれ!!ピカのバカタレ アホタレ!」
恵「……勝くん探そう」
タツ「勝君も…生きとるんかのぅ……」
恵「……ほら!行くよタツ……
…(ヒロ子ちゃんが病気になったんは、ピカのガスを吸いよったから?分からん…分からんよ…なんで…こがいなことになってしもうたんじゃ…)」
恵はタツの手を掴み歩き出す
恵「……えっ」
タツ「…ん? 恵…あっ…」
邢「よう…お嬢ちゃん 久しぶじゃのう」
恵「……あんたは」
邢「おぉ 覚えとってくれたんか わりゃ
ほうじゃのぅ あがいな事したじゃけぇ
忘れん訳無いよのぅ」
恵「仕返しに来たん?!」
タツ「恵!」
タツは恵の前に出る
邢「おっ相変わらず勇ましいのぅ 小僧」
タツ「やかましいわい!」
恵「で……なんね!」
邢「…なんもないわ 偶然会っただけじゃ…」
タツ「……え?」
邢「これ…やるわ」
恵「…えっ…あっ」
邢は恵に缶詰を投げた
恵「……? えっ缶詰…ん?!肉?!」
タツ「げに?!」
缶詰は陸軍の缶詰肉だった
邢「…罪滅ぼしじゃ…まぁそれで許してや」
邢はその場を後にした
恵「…はぁ……」
邢「そいつ食って頑張って生きろよ~」
恵「……」
タツ「…恵にあがいな事したのに…おかしな人じゃのう」
恵「…ホンマじゃね」
學校
キヨコ「…暑い…ん?」
ヒロ子は起き上がった
ヒロ子「……ちょっとお水飲んできます…」
キヨコ「きーつけてね…」
マチコ「キヨコさん 包帯取り替えますね」
キヨコ「……はい」
ヒロ子は湯呑みを片手に
水飲み場へ来た
ヒロ子「……しょっ」
ヒロ子は湯呑みを置き片手で蛇口に捻り
水を注いだ
ヒロ子「ひゃう…冷たい……しょっ……んっ」
ゴクゴク…
ヒロ子「……?…(なんか鉄の味がする)」
ヒロ子は一旦 湯のみから口を離すと
水と縁には血がついてた
ヒロ子「……?!」
ヒロ子は口元を触ると血が出てた
ヒロ子「……は…歯茎から出血してる…(あたし…もうじき…死ぬんだ…)」
市内
恵「子供が居りそうな所…」
タツ「勝君どこにおるんじゃ……」
享子「…恵さん?」
恵「…き……享子さん?」
享子「久しぶりじゃね ……あれ?ヒロ子ちゃんは?」
タツ「…」
タツは恵の方を見つめる
恵「廣電の享子さん ヒロ子ちゃんは……ピカの病気で悪くて學校で休んでおります」
タツ「廣電……わしはタツです
よろしゅうです」
享子「よろしゅうね タツくん
…ほう……ヒロ子ちゃんも
……みんな死んでしまうんかね」
享子は腕まくりして左腕を見つめた
左腕には赤紫色の斑点があった
恵「……享子さん…」
タツ「姉ちゃんにもあるやつじゃ……」
恵「享子さんにも……」
享子「……あと少しだけ
電車に乗って…みんなの役に立ちたいかな…私は…」
恵「享子さん…」
享子「私の願い神様が聞いてくれたらありがたいんじゃけどね……
あっほうよ!勝くん……じゃったっけ? 見つかった?」
恵「いえ…」
享子「元安川の沿いにあるバラックは見たん?」
恵・タツ「バラック?」
二人は享子と別れ元安川のバラック群に向かった
元安川 バラック群
恵「ここは見逃してたね…」
タツ「なんか居そうな気がするのぅ」
恵「ホンマ?」
タツ「勘じゃ」
恵「ほう、まぁ探そ」
タツ「すんません 五年生ぐらいの男の子知らんですか?」
女性「五年生……あの辺におらんかったかね」
タツ「ありがとう おばさん!」
恵「勝くん……勝くん……」
男の子「姉ちゃん こっちこっち…ワッ!」
ドサッ
恵「きゃっ…!」
女の子「進司!あぁ お姉ちゃんすんません……」
恵「ええよ…大丈夫……?あれどこかで」
進司「大丈夫」
女の子「……あっドロップのお姉ちゃん!」
恵「あぁ!ほうよ!!」
女の子「お姉ちゃん あの時はありがとうね」
恵「ええよ」
恵は優しく微笑んだ
タケ「あや子 どうした?」
あや子「あっタケ兄ちゃん」
奥から中学生ぐらいの男の子が出てきた
タケ「……?」
あや子「タケ兄ちゃん このお姉ちゃんだよ あたし達にドロップをくれたの! 」
タケ「あぁ…君が……あっ安藤…恵さん」
恵「こんにちは……お兄ちゃんが居ったんじゃね」
あや子「ううん、タケ兄はホンマのお兄ちゃんじゃないんよ……驛に居った時に一緒に来ないかて言われて…」
恵「…ほうじゃったんじゃね…」
タケ「ピカで死んだ妹に…似とって……じゃけぇ…声を掛けたんじゃ
弟も出来てワシはうれしいのぅ…
進司」
進司「タケあんちゃん!」
恵「三人で暮らしとるんです?」
タケ「いや、俺の母ちゃんと一緒じゃ」
恵「ほうね……えかったね あや子ちゃん」
あや子「うん!」
恵「…ほうじゃ 藤井勝くんてこの辺に居らんかね?五年生で
友達の弟さんなんよ……ピカの日から生き別れてしもうてね…」
タケ「うーん 藤井…勝……か…いや、知らんのう
あや子 進司知っとるか」
あや子・進司「ううん」
恵「ほうか…」
タケ「すまんのぅ…」
恵「ええんよ」
タケ母「タケ あや子ちゃん 進司くん~!」
タケ「あっ母ちゃん…」
恵「あっ ウチはこれで…」
あや子「じゃあね!お姉ちゃん」
恵は再び捜索を始めた
タツ「恵!居ったか?」
恵「うーんや 居らんよ」
タツ「ここなら居りそうな気したんじゃがのぅ」
恵「ほうじゃね……んっ…」
タツ「…恵?」
恵「…た…立ちくらみじゃ……ちぃと疲れたんじゃね……」
タツ「大丈夫?」
恵「へ…平気……」
タツ「一旦學校に戻ろ 恵」
恵「……うん」
學校
患者「おい 明日の昼に大事な放送があるらしいぞ」
患者「大事な放送?なんじゃろうね」
患者「なんでも、陛下が自ら放送するらしいぞ」
患者「陛下が?!」
ヒロ子は横向きで蹲り 家族写真を見つめてた
ヒロ子「…お母さん……勝…」
キヨコ「……(藤井さん)…あっ」
恵とタツが教室に入って来た
キヨコ「恵さん タツくん」
ヒロ子「……あっ」
ヒロ子は目から少し溢れてた涙を拭い
身体を起こした
キヨコ「おかえりなさい」
ヒロ子「おかえり」
タツ「…あっ!恵 アレじゃ」
恵「……アレ?…あっ…ふふっ」
ヒロ子・キヨコ「???」
恵「ヒロ子ちゃん キヨコ先生
これ」
コト
恵は肩掛けカバンから肉の缶詰を出した
ヒロ子・キヨコ「?!」
ヒロ子「これは缶詰…」
タツ「しかも 肉じゃ★」
キヨコ「……ど…どうしたんよ…これ」
恵「ちぃっとね……お詫びの品て言うか…」
ヒロ子「お詫び?」
タツ「まぁええから 食うお のぅ」
ヒロ子「あっでも、缶切りないよ」
恵「缶切りはないけぇ これで開けよ」
恵はカバンから短刀を出した
タツ「なんして短刀があるんじゃ」
恵「護身用」
タツ「…はぇ」
恵「呉はアメ公のグラマンやらいっぱい来るんよ
ほいじゃぇ墜されたアメ公に遭遇してええように…まぁ向こうは鉄砲じゃけど
……と開いたよ」
ヒロ子・キヨコ・タツ「おぉ~」
キヨコ「お…お肉じゃね」
ヒロ子「う……うん お肉…」
恵「箸は無いから…手でどうぞ」
ヒロ子「……恵ちゃんからで」
恵「えっウチから?!」
ヒロ子「恵ちゃんが持ってきたんだから」
恵「…ほいじゃ…はむ……ん!ぶち美味しい!…はい、みんなも」
タツ「おう」
ヒロ子「ありがとうね 恵ちゃん」
キヨコ「ありがとう恵さん」
タツ「…!ぶち美味いのぅ! 」
ヒロ子「……んッ…本当 美味しい」
キヨコ「……美味しい ムグムグ」
タツ「…兵隊さんはええのぅ こがいな美味いもん食っとるんじゃから…」
キヨコ「………でも、兵隊さんでも
こがいなの物をみんなが食べれてるじゃないんらしいよ……」
タツ「ほうなんか キヨコ先生?
」
キヨコ「知り合いに陸軍さんの主計将校がおって聞いた話じゃと……戦地は食べ物が無くて地獄て……」
タツ「地獄…」
キヨコ「草や虫…泥水……そして人まで……食べたらしいんよ」
恵「えっ……人…」
キヨコ「敵兵とか……亡くなった…戦友とか……」
一同「………………」
ヒロ子「……兵隊さんがそんな目に遭ってるなんて…まだ、あたし達の方が遥かにマシだったんだね……」
タツ「兵隊さん達の方がひもじい思いしてたんか…」
恵「ほうじゃね…」
夜
ラジオ「《臨時ニュースを申し上げます 明日15日正午に重大なるラジオ放送があります 国民は皆 謹んで聴くように 繰り返します……》」
患者「なんじゃろうね」
患者「いよいよ本土決戦かのぅ」
患者「ほいじゃ九州に上陸したんか?!」
患者「知らんわ」
患者「違う 昼間に話した陛下のお話じゃ」
患者「あぁ なるほど」
ヒロ子は写真を眺めていた
ヒロ子「……勝…」
恵「う…うん…zzz」
ヒロ子「…起きちゃったかな?」
キヨコ「勝くん 見つかるとええね」
ヒロ子「……」
キヨコ「……?」
ヒロ子「……もう、…勝は生きてない気がするんです」
キヨコ「…藤井さん」
ヒロ子「だって…恵ちゃん達がこんなに探してるのに…見つからないなんて…」
キヨコ「でも……見つけたいんじゃろ?
ほいじゃったら自分が満足するまで探したらええと思うよ
安藤さん達も居るしね」
ヒロ子「キヨコ先生…」
キヨコ「私も 身体が治ったら お母ちゃん探しに行きたいわね…」
恵「う……うん……」
ヒロ子「あっ起こしちゃった?」
恵「……あっ お便所じゃ……」
キヨコ「私は水飲んでくるね」
ヒロ子「はい……(自分が満足するまでか……でも……あたしにはあとどれだけ……時間が残ってるのかな…)」
ドサッ
ヒロ子は鈍い音が聞こえた方向に目線をやると……キヨコが倒れてた
ヒロ子「……えっ……?!キヨコ先生?!」
ヒロ子は傍に駆け寄る
キヨコ「ゴホッ.ゴホッゴホッ……」
キヨコは吐血していた
ヒロ子「キヨコ先生?!」
患者「…先生を呼べ!」
衛生室
衛生室では看護婦や陸軍衛生兵が
横になりつかの間の休憩を取っていた
軍医「……おっ」
ミチコ「……あっ軍医さん」
軍医「そのままでええ 休んどれ」
ミチコ「すみません…」
軍医「わしも休むかのぅ……」
患者「先生大変じゃ!!」
ヒロ子「キヨコ先生!!キヨコ先生!!」
患者「先生 こっちじゃ! 」
軍医「?!」
ミチコ「キヨコさん?!」
キヨコ「ゴホッゴホッ…はぁはぁ」
ヒロ子「キヨコ先生…」
ミチコ「凄い血…」
軍医「衛生室に運ぶんじゃ!」
ミチコ「はい!」
恵「はぁ…ん?…」
恵の目の前を血塗れのキヨコが運ばれて行った
恵「…キヨコ先生?!…ヒロ子ちゃん!」
恵はヒロ子に駆け寄る
恵「キヨコ先生に何があったんよ?!」
ヒロ子「キヨコ先生が……突然倒れて」
恵「キヨコ先生…」
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